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首取り物語:北条・武田・上杉の草刈り場でザマァする  作者: 天のまにまに
★★北条氏康君の最後だゾ★★

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漸減(地図あり)

 益々お茶目になっていく大胡家臣一同。



 作者は読者様の感想から気力とアイデア(!)を頂いております。

 ついでに誤字脱字、やらかし指摘も。

 ですので、どんどんご感想をお書きくださいませ~♪

 (べ、別にレビューを書いてほしいとかそんな事、言ってないんだからねっ!勘違いしないでよねっ!)



 2005年3月12日:ポケペディア


【張子房】

「秦末期から前漢初期の政治家・軍師。張良などと呼ばれることもある。


 蕭何、韓信と共に前漢の3傑ともいわれる。


 逸話話として鴻門の会が有名」


【諸葛孔明】

「中国後漢末期から三国時代の蜀漢の武将(軍師)・政治家。


 諸葛亮などとも言われる。


 三顧の礼、泣いて馬謖を斬るなどの逸話がある」





 1553年11月下旬

 上野国厩橋の町東方15町(1500m)

 上泉秀胤



 殿が本隊に合流する。


「殿~~~~~。よ”ぐぞごぶじで~~~!」


 後藤殿が殿に抱き着き、その鍾馗髭で殿の顔をゴシゴシと擦っている。

 皆が笑顔だ。

 ただ一人、東雲殿が不愉快そうだが、妬いているのだろうか。

 (作者注:妬いているのは確かだが、その立派な髭に妬いているのである!!)


「もうよしてよ~~イタイイタイ。

 だいじょぶだよ、伊勢ちゃんと親衛隊の子たちがついているから早々やられたりしないよん。

 で、たねちゃんお疲れ様~大変だったでしょ」


 某は、自分の不甲斐なさと後悔を語ろうとしたが、


「それ後ね。

 これからの話をしよう! 

 甲一号作戦は失敗!

 甲二号作戦始めるね。

 それでは解散……

 おっと、信号係さんに手旗信号忘れないように言ってね~」


 二号作戦は機動漸減作戦だ。

 今回は最初から手旗信号を使う。

 先ほどのような無様なことのないように、信号は徹底して確実に命令を伝えねばならない。


「じゃあ、みなさ~ん、できるだけ多くの【武者】を倒しましょ~!」


 各隊長はそれぞれの部隊へと戻っていった。

 殿の周りには、某と父、政影殿と信号係数名、使い番数名のみ。

 周りは親衛隊50、斬り込み隊100名が守備している。

 松林に囲まれているが、部隊の配備最西端だ。


「後藤隊配置につきました!」

「東雲隊配置につきました!」

「是政隊配置につきました!」

「太田隊配置につきました!」


 大胡勢の配備が完了する。


 先ほどから厩橋城から大きな破壊音がしている。

 北条勢が「かたぱると」の狙いを厩橋城に定め、河原の丸石を投げ込んでいる。

 そのため止む無く長野道安様の兵500は城を捨てた。


「おじじ様はどう?」


「厩橋の町の東端、渡し場・河岸で徹底抗戦するとのこと」


「いあいあ。

 それまだ言っているの?

 ヤメレと伝えて。

 無理せず氏康ちゃんに使者送って無血開城あんど町放棄。

 そうしないと乱取りされるよ。

 氏康ちゃんは厩橋の町が上げる収入が欲しいんだから、一時的に上げちゃえばいいのさっ!

 そう伝えてね。

 僕を信じてね、と」


 使い番が返事をして立ち去る。


「あ。忘れていた。

 次の使い番さ~ん。

 付けたしね。

 城の煙硝は燃やしちゃって、必ずだよ。

 いい子は真似しないこと、政賢ライダーとの約束だぞ!

