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首取り物語:北条・武田・上杉の草刈り場でザマァする  作者: 天のまにまに
★★高度成長しちゃうゾ★★

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禁忌

 PV遂に100万超え!

 感謝しかありません。

 まさかこんなに読んでいただけるとは!!

 エタらないように少し休みながら書こうかな……

 あと2日くらいで原稿執筆の方は北条編が決着します。

 その後1週間くらい充電して再開します。

 でも投稿は予約してありますので、間隔はあかない・・・はず。



 私としてはソフトなベジタリアンになりたいのですが、なにせ貧乏人には厳しい門です。

 自分でお料理ができればいいのですが、できない理由があって……

 最近はベジのほうが体に良いという研究もその逆もあって何が何やら。

 気楽に肉少なめに魚多めにと思っているのですが……最近、魚が高い!!




 2003年5月5日:JBCTVお昼のワイドショー番組


「……事件現場からは以上です」


「〇〇さん、ありがとうございました。

 今日も連続爆破テロが起きました。

 今回は群〇県食肉市場関連施設です。

 先ほど完全菜食主義団体の過激派組織〇〇が犯行声明を出しました。」


「遂に国内12か所の食肉関連施設が停止したため、食肉の値段が20%上昇したそうですね」


「自分の主義主張を表明するのはいいですけど、他人にそれを押し付けることは迷惑この上ないですね」


「私も菜食主義者ですので気持ちはわからんでもないです。

 といっても、目の前においしそうな肉料理があるとついつい食べてしまうのですが……」


「日本の食肉文化の開放に尽力した大胡政賢もこれを見たら泣きますね、きっと……」




 1553年8月上旬

 上野国華蔵寺神仏習合道場

 智円



作麼生そもさん! 」

「説破! 」

「畜生を食すると地獄に落つると決めたのは誰か? 」

「釈尊なり」

「釈尊は肉を食さねば飢えて死ぬるときも食さぬのか」

「是。畜生道に落ちる事は死ぬより辛き事! 」


 こりゃダメだ、という顔を殿がなされ、引き下がった。

 先ほども赤城神社に来ている伊勢神宮の祭司とも話したが、有史以来、みかどが何度も殺生禁止令と肉食禁止令を出していることを挙げ、肉食や家畜の飼育に関する許可はできぬと申しておった。

 東国では比較的、肉食に関して大らかであるが、寺社は厳しいことを言う宗派もある。


 拙僧も肉食については否定的である。

 己自身も食う気にならぬ。

 しかし殿の言葉には一理あると思う。

 この道場前に集まっているサンカや河原者、無宿者、浮浪者などをおとしめているのは、主に「穢れた職業に就いているから」が理由である。

 牛馬の死骸処理、それに伴う革加工職人も囚人の世話や汚物処理、そのような皆が嫌がる仕事をしている者がなぜ卑しめられる?と殿から言われ、その仕事の上に自分の生活が成り立っていることに気付かされた。

 そしてその者たちを貶めていることに己が加担していることにも。

 殿の思惑はこうだ。

 少しでも食肉や牛馬の死骸への忌避を軽くして、それをきっかけとしてこれらの生きるために仕事をして、他の者の役に立っている者の地位を上げたい。

 その第一歩として殿に対して理解のある華蔵寺に集まる宗教関係者と折衝をしていたのであるが……

 全く話を聞いてもらえなかったが。


「やっぱり、難しいなぁ。

 1000年以上の歴史を変えるのは難しい。

 大体、僕も肉食自体は日本人に合っていないと思うからなぁ。

 自分がこんなだから推しが弱くなる」


「殿はご自分ではあまり肉は食しませぬな。お嫌いなのか? 」


「頭が受け付けないんで~す。身体は多分受け付けるけど、これ食べちゃうといろいろ問題が……とかね」


 よく分からないまま次の話へ移っていった。


「しょうがないや。

 次善の策。まずは牛乳と卵。

 これだけでも流通させよう。

 十分、鮮度を保つのと卵は加熱して食べるように指導してね。

 あとは革製品加工業者の育成補助金。

 それと比叡山とかは肉を食べる破戒僧が多いそうだからお布施かな。

 銭でほっぺをぶっ叩く! 」


 ここに集まった襤褸を着た河原者たちに、段々と皆の考えを変えていくことを誓い、殿は解散させた。


「この人たち見ても心動かさない人って宗教者なの?

