第98話 小説にはたぶん、技ありがない
ミステリと言う勿れを今さらながら。
日常ミステリものであり、わたし的にここ最近に発掘された、わたしの好みのジャンルです。人が死ななければおれごん的になおよいものの、大人社会を描いてそれはぬるすぎるから致し方ないところでしょうか。
これが、まあおもしろい。
なにがどうって、みなさんも同じに感じておられると思うのですけど、主人公・久能整の語りが、その人となりが心地よい。話術が魅力。いつでも聴いていたい。知らないことを講釈してもらいたい。
劇中で友達がいないのがウソでしょと。おれごんだったらほっとかない、いの一番に拾いにいきたい人材です。
いま思い起こして、ひとりいますね友人に。整くんみたいな後輩が。
彼女もわたしがいないと孤立しがちな性格、いえ、ひとりで居るほうが心安らげるタイプの人物。
彼女もまた、誰にも言えないなにかを抱えて、それでもなお日々をやり過ごしているのでしょうか。わたしをわずらわしいと感じながら。決して聞きませんけども。
そうした主人公の人となりが秀逸なミステリ〜、にあって、もっとも突出した魅力はなんと言ってもどんでん返しでしょう。思いもしないところからやってくるオチに、おれごんは毎度驚かされています。犯人の正体に、動機に、解決方法に。
感嘆してばかりではだめです。だっておれごんも書き手側。あれこそがお手本、あそこまでの手際があればミステリだろうが異世界だろうがなんだっておもしろくなる。
結局のところ、仕掛けなんですよね。裏設定だったり話の展開だったり、『今までにない』だけじゃ足りなくて、『今までにない、そのうえ驚嘆させられた』という体験を読み手に与えられるかが肝心。
それは優雅な文章でも、斬新な展開でも、どんでん返しでもなんでもいい。とにかく読者を驚かすこと。驚きの体験を与えること。
おれごんの過去作に驚きがあったでしょうか。断言しましょう、それは備えさせたおぼえがない。
意図して書いたことはまったくありませんでした。地球に降下する隕石を押しかえしたり、昨日話した老人が実はすでに亡くなっていたり、新任の上官がいつか自分の骨を拾ってほしいとかつてお願いした相手だったり。それができていたなら、今こうして苦しんでいやしない。
おれごんの物語はせいぜい振り子が戻ってくる程のもの。マイナスに振れた振り子が同じだけプラスになる程度。やっと『技あり』が取れるくらいの。
わたしが思うにたぶん、小説に技ありはありません。柔道とは異なり、5コ6コ技ありを奪取しても一本には届かない。
だって技ありくらいの作品は星の数ほどある。有効なんて論外、誰でも技ありは案外取れちゃう。
鮮やかに一本をかっさらうには、焼き増しとか、ただのごった煮とか、どこにでもある物語ではだめなんです。小学生の自分はもちろん、目の肥えた自分にもグウと言わせねば。読者もプロの編集者も一本の旗を高々とかかげるほどの圧倒的な語り。
意外性、しかししっかりとした地続きの。振り子が振れたなら、一回転して逆側から戻ってくるほどの。
「え!? なんでそうなんの!?」
これを読んだ方から引き出せねば。
ガンダムでは、故郷を焼かれ、未成年が軍事機密のロボットに無断で搭乗し、赤い敵機にいいように負かされ、しかし主人公機の強さをこれでもかと示し、ところがほうほうの体でたどり着いた軍事基地で歓迎されず、なぜか囮部隊として放逐される。
なぜ軍事機密の艦艇が民間人に任せて放り出されたのか。
アニメといえどやり過ぎなのは間違いありませんが、兵器のみならず開発って、組み上がった時点で終わっているんですよ。
もちろん運用試験などあるものの、水面下できちんと新しい量産機の開発が進んでいることから、ガンダム自体はもう完成した時点で重要じゃない。
秘密裏にジムにて部隊再編のさなか、囮として活用できるのならその放棄の仕方は、国力でまさりつつも劣勢の戦時中においては正しい。人道には反しますが。ゆえにリアル。
庵野シン・ガンダムは、ガンダムを強奪された程度で歴史が変わりすぎる。リアルじゃない。違和感を覚えます。
どうしてジムが作れないんです? データは残ってるでしょと。どうしてバックアップがないのと。
ジオン側だっておかしい。ガンダム大地に立つは終戦まで3か月半のはずなんですよ? グフやドムは前線投入時期を考えたらすでに輸送中くらいでないと。ゲルググですら別ラインで生産に入っていないと。量産って、そんな行き当たりばったりで作ってないですよ。
新しいプラモデルを売るためだとしても、外装のみアップデートとか、設定面でやりようはあったと思います。おもしろいだけに、惜しい。そこまでケアしてほしかった。
最後に話を戻しましょう。
ガンダムは、『なんでそうなるの』の連続でした。圧巻。想像したとおりにぜんぜん進まない。
なんなら味方を敵に回すくらいでないと。そこまでして得た勝利が、皮肉にも裏目にでるくらいでないと。
この線で考えてみます。解決して次の話がヌルリと始まるのではなく、終わった瞬間がトラブル。整くんに教えてもらいました。驚きを、足す。




