暗闇
最近、ちょっと変な名前の女の子出しすぎた……
反省www
あとで変えるつもりでしたが、ご指摘を受け早々に変更。
前話の名前をおとなしくします。
これでも誰のパロディかわかった人には座布団一枚!
2006年8月18日:ある小学生のブログ記事
「今日は先生に【わたしの夢】というものを書けと言われた。
いろいろありすぎて困っちゃうけど、うちの犬の「くろごま」のお友達を沢山ほしいな。
友達100人できるといいな。
あ、犬だから101匹?
とにかくかわいいワンちゃんいっぱい飼ってもふもふしたい! 」
1553年11月末日申の刻(午後4時)
本隊決戦場南方半里桃ノ木川西岸
原虎胤
「伝令ですね。通りなさい」
副官の梨花が使い番を通す。
「申し上げます。
政賢様より至急。
一端南で待機。
できる限り残敵を本陣へ行かせないように。とのことです」
なぜだ?
もう目の前20町に、北条の本陣がある。
このまま進めば撃破できよう。
残敵など放っておけば良いものを。
何を考えておいでじゃ?
あの若い殿は。
不審に思っておると、梨花が儂に言うた。
「政賢様には何かお考えがおありなのでしょう」
「何を考えておるか、其方には分かるのか? 」
「わたくしの思いまするに、ちょうどよい、今よりも確実に北条の息の根を止める時機を見計らっていらっしゃるのかと存じます」
信じておるのじゃな、などと言いそうになったが、女子にそのようなことを言うものではない、と長い人生で教わった。
確かに今突っ込めば本陣に大打撃を与えられるが、上手く大胡の本隊が反撃に移れなければ容易に退かれてしまい、厩橋に引き籠られてしまう。
そうすれば長期戦となろう。
北条にも都合が悪いが、大胡領に残敵が徘徊する状況を放っておかれるような殿ではなかろう。
儂は物足りない気もしたが、あの若い殿も信虎様、晴信様に負けず劣らず戦場の風を読むこと大きな才があると感じた。
同日酉の刻(午後5時)
桃ノ木川西方1町北条氏康本陣
北条氏康
側仕えが持ってきた水に濡れた手拭いで顔を拭き、脂汗を落とす。
ぼやけていた頭が、少しはっきりしてきた。
もう逢魔が時だ。
周りが見えぬのはそのせいだ。
儂の意識がぼやけているのは気のせいだろう。
まだ判断力は鈍っておらぬ。
昼間の戦いは渡河前の飛砲により大損害を出しつつも、中央のみだが向こう岸に竹束と鉄矢盾で簡易な、兵30ほどが留まれる場所を作り上げた。
もう少し早くに作り上げられれば左右への広がりを作れたのだが、結局のところあの忌々しい螺旋形の鉄線が移動の邪魔をする。
とは言え無理をして左右に陣を広げたら、それこそ背水の陣じゃ。
それも最悪の陣形の背水じゃな。
とにかく夜になれば狙撃が止む。
その間に鉄線を切る。
あの棘棘もゆっくり作業すれば怪我をせずに済む。
棘のせいで時間が掛かったのだ。
大胡政賢、厄介な物を次々と作り出すものよ。
飛砲は役に立った。
那波の時に使われたという小さな壕が散見される陣(作者注:散兵戦に近いこと)。
普通に密集している陣よりも、遥かに多くの投石が必要であった。
狙いが定まるまで数度かかる。
狙いが合ったと思うと、敵は直ぐに移動する。
その繰り返しで、時間が過ぎ去っていく。
明日が本番じゃ。
もう飛砲は使えぬ。
が、戦場に左右の広がりが出る。
包囲殲滅も出来よう。
問題は中央を突破されること。
それから……
遊撃をしている(山中)修理亮の騎馬隊。
これの側撃が出来るか。
大胡への強襲でも良いが、騎馬での城攻めは困難。
先ほど上泉城へ向かった(笠原)信為から来た使い番によれば、城攻めを諦め大胡を突くために山野を駆けるという。
大胡まで高々1里半であるが、これだけ本城に近い、それも決戦をする準備をしていた場所じゃ。
多くの仕掛けがしてあろう。
ゆっくりとでもよい。
夜の行動は危険でもあるが、朝日が見える頃に大胡城前に出ていればこちらの勝利は揺るがぬ。
笠原の伊豆衆は山林での戦は慣れている。
この場所には8000の兵がいるが、これ以上頭数が居ても狭くて却って混乱するばかり。
特に明日の決戦場になるであろう、川から3町ほどの所にある物見櫓。
その手前は隘路(作者注:細い通行地帯のこと。作品の場合は左右を鉄線などで通行不能にした雑木林により200m程度に絞られた地帯)じゃ。
混乱は必至。
相手の出方にもよるが横陣しかできまい。
小手先勝負は無しの数任せの押し潰し。
隙間を作り、そこへ今日温存していた中央に配置する精鋭、玉縄衆に突っ込ませる。
そして敵の本陣を崩す。
飛砲もここに集中砲火じゃ。
ここにすべてを集約させる。
北条のすべてを!
