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首取り物語:北条・武田・上杉の草刈り場でザマァする  作者: 天のまにまに
★★北条氏康君の最後だゾ★★

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長柄(地図あり)

 祝!!!

 皆様の声援の成果です。

 評価ポイント10000!!!

 皆さま、ありがと~ありがと~、げんきもりもり餡麺麭男、湿った顔を取り換えることが出来たかも!

 まさか2カ月経たずして総合評価17000超えとか。

 マジで?

 夢なら冷めないでぇえええ。

 いろいろとおかしい設定などがあると思いますが、皆さまの情報を作品に生かしていきたいと思います。

 これからももっと「楽しめる」作品をお送りしようと思います。

 体を休めながら気楽に頑張っていきますね。

 ご支援・ご指導の程よろしくお願いいたしますm(__)m



 やはり体力勝負の戦場いくさば

 いかに筋力と持久力を付けるかで決まっちゃいそう。

 いつかは大胡領にトレーニングジム!


 2006年10月5日:月刊マッスル

【効率よく筋肉を付けよう】


「……要は、必要なバランスで速筋と遅筋を付けることが必要です。

 

 そのために負荷のかけ方とセット数の調節が必要で……

 

 運動直後から30分の間に断裂した筋繊維は修復を開始しますが、その時が一番アミノ酸を必要としています。

 

 ですからできるだけ早めにアミノ酸を……」





 1553年12月1日午の刻(正午)

 上野国桃ノ木川の渡し東岸決戦場

 上泉秀胤



 今までがあまりにも殿の思惑通り進んで来たことで、殿が神の化身なのでは?といつの間にか無意識に思っていた。

 だが、厩橋渡河戦からこっち、策が外れることが続いている。

 これが「運」というものなのであろうか?


 「人事を尽くして天命を待つ」というが、人の越えられぬ世界というものがあるのを実感した。

 人には無謬むびゅうというものはないのだ。

 殿に言わせると「だから面白いんでしょ?人生も世界も♪ 」ということになる。

 政影殿の仰せの通り、殿は人生を楽しんでいらっしゃる。

 某もいつかはその様な心構えで生きることが出来るのであろうか?

 某は殿のお傍に侍る幸運に恵まれた。

 必ずやそのような人生を送る者になりたいとつくづく思った。


「遂に殴り合いかぁ。長柄、最近練習していなくなくなくない?」


「仰せの通り、訓練は昔に比べ減っておりまする。

 鉄砲と弩弓の訓練に時間を割いて居りますれば、以前に比べ2/3程度に」


「長柄操典は変えたよね。その訓練はもう行き届いてる? 」


 長柄操典とは、長柄での戦闘でどのように長柄を使い、陣形を動かすかを纏めた書である。

 某が纏め役となり、各中隊小隊の長を集めて合議して決めたものである。


「は。現在の分解式3間半長柄の実戦運用が館林にて実施できたことにより欠点と利点を整理できました。

 そのことを踏まえた訓練は十分に為されていると思っておりまする」


 館林で分かったことは、大きいものは以下の2点。


 一つ

 長ければ長いほど有利ではあるが、取り回しが非常に難しく、訓練に多くの時間を必要とする。

 ことに「しなり」が酷く、刺突はほとんど出来ない。

 狙いが定まらないのだ。


 二つ

 長ければ長いほど体力を消耗する。

 戦闘は精々半刻が限度。


 その対策としては、結局基礎体力を鍛える事。

 膂力りょりょくおもりの付いた短い棒にて付ける事。

 (ここは殿の知恵を貸していただいた。

 重しはだんべると言うそうだ。

 10回に分けて3回か5回、限界まで頑張る。

 たくさんやればよいというものではないらしい。

 それ専用の台も作った。

 その1刻前に豆の粉を牛の乳に混ぜて飲む。

 これを3日置きにやることとなった)


 しなりに慣れる事。

 刺突は諦める。

 前後の兵を素早く入れ替える訓練をすること。

 戦場では下に手負いの者が転がっているので、それを避けながらの戦いになる。

 これも想定した訓練をする。

 半刻を目安に勝敗を決する。

 そして、盾装備の者を割り当て、出来得る限り手負いを増やさないこと。

 最後に斬り込み隊が突入する訓練。


 このような手引きを作り、これに沿って練習をしてきた。


 しかし、その様なことは既にご自身で練兵場へ足繁く通われてご存じでいらっしゃるのに……

 そうか、やはり殿も不安で仕方ないのか。

 某に確認を取ることで人事を尽くしたことをご自身に言い聞かせている。

 改めて殿の人間らしさに触れた気がする。



「やっと始まったね。痺れを切らしちゃったぁ。まだまだ青いな、僕」


 殿が青いというのであれば、某は何色なのだろう?


