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首取り物語:北条・武田・上杉の草刈り場でザマァする  作者: 天のまにまに
★★高度成長しちゃうゾ★★

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電撃

 電撃戦~!

 どうしても鉄山押さえたかったので。




 2002年6月22日発売PV:VRFPS:ブリッツクリーク


【シナリオバルバロッサ:ブレスト】


「ヴォルフフューラーより入電。

 各小隊、前進。

 ブレストを攻略後、作戦目標キエフに侵攻。

 敵主力は第26機械化軍団。KV-1数両がいる模様。

 これらを撃破、もしくは迂回しつつ作戦目的を遂行せよ。

 制限時間は120分。健闘を祈る……ザザッ」




 1552年9月下旬

 上野国沼田利根川河岸段丘

 茂左衛門



「どこも戦続きじゃ。来年も今年みちょうみたいに豊作というわけねえから、今のうちに早く刈り取って大事に仕舞っとくんべ」


 俺は立ち上がり腰を伸ばしながら、連れ合いのあゆに話しかけた。

 鮎は刈り取った稲をはざ掛けにしながら、無言で頷いた。

 鮎は殆ど口がきけねえ。

 おしというほどじゃねえが、皆から白い目で見られる。

 噂では南の大胡では唖でもかたちんばかたあしでも、皆生き生きと働き生活していて他のもんと同じ扱いを受けているという。

 俺たちもそんなところで住みたいやな。

 でもうちの殿さんは俺たち百姓の事なんざ、年貢を取るための生き物としか見ていねえ。

 どの殿さんも似たようなもんかのう。


 山の冬は早い。

 ここいらじゃ早稲わせの刈り取りが普通だ。

 この時期に日干しをできないとえれえ目に遭う。


 急に後ろで稲を干していたはずの鮎が俺の着物の裾を引っ張る。

 何かと思い後ろに振り返ると、東の丘の上にある沼田のお城の南に見慣れねえ旗がぎょうさん動いている。

 それが止んだ途端に、ばばばば~ん、という音が沼田の谷に木霊する。

 何じゃろ?

 その後に、ズド~~ン! という音が何度も聞こえ、鬨の声が聞こえた。

 俺も何度か戦に駆り出された事がある。

 沼田の城が攻められている!?

 えれえこっちゃ。

 早く逃げなくちゃ。

 でも、刈り取りがまだ半分残っている!

 まごまごしているうちにお城の騒ぎは収まったようだ。

 もう落ちたのか?

 それとも敵が撃退された?

 疑問に思っていると、丘の上から大きな声が聞こえた。


「沼田のみなさ~~~~ん。

 お元気ですかぁ~~~!?

 僕は大胡の政賢といいま~す。

 お仕事ごくろ~ちゃんです。

 そのまま手を止めずに聞いてね~。

 今日からこの沼田は大胡の領地となりました~~~。

 で、その御祝儀で

 今年の年貢は無~し~!

 今年の年貢は無~し~!

 大事なことなので2回言いました~。

 僕が沼田領から追い出されなければ、来年からずっと年貢は4割にするからね~~~!

 いっぱい穫ってみんなで豊かに暮らそ~ね~~!!!!

 で、毎年収穫祭で楽しも~ね~~~~!!!!!! 」


 なんか若者の声らしいな。

 大胡の殿様がなんでこんな北の外れに来るん?

 沼田の殿様はどうなったんじゃろ?

 何だかよう分からん。

 とりあえず村の集会する広場に行ってみんべえ。

 噂の大胡の殿様。

 ここも大胡のような極楽になるんか?

 少しワクワクしながら、鮎の手を取って歩き出した。




 同日1刻後

 沼田城本丸

 矢沢綱頼



 ほんの四半刻で落城した。

 城に着くまでにも峠に配置された関に数名の足軽が居たが、狙撃手がこんぱうんどぼうにて音もなく倒した。

 その後は誰にも不審がられずに北上した。

 領民はせっせと刈り入れに没頭し、その中には士分らしきもの者もいた。

 殆どの足軽は刈り取りに出ていた。

 城門まで到着後、さすがにこちらの侵攻に気付いたか、城詰めの者たちが城門を閉め、応戦の準備をするも、弓の弦すら張っていない。

 脅しのために300丁の鉄砲を3回に分け斉射した後、城門の破壊に荷駄で持ってきた800匁(3kg・西洋の6ポンド砲程度)の大筒4門を発砲、城門を破壊。

 抜刀隊100が突入。

 制圧した。


「沼田顕泰殿でござるな?関東管領様のご下令により、内乱を起こし北条方に通じた罪により捕縛いたす。

 大胡政賢様のお情けにより縄は打たぬ」


 儂が言うと、沼田殿は吠えた。


「何をぬかす!

 儂が北条に通じるなどあるか!?

 この越後に近い北の外れで孤立するような真似をする国衆など居るはずがないわ!! 」


「お主に放逐された左衛門三郎殿の証言と北条との密書が見つかっておる! 観念せい」


 もちろん偽の書状じゃ。

 まだ騒いでいる沼田殿を連れだした後で、殿にささやいた。



「これでよろしいでしょうか?