 僕は認めたくないなぁ。

 何か代案出してから反対してよね!! 」


 あとは庭師や絵師、井戸掘り、猿楽・狂言者を贔屓ひいきにして、どんどん重用していこうなどと言いながら道場を後にした。




 1553年8月中旬

 上野国吾妻郡群馬鉄山

 宮代武蔵



 盛大な盆踊り会場だ。

 鉱山は収穫の祭りの代わりに、落盤などで死んだ者の霊と一緒に過ごす盆が、盛大な祭りとして行われる。

 筑前三池で流行り出した「炭坑節」なる歌を誰かが持ち込み、それが流行り出して、今では皆総出で櫓の周りで踊る。

 櫓の上には女子衆の中でも飛び切りの別嬪べっぴんで踊りの上手い者が踊る。

 大胡で家臣の方々が雅な舞を舞う練習をしていたことを見慣れていた俺にとっては、違う世界に来た心地だ。

 俺はこっちの方がいい。


「どうです? お城代様。

 お楽しみになられていますかい? 」


 俺の座っている桟敷さじきに鉱山奉行を兼ねている村長むらおさが銚子を持ってやってきた。

 俺に酌をしながらこの鉱山の様子を教えてくれる。


「この村はほんの10年前まで、なぁんにもない山村でした。

 山で取れるキノコや川魚などの乾物くらいしか売れるものがなかったんで。

 それが大胡のお殿様が磐梯屋さんを通して、鉄鉱石を掘る道具と鉱山に明るい人を貸してくんなさった。

 そこから一気に人が増え、今では5000人を超える大集落になりました。

 ありがたいことでごぜえます」


 やはりこのような山奥にも、政賢様の御威光が人々を明るく照らしているのだな。

 俺にも何かできないか??


村長むらおさ。何か困ったことはないか?けが人が多いとか。山賊が出るとか」


「う~ん、思いつきませぬなぁ……おお、あった! 」


「何に困っている? 某にできることか? 」


 村長は何か言い辛いことを言うように小さな声で、


「……女子……」


「ん?聞き取れなかった。今一度言ってくれ」


「女子が足りませぬっ!!

 男衆ばっかりで毎日、悶々としておりまするっ!!!!

 皆、それで喧嘩っ早くなり!!!! 争いが絶えませぬ~」


 そういうことか……

 それは鉱山で働く女子は少なくて当たり前か。

 よし、俺が何とかしよう!


 ……思いつかなかったら……白井の真田様にお伺いを立てよう……




 1553年8月下旬

 沼田城坂下

 鮎



 一度でいいから「あなた」と呼んでみたい。

 一昨年、おしの私をめとってくれたこの人に感謝の言葉を伝えたい。

 毎日、朝早く起き、外で声を出す練習をしている。

 でも、微かに「はい」「いいえ」位しかまだ声が出ない。

 人前でなければ何とかしゃべれるのだけど……

 そんな私でもいいと娶ってくれた茂左衛門さんをとても愛おしく思う。

 この気持ち、伝えたい。


 あの日。

 岩櫃いわびつのお殿様と沼田のお殿様との戦で、乱取りが行われ私が住んでいた村が襲われた。

 私は月のものが来たばかりの子供にもかかわらず慰み者にされた。

 怖かった。

 ただひたすら怖くて、痛みを感じないように物を考えないように、力の限り眼と耳を塞いで時の過ぎ去るのを待っていた。


 お城からやっとお侍が巡回を始めた時には、もう食べ物もなく泣く人もいなかった。

 村の人たちは茫然としながらも、また暮らしを元に戻すために黙々と動き出していた。

 でも、私は「声が出なくなっていた」。

 あまりにも固く口と耳目を塞いでいたから?


 そのうち、村の人から無視されるようになってきた。

 父母がいただけましだった。

 一応食べさせてもらったから。

 でも、その父母も亡くなって茫然としていた私に、声をかけてくれたのが茂左衛門さんだった。

「いっしょに頑張ろうな」

 何度となく励ましてくれ、

「だんだんと、ゆっくりと生きていこうな」

 そんな優しい言葉が私の胸と両眼から熱いものをあふれさせた。


 昨年、秋の刈り取りの時、大胡の殿様に沼田城が攻め落とされた。

 また戦かと思ったけど、戦はすぐに終わり1年間の年貢免除と今後の年貢4割を言われた。

 沼田様の時は5割が当たり前。

 時には6割7割取られていたし、乱取りされればすべてを持っていかれる。


 代官として沼田城に入られた矢沢様は大胡の殿様のお言いつけだと言って、冬の雪に閉ざされた時にも収入が入る仕事を作ってくださった。

 遠くから絹織物の問屋さんが来て機織り機を貸してくれ、その使い方を教えてくれる集まりを開いてくれた。

 女子衆には預けられた生糸でかすりの生地を織る仕事。

 男衆には炭焼きとその木炭屑を丸めて「炭団」や「練炭」にする仕事。

 来年には練炭を使う焜炉を作る工場こうばも作るそうだ。


「おお、これはよい出来じゃ!

 よう頑張ったのう」


 茂左衛門さんが畑に出ている時、問屋さんが私の織った反物を取りに来た。

 問屋さんは、1反(45m)で最低でも500文で買い取ってくださると言っていた。

 頑張れば2貫文くらいは奮発できると。

 2貫文と言ったら、米俵10俵は買えるそうだ。

 うちの田んぼで取れる米の半分だ。

 1年分の収入が20間の長さを織れば手に入る!

