第73話 恋をしたのです
今日、久しぶりに新幹線に乗ったのですが。
行きも帰りも満員、駅はどこもめちゃめちゃ混んでいました。子どもと出かけようものなら迷子待ったなし、トイレも名物みやげの会計も長蛇の列でした。
外国人が多いのかと思いきや、意外や意外日本人ばかり。
じつは外国人観光客は駅に用がない、風景や建物、風習の体験に忙しいですから。
日本人はというと、出先でしか手に入らないグッズや食べ物がお好き、もちろんおれごんも。これでもかと、エコバッグをパンッパンにしてやりましたよ。
新幹線を降りて1時間も在来線に乗ったら秘境です。今は無人駅で、ひとりぽつねんと。次にくる、1時間後の電車を待っています。
目まぐるしかった1日の最後に訪れた無音のとき。なんだか感傷的になり、これを書き始めました。
心ゆたかな時間が流れます。
と思ったら、ご同輩がおふたり来られて。
まだ40分は来ませんよ電車。あ、ご存知。
今夜は冷えますね、もう11月ですもんね。
心ばかりのクリスマスプレゼントも買えてひと安心、おれごんの1年が終わろうとしています。
地震で始まった今年はひどいものでした。次から次へと見舞われる不幸。遅れてやってきた厄年なのかと本気で。8月などは盆をひっくり返したような毎日が続いて。8月だけに盆。
そんな1年が意外にも、比較的静かに終わろうとしています。
ご同輩はご同輩ではなかった、特急に乗っていってしまいました。
またひとりです。まだ30分はあります。
子どもがね、恋をしたと。
あんなに生きるのが嫌だった子が楽しそうにしています。あんなにきらいだった学校にもどうにか通えて。
そうなったならどんなにいいかと願って。鬱々としたまま月日は流れて。流れたなら、反抗期が終わり、意識が変わり、雰囲気が変わり、態度が変わり、表情が変わり、状況が一変した。
すべてが好転するとはまだ楽観しませんが。失恋とか、春からの新しい生活とか。いくらでも簡単に暗転できる。まだまだ油断できない、でも夢が現実になりそうな。
わたしは結局何もできませんでしたね。ただ苦しむのを横でみていた。でもいっしょに苦しめたと思います。何分の1かはちゃんと苦しめた。
来年こそはおれごん家にとって良い年となりますよう。まだ11月なのに、しっかりとした年末感をかもして申しますよ。
電車は来ます、やがて。寒さに耐えきれずに駅を離れさえしなければ必ず。
転んだ子はひざに手をあて立ちあがる。沈んだ日はいつか上るし、降りつづけた雨は止み、雪を力づよく溶かして春がくる。
電車はあと9分は来ませんけども。
ここらで筆を置き、自分で勝手に醸してしまった、まるで年末のようなおごそかな空気をひとり愛でることとします。
ヘックショイ!!!!




