平井
「旦那。マ・〇ベ大佐になりたい自〇志願者が49人にも上りやした。世の中好き者が多いんですね」
「おう!人間、死してなんぼじゃい!もっとかかってこんかい!儂が槍の錆に……」
「旦那、槍じゃなくてサーベルです」
上杉謙信はその遺骸がまだ調査されていなかったと思いますが確認していません。
調査されれば「女性説」を始めとしていろいろなことが明らかになると思うのですが……
不煩の誓いは作者としては疑わしいとみていますが、物語を面白くするために取り入れてみました。
2001年9月現在:ワクワク大百科
【薄い本】
「一般的には同人誌のこと。
語源は一冊の厚さが文庫本と比べてもはるかに薄いことからきている。
そのジャンルは広範にわたり、文芸・趣味・マンガ・学術など、ありとあらゆる分野に広がっている。
最近はアメリカなどにも進出している。
ひねくれたスラングの場合はエロジャンルの、例えばBLなど……」
1552年1月上旬
上野国緑埜郡平井金山城(現藤岡市南部)
温井孝昌
「後詰はまだか!?
越後は?足利は?
白井はどうじゃ!!?? 」
今日も関東管領様は吠えていらっしゃる。
側近としてお仕えして、はや10有余年。
戦場でもお傍に侍り護衛をしておったが、このところ益々癇癪が酷くなっておられる。
酒量も増え、ほぼ毎日日中も常時酔っ払っておられる。
「残念ながら。関東管領様。
そろそろここ平井を退転する際の御動座先を決めねばなりませぬ。
某が考えますに白井長尾か足利長尾が……」
がつっ。
管領様が投げつけてきた盃が儂の額に当たった。
額から流れてきた液体は酒ではなく血の味がする。
黙って畳に転がっている盃を拾う。
そこへ火急の知らせ。
「上様!御岳城が落ちましてござります!!
それを聞いた倉賀野16騎がすべて北条方に寝返りましてございます!
北条勢は余勢を駆って鬼石方面より北上中!
さらに安中と小幡が西から進軍を始めました!! 」
これはもういかぬ。
儂は「最後の」進言をした。
「管領様。
もう退転しかございませぬ。
それとも北条へ投降いたしまするか?退転先は白井(沼田南)長尾がよろしいかと。
吾妻川と利根川が要害となっており、北条を寄せ付けますまい。あとは大胡が……」
「ええい!! 大胡は嫌じゃ。絶対に行かぬ。白井に行くぞ!供をいたせ!旗本にもそう伝えよ!」
「それが旗本のほとんどが既に退散しておりまする。お供できる者は50名いるかどうか」
儂もその50名には入らぬ。
手土産を持って北条へ行くか。
怒り狂っている馬鹿殿を尻目に「若殿」の部屋に赴く。
温井孝昌。上杉家の世継ぎ龍若丸を連れ、北条方に寝返る。
龍若丸の消息は今のところ不明。
上杉憲当。北上野の白井長尾家に身を寄せる。
1552年1月下旬
越後国春日山城
直江景綱
頭を下げる儂の前に殿が座る。
護摩を焚いたらしい残り香がふわっと微かに漂った。
「関東管領様は平井を退転なされたか」
「北上野の白井へと居を移されたと、軒猿の早便にて」
「雪の中ご苦労じゃったと伝えてくれ」
殿は、床下へ聞こえるように言った。
小姓が殿の手に盃を持たせ、酌を始めた。
少し酒量を減らして頂かねば。
体に障る。
いくら言うても聞いてくださらぬ。
まだ判断体力とも支障はないため仕方ないが、それも若いからじゃ。
こうも常時飲まれては早死になさることに。
折角この越後がまとまったのじゃ。
そう簡単に身罷られては家臣領民が困る。
「先ほど、毘沙門天様の啓示を見た。
儂が平井に関東管領様をお戻しして、坂東の武者共が再び憲当様の御前にひれ伏すさまを」
またか。
皆はこの啓示を有難がり、その進むべき道は神の啓示、だから義は我にあり、必ずや勝利は我が手に。
と、盲信している。
今までそれで勝ってきた。
確かに天啓を得たかのような戦いぶりは「戦神」「越後の龍」と呼ぶに違わぬ。
だが戦は戦場だけでは決まらぬ。
これを言っても聞かぬのは、一度も負けたことがないからだ。
確かに負けねばよい。
が、戦をしていないときに敵は何もしないわけではない。
商いに口を出し、家臣の内紛を煽り、外交調略でどんどん攻めてくる。
昔から同じじゃ。
「雪が解けたら越山する」
「お待ちくだされ。
まだほとんど準備ができておりませぬ。
戦備えは何とか致しまするが、土地勘のある者、現在の情勢、調略、すべてがまだ」
「5000も連れていけばよかろう。
白井の長尾と親戚である者を選べ。
それで事足りる。
あとは大胡じゃ」
大胡?
