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現代版「浦島太郎」~語り継がれることの無い、二度と帰って来なかった“うらしまたろう”物語~

主人公の“うらしまたろう”は、あの有名な物語「浦島太郎」と同じ読みで字違いの「裏縞多良」。

平凡な日常生活から竜宮城へ誘拐され、帰国したら数百年経っていました…なんて事にならないように、海には近づかない生活を送っていた主人公。

大学卒業後、海とは正反対の山中がメインの職場に就職。

数年後、社員旅行で島へと強制参加させられ・・・



主人公「裏縞多良」が“竜宮城”という異世界へ拉致・連行されるお話です。


俺の名前は“裏縞多良”(うらしまたろう)。

あの有名な昔話に出てくるアイツと同じ発音の名前だ。

俺はアノ物語のようにカメを助けたりは絶対にしない。

海に引きずり込まれてしまったら、捜索隊に迷惑がかかるし、何百年後かにこの地に帰されても住民票とか無くなっているだろうから、生活保護とか健康保険とかを受ける事が出来なくなっているだろう。

もし何かのイベントが起きたら拒否すれば良い事だが、有無を言わさず拉致されるのは御免被る。

名前が名前だけに、割と卑屈に生きてきた俺は、2月の今日22歳になった。

今年大学を卒業する。

就職先は、海とは全く関係ない林業に関わる職場だ。

初めは現場からなので、山に入り間伐などをすることになるだろう。

竜宮城と繋がりが有りそうな“海”とは全く関係ない土地での生活になるから、不安材料は皆無になった。

さらば“浦島太郎”、こんにちは山男“裏縞多浪”。


・・・2年後・・・


ゴールデンウィーク、24歳になった俺は強制参加の社員旅行でハワイに来ている。

ハワイでは4泊5日の予定だ。

何故に海へ・・・しかも、島なんかに来なければならなかったのか。

母子家庭の母ちゃんを危篤にしておけば良かったと、いまさらながらに後悔している。


同僚達がからかってくる。

「ウラシマタロウ君、虐められている亀を探しに海へ行こうネ。」

うっとうしい。

「そんなのお前らが勝手にやれよ。」

「浦島太郎はカメを助けないとねぇ。」

「読みは一緒でも字が違う、ガキみたいな事言うな。」

俺は最終日までホテルに引きこもる事にしている。

「つまんねー奴だな。」

散々な言われようだ。

俺は毎日部屋の窓から外を眺めているだけだ。

「ここがハワイなんだなー、島だなー、早く山に日本に帰りたい。」


3日目の朝、ホテルのレストランで食事を終え、同僚達と4人でエレベーターに乗り、

目的の20階のボタンを押した。

同僚達の名前は「金田太一(かねだたいち)24歳」「大桃一美(おおももかずみ)23歳」「針田朱里(はりたあかり)23歳」で俺によく絡んでくるのは同い年の金田だ。

大桃は金田の婚約者で専務の娘だ。

細田は大桃の幼馴染で庶務の子だ。


エレベーターの戸が閉まり上昇し始めた瞬間、海の底のドーム状の空間に俺達は立っていた。

半球状になっている空間の外側では熱帯魚達が泳いでいる。

足元というか地面は砂だ。

振り返ってみたがエレベーターなど見当たらない。

同僚達も何が起きているのか理解できないでいるようで、ボーっと正面の魚達を見ているだけだった。

「おい…裏縞…ヤバいな…帰れるのか?」

「さぁ?どうだろう。俺もこんな事初めてだから解らん。」

「私達どうなっちゃたの?早く部屋に戻りたいんだけど。」

半径5Mほどあるドーム状の空間内で出口と言うか帰り口を探しまわる俺達4人。

水中の為か、スマホは圏外になっている。

もちろんGPSも受信できない。

一応手帳に『4月30日現地時刻8:24 エレベーターを降りたら変な場所に来た』とメモを取った。

俺は海上に出た時の為にスマホの電源を切りバッテリーを温存する事にした。


この空間に来てから10分位経った。

今は昼前だけあって、ドーム状の海中は割と明るい。

海中をボーっと見ていたら、1匹のイルカがこちらをじっと見つめている…様に見える。

俺はイルカに近寄る。

俺の後ろを同僚達が着いてくる。

イルカの目の前に着いた。

するとイルカがいきなり日本語を話し始めた。

『えーっと、あなた達は何者ですか?何故ここに居るのですか?』

代表して俺が答える。

「え・・・っと・・俺達は日本からハワイに来て、ホテルのエレベーターに乗ったらいきなりここに来たみたいなのだけれど、早く帰りたい。どうしたら帰る事が出来るか教えて欲しい。」

