表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
首取り物語:北条・武田・上杉の草刈り場でザマァする  作者: 天のまにまに
★★北条氏康君の最後だゾ★★

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

80/262

戦後

 有難いことにやっと評価平均が☆4.5を超えてきました(^^♪

 始めたころは☆4.3辺りでしたが、これは主人公への拒絶反応と思っています。

 一番書きたかった戦場描写が評価されたのかな?

 作家冥利に尽きます。



 朝廷の官位の実態がわかりません。

 献金して直ぐに高位の官位を貰えるとは思えず。

 時の帝は、献金にはお厳しい方で……

 だいたいが「おじゃる言葉」もまともに使えないww

 問題があればご指摘くださいませm(__)m


 (ただ、既に書いてしまった筋書き自体は変えられません。がっちり組んでしまったので。後の作品の糧にさせてください)


 2008年1月15日:月間雑誌歴史好事家:新春特別号


【厩橋評定】


「関ケ原の戦いを決したのは、大胡政賢が率いていた外様を完全に掌握した小山における評定であった。


 その時、流れを作り出したのは言うまでもなく福島正則の一言であったが、その流れを決定的ものにした言葉は和田輝盛の一言、城を献上いたす、であった。


 しかしこの起源は和田輝盛の父である政盛が厩橋の評定にて……」




 1553年12月上旬

 上野国大胡城大広間濡れ縁

 長野政影



 負傷者の収容と北条方敗残兵への処置(士分は縄を打ち足軽雑兵には水と食料を持たせて解放)を済ませ、手が回らなかった部分は和田殿と厩橋の叔父上に任せた。

 桃ノ木川のほとりで包囲された北条の武者は殆ど全て、討ち果たすか捕らえた。

 危機はあったものの、殿が一番の目標とされた「北条方武者の一掃」は完全に果たされたのだ。

 ただ惜しむらくは北条長綱を取り逃がしたらしいことが確認されている。

 厩橋の城は北条の兵500が詰めていたが、厩橋勢500と那波から急行軍してきた真田殿の1500にて囲っている所へ、槍の穂先に氏康の首を刺した兵が来るのを見て開城した。

 本陣には宿老の大道寺と共に、影武者らしき者が枕を並べて自刃していた。

 上泉の守備隊が上げた首級とどちらが本物かはどうでもよい。

 「これがそうだ」と言えばそうなる、

 と、殿は仰った。

 これから素ッ破が総出で坂東一帯に北条氏康討死、北条軍壊滅といった流言を流すのであろう。



 夜になり大胡城に帰った皆は酒に突撃していったが、いつも決まって一番槍をつける勇者の姿はそこになかった。

 宴が終戦を迎え、討ち死にした者がごろごろしている大広間の濡れ縁で、ひっそりと月を見ている殿と後藤殿。


「殿はご存じであったのですな。

 官兵衛が慶の生き別れの兄で慶に再会したとき士分にはならず、ずっと見守って行くと。

 そこで何があったのか慶は語ってくれなかった」


「うん。

 官兵衛さんは「自分は柄じゃない」と、侍にはならなかった。

 その方が気楽だと。

 でも自分の生きる価値を妹とその連れ合いであるお仁王さんを支えるということに見出したんだよね」


「なぜ??儂のような者にくっついておらんでも、十分実力で働けたであろうに!そうであれば死なずに済んだであろうに! 」


「そうだね。

 でも人間、目立ちたい立身出世したい人だけじゃないみたいだね。

 人生の意義は自分で決めるものだから。官兵衛さんにとっての人生の意義はお仁王さんが勇名を轟かせ、お慶さんと子供の所へ笑顔で帰ること。ただそれだけだったみたい」


 お互いに顔を見ず、ぼんやりと月を見つめている。


「儂はどうすればいいんかの?

 殿。今までのように慶に接することができぬ。

 戦働きも官兵衛の助けあってのこと。

 儂では部隊を率いることは出来ぬ」


「口で言うのは簡単なので気が引けるけど……

 お慶さんに今の自分の正直な気持ちを洗いざらい話して、相手にもすべてを言葉にしてもらうのが一番だと思うよ。 

 後は……」


 殿が後藤殿の顔を覗き込み、ニッコリして仰った。


 「あんなに可愛い子ばかりなんだから、あの子たちに囲まれるだけで幸せなんじゃない?