 この後の処理は? 」


 殿は大きく頷き、にっこりとして儂の顔を見つめた。


「うん。いいねぇ。

 これからね、つなちゃんがここ治めやすいように大見え切るから、その後は細々こまごまとしたこと頼むね~♪ 」


 そして今年の年貢免除と来年からの年貢4割を大声で宣言した。

 儂が一城の主か。

 兵も200預けられた。

 200丁の鉄砲付きだ。

 この堅城ならば10倍の敵が来ても支えられる。

 兵は1年後返さねばならぬから、すぐに雑兵を集め鉄砲の訓練をせねば。

 当分敵は来ないと殿の見立てだ。

 まずは内政重視で行こうと思った。




 1552年10月上旬

 上野国吾妻郡岩櫃山城

 宮代武蔵



 3年前元服した折、殿より苗字を名乗るように言われた。

 春日部村の出身だと言ったら、「近くに別の村とかある~? 」と尋ねられたので、北にある宮代の地名を挙げた。

 すると「それいいねぇ、それつけたら~~? 」とはしゃいで、ついでに諱も名付けていただけた。

 武蔵の国だから武蔵たけぞう

 なんだか安直な感じもするが、殿が名付けてくれたことに意味がある。

 誠勤に励み、必ずや殿のお役に立つ!


 そしてこんなにも早くその機会が来るとは。

 なんと18にして城代!?


「大胡ってさぁ、人材不足なんだよねぇ。

 だから忠誠心があって能力がある、今後主力となって働いてくれ、信頼できる有能な友達もいる。

 そんな条件を考えたら武蔵君しかいないってことになったので~す。ハイ」


 後藤様や東雲殿、是政殿がいるのでは?と思ったが、先回りされておっしゃられた。


「お仁王様と狐ちゃん、これちゃんはここで遊ばせる訳には行かないんだなぁ。

 主力を率いてもらわないと。だから、ここで武蔵君は統率・作戦・内政の訓練をしてね。

 たねちゃんが書いた手引き書があるから、それ使ってお勉強!カリカリ」


 ここには同期の親衛隊候補生12人が兵20名と共に配属される。

 あとは雑兵を集めるか徴兵だ。

 全ての権限が俺に委ねられている。

 同期の皆には相談はするが、最後の決断は俺がする。

 身震いすると同時に、これが最初の関門だと思った。

 大将軍に俺はなる!!





 1552年10月中旬

 上野国白井城(今の子持村)