 あ、やっぱ水かけるだけでいっか」


 ……どこまでを伝えればよくわからなかったようで、使い番は政影殿に確認していた。


「でわ~。作戦開始!本隊前進せよ!!」


 信号係が信号を送ったのを確認し、殿の斜め後ろに付き従う。

 反対側は父上だ。

 勿論殿は政影殿の背中の上。


 ここは厩橋の町から東2里で大胡へ通ずる高速道。

 煉瓦を敷き詰めた幅2間のあまり起伏のない平坦な道だ。

 刈り入れの済んだ田と、葉を摘まれた桑畑が散在する平地を貫くように敷かれている。

 桑畑は枝がしなりやすいうえ硬いため、兵の移動を阻害する。


 以前は細い村道だったが、大胡と上泉城から厩橋の町までを繋げる重要な道だ。

 すぐ南には道に沿うように旧利根川、北4町に東西に延びる松林。

 松林の下生えは冬に向かい大分枯れ始めている。

 その高速道上に本隊200は陣を張る。

 およそ2町西には厩橋の町に入る渡し場だ。


 北条の先陣が見えてきた。

 およそ1000から1500。

 弓兵と大将を中心に、200程度の備えに分かれ、魚鱗に陣を組みつつ前進してくる。

 

 こちらが政賢様の本陣と認識したらしい。

 道の上を南東に向かって接近してきた。

 次鋒がこちらの退路を断つためにそのまま東進していく。

 殿の本陣以外は幟を立てない。

 それにほぼ全員が合羽を纏っており、指揮する武者の兜はほとんど同じものを使っている。

 これがどの隊かの判別を困難にさせている。

 指揮官むしゃもできる限り合羽についている頭巾を被るので、戦闘時に脱ぐ以外は全く判別できない。

 殿はそのうち全員同じ装備をさせるというが……


 ただし絶対に納得しない者が一人。

 後藤殿だ。

 意地でも着ないと言う。

 殿も「それはいいねぇ。いっぱい目立っちゃって。その代わりこれ着てね♪」と、特注の甲冑を見せた。

 胴には薄いが鉄板がついている。

「今度、ひだんけいしかく付けるね。どんな矢でも弾いちゃう~♪」

 大分重くなるが後藤殿なら大丈夫だろうと。

 一体、どういう身体をしているのだろうか?


「ほいじゃ、包囲される前に後退ね」


 本陣は紡錘状に変化し、いまだ包囲されていない東へ向かって移動開始する。

 高速道上を駆けるのだから非常に速く移動できるが、余裕を持っての移動だ。

 捕捉されない程度の速さで後退する。

 遠矢が西の先鋒から撃たれ始める。

 それを親衛隊が切り落としつつ後退。

 敵も罠と判り切っている本陣の行動に慎重についてくる。

 

 敵先鋒が河岸を通り過ぎた直後、南の対岸から先鋒右翼に鉄砲の3連射がされた。

 対岸に機動して隠れて布陣していた東雲隊からの100丁3連射が敵に降りかかった。

 ただし一斉射撃とは言い難い散発した射撃だ。

 東雲隊は鉄砲得手の狙撃手が多い。

 全体射撃は是政隊ほどではないが、最精鋭の斬首隊はここに配属されている。

 これが狙い撃ちした独立射撃をしているのだ。

 見る見るうちに馬上の武将と徒武者が倒されていく。

 北条先鋒は大幅に戦力を落としたであろう。


「お~け~お~け~。次は次鋒をやっちゃいましょ~♪」


 長蛇の列にならないように調節をしながら東へと駆ける。

 しばらくすると左手北の林から、鬨の声が聞こえてきた。

 あの大声は後藤殿。

 後藤隊600が地響きを立てる勢いで足踏みしている。

 下には予め細かい砂が撒かれている。

 元々砂が多くて耕地にできない土地で足踏みと同時に、格子に小さな杭を何本も付けたものを引き回す。

 途端に砂埃が巻き起こる。

 次鋒はその風下かざしもである南を行軍している。

 たちまち砂埃に包まれた。

 

 そこへ怒号を上げた後藤殿を先頭に大胡の最精鋭600が側撃した。

 土埃で目も開けられない状態で風上から襲ってくる猛者共を前にしては、たとえ味方が数千いたとしても、この突撃を防ぐこと、相当な戦上手でも出来まい。

 急なことゆえ指示などできぬ。

 その間に後藤殿は敵陣中央を叩き潰すであろう。

 次鋒1500は潰走した。


「じゃあ、そろそろお仁王ちゃんを殿軍しんがりにして本当に後退ね。あ~楽しかった♪」


 14000の兵を相手にした兵2200を率いる大将の言葉であろうか?

