後備
「ま~さ~か~げ~く~~~~ん」
「如何なされました、殿」
「壺は割れたんじゃあなくて、キシ〇ア様が毎月新しいグ〇ジンに乗り換えてるんじゃないの~~~」
「そ、それは!なんと……ジ〇ンの軍事費を考えず……」
「きっとプレミアつけてから払い下げているんだよ」
「なるほど!フリマアプリで売るんですな。某も……」
お騒がせいたしました。
勝手にランキングは毎月リセットされるようですね。
もしよかったら何位になっているかお確かめください(^_-)-☆
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2005年2月1日:軍事雑誌【HQ】
「20世紀半ばには徴兵制度の概念は先進国であればあるほどなくなっている。
あらゆる面で軍事は高度技術の集合体となり、それを扱う者も素人に毛の生えたような人材では全く役に立たないからだ。
それゆえに高度な訓練をされた常時実戦を経験していると言える企業や団体に外注する予備役も生み出された。
しかし、そんな時代にも素人の存在価値は……」
1553年11月下旬
上野国箱田城
吉三
このお城から見る眺めは景色が良い。
西の櫓に物見として上がることもあるが、大利根の流れの向こうに榛名の山並みがとても綺麗だ。
このお城は利根川東岸の30間以上ある断崖絶壁の上にある。
お城の北西5町あたりにこの付近じゃあ珍しい浅瀬があり、河の流れが緩い。
よく俺も用事で向こう岸へその浅瀬を徒で渡る。
その徒渡しを守るのがこの箱田城だと教わった。
俺は、元は武蔵の百姓だ。
食えるものが無くなってこちらへ流れてきた。
普通じゃあそんな奴は野垂れ死ぬか、野盗に身を持ち崩す。
物乞いで生きられるほど甘くはない。
そのような坂東に「開墾したらその田畑をくれ、年貢は3年間なし。開墾する間の半年はお救い米が出る」などという噂が流れた。
馬鹿な嘘だ、と思ったが、それでも藁にも縋る気持ちで大胡に行ってみた。
そこでその話が本当だと知った。
あれよあれよという間に、箱田の南の新田を開拓する一団に入っていた。
それが5年前。
今では毎年年貢を納めても4石は自分の物になる。
荒越しは牛馬耕、草刈りは草刈り機のおかげで、重労働が遥かに楽だから実入りがいい。
畑の麦を売れば、6人は養える収入だ!
嫁も貰えた。
嫁が内職をすることとなり、益々家計が楽になった。
5年前逃散した者がこんなに裕福な暮らしを手に入れられるとは!
しかし、今年に入り、武蔵を地獄に落とした北条が、ここ大胡を狙って攻めてきた。
ここをまたあの地獄に変えるつもりか??!!
俺は後備の訓練を受けた。
受けた訓練はたった1月だったが、自分の家族、そしてこの豊かになった生活をまた地獄に追い落とすために攻めてくる北条が許せねぇ。
この箱田城はあまり危険ではないが重要な城だと、信州から移住してきたお侍に聞いた。
だがいつ何時、襲われるか分からねぇ。
今日も鉄砲に弾を込める訓練「だけ」を黙々とする。
上泉城
庄吉
ここ上泉城は最後の砦だ。
ここを抜かれれば、俺の故郷、大胡だ。
昔からうちの一族が汗水垂らして小さな谷合に溜め池を作って水田を作り、稲を植えてきた。
年貢を納めて残った米も、村長という立場上無駄使いせずにいざという時の種籾として取っておく。
なるべく村の皆が出挙(年利200%程度での種籾の貸付)の世話にならぬようにするのも村長の役目だ。
毎年かつかつで暮らしていた。
それが10年前、殿さんが変わり俺たちの生活が一変した。
1か月もしないうちにその殿さんが、うちの集落に巡回と称してやってきた。
でっけえお侍に付き添われて、なんだかちっせえ童がひゅるひゅると回りながら遊ぶような態度でこう言った。
「みんな~。
最初がつらくて段々良くなるのが本当の正しい道だよん。
最初からうまくいく方法はう~そ~!