 それを守るために生きる。

 あとは具体的にどうするかは自分で考えるしかないよ。

 大丈夫。

 お仁王さんは強い人だから。だからみんなが頼りにしてるよ。

 武士も領民もお慶さんも子供たちも」


「……」


 何も言わなくなった後藤殿に、側仕えに持ってこさせた搔い巻きを肩から掛けて、殿はその場から立ち去った。




 数日後。

 殿が厩橋城で開催された西上野国衆の会合から帰ってきた時、東雲殿が悲鳴にも似た声で殿に泣きついた。


「殿~。あの後藤殿を何とかしてくだされ」


「どしたの?しのっち」


「3日前からずっと某の部屋に籠って、軍学を教えてくれと言って帰らぬのです!

 そして……これを付けたら頭がよくなるのか?

 と、某の大事な付け髭を奪い、それを付けながら軍学を聞くのです!もういい加減にしてくだされ。

 あの髭は、髭は……おかしゅうて涙が……」


「とりま。

 次はこれちゃんから隊の統率法とかを聞いてもらいましょ~。

 やる気の出たことはいいこと!」


 今まで全く諦めていた「頭を使うこと」を始めた後藤殿に、これより先、皆が振り回され続けたのは言うまでもない。




 1553年12月上旬

 厩橋城

 和田政盛



 北条との決戦が大胡勢の大勝利に終わり、それに呼応するかのように武田が退いた。

 どうやら兵糧と銭が尽きたらしい。

 政賢殿が何やら策を張り巡らし、その効果が表れたとのこと。


 それを受けて本日、西上野国衆の今後を決める大事な評定が行われている。

 儂は弱小国衆だからな。話がどう転ぼうとそれについていくしかない。

 ずっと聞くだけの役に徹していた。


「いままで十有余年に渡り、儂ら西上野に仇なしてきた北条は大胡殿の鉄槌によって完膚なきまでに叩き潰された。

 これで北条は四方八方から攻められ、胡散霧消していくであろう。

 それでじゃ」


 代々の旗頭である箕輪長野家の業政殿が演説しておる。


「これから関東管領殿に再度平井へお戻りいただき支配していただくか。それとも別の方策を採るか、それを決めたいと思うが如何か? 」


 誰も口火を切らぬ。

 それはそうであろうな。

 あの阿呆管領にまた無茶な下命をされたい者などどこに居る?

