息抜き
本編にはあんまり関係ない話です。息抜きがてら、どうぞ。
イベント当日までの間、カナデは主にレベル上げをしていた。とは言っても、一生懸命していたわけではなく、FFOを探検しながら思いっきり遊んでいたのだ。
FFOは広大なマップや大量のスキル、幅広い戦術や様々な種類の武器が売りだ。そして、それはゲームに参加することでより味わえる。圧倒される。そして、そんな第二の現実世界で、銃のみしか売っていないと考える方が愚かしいのだ。
「へー、食べ物屋さんとかあるんだ。ゲーム内で太らないのにいっぱい食べられるっていいな。素晴らしいじゃん」
街を歩いていた奏は、一つの看板が目に入れた。
『MckDonald's』
「ちょっと待てや」
そのMckがMcだったらもうアウトだったぞ。ギリギリ回避できるような名前にしやがって。なんだよ。マックドナルドかよ。
「まあ、一応入ってみるか……。味はどうなんだ?」
入ってから列に並ぶ。うーん、おっかしいなぁ……内装がどっからどう見てもマ○クなんだよなぁ……。
あ、俺の番来た。
「お待たせいたしました! ご注文をどうぞー!」
「あ、じゃあ……ダブルチーズバーガーのセットで、ポテトはM、ドリンクは……えっと……」
ドリンクの場所を見てみると、ここだけマッ○と違う。いくつか謎の飲み物が混ざっていた。スライム風味のサイダーって何だよ。
「じ、じゃあ、この電流コーラで……」
「はい、当店でお召し上がりですか?」
「はい」
「合計一万ゴールドでーす」
たっか。いや、想定以上に高かったわ。千もいかねえと思ったわ。ゴメンね偏見ぶつけて。
ピロンっ! と買い物完了の合図が鳴り響き、席に座る。すると、目の前に先程注文したものが光と共に現れた。
「おお、そういうふうに現れるんだ。というか、NPCの作るものじゃなくて、プレイヤーが店を切り盛りしてんだな。すごい」
目の前に現れたハンバーガーにかぶりつく。
……美味い。バンズの中から溢れ出てきそうなチーズ、噛みしめると、ふわふわのバンズが俺を迎えてくれて、牛肉から溢れ出す肉汁が全てを祝福する。やべえ、めっちゃ美味い。
「なんっだこれ……現実より美味いかもしれん……」
ムッシャムッシャとそのまま食べる。あまりの美味しさにすぐに食べきってしまった。忘れていた、とポテトに目を向ける。これはどうだろうか。はむっ、とポテトを一本口に入れた。
「……これも美味いのか……」
絶妙な塩加減、口に入れやすい長さ、ポテトそのもののうまみ。やばすぎ。なんだここ。
「はー、心が癒されるぅ~! 毎日食いに来よっかな。ここ。まあ、他にも店を回ってみるのもありか」
注文した電流コーラを持ち、店から出る。ゴミは自動で消えた。マジで素晴らしいな。第二の現実バンザイ。
「そういえば、これはどうなんだ? さすがに電流コーラってのは味が読めないからな……」
そう思いながらも、突き刺したストローからコーラを飲む。すると、ピリッとした感覚が全身を襲うと同時に、シュワッ! と何かが弾ける感覚が舌の上に。素晴らしい。
メニューを見ると、『麻痺』が付与されている。【麻痺無効】が無ければ体が動いていないな。恐らくだが、店の中で、「体が動かないけど舌と喉に駆け抜ける快感やべえ!」となるのだろう。【麻痺無効】持っててよかったわ。道端で硬直とかシャレにならん。
「でも、美味いな! コーラそこまで好きなわけじゃないんだけど、これならいくらでも飲めるわ」
おいしー、と思いながら街を歩く。こうして見てみると、ここってすげえわ。プレイヤーがこんな風に店を出すゲームってそんなに無いじゃん。しかも、これの本分は銃や魔法の撃ち合い。だというのに、その他の要素がここまで充実しているというのは、流石すぎる。
ちゅーちゅーとコーラを飲みながら、違う店に入った。『雑貨屋:エクスプローラー』。探索しようとしてるよ。
「すみませーん。誰かいますかー?」
「あ、はーい。奥に居まーす」
そう言われたので奥に行ってみると、そこには眼鏡をかけた、少し小太りなおっさんがいた。うわお。そういうタイプね。というかこのゲームやろうと思えばお腹周り変化させられるだろ。なんであえて太ってんだ。
「あ、太っているのが気になる? これはね、現実と同じように設定したんだ。第二の現実と言われている世界で見た目を偽りすぎるのは、ちょっと違和感がある思ってね。この姿に慣れ親しんでもいるし、いいと思わないかい?」
「いいんじゃないですかね。少なくとも出会い目的で体形を弄るやつよりは美しいと思いますが」
「はは、ありがとう」
「それで、ここは何を売っているところなんですか?」
「現実とそう変わらないよ。本当に、雑貨ばかりだ」
そこで店員さんと分かれ、店を見て回る。本当に雑貨ばかりだった。ただ、ところどころ「これはレアアイテムでは?」という物がいくつかある。例えば、鳥の置物。設置して、半径百メートルの範囲を湧き潰す、というもの。そんな効果のあるものが売っているとは……恐るべし雑貨屋。
迷ったが、木製の白いキャビネットを購入。二万ゴールドと高かったが、可愛らしいデザインだし、あいつも気に入るだろう、と思いながら店を出た。というか、いい店主さんだったな。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
「あ、おかえり。今日はどこ行ってたの?」
「うんにゃ。街を歩き回ってただけだ。○ック行ってきて、雑貨屋に遊びに行った」
「へえ。森に行ってレベリングしなかったんだ。珍しい」
俺は椅子に座る前にインベントリに手を伸ばし、キャビネットを取り出した。買った時に梱包をしてもらっている。
「……え?」
「いや、最近お世話になってるし、お礼になにかあげようと思って。要らないならいいんだけど」
「くれるの?」
「ああ。いるんなら」
「じゃあ、貰っとく」
受け取ったユカがどう思ったかは分からないが、喜んでくれたらいいな、と思う。
その日はそれで終わり、俺はログアウトした。
「ふふ。ほんとに……ありがとう」
ユカはキャビネットを抱きしめ、その後、居住スペースの机に飾ったのだった。