だから3年辛抱してね。
石の上にも3年!
3年後には米も2倍以上採れるから安心してね~」
この小さいのが大胡のお殿様か。
ほんとかよ?
と思ったが、村長をしている親父の庄兵衛は「庄屋」と名付けられた役目を申し渡され、武士扱いを受けるようになった。
その後の村の発展は目を見張るものであった。
本当に米が今までの倍は採れるようになり、田畑も2倍に広がった。
人も増え、村はこれからも大きくなるだろう。
そんな村を束ねるのは親父だ。
大変な役目だと思うのだが。
武士らしいことを一つもしていないと言って、武士の扱いを固辞しているのだ。
普段は苗字など恥ずかしくて名乗りたくないと言って名乗らないが、歴とした「荻窪」という苗字がある。
だから俺が今度の戦で武功を立てる。
武功を立てられなくてもいい。
この城をきちんと守り抜くことが自分の誉れだ。
荻窪の地をずっと耕してきた者として、ここを通す訳には行かぬ。
後ろには俺らの集落がある。
これを何としても守る。
これが次の村長である俺が、最初にやる仕事だ!
華蔵寺公園物資集積所
春
公園の周りの土地いっぱいに戦で使う物資が積み上げられている。
米俵を始めとした俵物、いろいろなものが詰まっている樽。
武具・矢・弓弦・弾薬の入った革製品。
これらを運びやすいよう人数が少なくて済むように、四角い板の上に載せてある。
これを大胡車に乗せるために、梃を使って持ち上げる。
そして南の那波城や東の厩橋城下へ荷として運ばれていく。
その差配を瀬川様と私がそこかしこを回り、帳面に書かれた数の物資を指示してこなしていく。
おおよその差配が済んで、瀬川様に一息つこうとお声を掛けていただき、休息所に入り座った。
本来ならば白湯でも入れて差し上げねばならぬところ。
しかし奥の竈では数名の女子衆が所狭しと、忙しなく昼餉の支度をしているため、気が引けるけど座ることにした。
「春殿。
もうほとんど任せても大丈夫なくらい仕事が板についてきたな。
さすが公園で育った娘じゃ。
儂の所へ嫁に来ないか?
息子が甲斐性なしで困っておっての」
通り土間の上がり框に瀬川様と間を置いて座っている私に声を掛けてくださった。
何ということをおっしゃる?
孤児の私が、それも誰の子かも判らぬ娘を歴とした武士の家の跡取り息子の嫁とは!
「あのな。
うちの殿様は身分など考えるお人かの?
そうであったら皆がこれほどまでに慕わんじゃろうて。
じゃから儂ら家臣もそうであらねばならぬ。
身分よりも才能・能力・努力じゃ。
これがない者は幾ら身分が高くとも要らぬわい。
それが大胡じゃないか?」
仰ることは十二分に分かるけど、まさか自分のこととなると「まさか?」ですね。
「お前さんが、その先鞭をつけなさるがよい。
儂に似た朴念仁の息子じゃが、きっと良い連れ合いになると請け合うぞ。
よく考えておいてくれい。儂は本気ぞ」
「……これから戦ですよ。そのようなことは……」
「戦の前じゃから言うたんじゃ。ちょうどよい機会じゃったからな。ふぉふぉふぉ」
どう対応すればよいか分からないけれど、今はとりあえず戦に勝つこと。
それが殿様に命を救われ、多くの人に育てられた私の恩返し。
私に出来ることは精一杯しようと、再度誓うのだった。
那波城
作造
米が泣いて止めた。
が、それを振り切って出てきた。
来年正月には子供が生まれる。
父無し児にする気かと必死で引き留められた。
だが武蔵をあのようにした北条がやってくる。
戦ばかりしやがって!
何のために戦するんだ?!
自分たちの欲のためだけで、多くの死人やかたわ者を出しているんじゃねえ!