「斜線陣で、あれくさんどろすアレクサンドロスやりたかったけど、こう狭くちゃ出来ないや。

 でもこの兵力差ではここの隘路で戦うしかないしね。次の機会にしよっと♪ 」


 あれくさんどろすとは、あの雁行の陣にて敵右翼を包囲殲滅したり、右翼に隠された精鋭が敵陣を突破したりする作戦を多用したという?

 そのための予備兵力としての最精兵の部隊が必要だが、それを遊ばす余裕がまだ大胡にはない。

 その余裕を作り出すにはこの隘路しか無かったのだが。

 (作者注:イッソスの戦いなどのマケドニア騎兵の事を言っているらしい)


「結局小手先の作戦は長柄のぶっ叩き合いでは使えないよね。

 押されて陣形を崩された方が負け。

 そこへ士分の切込みが来ることでお仕舞~い」


 今回のこちらの突入隊は後藤殿と佐竹殿が行う予定だ。

 これで先鋒の前線を食いちぎる。

 それにより形勢は逆転するはず。

 最前線には半数以上が出ているであろうから、突入時に出てくるであろう次鋒を崩した勢いで、本陣までの道を切り開く。

 そして最終的には父の率いる斬り込み隊が氏康の首を狙う。

 これが作戦の概要だ。


 それが上手くいくように色々な仕掛けをしたが、半数はこの強風で使えなくなった。


「やっぱ、大筒は使えそうもない?? シュン」


「ただいま、大至急使用可能にするための工夫が為されておりまするが……」


「砲兵隊には頑張ってもらいたいなぁ。がんば~~~」


 折角、決戦に間に合ったにもかかわらず、強風にて使用不可になっている大筒36門。

 使えれば、一気に勝敗は決したのだが。

 天は北条に味方しているのか?


「激突始まった! こっちもがんば~~~」


 殿が左手を口の横で声掛けの仕草をしながら、思いっきり手を振る。

 流石にこの風では応援の声は届かないだろう。


 横陣にて両軍が激突した。

 大胡の右翼は鉄砲隊として訓練が為されている是政隊。

 中軍が一番練度が低い(それでも普通の招集兵や雑兵とは比べ物にならない精兵)太田隊。

 左翼は全てにおいて最大の戦力である後藤隊。

 本陣には、大胡で招集された兵を大胡の脅威が薄れたため500を置いた。

 更には親衛隊150と斬り込み隊100。


 昨日の戦闘で後藤・是政・太田隊には1割程度の損害が出た。

 是政隊が一番多く80名程度が手負いとなった。

 現在420名に招集兵100を補充して、その者たちが弩弓や鉄砲・火縄の準備などに当たっている。


「やはり大胡の陣は薄いねぇ。

 長柄の列にして6列?

 北条は倍近い10列って、きっついなぁ」


「殿、北条方も3間半の長柄を使っております」


「おっ!? それは……らっき~。

 招集兵じゃあれ使いこなせないでしょ??

 何考えてるんでしょね。

 氏康ちゃん、ちゃんと訓練見てなかったのかなぁ」


 氏康殿は殿と同じく、人をよく見、その特性を生かした人事をするという。

 この長柄の特徴も、見れば一目瞭然であろうに。

 如何したのであろう?


「うんうん。いけるね。

 敵の兵、可愛そうにいつまでぶっ叩き合い出来るかなぁ。

 おっ?北条もそう来たか~」


 北条方は、1列目を引っ込め2列目が叩き合いに参加してきた。

 体力と取り回しが錬成できなかったために、苦肉の策として次々に長柄の列を変えていくことに訓練時間を集中させたのか?