同日戌の刻(午後7時)
桃ノ木川東岸1町掩体壕
官兵衛
「旦那。飯が来やしたぜ。まだ温かい」
「おう!それは有難し……ところでそろそろこの手枷を解いてくれぬか? 」
旦那は自分の両腕に嵌められた木で出来た枷を揺すって解けという仕草をする。
まあその気になったら軽く壊してしまう程度のもんだが、殿さんが「とりあえず今日は絶対、大人しくしていてね」と仰り、形ばかりの手枷をさせた。
殿の仰せがあったことを思い出す程度の簡単なものであるけどな。
ここまでしないと敵に突っ込みそうだからな。
手枷は自分から言い出したことだから良しとするか。
手枷を外すと目の前に置かれた、さっき中隊長直轄の隊員が笹で小分けにした10人分(!)の夕餉を抱え込んだ。
誰も(怖くて)取らないからゆっくり食いなよ。
「暖かい白飯はやはりうまいのぅ。体力気力が戻る」
いやいや、今日は旦那、動いていないって。
ああそうか、じっとしていたのでそれが気力を奪ったのか。
儘ならぬ人じゃなぁ。
「で、儂の出番はいつになる? 」
「まだ確とは決まっていないようですが、明日の最大の山場に突っ込むことは変わらないでしょう。
今ここ、南の陣に旦那がいるのは敵に察知されていないでしょうから、すごい衝撃になるんじゃないですかい? 」
おう!!!!
と、大声で気合を入れる旦那。
それ敵に聞こえるって。
夜は音が遠くまで聞こえる。
特に晴れていると普通の声が1町以上届いちまう。
ああ、この旦那、俺がいないとどうなっちまうんだ?
もっとしっかりしてくれよな。
「それにしても敵は今頃、糒でも食うているのかの。
可哀想じゃな。
最後の飯くらい旨いもんを食わせてやればよいものを」
それは無理だよ。
野戦で夜食えるのは糒程度。
美味いもん食うていると気が緩むし、悠々と炊事などしようものなら即座に付け込まれる。
こちらは正面に鉄線を張り、いつでも射撃できるものを交代で配置、飯を小量ずつ食わせているから可能なのだ。
明日は決戦となる。
そのための飯だと、きちんと意味を分からせて食わせている。
後方の佐竹の旦那の部隊が作ってくれた飯。
頭陀袋で引き摺って来ることになったが、文句は言えんな。
これがなければ、非常食で腰に結わえた袋の乾面皰を食べるしかない。
いくら麦に食い慣れていると言っても、このぱさぱさしたもんは食いたくない。
糒よりも早く溶けて旨いが、野を駆け回ると粉々になる。
まだまだ改良しないとな。
あとで殿さんに旦那を通して伝えよう。
たまには旦那も頭を使った勲功を立てさせたいやな。
「旦那。もう寝てください。
後は俺が指示出しますから。
旦那が起きていると夜襲にならねえ」
「そうだな。
単なる嫌がらせ射撃しかせぬのなら儂は要らんか。
では寝るぞ」
旦那は横になると自分で「ねんねんころり」を口ずさむと、最初の一言だけでころりと寝てしまった。
相変わらず寝つきがいいなぁ。
羨ましいくらい単純で……「いい奴」だなぁ。
俺は、四半刻ごとに一斉射撃、その間も時々単発で射撃をして敵を寝かせない作戦を実行するように指示を始めた。
同日亥の刻(午後10時)
上泉城と大胡城の間・山林地
疋田豊五郎
全くの暗闇。
山育ちでもなければ、歩くこともままならぬ。
それですら、ほぼ手探りでの移動であろう。
某も元は信濃の山間部の生まれ。
山には慣れている。
配下の元抜刀隊、今では斬り込み隊と呼ばれているが、いつでもどこへでも斬り込んでいけるよう、常に訓練場所を変えている。
