序章
ーー日常ーー
「ん…。今何時だ。」
うるさい目覚まし時計を止め、時間を確認する。時計は11時を指している。
俺は伊東凪、自称平凡な大学生だ。ニートではない。もちろん講義もある。10時40分から…。欠席の扱いとなるのは講義開始から30分後だ。まだ10分もある。全力で走ればまだ間に合う。
急いで服を着て朝食を食べずに家を出た。
しばらくして大学についた。ギリギリ間に合った。
放課後、友達と遊ぶ約束をした。最近流行りのゲーム『ドラゴン・ファンタジア』だ。俺は家路を急いだ。
そのときだった。
白い子犬が道に飛び出した。前からはトラックが走ってきている。
気がついたら身体が動いていた。
「キャイン!!」子犬を蹴った。
次の瞬間、自分の身体から飛び散る赤い液体。
目の前が真っ暗になった。
ーー目覚めーー
「…なさい。」
「目覚めなさい。」
声が頭に響く。何故か身体は痛くない。目を開けた。
「あら…おはようございます。」
白い髪が目を引く可愛らしい少女が立っていた。
「あなたは死にました。」
「し、死んだ…?」
「はい。死にました。ですが、あなたにもう一度チャンスをあたえましょう。」
「チャンス?」
「あなたは、子犬を庇いましたね。その子犬は私だったのです。私を救ったという実績をあなたはあげました。よって、あなたにもう一度命を与えましょう。」
「つまり俺はあんたの気まぐれで死んだということか。」
「ごめんね☆」テヘペロ
「私、堅苦しい喋り方疲れちゃった。崩していい?」
「あぁ…。」
「ありがとー。命を与えるって言ったけど元の場所に戻すのはできないんだ。」
「何故だ。」
「大変言いにくいんだけど…。あなたの身体はバラバラになっちゃったの。」
「まじで?」
「まじで。」
「だから、異世界で生きて欲しいんだけどいいかな?」
「わかった。でも条件がある。お前もついてこい。」
「え?ナニナニ告白?」キャー
「違う。」
「んー。本当はそういったことはできないんだけど、今回は私のせいだからね。特別についていってあげる。」
「お前、名前は?」
「実は、私生まれたばかりでないんだ。名前つけてよ。」
「ミシロ。白いから。」
「ミシロ。うん、すごくいい名前。気に入った。あなたにも名前つけてあげる。」
「いや、伊東凪という名前が…。」
「その名前は前の世界の名前でしょ。前の世界の名前は使えない決まりなの。」ゴメンネ
「まじで?」
「だから、新しいのつけてあげるね。うーん、伊東凪(ITO NAGI)だから『ING』に決めた。」
「もはや、カタカナですらない…。」
「大丈夫!プレイヤーネームみたいなものだから。」
「わかった。」ソレデイイノカ
「次の世界では、前の世界とは違って魔法があるの。もちろんモンスターもいるよ。」
「より過酷じゃねぇか…。」
「その代わり、ステータスをすごく強くしてあげる。魔王を倒してもいいし、スローライフを送ってもいいよ。」
「魔王?」ナニソレ
「魔王はモンスターの王だよ。すごく強いんだって。」
「へー。まぁ、興味ないね。」
「あとは、とりあえず次の世界に降りたったら教えるね。」
ここから、俺の異世界生活が始まった。
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。