「こうなると長期戦やばいね。

 押し負けちゃう。

 次の陣形にするたいみんぐを捉えるのが大変だぁ」


 太田隊は一番早く押し込まれるであろうし、わざと手を抜くように指示が出ている。


 それまではできる限り敵に手負いを出させるように立ち回る。

 以前使用した、隙間からの弩弓による狙撃。

 これを多用する。

 敵が同じ方法を使ってきたならば、盾持ちを前面に出す。

 このように、様々な動きをあらかじめ操練してきた。

 対抗試合も定期的にして、実戦経験の代わりに臨機応変に判断できる訓練もしてきた。

 それが今、効果を表しつつある。


「うん。いいねぇ。

 敵の手負いの方が多い。圧倒的じゃないか我が軍は! 」


 やはり左翼の後藤隊の長柄による打ち付けが強烈で、昏倒する敵兵が多く、その転がっている負傷兵が戦っている兵の邪魔をしている。

 そしてまたその動きの鈍った兵が叩き伏せられて転がっていくのだ。


「たねちゃん、開戦からどのくらいたった? 」


「は。四半刻の半分かと」


 最近やっと作ることができるようになった、硝子。

 この透明なもので作られた「砂時計」は非常に細かい時を刻んでくれる。

 6度ひっくり返すことで、おおよそ四半刻になるように調節されている。

 まだ本当に大まかであるが、これは画期的なものだ。

 硝子も板硝子しかできないため、砂が零れることもあるので整備が大変だ。


「そろそろ太田隊を後退させるべきなんだけど、こうも有利な状態で引くのもわざとらしいww。

 太田隊に伝令~。

 疲れた振りしてね~と。

 後退の時期は手旗で教えるね」


 手旗で大抵のことは連絡できるが、このような込み入っていて事前の打ち合わせのないことは使い番を走らせるしかない。

 まだ狭い戦場だからよいが、これが広い戦場で大規模な会戦となると、どうなるのであろうか?

 また課題が出てきた。

 心に書き留めよう。




 同日同刻

 太田隊戦闘現場

 太田資政



 なに?疲れた振りをせよと?これはまた無茶なことを。

 この糞忙しい時に目の前の敵に集中している兵に演技をせよってか??


 しかし、後退するにはそれしか無いのは確かじゃな。

 何かないか、良い方法は?

 兵がやる気を失くすこと……

 いや、演技なら出来るか??

 次の列にだけ「疲れた振りをせよ」と耳打ちする。

 だめじゃ、そこまで行けぬ。

 後ろの兵が邪魔だ。

 伝言しようものなら、伝言が伝わる頃には違う言葉になっている。


 !!

 何も疲れた振りでなくてもいいじゃねえか?

 目的は、気づかれないように後退することだ。

 よし!


「最後列に伝言。

 5間下がれ。

 その後順繰りに列ごとに後退。

 最前列は崩れてもよい」


 要は「本当に崩れさせ」それを余裕のある距離にて備え、崩れた兵が駆け込んでくることを予告しておけばよいのだ。

 その間に後退した連中に疲れさせる演技の命令を行き渡らせる。


 これでいけるんじゃね?

 まあ、これでいっちょやってみるか。

 駄目でも結局後退するし、本当に崩れてもその後の計画には対して差はねえ。

 問題はどれだけ手負いを減らせるかだ。


 2年も付き合っていると可愛くなるぜ。

 犬も兵もよぅ!

 これ終わったら、わしゃわしゃしてやるぜ。




 同日未の刻(午後1時)

 後藤隊後方

 後藤透徹



 待ちきれねぇ。

 昨日から、全く暴れてねぇんだから体が鈍る。

 思いっきり、この喧騒に浸かって体の奥に眠る獰猛なモノを解き放ちたい!


「旦那。そろそろです」


 官兵衛には感謝している。

 この獰猛なモノを解放することで、一番、敵に打撃を与えることの出来る時期を見計らってくれる。

 儂がそれを見計らえればいいんじゃが、この疼きを抑えるのに必死でそれどころじゃないんじゃ。

 最近、官兵衛に自分で潮時を見計らえるように練習してくれと言われるようになった。

 そんなことは官兵衛がいれば大丈夫じゃろうと言うと、笑って「ありがとう」と言われた。

 儂は官兵衛の指図が大好きじゃ。

 間違ったことは殆どないし、なんだか心地よい。

 大船に乗った気持ちとはこのことか?


「旦那の発進に備えて、鉄砲用意!二連弾装填したか? 」


「鉄砲は使えないんじゃなかったのか? 」


「いえいえ。

 旦那の前進に合わせるとしたら、風が弱くなった時に火蓋を切って一斉射撃できます。

 その後に旦那が飛び出して下せえ」


 わかったぞ。

 高々40丁位の兵ならば集中して配置出来て、一度くらいは一斉射撃が可能なのか。

 横1列ではなくて2列か。

 前列が膝立ちで射撃、後列が立射。

 合計80発の弾丸が飛んで、前の敵兵に穴を開ける。

 いいぞ、いける!


