迂回(地図あり)
FN P90は出ません。
PGM へカートⅡも。
勿論M1897も!
2006年12月1日更新:さばげくらぶワンポイントレクチャー
「……以上のような特徴を持つ、スナイパーは以前は卑怯者として軽蔑されていましたが、今では戦闘になくてはならない存在となりました。
50口径弾は1つ数十円ですが、これで敵1人をほぼ確実に倒します。
対物ライフルの恐ろしさは飛んでいるヘリをも落とす威力があることです。
数十円で数億円のヘリが落とせるなんて……」
1553年11月末日夕刻
笠原信為
上泉城北門前
「笠原様。仕寄り準備が出来ました」
馬周りの者が伝えてきた。
上泉城。
あの上泉信綱の城だ。
綱成様を討ち取った剛の者と聞く。
兵法にも長けていると。
しかし城主は今、大胡の本陣に居ると確たる情報ではないが、知らせが来ている。
何れにせよ、儂のすることは、城に「ひと当て」することで敵の抵抗の具合を確かめ、その後2000で落とせそうなれば攻城に入る。
我攻めは気が進まぬが、この城は小さい。
詰めている兵も200程度であろう。
南東西を断崖に囲まれている堅城に見えるが、弱点の北側の防備が問題だ。
一重の空堀しかないが、鉄砲の充実している大胡兵が籠っているとなると、幅15間(30m)の空堀とそこに架かる橋を渡るのは困難だ。
そして……橋が上に折れ曲がって持ち上げられ通れないようになっている!
堀も薬研堀。
坂の斜面の底には逆茂木や鉄でできた棘が植えてある。
やはり無理か?
一当てすら危険やもしれぬ。
切り倒した木を渡し、そこを渡ることになるが、矢盾を持ちながら丸太の上を移動など出来はしない。
矢で何とか出来るものでもない。
火矢も届かぬ。
無理に仕寄って、無駄に兵を損なうなど以ての外。
既に儂ら伊豆衆は半数を失っておる。
ここで大損害を被ってはもう未来永劫、立ち直れぬであろう。
「仕寄りはあきらめる。
手筈通り、小数にて散開。
東を目指す。
大胡城大手門前にて集合。
素ッ破の奇襲に気をつけよ」
先ほどの物見の報告では2つの崖に縄が張り巡らされていたということだが、今回は鉄線を切る道具を用意してきた。
遅くとも慎重に進もう。
高々、50町だ。
林野での動きは伊豆で慣れている。
日が暮れるまでには大胡に到着するであろう。
しかしなぜであろう?
張り巡らされた綱のその多くが、南北ではなく東西に延びていたというが……
同日同刻
桃ノ木川東岸に架かる橋上
世田谷忠武
手負いになる兵があまりにも多い。
足軽頭なども狙い撃ちされている。
大胡を見習い、急遽、兜の前立てを外した。
もののふとしての矜持が許さんという者もいたが、そいつは真っ先にやられた。
武士は犬畜生になってでも生き残るのが本当の道であろう。
俺など、足軽の菅笠を被っている。
しかし、これでも指図する仕草をすれば、すぐに鉄砲の弾が近くに集中する。
糞! 身動きが取れぬ。
敵陣中央にわざと開けられていると思われた鉄の螺旋が途切れている橋の東端。
目の前に来るとそこには、無数の針金が縦横無尽に張り巡らされていた。
その高さ、わずか5寸(15cm)ほど。
だがこれでも足軽の前進にとっては、十分に障害となりえる。
今回はこの針金を切るために「金敷」と「玄翁(金槌)」「横に長い楔」を用意してきた。
これならば針金も切れる。
しかしこの切る作業をしていると、どうしても体を起こさねばならない。
そこを狙い撃ちされてしまう。
既に50近い兵が、あの橋の向こうで悶え苦しんでいる。
あの者たちを引っ張ってこようとすると、その者が撃たれる。
「なんと卑怯な! 」と、兵が叫ぶもこれが戦だ。
左右でも同じような光景が繰り広げられていた。
特に北が酷い。
どうやら弓での狙撃もあるらしい。
こちらよりも遥かに多くの死傷者が出ている。
それでも撤退はしないのは立派なのか?
このままでは無駄死にだ。
その時、やっと目の前にあった散在する敵の小さな陣地の半数が飛砲により沈黙した。
よし!これでうまく作業が出来るぞ。
と思ったのがいけなかった。
立ち上がりかけた俺の左肩を鉄砲の弾が貫いた。
「殿! 」
「もう駄目じゃ。早く後ろへ下がって殿の傷を何とかせねば! 」
「撤退して代わりの備えに任せようぞ」
くぅ。
せっかくこれからというのに。
領主の俺が居らねば、俺の備えは戦えん。
仕方のないことだ。
同日同刻同場所
大野忠治
上を大きな丸石が飛んでいく。
皆、ひやひやしながらも訓練の成果を発揮し、確実に狙いをつけてから、作業をしている北条兵や指図をしている武将を討ち倒していく。
一人に対して3人が集中して射撃するので、ほとんど外さない。
俺は2年前の館林の戦での働きにより、後藤隊から引き抜かれ是政隊へ移った。
鉄砲上手であったことが理由であったようだ。
その後、射撃の指揮を出来るかどうか、皆で試された時に一番の成績であったことから、分隊20名を任されるようになった。
只の百姓が出世をしたもんだ。
親はびっくりしていたが、やはり兵隊には否定的だった。
まあいいさ。ここ大胡では、百姓でも職人でも流れ者でも能力があればその機会を与えられる。
俺は行けるとこまで行くぜ。
次の射撃を準備している俺たちの掩体壕に、とうとう丸石が着弾した!