 まったく、この殿はこの世を楽しんでいらっしゃる。

 それでいてお味方の損害をほとんど出さない。

 敵の兵は……考えないでおこう。




 同日同刻

 厩橋の町南方5町

 長野道安



 政賢からの使い番が伝えてきた「無条件開城・町引き渡し」を躊躇ちゅうちょしつつも受け入れ、北条方へ使者を送り南方へ退避した。

 壊されていく自分の城を見て憤懣ふんまんやるかたない。

 しかし、またすぐに取り返す。

 北対岸で先ほど鉄砲の連射音を聞き、砂埃の中での戦いを目にした。

 政賢が上手くやったようだ。

 

 これ程の戦上手は見たことも聞いたこともない。

 そのうち日ノ本中が「張子房か諸葛孔明か?」と騒ぎ出すであろう。

 この後、政忠の討ち取られた、あの渡し場で決戦をする。

 その時まで儂は自分の城を南から睨みを利かせ、少しでも多くの北条の兵を拘束することだ。


「殿!血まみれの使い番が。大胡の使い番のようです!」


「通せ」


「政賢様からの重要な伝言!

 グフッ……

 お城の煙硝はすべて水を掛けて使えなくしてほしいとのこと、

 ウウ。

 くれぐれも……」


 ばたり、と倒れる。

 敵の物見にでも襲われたか。

 旧利根を必死で渡り、辿り着いたのであろう。

 体中の血が抜けたような青い顔をしている。


「すぐ介抱してやれ」


 しかし遅かった。

 すでに煙硝は敵の手に渡ったであろう。

 抜かったわ。

 まだ火薬の扱いに慣れていないなどとそのような言い訳、戦には通用せぬ。

 これは急いで政賢に知らせねば。

 儂は使い番を3人向かわせることとした。




 翌日

 厩橋城二の丸

 北条氏康



 側仕えを下がらせ、床にごろりと横になる。

 床几に座るのも辛い。

 横になったまま口に含んだ綿を出す。

 多分、益々頬がこけているであろう。


 しかし!

 最大の難所であった堅城厩橋城を手に入れた。

 もっと喜ばしいのは火薬を大量に手に入れたことだ。

 これで飛砲カタパルトの威力が数倍となろう。


 あとは大胡城を吹き飛ばす。

 いや、その前にまだ川があるか。

 その渡河にも使えるであろう。

 まだ儂にも運が残っている。

 大胡を潰せば一息つける。

 儂はどうなるかしれぬが、3年は死を秘せば内政も落ち着き長綱叔父に支えられ氏政もやっていけるだろう。

 儂の近くにただ一人立っている「影武者」にだれも寄せ付けないように指示し、少しばかり眠りについた。




 翌日午の刻(午前11時)

 氏康の影武者



 氏康様が死んだようにお眠りになっている。

 寝る前に寝具を用意し、お使いになる様に申し上げると幽鬼のように寝具に横になった。

 この刻間まで横になったまま動かない。

 

 心配になった俺は側仕えに声をかけ、侍医を呼んだ。

 まだ確と息がある。もう少し休ませるほうが良いとのこと。

 今日一日、休ませると大道寺殿が決断し、明日に向けての準備を差配し始めた。


「その方はこれから殿の影として本陣に居よ。儂も殿として扱う。そのむね、確と心得よ」


 相模の地侍の一人だった俺が北条100万石のお殿様!?

 勤まるもんじゃあねぇ。

 しかしこれまで2年間、ずっと傍に仕えてきた。

 仕草、癖、言葉使いをじっくりと真似る時間はあった。

 

 だが心根は真似できる訳がない。

 戦の本陣でじっと座っているなど出来るのか?

 なんとか引っ込んでいられないか?

 明日は決戦場まで進軍するという。

 馬も乗るらしい。

 見破られないでいられるか心配だが。

 もし見破られても俺のせいじゃねえぞ。





 大胡勢 備え戦力


 機動部隊

 総員2550


 後藤一番隊600

 是政二番隊600

 東雲三番隊300

 太田四番隊600

 佐竹鉄人隊200

 親衛隊100

 斬り込み隊100

 物見軽騎兵50



挿絵(By みてみん)

 西洋甲冑は弩弓のボルトの貫通を防ぐために避弾経始角を備え、弾性によって弾く造りになっているとか……

 そのうちそんな感じになると思います。


 影武者なんか出てきちゃった。

 隆慶一郎著「影武者徳川家康」が面白いです。

 風魔がちょっとお気に入り。

 あ、原作の方ね。


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― 新着の感想 ―
[一言] 長野道安は何をやってるんだ。。。 無意味に粘って敵に火薬与えるとは、アフォ過ぎる。
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