 今回は太田の奴が退いたことで出来る儂の隊との隙間に、敵の精兵が突っ込んできた時、これの出鼻を挫いてそのまま押し込んでいくことになる。


「来た!

 敵の数、200以上500未満。

 全て手槍。

 ばらばらで突っ込んでくる! 」


「火蓋を切る用意! まだまだ、まだまだ」


 なかなか風が収まらない。

 こちらの斬り込み隊100の後ろにいる鉄砲隊が使えるのと使えないのとでは、兵の損耗が段違いだ。

 20間

 15間

 10間

 5間

 ・

 ・

 ・


「今だ!! 斬り込み隊伏せ!! 」


 一斉に儂らがひざまずくとともに、頭のすぐ上を弾丸が飛んでいく。

 そして……


「野郎ども!!!! 野獣の時間だ!!!!!! 吠えろ! 敵を食いちぎれぇい!!!!!!!! 」


 この世とも思えぬ快感を覚えつつ、儂は吠えた!

 さあ、これから氏康の首を掴むまでは止まらぬ!!!!




 同日同刻

 是政隊後方

 佐竹義厚



 赤い左肩に触ってみる。

 何だか落ち着いてくるなぁ。

 殿さんのおまじないか?

 皆に触ってみるように促すと、やはり皆も落ち着くと言い合った。

 まあ、何でもいいさ。

 戦場に出る時は何のおまじないでも欲しいやな。

 それで安心できればいいのさ。


 後藤隊の方で鉄砲の射撃音が聞こえた。

 よくこの強風の中で射撃が出来るもんだなぁ。

 あの官兵衛さんが方法を考えたのか?

 教えてくれればいいのに、とも思ったけんど、ありゃ今思いついたんじゃろ?

 頭がよう廻るなあ。

 殿さんみたいじゃ。


「よし。みんな。前から敵の兵が来そうだから、来たら前進な。槍落とすんじゃあねえぞう」


 今回は盾を左手に持ち、右手には1間半の手槍を脇に掻い込んでいる。

 別にこれでどうするわけでもねえ。

 単なる脅しだと殿さんが言っておった。


 相手は今回、長柄ではなく手槍を持った士分らしい。

 必ず、手槍で足を突いてくると殿さんの見立てじゃ。

 じゃから、それを出来にくくすることと、一回でも多く敵に手槍を振り回させること。

 振り回したせいで出来た敵の隙を衝いて素早く近づいて胴田貫でぶっ叩く。

 全員一斉にやっちまったら、すぐにやられちまうよ。

 だから今回は号令係りの役目は重要だ。

 俺は無理じゃと言ったんだが、「これ決定事項。練習してね♪ 」と言われちまった。


 それからというもの、輜重の方の訓練は黒鍬衆として雇ったもんに任せて、殆ど鉄人隊の訓練になっちまった。

 もう本番だが、上手く行くかなぁ。


 来た!

 敵の士分が突撃してきた。

 儂ら200人は「くの字」に隊形を整え、回り込まれないように注意しながら前進を始めた。


「そりゃ!鬨の声じゃあああ」

「うおおおおおおお。首獲るぞおおおお。貴様ら大胡を舐めたらあかんぜぇ~~~~!!!!!! 」


 さあ、激突じゃ。




挿絵(By みてみん)

 運も実力の内、とはよく言いますよね。

 天候を味方につけるとしても、そううまくはいきませぬ。

 転生者(仮)とはいえ、年間の天気はわかるでしょうけど、ピンポイントは分かるかなぁ……

 無理でしょ~

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― 新着の感想 ―
[一言] 天の時は地の利に如かず、地の利は人の和に如かず。天地人というやつですが、ただ地元開催の合戦なのに天と地で負けてんじゃねえよと思わないでもない。
[一言] 長槍を突くのではなく、叩いて使うのだと知ったのは、「クレヨンしんちゃん 戦国アッパレ大合戦」でした。
[良い点] 昔、甲冑を来てパレードに参加。ニメータくらいの模造槍に兜に甲冑で、メインの殿様つうか、一番目立つ方の守り役ボランティア隊。二時間歩いて、ヘロヘロ。歩いてて、うちの祖父さん世代は南方で銃も…
感想一覧
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