 じゃが、それを切り出した者は不忠者の烙印を押される。

 決して消えない烙印じゃな。


「某はお帰り願わなくてもよかろうかと思いまする」


 大胡殿が切り出したか。

 政賢殿以外にそれを言う資格のある者は居まい。

 これで大胡殿は謀反人として歴史に残る。

 まあ、北条の奴らも似たようなもんじゃが、古河公方を担いで正当性を主張した。

 じゃが今回は全くの私欲と取られても仕方ない。


「しかし、それでは大胡殿の名に消えぬ傷が付こうに」


 業政殿が一応じゃろうが念を押した。

 皆、大胡殿に借りが出来たの。


「そのことでありまするが、ようやっと某の外交僧が京の都から帰ってまいりまして、これを……」


 大胡殿は後ろに控えていた大男の側仕えに合図を送り、業政殿へ菊の御紋(?)の入った文箱を渡した。

 目を通すうちに眼を見開き、うめくような声が漏れた。


「これ……は、密勅であろうか??? 」


「はい。そう受け取っても良かろうかと」


「先に関白左大臣となられた藤原の長者、近衛晴嗣はるつぐ様、いや前久さきひさ様がこの上野に下向され、坂東の乱れを正していかれる。

 その露払いをせよと! 」


「そのようなことが出来るのか? 」

「将軍家は?関東管領の立場は如何するのじゃ? 」

「憲当殿が黙っては居るまい」


 皆が口々に疑義を口にする。


「故に、密勅でござる。

 しかし、噂は流れるもの。

 そしてまさか関白殿下の目の前で某らに無体はすまい。

 そう考え申した。

 寧ろ無体を働いていただくのが狙い」


 殆ど、官位などを無視している。

 それは朝廷の権威を自らが否定するにも近い。

 よくぞこのような勅が下りたものよ。


「この際、密勅の有無は関係ありませぬ。

 要は関東管領には関白殿の前で無様に恥を晒してほしいということ。

 それを理由に越後にでも追い出す。

 一番良いのは関白殿下に朽木谷にでも連れて行っていただき、そこで将軍家をお支えしてもらうことですな」


 皆が思わず失笑を漏らす。

 どちらも既にその実力が、権威に対して甚だしく劣っている。

 それが纏まって三好殿と戦っている姿を思い浮かべたのじゃろう。


「なるほど。では一度お戻りいただき、実権を剥奪。その上で関白様が下向されてから、我らが無体を働き先に手を出させる。

 されど、そう上手くいきますかな」


「あのお方の性格は皆もご存じであろう?

 自尊心ばかり強く、その権威を蔑ろにされて、はたしてどこまで耐えられるか。

 もうあのお方を抑える側近もあの安中の爺さんも居らぬのだぞ」


 そういうことか。

 どちらにせよ、この上野国には居られぬようにする訳だな。

 いまさら官位を貰ったところで、その序列で関東管領の兵部少輔ひょうぶしょうゆうを上回る官位を頂けるとは限らぬ。

 頂いたとしても、幕府の権威を否定するにはそれ相応の理由付けが必要だ。

 その理由、「あの阿呆が決定的に関東管領に相応しくない」という事実、これをでっち上げるのだ。


「相分かった。

 この意見に異議のある者はおられるか?

 ……なければ、この密勅を誰が受けたかじゃが、大胡殿、其方そなたが受けたと思うてよろしいか?」


「はい。

 そうならねば皆様にご迷惑が及ぶと思い、独断にて行動いたし申した」


「では、当たり前のことじゃが、この策を採るに当たって、西上野は一丸となる必要があろう。

 儂はもうバラバラに事を運ぶのは嫌じゃ。

 真面まとも、いや優れた主君が欲しいわ!

 今回の騒動で、もう懲りたわ!

 儂はここで大胡政賢殿に臣従を誓い申す!! 」


 やはりその流れだよな。

 ならば儂も乗らなくてはな。


「某も臣従いたす。

 臣従いたすからには和田城、大胡殿に差し上げまする! 」


 おおっ!!

 という、声が上がる。

 そして儂も儂もと、皆が続く。


「分かり申した。

 皆の心根、確と頂いた。

 これより西上野衆、一丸となってこの戦乱の世、渡っていきましょうぞ! 」


 おおおおおお!!!!

 皆の声が大広間に響く。

 先祖代々受け継いできた領地。

 もうおのが手にて守れんようになってきた。

 大胡の兵は精強。

 その秘密は、家臣が己が領地を持たぬことだ。

 その流れが起き始めているのかもしれぬな。

 儂にしては先読みした日和りじゃったが、上手くいきそうな気がしてきたわい。

 奥の千代の言う通り、和田城を放り出したのは正解じゃったわ。



「それでは、みなさ~ん。

 これから北条ちゃんを叩きますね~。

 北武蔵は頂きます!