だが大胡の殿様は「俺たちの生活」を守るための戦だとお触れを出した。
だから皆は安全なところに隠れていて、と。
その場所も安全な領地の東に用意してくれた。
米を始めとして新しい村のもんはそちらへ向かった。
だが俺は違う。
那波城のすぐ北は俺たちの新しい村・田畑がある。
苦土石灰や腐葉土を入れて、ようやっと稲や麦を植えられるようにまで整えたんだ。
もう3年だ。
今年の冬から牛馬の糞を入れて鋤き込められる。
これでとんでもなく多くの収穫が出来るそうだ。
その田畑を荒らしに来る北条からただ黙って逃げるだと??
俺には出来ねぇ。
去年から後備の訓練を受けてきた。
この那波城に配属され、ただ火薬を詰めるだけの役目だが、これで北条の奴らを皆殺しにしてやる!
隣にいる同じところに配属された同じ村の者。
こいつと一緒に村を絶対に守ってやる!
八斗島の渡し
蔵六
関宿からこっちに本拠を移した旦那。
運が悪かったな。
来た傍から舟を北条に持って行かれた。
まあ、聞くところによると関宿の船も、渡しに都合の良い舟は強引にこっちへ持って来られた。
俺も預けられているこの舟で、今、北条方の兵を南から北へと送っている。
「蔵六。蔵六」
夕刻になり、北岸にある船頭溜まりに旦那が顔を出した。
腕を引かれて外へ出ると、人気のない場所でこう言われた。
「蔵六。これから数日後、もし北で大きな音がし始めたら、川下の方へ一目散に舟を逃がしておくれ」
「?北条方の見張りがいますが。そう簡単には逃げられませんぜ」
「それは心配するなと聞きました。安心して移動してください」
なんだか見張りは大胡の手の者が倒してくれるらしい。
戦に巻き込まれるのは真っ平だ。
逃げられるのならそれはいいことだ。
だが何で旦那がそれを知っていて、他の奴らは知らねえんだ?
それを訊ねると、旦那はこう言った。
「これも保険料のうちだと、大胡のお役人が教えてくれました」
ああ、大胡はそこまで味方を守るのか。
これではどんどん味方する者が増えるな。
「どうやら大胡のお殿様は、3度目の坂東武者地獄をするおつもりらしい」
旦那がひそひそ声で言った。
坂東武者地獄
最近言われ始めた、那波城落城の時と館林城攻防戦の時の、北条方武者を坂東太郎(利根川)に追い詰め虐殺し、坂東太郎の水を血で赤く染めた戦のことだ。
この3度目が行われるかもしれぬということか。
ここに残る舟は大方沈められるんじゃろうな。
怖や怖や。
「殿、あと少しで歴史部門四半期1位と素ッ破より知らせが!」
「なんか領域展……じゃあなかった領土展開が早いねぇ」
「そういえばあの服は忍び装束のようでござるな」
「草でしょ、草!大体があんな黒い服着てたら、昼間目立ちすぎだよん」
「目立つことは良いことにござる。もっと大胡領に人を集めねば!」
樽って作るのが結構大変で……
この時代はのこぎりも貴重品。
大抵、釿や斧を使って丸太を角材板材とかにしています。
だから樽なんか簡単にはつくれにゃいはず……
でも……液体を運ぶのにどうすればいいのん?
勿論正史では室町時代から使っているのですがそんなにホイホイと職人がいるとは考えられず。
やはりスカウトしてくるしかないのか。
ほんとは、樽職人の倅が元帥になる設定もあったのですがww
(誰の事かわかる人います??(^_-)-☆)
田畑の収量は、表土の良し悪しによって決まると思うんです。
その表土ですが10年以上の月日をかけて作り上げていくとか……
3年では短すぎます。
でも、作品でそうしてしまうと味気ないものとなってしまいます。
ですから比較対象として、上野の一般田畑の表土と比較して2倍と考えます。
元々、浅間山などの影響で酸性土なので苦土石灰を撒くだけでも大分違いますから。