ある時は桑畑、ある時は街中、さらには城の中。
殿におかれては、そのうち海でも行動できるようにと舟の上での戦闘も訓練させるようにとのお達し。
もちろん山・川・森・断崖などを夜間、風雨や雪の際にでも行動できるようにしている。
「れんじゃあ」というそうだ。
合言葉も「れんじゃあ」ねと言われたが、実行はしていない。
この山林には北条の兵、約1800と某の配下50。
それにサンカの者が10名、5人一組の斬り込み隊についている。
辺り一帯は何度も駆け抜けた土地だ。
この暗闇の中でも迷わず行動できる。
サンカが居なくても行けるかもしれぬ。
北条の連中が遠回りしかできないように色々な細工を施し、後ろから上泉守備隊が突出する振りなどして夜間行軍に引きずり込むことに成功した。
「来やしたぜ。旦那方」
サンカのトビの小さな声。
この暗闇では、はんどさいんは見えぬ。
折角、殿に教えていただいたのに使えぬのが残念だ。
北条方は幾つかの松明を持っているが、足元を照らす以外の役には立たない。
却ってこちらに居場所を知らせるだけだ。
そろそろ主役の攻撃が始まる。
「それ」に追い立てられ、下山しようとする者を切り伏せる。
ただそれだけだ。
「ぐぎゃあ。ば、バケモンじゃ~」
「う、腕がぁ、俺の腕がああああ」
「やめい!無闇に太刀を振り回すな! 」
「逃げろ~。下だ、明るい野に出るんだ~~」
太田殿の犬100匹以上が北西から吠え声一つさせず襲撃を開始した。
北条勢が通った沢には微かに犬が嗅げるくらいの僅かな臭いのする泥を撒いておいた。
その臭いを敵として判断、攻撃する。
沢を背にして夜間に吹く南西風の風上から臭ってくるものを目標とするように放したのだ。
そして北条方の兵は東西に張られた綱に足を引っかけ、某の足元へ転がってくる。
これに刀を突き刺すだけの作業だ。
暗闇で光らぬように太刀の刀身は黒く塗られているが、これでは意味がなさそうだな。
5人も斬ると刀身に脂が巻いてくるので、なるべく刺突で止めを刺す。
そこかしこに突き刺してある替えの太刀に持ち替え、さらに人斬りをする。
……このようなことをするために兵法を身に付けたのではないが。
またつまらぬものを斬ってしまった……
だが、お味方が死なぬのは良いことだ。
明くる日。12月1日辰の刻(午前7時)
大胡城西2町(200m)
笠原信為
地獄の夜が明けた。
犬の襲撃により混乱した配下は、南の平地に逃げようとして罠に嵌った。
南から聞こえてくる「人に斬られた音」
「叫び声」
「血飛沫が落ち葉にかかる音」
「倒れる音」
「呻き声」
・
・
・
音もなく襲ってくる犬の襲撃は恐怖そのものでしかなかった。
その襲撃から逃れ、南に逃れなかった者が今、儂の周りにいる50名程度の残兵だ。
雑木林が途切れ、大胡の町が見えてくる。
そこには……
5000人は居ようか?
手に手に長柄や長刀を持ち、鉄砲を構える兵、いや、「住民」がこちらを睨みつけていた。
中には女子供も多数いる。
「楓様命」と書かれた幟も数多ある。
儂らは力尽き、そこに崩れるように座り込んだ。
また、つまらぬパロディを書いてしまった……
遂に「もふ」実戦投入!
「猛犬連隊」を目指します!!
↑これ読んで、ググらずに笑える人は相当【漫画】(マンガではない)を読んでいる人。
もしこの作品を楽しいと思ってくだされば幸いですが、☆貰うともっと作者がもっと頑張っちゃいます!




