第十三話
掲示板のやつだよ。ようやく会えるね。
『憤怒』攻略後、俺はユカの店へ帰ってきていた。特に理由は無いが、ここならばログアウトもできるしな。二階で。
本来道端でログアウトすると、路上で寝ている判定をくらい、なにかアイテムや装備を盗まれたりするらしい(稀にらしいが)。流石に俺の装備を盗まれるわけにはいかない。だから、この店の二階の居住スペースに居候させてもらっているわけだ。
「で、新しいスキルを手に入れたと」
「そうそう。『憤怒』攻略したら【憤怒】が手に入ったわ。ハイこれ。素材」
「あ、ありがと。あ、そうだ。ちょっとカナデに会いたいっていう人がいるんだけど、会う?」
「? そんな奴が……? まあ、いいけど」
「奥の部屋で待ってるわ」
この店すげえな。奥にカフェみたいなスペースあるじゃん。しかも地味に綺麗なのが腹立つ。
そこの机に、椅子が二つあり、一つは誰かが座っていた。この人か。
「すみません。俺を待っていたというのは、もしかしてあなたでしょうか……?」
「! そうだ。悪いな。待ったりして。しかも知らない男に」
「いえ、別にそういうのはいいんですけど……何用で?」
「あー、いやー」
その男はギデオと言い、このゲームがリリースされてから随分と長い間プレイしているようだ。そんな中、森の奥で一人で狼を一方的に殲滅している異様な光景に出会ったから、一度話してみたいと思ったとのこと。
「ああ、あの時に見てたんですね」
「あのレアモンスターを目当てで行ったんだが、目の前であんなことされてちゃ、面白いが勝っちまってな。狩ることなく帰っちまったよ」
「なんか、すみません」
「いやいや、謝ることじゃないさ。それより、君は始めてからどんなことを経験したんだ? 時間があるなら話してくれるか?」
「はい。じゃあ、まずは初ログインからですね。三日前に初ログインしました」
「三日前!? というと、初ログインしてすぐにあの狼たちと戦ったのか!?」
「特に説明とかも無かったので、射撃を楽しみに行ったんです。そうしたら狼が出てきて―――」
それから十分ほど、この三日間の行動を説明してみた。魔王シリーズについてを言うと、「こいつマジか」といった目を向けられてしまった。泣いちゃう。
どうやら、俺が最初に消してしまった表示はチュートリアルのようなものだったらしい。それをすっ飛ばしていきなり銃を撃ち始めたり、スキルを勘で使えたりしたのは、意味が分からない、と言われた。
「そういえば、今ギデオさんの着ている装備もユニークなんですか?」
「いや、俺の装備は生産職に造ってもらったもんだ。まあ、完成度が全部Ⅷだから、そこそこ強いぞ。流石にこの店のユカさんの性能には及ばないけどな……。オーダーメイドは高すぎる」
「えっ、ユカの作るものってそんなに質が高いんですか?」
「まあ、そうだな。君が買ったという【狩人の血鷲】。これは本来火力がそんなに出ないはずなんだ。STRが20だったよな?」
「はい」
「アサルトライフル……例えば、M6やAK-47とかだな。っと、こっちの世界では名前が違うんだが……まあ、それらのSTRが大体22ほどだ。つまり、ハンドガンとアサルトライフルのSTRが殆ど同じになっている」
「まあ、デザートイーグルですから。自動拳銃のくせにマグナム弾撃てますからね」
「よく知ってるな。まあ、それにしても、だ。通常、店で買うようなハンドガンには【バーストアタック】はつけられねえんだ」
「えっ? いや、【狩人の血鷲】も付けられましたし、【黒龍】にもつけられましたよ?」
「それは、ユカさんの作った【狩人の血鷲】であり、【黒龍】もユニークシリーズだからだ。武器の耐久性、精密性が高くないと、【バーストアタック】なんてレアスキルは付けられない」
「レアスキル?」
「ほら、自動拳銃にしか付けられないうえに、さっきの条件が付くんだ。レアだろう?」
「確かに……」
故に、【狩人の血鷲】もDPSが高かった。流石にアサルトライフルにまでは及ばないが、そこそこのdpsをたたき出せた。【バーストアタック】のおかげだが、それをつけられるほどに高品質のものを作ったのはユカだ。
「すげえんだな……」
「ああ、大事にしろよ。あの人はほんとすげえぞ」
「分かりました。ありがとうございます」
「おう。じゃあ、またいつか話そうぜ。フレンド登録すっか」
「あ、ありがとうございます」
その後互いにフレンド登録をし、ギデオさんは店を出た。俺は店に残り、ユカと話をした。
「うん、あの人のショットガン直したよ。【散壊ノ機】っていうショットガンなんだけど、あれだけはユニーク装備っぽい」
「あれだけ? というか、ユニークなのに壊れたのか?」
「いや、あれが特殊なだけ。自らを破壊することで超火力を生み出すユニーク。物事の起こるきっかけを自分の破壊で生み出すから、【散壊ノ機】っていうんじゃないのかな」
「へー、ネーミングにも意味があるんだな。すると黒龍は?」
「魔王の配下でしょ」
「でしょうねぇ」
それから俺は、第一回イベントまでにレベルを上げることにした。半年でようやく第一回イベントが始まるという点は不思議だが、ある程度のプレイヤーが集まるのを待っていたのか、それ用の会場を作っていたとかだろう。プレイヤーの俺たちは知る由もないが。
それから一週間後。イベントの日はやってきた。