 真田幸綱



「じゃあ、ゆっきー、北毛(群馬北部)は任せたね~。

 来年の刈り入れ済ませたら直ぐに那波に戻ってね。

 できるだけ早く。

 それと矢沢っちは大丈夫だと思うけど、岩櫃のあの子たちの面倒もヨロ」


 そういうと殿は護衛100を連れて大胡へと帰って行った。

 この白井の長尾家は当主が弟に闇討ちされ、先月御家断絶した。

 姻戚であった厩橋長尾家の一族から跡を継ぐ者を出したが、まだ幼いため実質上は儂が支配することとなった。

 この城は沼田の弟と、宮代の坊主を支援できる場所にある。

 沼田は北の要、対越後の最前線。

 弟にしか任せられぬと、殿の差配じゃ。

 岩櫃は昨年、城主斎藤憲広に大胡へ向かう荷駄を襲わせ、それを口実に沼田と同時期に一気に攻め落とした。

 ここは大胡の生命線の一つである草津鉱山(群馬鉄山)がある。

 奴にそこを知られた。

 昨年から交渉を続けていたがらちが明かず、今年になって北条との手打ちが済み、すぐさま侵攻に及んだのだ。


 殿の計画では、多分来年刈り入れ後、早いうちに北条との開戦となるとの見立て。

 まだ休戦は明けなくとも北条を追い詰めるという。

 既に北条は内政ががたがた、領国はあと一歩で崩壊するところまで来ているという。

 こちらからは仕掛けず、北条から戦端を開かせるとのこと。

 うまくいくだろうか。

 また松の間での円卓会議が開かれる。

 そこで策が練られるのであろう。

 儂は、その間に北部を「景虎が」攻めてきても殿の後詰まで落ちないような態勢整えるのが使命じゃ。

 頑張ろう。

 吾妻には多くの素ッ破がいる。

 これも糾合せねばな。




 1552年11月上旬

 大胡城松の間

 智円



 北毛は全て大胡の実質的な領国となった。

 その進撃の間に、北条勢は西上野を席巻。

 再び上杉憲当を追い出した。

 管領殿は這う這うの体で、雪が降る前に三国山脈を越えていった。

 長野をはじめとした西上野の国衆はまたもや狸寝入りを始めた。

 しかしこれは長く続くまい。


「さて~。第何回だっけ?円卓会議始めちゃいましょ~♪ 」


「殿。38回でござる」


 書記の政影殿が生真面目に答える。

 堅いところは拙僧と同じだ。

 秀胤殿も堅いがその分殿が3人分柔らかいので十分釣り合いが取れている。


「では拙僧から武蔵の近況をお伝えし申す。

 今年の収穫は豊作で北条方は一息ついた模様。

 ですが、此度の西上野への出兵で相当な銭の出費があり申した。

 小田原の宇野屋の話によると既に5万貫文以上の借財があるとのこと。

 その殆どが年利20割を超すものだとか。

 また北武蔵での年貢の取り立ては6割に引き上げられたため、さらに大胡領への人の流出が起こっていまする」


「これはもう、こっちの策謀と気取られちゃったよねぇ。

 で、今川は動くのん? 」


「未だ、確認はとれておりませぬ。

 西の織田信秀の容態次第かと。

 徳本殿に話を聞ければわかるのですが……」


 殿は磐梯屋を通じて徳本殿には、自らだけでなく多くの商人から銭を集めて、新しい薬の開発費や診療所の運営費、医者・薬師の育成などに投資させている。

 しかしその見返りは全く要求しない。

 すべては民のためになる。

 徳本殿も自分の為ではないと利益を手にするのを拒み、戦の事についてもかかわらないように心がけている。

 多くの大名武将も一人の人間として診療している。


「仕方ないよね。

 あと1~2年の間、天寿を全うしてもらいましょ。

 その間に北条との決着付けちゃいます♪

 で、武田は? 」


 蕎麦茶を美味しそうにすすりながら殿。


「はい。

 どうやら北条方より矢銭が送られた模様にて。

 どのような取り決めが為されたかまでは探れませぬ」


 殿はお茶うけとして置かれている煎り豆をポリポリと噛みながら考えている。

 たまに上に放り投げて落ちてきた豆を口に入れている。


「もう氏康ちゃんは大胡を潰す仕掛けを作り始めているよ。

 では晴信ちゃんに何を頼んだと思う?

 たねちゃん」


 急に話を向けられた秀胤殿。

 一呼吸おいて答える。

 なかなかの瞬発力を身につけてきたようだ。


「考えられることは。

 一に婚儀の取り決め。

 二には今川との同盟の斡旋。

 三には来るべき大胡討伐への援軍」


「すごい!たねちゃん、いつのまにか成長したね~。

 頼もし~。

 そうそれ。

 多分3つ目だと思う~」


 援軍か。

 同盟を組んで後々それに縛られるのは困る。

 今川もすぐには話に乗ってくるまい。

 武田には大人しくしていてもらうだけでも北条にとってはありがたいが、できれば碓井峠から西上野に侵入し、国衆の裏切りを防止することだけしてもらえば戦わせる必要はない。

 大胡のみ、あるいは由良をけん制しつつ大胡を潰すか。


「だから既に氏康ちゃんは領国の慰撫と軍備に全力挙げてるね。

 同時に里見や佐竹・佐野・那須・宇都宮とかにも調略、外交でからめとろうとしているんじゃない?

 あの人外交の鬼だからなぁ。

 ああ、あと古河公方忘れていた、テヘッ」


 1年間だけじっとしてもらうために大幅な譲歩をしているであろう。


「本当に北条が休戦の約定を破ると? 」


 秀胤殿が確かめの言葉を口にする。

 休戦明けは再来年元旦。

 これを破れば後々北条の調略や外交に信用度がガタ落ちだ。


「うん。

 背に腹は代えられない。

 それにこっちが油断していると思うと誘惑に掛かりやすいね~。

 なので、こっちも酒場作戦の成果。

 偽情報を二重間諜使ってバンバン流してね。

 この時のためにただ酒飲ましてんだからぁ♪ 」


 前にも増して北条の手の者が入ってきているがそのほとんどがこちらへ寝返っている。

 寝返らないものは「わざと誘っていない者」だ。

 殿に言わせると全部嘘の情報よりも、たまに本当の情報を流した方が敵をかく乱させると。

 確かにそうだ。

 拙僧でもそれをされると何が本当なのか確認することすら覚束ぬ。


「じゃあ、人知れず、軍備増強よろぴこ~♪ 」



 いよいよ大筒が出てまいりました。

 江戸時代の大筒は既に鋳造一体成型だったようですね。

 戦国末期の攻城に使用した手持ち筒程度のものを今回は登場させました。

 大きいのは12ポンド砲レベルのが江戸時代にはあったそうで。

 手持ち筒の大きさがわからないので適当です。

 とりあえず城門の蝶番壊すかかんぬきを壊せればOKかなと。


 群馬鉄山の「群馬」という地名。

 前橋西部の惣社(総社)付近の名前です。

 ここは分かりやすく本来の鉄山の名称にしました。

 (でもこの鉄山……戦時中の奴なのは秘密です)


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― 新着の感想 ―
[一言] >休戦開けは再来年の末だ。 前話の最後で休戦は「来年末まで」となっており、休戦が明けるのは「再来年の年明け」の間違いでは? となると、「本当に北条が休戦の約定を破ると?」のセリフも修正が必…
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