 攻勢限界は松山城。

 今はそれ以上取っても統治できませ~ん。

 だから後の南は他の皆様にお任せいたします♪」


 ……なんだか、急に上手くいかなくなった気がする……


「あ、忘れてた。ついでに官位貰っておいた~。左中弁って偉いの? 」





 1554年2月上旬

 武蔵国松山城

 上泉秀胤



 関白様と同行された朝廷の勅使が、殿へ「正五位上・左中弁」の官位を授ける旨、申し渡した。


「左中弁殿。目出度きこと、麿も寿ことほぎさせていただきましょうぞ」


 関白、近衛前久様が仰られた。

 別に急かした訳ではないと言うが、1月も経たぬ内に、ここ北武蔵までお越しいただけた。

 どうやら殿の武勇に相当な入れ込みようとお見受けした。


「麿はいにしえの戦に興味がござって、孫子やら呉氏等を読んで過ごすのが何よりも楽しみでおじゃっての。

 先だって献金を頂いた際に、山科卿から左中弁殿の話を聞き、いつかは直接戦の話を聞こうと思っていたのでおじゃる。

 このような機会がこれほど早く訪れようとは誠に嬉しい限りでおじゃる」


「しかし、関白様がこのような鄙の地である東国にお越し遊ばすのは、またよう帝がお許しいただけましたな」


「それはじゃな。

 あの密勅じゃ。

 あれを表に出さぬように見張るのも麿の役目でおじゃっての。

 用が終わったならば直ぐに御焚き上げして、無かったものにせよとの御上のご意思じゃ。

 畏れ多くも帝に置かれましては左中弁殿の、世に明るき平和をもたらすというお志、内々ではあるが誠に頼りにしておられるようでおじゃる。

 頓にその武勇と共に商人を味方につけ、世を豊かにしていく旨を良しとしておると拝察いたしておるのじゃよ。

 帝は常日頃からお山ひえいざん御坊いっこうしゅうの強欲さを嘆かれておられまする。

 それに……左中弁殿は関東管領殿が、いや上杉憲当殿が邪魔なのではないかの?」


 よく分かっておいでだ。

 18にしてはモノが見える。

 やはり老獪な公家であるな。

 踊らされぬよう、某も気をつけねば。

 お傍に智円殿が居られるから、某の出番はないか。


「して、どのような手筈で動くのじゃな? 」


 既にノリノリであるらしい。

 顔が悪戯小僧のようである。


「はい。

 雪が解ければ、呼ばれなくともあの御仁は喜び勇んで上野国に戻ってきましょう。

 その時の上座は勿論関白殿下でありまするが、そのお傍に某が侍りまする。

 そこからあの御仁を見下ろしてやろうかと」


「これは愉快!

 元は7000石の国衆と聞き及んでおじゃるが、その家臣が上座とは!

 どのような顔をするか興味深いでおじゃるな」


 関白殿下はホホホホと、笏で口元を隠し上機嫌に笑っておられる。


「ということは、左中弁殿は上野にて大名として独立すると? 」


「そうなりまするな。

 この草刈り場では纏まって動かねば潰されるだけでござる。

 西上野の国衆の総意で相なりました」


「それは心強い。

 では、麿は其方の上野から世を照らす大胡左中弁の出世物語をじっくりと眺めさせて頂こうかの。

 楽しみでおじゃるのぅ」


 それを聞き、殿はニコニコしながら仰った。


「では~。

 関白ちゃんの仲間入りを祝して!

 だいえんかいのじかんだ~~~~~!!!! 」


 関白殿はその殿の豹変ぶりに目を白黒させていたが、すぐにまたノリノリになって酒を召しながら殿の武勇談に眼を輝かせるのだった。

 畏れ多いが、何か殿と似ている部分があるような気がしてきたが、気のせいか?



 なんか急展開ですが、作者の息が切れてしまい、次で北条編終了ですww


 その次は予告通り武田編となります。

 よろしくお付き合いくださいませ~♪



 作者の筆が至らないせいで、分かりずらかったかもしれませんが、あそこまで決戦で苦戦したのは「北条方の武士階級の殲滅」がこの作戦目標だったためです。

 そうでなければ鬼美濃としのちゃんを最初から突っ込ませていました。

 後ろから尻を蹴飛ばせば鉄砲を午前中に撃つことが出来、壊滅的打撃を与えられたはず。

 でもそれすると騎馬隊に流れ弾が当たり、結構な被害が……

 よって包囲殲滅できるように一旦大胡本隊が押されるシナリオを取ったのが政賢君でした。

 いわゆる「釣り野伏」ですか?

 時間が出来たら、もうちょっとわかりやすく改稿してみます。


 左中弁は太政官で武官ではないことは承知しております。

 ただ、ちょうどよい官位がないので「大胡が民が富み平和な世を願う」ことに焦点を当てている人物と帝が認識したという設定です……が、あまり自信ないなぁ。

 大体、太政官も武官も仕事ないのでは?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 左中弁だと参議の昇進資格も満たすから朝廷にとっても布石かな
[一言] とうとう関東で大名となったか! といっても、北は上杉、西は武田、南はまだ北条がいるし、なかなか厳しいね。
[一言] 関東管領を越後に追い出した後、軍神が攻めて来ないように、三国志の函谷関のような巨大な関塞を三国峠に築いて、越後との交通を封鎖できるようにしてはいかがでしょうか。 そうすれば戦力を対武田と対古…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