3名の者が重傷を負った。
呻いている負傷者を2人で両脇から支えながら後退する。
敵の矢は遠矢なのでまずは怖くない。
これが鉄砲を敵が撃ってくる戦場だと、もう死ぬのを覚悟しての撤退だろう。
そうはなりたくはないが。
斜め後ろの小隊長が守備する掩体壕まで退いた。
そこで指示を受けるつもりだ。
「小隊長。負傷3名。死者なし。まだいけます! 」
「そうか。ご苦労。次は右後ろの……グッゥ! 」
音もなく丸石が降り注いできた。
その丸石が小隊長の左肩に直撃。
きっと骨がバラバラだろう。
「し……指揮……ゴフッ」
小隊長が血を吐き倒れながら、呻きつつも俺を見る。
そうだ、まだまだいける!
おれは頷き、周りに聞こえるように大声を張り上げた。
「小隊長負傷!
指揮は第1分隊の大野が引き継ぐ!
引き続き射撃を続けよ!!!! 」
うちの小隊はまだまだ戦える!!
同日同刻
太田隊北雑木林内
鳥居蘭
「もう一度言ったら殺す」
詩歌が矢をつがえたまま、こんぱうんどぼうを洋一の右目に向けて今にも放とうとしている。
洋一が詩歌の養父、絵師楽絽様の悪口を言ったのだ。
「そんなに怒るなよ。あぶね~なぁ。わ~たよっ。もう悪口は言わね~から、それ下ろしな」
「洋一。お前は女子にモテると自分では言っておきながら、女の扱いが下手だな」
洋二はまだ真面だが、一般的に言うと身勝手な大人は嫌いだ。
私たち親のない子供を作り出しても平気でいる。
戦をするのは大人だ。
私たち2人は賢祥様に拾われてこなければ今頃は野垂れ死んでいた。
そこで小柄でいつも子供のような笑顔を絶やさない殿さまに出合った。
華蔵寺では自分の得意なものを選んで仕事にするように言われた。
私は迷わず弓を練習することにした。
父が誰かは知らないが、「猟師」であったことだけは知っている。
それを継ぐ訳ではないが、何かその……守りたいのだ。
この大胡を。
そこに住むみんなを。
名前を付けてくださったのは政賢様だ。
何処の養子にもならないと伝えると、幸せが舞い込んでくるようにと鳥居蘭という名前を付けてくださった。
楓様とご一緒させていただいた時、髪も整えてくださり今も同じ髪型だ。
ついんてえる、というらしい。
「これで金髪ならナイスなんだけどなぁ」と政賢様が仰られた。
詩香もその時、髪型を整えてもらい、後ろで三つ編みというもので長い髪を2つに束ねてくださった。
それから2人ともずっとその髪型だ。
「もう3人とも無駄口は叩かないで、仕事しましょう。風が弱くなってきたよ」
ここ、太田様の中隊の北側雑木林は、いくら風上とはいえ、この弓に番えることに特化した専用の、軽くて細い矢では正確な射撃は出来ない。
それでも当てる自信がある者だけがここにいる。
洋一洋二の二人組。
そして私と詩香。
殊に私たち二人の弓は今年14の私たちの体に合わせて弱くなっている。
それでも正確さでは誰にも負けないつもりだ。
「よ~し。
これから3射で終わりにしよ~。
給料分は働いたはずだ。
帰ったら焼酎入りの蕎麦茶を飲もうぜ~」
「おまえさんのは、蕎麦茶入り焼酎だろ? 飲みすぎるなよ」
これだから大人は!!
その後私たちは一人10人以上を射殺し、林を後にしたのだった。
遡ること半刻前
本隊激戦場より南方半里
原虎胤
倒し甲斐のない奴らじゃった。
横撃を食らわしたら一瞬で潰走した。
大胡の真似をして、騎馬だけの編成にしたのが拙かったのじゃろう。
防御が成っとらん。
騎馬は機動力が命じゃろうに。
そのまま向かってくるとか、まるで素人じゃ。
生け捕りにした者に聞くと、編成されてからまだ間もないということだから無理もないかの。
儂とてこの備えを任されて未だ1月。
普通ならば、とても運用など出来ぬ。
しかし、先にこの騎馬隊を練成していた者が優秀であった。
その者は今、儂の隣で副官をしておる。
「虎胤様。残敵はいかがなさいますか?」
「放っておけ。次の戦場が待っている。あと何刻かかるか……」
「四半刻で敵本隊の右翼に出られます」
冬木梨花という17の女子がその副官じゃ。
華蔵寺公園出身で武器周旋方の冬木殿の養子ということだ。
儂が舌を巻くくらい手際が良い。
戦はどれだけ正確に指令が出せるかで決まる。
その統制を見事に取っていく。
更には数にも明るい。
この地形は全て距離や地形まで頭の中で諳んじることが出来るという。
女子にしておくのは勿体ない、と言うたら、
「ここ大胡では漢も女子も関係ございませぬ。それを出来る者がその仕事をする、これが掟です」
と凛々しい顔で言いおった。
なるほど。
こういった若者を華蔵寺にて育成しておるのか。
頼もしいぞ。
浄土宗の教え通り、衆上皆平らかであるべき。
やはりここが儂の居場所かのう?
浄土宗について。
作品には出さないつもりですが、大胡一帯はもともと浄土宗が多く信心されておりました。
浄土宗の概念は現在の物と法然上人の教えとはかなり違うようです。
ですが、ここではストーリーをより面白くするように、「専従念仏」だけでなく「善行を施すこと」も極楽往生の道ということにしました。
仏教関係者の方がおられましたら申し訳ございません。
何度も申しますが、フィクションでラノベでパラレルワールドものなのでご勘弁のほどを。