 これ頑張ったら、茂左衛門さんに喜んでくれるかな?

 感謝の気持ちを渡せるかな?

 そう思い、毎日毎晩懇切丁寧に織った。

 そして草木の汁を使って模様をつけてみた。


「これは売り物になるな。

 いい出来じゃ。

 今度2貫文を宿屋に取りに来なさい」


 うちにそんな大金は置いておけない。

 そう伝えたらお城に預けて置けることになっているから、お城のお役人様に伝えておくと言われた。

 これ、失敗していたらどうなるのか心配して聞いてみたけど、「その時は大胡の殿様が保険金を出してくれる」そうだ。

 だから安心して頑張りなさいと。


「次は最初から全部模様を入れてもらおうかな。

 そうすれば1反5貫文は出せるよ」


 目が回った。

 問屋さんが帰って少し後。

 茂左衛門さんが帰ってきた。


「……あなた。織物が2貫文で売れました。……今度新しい服を……」


 私はボロボロの服を纏っている茂左衛門さんに話しかけた。


「鮎! 鮎! もう一度言っておくれ!! 」


「2貫文で売れました」


「もっと!!!! 」


「今度着物を……」


 私は、気づいた。

 自分がしゃべっていることに!?

 それからその場に崩れ落ちるように座り込んだ私の肩を、優しく左衛門さんは抱きしめてくれた。


「大胡領になって幸せじゃなぁ」


 私もそう思った。

 夢であればずっと続いてほしい。

 夢でなくてもこの人と一緒に楽しみ悲しみを分け合って、一生を歩んでいきたいと思った。




 1553年9月上旬

 下総国関宿河岸

 蔵六



 亀のように鈍重でも地道に働くように、臆病でも安全に過ごせるようにと、親がつけてくれた名前を俺は気に入っている。

 だが!

 今回は失敗した!!

 俺が船頭をしている河船が座礁して船荷が水浸しになり、舟も使えなくなってしまった。

 船主はカンカンになり、荷主も怒り心頭だろうな……


 憂鬱な気持ちで、俺を雇っている両国屋の暖簾のれんを潜った。

 旦那は何処だろう?

 あそこか。

 荷主と話している。

 ん?

 笑顔だ……と??

 何かがおかしい。


「入っておいて正解じゃったなぁ」

「備えあれば憂いなしじゃな」

「毎月の保険料は高いがの。こういう時は本当に助かるわい」

「8割補償とは助かるわ。じゃが10割というものはないのか? 」

「あるんじゃが、べらぼうに保険料が高い」


 何の話をしているのだろう?

 そう思いたたずんでいると、俺を見つけた両国屋さんが話しかけてきた。


「お疲れじゃったな。

 まあ今回はしょうがない。

 洪水で大岩の位置が変わっていたのじゃ、仕方ない。

 こんな時のために保険というものに入っておいたから安心しておくれ」


 それは何なのか聞いてみると、


「今年になってから大胡様が始めた商売人用の約定でな。

 毎月保険料というものを支払うと、商品荷物船などの損害に合わせて銭を払ってくれるのですよ。

 ありがたいことです」


「でも大胡領でないと保険料が割り増しになるのが困りますな」


「こうなると八斗島に店を移す方が良いかもしれんですな」


 最近は、八斗島あっちも大分栄えてきているからな。

 地の利よりもいろいろな利便性があれば、あっちに本拠を移す店も今後増えるだろうな。



 ちょっと皆様を泣かせようとして、真面目な話が出てきてしまっていますがご勘弁を……

 こういうのを書きたかったので。

 政賢君も出ないし。

 次の回からだそうかな。

 そろそろ北条戦の前哨戦が始まると思います。

 乞うご期待。


 ちなみに作麼生+説破は

 こう言った使い方はしないと思います。

 もっと捻った答えを出すものと認識しております(^-^;



 肉食について禁止を言い出したのが誰かは知りませぬ。

 ですがこの作品ではこの当時の宗教関係者が非常に腐っていたことの一例として出して行きます。

 またちょっとしたフラグでもあるのですが。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 保険について、恐らく無尽や頼母子講のイメージがこの当時の商人達にはあったと思いますが、話の流れから大胡家が保険会社と言う立場で保険商品(この場合は海上保険)の販売するセールスマンである…
[一言]  温水の次亜塩素酸溶液を流しながら、卵殻表面の汚れをブラッシングで洗っても、鶏の卵巣や卵管にいるサルモネラ菌が卵の形成過程で内部に取り込まれる場合1万~2万個に1個の割合であるそうです。  …
[一言] 熊の胆なんかの薬膳として肉広めるのかと思ったら足踏みだった。 動物性タンパク質摂るなら虫や魚で摂ろう。 定番蜂の子やイナゴ、カブトの幼虫ならビーガンも寄ってこないだろうし。
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