「はわい?えれべたー?よく分からないけれど、ここは“浦島太郎”さんが再び来た時の待ち合わせ場所なのですが。」

「おい!裏縞!お前のせいかよ!」

「俺は何もしていないぞ。」

「裏縞さん、私達だけでも帰していただけないでしょうか。」

「帰すって、俺も何が何だかわからないし・・・」

『ウラシマさんって“浦島太郎”さんですか?』

「発音は同じ“ウラシマタロウ”だが字が全く違う。人違いだ。早く帰りたい。」

『やはりあなたは“浦島太郎”様なのですね。』

「俺は“浦島太郎”じゃない!“裏縞多良”だ!」

『ですから“ウラシマタロウ”様ですよね?』

「人違いだ!」

『後ろの御3方はお帰りなさっても問題ありません。』

とイルカが言った瞬間、同僚の3人が光って消えた。

俺だけ拉致られた!

「俺も帰りたいんだけど・・・ダメかな?」

『ここに来たという事は竜宮城へ行きたいという意思がお有りだという事ですので、一旦竜宮城へ来ていただけなければなりません。』

「ちなみに竜宮城へはどのくらい時間がかかるの?」

『半日です。』

「ここの時間ではなく地上での時間だけれど・・・」

『地上では約1年ですね。』

とんでもない事をサラッと言ってのける糞イルカ。

「今直ぐ帰りたい。そんな“超”時間拉致られても困る。」

『乙姫様から「“浦島太郎”さんは必ず私の所へ連れて来るように。」と厳命されておりますので。』

これは地上では俺が行方不明になって、死亡扱いになってしまうな。

地上に帰った所で1年以上時間が経ってしまったら・・・あれ?

「ところで竜宮城へ行って乙姫様に会って、最短で地上に帰るとしたら、結局地上ではどのくらい時間が経ってしまうんだ?」

『えーっと・・・この地に着いてからですと7年程ですね。』

ブフォ!

「もう2度と地上に帰る事出来ねーじゃねーか!」

『いえ、帰れますよ。わたくしめがきちんとお送りいたします。』

「送るって、どこにだよ。」

『四角い箱の中ですが』

エレベーターか棺桶か・・・。

ホテルが残っていたら良いが無くなっていたらどうなってしまうんだ?

別の意味で興味が湧いてきた。

「何が何でも竜宮城行きは決定なんだな?」

『左様でございます。』

「どのように移動するんだ?」

『わたくしめがこの空間ごと移動しますのであなた様は、ご自由に寛いでいてくださいませ。』

仕方がない。もう巻き込まれてしまっては諦めるしかない。

いわゆる現実世界の中の異世界に転移したと思って、ラノベの主人公?として生きていくしかないか。

「じゃぁ、り・・・」

“竜宮城”と言おうとした時、後ろから同僚の針田さんの声がした。

「あの・・裏縞さん私も連れて行ってはくれないでしょうか。」

なんと針田さんが俺と一緒に行きたいと言って来た。

「あの時、地上では14日経っていて大騒ぎになっていました。そして行方不明の裏縞さんの捜索で、警察やらマスコミやらに1年以上も関わってしまい、落ち着いた生活が出来なくなってしまって、SNSとかでも叩かれたりするのも嫌になり、もうあっちの世界での生活を考えるのが億劫になってしまいました。いっその事裏縞さんと一緒になりたい思って、ハワイのあのホテルのエレベータに乗り、20階を押したら再びここに着く事が出来ました」

「え?もう1年?・・・という事だけど、イルカさん良いかな?」

『ええ、かまいません。』

「では竜宮城へお願いします。」

『かしこまりました・』


移動中針田さんに地上との時間異常経過に関して話をした。

「竜宮城まで地上時間で1年程・・・もう2年ね。もし帰国するなら最短で7年経過してしまうのですね・・・」

「もう地上に戻っても俺達の居場所が無いと思って良い。俺はもう竜宮城のある国に骨を埋める覚悟で移住するつもりだ。」

「私もそのつもりでいます。よろしくお願いします。」

「まずは乙姫様と会う事が第一だな。」

「そうですね。」

「でも地上に残して来た母ちゃんは心配だなー。俺、母子家庭の一人っ子だったしなー。」


絶対カメを助けるものかと決意していても、拉致られてしまった。

俺に“たろう(多良)”なんて名前を付けた母ちゃんを恨む!マジで拉致られたじゃねーか。


ドーム内の地面の砂は動いてはいないが、ドーム状の外側の景色は結構な速さで移動している。

ここは地球のはずだが、この速度で1年・・・半刻?どっち?

「案外異世界なのかもしれないな。」

思わず呟いた。

「裏縞さんは異世界物とか読むのですか?」

「割と読んでいる方じゃないかな。」

「私も結構読む方ですが、実際こう巻き込まれるなんて思っていませんでした。何かチートとかあったりしたらうれしいな、なんてね。」

「案外有ったりしてね。例えば『ステータス・オープン』とかね、ははh・・・マジか!」

俺の目の前の空間にウインドウが現れた。

「え?本当?す・『ステータス・オープン』・・・えっ?えっ?」


「へ~、レベルって存在するんだ~、ほ~。」

「私、名前がカタカナ表記で“アカリ・ハリタ”になっている!職業が“事務”で職業レベル51だって。」

「俺は名前・・・“浦島太郎”・・・ってザけんな!名前が漢字表記って、俺雑魚じゃん!」

「職業はどうなっていますか?」

「えーっと職業は・・・“無職ひもニート”職業レベル-100・・・マイナスだって・・・。」

「他は?」

「メインレベル1、HP1、MP1だって、他は年齢18歳・・・え?おれ24だけど18になっている!」

「あ、私も23だけれど年齢18になっている。何コレ!メインレベルは1だけれどHP31,020、MP82,023だって。スキルも有るのね。」

「どんなスキル?」

「鑑定・アイテムボックス・料理・簿記・暗算・剣術・槍術・弓術・拳闘・柔術・空手・斥候・変装・全属性魔法だって。諸費魔力100分の1に魔法威力100倍の状態異常完全耐性も有る!やったー!チートだー!」

「事務職で戦闘?」

「別に戦う事無いんじゃないかな、竜宮城でしょ?」

「どうだかね。」


と、よくわからないステータス画面を見ながら移動し、竜宮城へと到着した俺達2人と1頭。


竜宮城は空気中とも水中とも言えない、何とも不思議な空間で、つぶれたドーム状になっていた。

ドームの外側はやはり海中だ。

俺達のすぐ横に浮いているイルカ。

一緒に乙姫様の居る天守閣へと向かう。


謁見の間へ入り乙姫様とご対面・・・

目の前には2年前までは毎日のように顔を合わせていた母ちゃんが座っていた。

「え?え?何コレ、え?」

「やっと来たのね多良ちゃん。」

「え?何?なんで母ちゃんが?」

「ふふふ、私は乙姫で、多良ちゃんは多良ちゃんでしょ。」

「ど、どう言う事?」



乙姫母ちゃんの話によると、

つまり俺はあの物語、浦島太郎の実子で、母ちゃんが出産の為、地上にやって来て俺を出産。

地上では本家“浦島太郎”の親戚筋にあたる“裏縞”家に頼み“裏縞”の姓を取得。

良い事がたくさんおきるようにと“多良(たろう)と名付けた。

母ちゃんが先に竜宮城へ帰ってしまったら、時間軸の違いで俺の方が先に年老いて死んでしまうから竜宮城へは一緒に連れて来たかったんだとさ。

この地に踏み入れた異世界人は漏れなく年齢上限18歳まで若返るそうだ。

なので10歳の子だとそのまま10歳、100歳の老人だと18歳の若者になる。

母ちゃんは俺がハワイ旅行へ行くと知り、ようやく一緒に竜宮城へ帰れると思い、一人で竜宮城へ帰宅。

その瞬間、今回起きた俺達の異空間への拉致現象が起こる。

俺を中心に半径500m以内に水深30m以深の海底が存在する時に発動する転移魔法が発動できたそうだ。

たまたま同僚が巻き込まれてしまったが、一旦元の世界へと強制退去させたが、針田さんは本人の意思で、この地へと再度入って来たので、その辺は問題無いそうだ。

そして俺達のステータスについて聞いたら、針田さんのステータスは、本来俺の数値の予定だったそうだが、何らかの影響で全て針田さんのステータスとして備わってしまったみたいだ。

そして、なんと、この世界にはモンスターが居るそうで、海中のダンジョンなる所で戦い、素材等を集め金銭を手に入れ、レベルも上がるそうだ。

そして何より、時間経過が遅く、36500日で1年、つまり1歳年をとるらしい。

この地での365日は、地上では730年・・・

1歳年をとるだけで73,000年

ここは地球ですらなかったよ。

そして俺はこれからこの竜宮城を拠点としてこの世界を冒険する。

これからは針田さ・・・アカリと一緒に冒険し、パワーレベリングをして、疲れたら竜宮城で寛いで再び冒険三昧だぜ。



1年後アカリのメインレベルは300を超え、俺はようやくメインレベルが10になった。

俺の成長超遅っそ!


いかがでしたか。

このような浦島太郎物語は携帯電話が世に出る前に一度考えたのを再考慮し投稿しました。


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