あの大胡、北条と敵対しているはずの大胡であるが、なぜ管領殿を助けぬ?
「大胡は管領殿に嫌われておるらしい。
いくら忠勤に励んでも無視され、此度もお役に立てぬと申しておった」
大胡は毎月、御用商人蔵田屋を通して焼酎などを贈ってくる。
殿はそれを愛飲されており、なかなか好意的である。
儂らにも見せてくださらぬが贈答の際、桐の箱に特別製の肴と共に文が入っているらしい。
どのような文なのかはおっしゃられぬ。
しかし、ちらっ見えたとき「文ではなく絵」のようにも見えた。
「大胡は儂が越山すれば共に謀反者を攻めるという。
安中と小幡だけは許さぬとも申して居る。
最初に裏切った那波は既に誅殺した。
後は首謀者のあの者だと。
長野一族は救ってくれとも」
なにやら言いくるめられている気もするが、実際の情勢には合っている。
さらに言えば大胡は跡を継いだ政賢殿がまだ負けたことがない。
そればかりか寡兵で北条の大軍を3度に渡り退けた。
敵士分には厳しいが、足軽雑兵・領民には寛大で大変慕われていると聞く。
まさに殿の好みの国衆であろう。
好意をもって当然だ。
「4月になったら、出陣だ。手配せよ」
黙って頭を下げる。
本来ならば、景信様を旗頭に宇佐美殿あたりを付けて越山させれば済むもの。
今回は北上野の豪族と近しい、越後の国衆からの要請もある。
だからご自身で動くのであろう。
しかし、腰の軽いのは殿の良いところでもあり、危なっかしいところでもある。
儂らが周りを支えるしかあるまいな。
1552年4月下旬
上野国厩橋城大広間
長野道安
まさかこの城にやってくるとは思わなんだ。
あの阿呆管領が上座に座っている。
左手大広間の奥には長尾景虎殿の家臣が並び、儂ら上野の者は右庭を背にしておる。
全く儂の城が乗っ取られたようじゃ。
亡き父が草葉の陰で泣いておろう。
「では上様に置かれては、長野一族はお咎めなし所領安堵という仕置でよろしいのですな」
景虎殿が確認をする。
既定路線ではあるが、この確認が大事じゃ。
後に文にて確認を取るが、越後長尾家の裏書のような宣言をすることにより、いくら管領が反故にしようとしても、自分の権力を取り戻してくれた者の約束を反故にはできまい。
しようものなら今度は越後が怒る。
「仕方あるまい。
代わりに安中と小幡だけは絶対に許さぬ。
必ずや捕らえるか首を取って参れ」
既に両名は恭順の旨の使者を遣わして伝えてあるも、管領の怒りは収まらぬ。
側近の温井があろうことか憲当の嫡男、龍若丸を連れて北条へ向かう途中、小幡の者に斬られた。
その時に抵抗した龍若丸を誤って殺してしまったらしい。
それをもみ消そうとしたことが管領に伝わったのだ。
管領は烈火のごとく怒った。
そのことの結果としてこのような沙汰となった。
「大胡殿。
此度は馳走、有難し。
城攻めの手腕を期待しておりますぞ」
「軍神との誉れ高きお方にお見せできるようなものはござらぬが、できうる限りの成果を上げまする」
その後、5月上旬、総勢8000の我が方の布陣を見て、戦わず安中は北条へ、小幡は武田に落ちていった。
しかし政賢の手の者が先回りし、小幡は惜しくも逃したが、安中の爺は執念深く幾重にも敷かれた包囲網を逃れることができず自刃。
首は管領の元へ届けられ、あ奴を満足させたのである。
そしてそれを見ていた政賢も密かに嬉しそうにしていたのが気になったが。
1552年5月上旬
厩橋城
長野政影
この部屋には長尾景虎殿と殿、景虎殿の小姓、それに某がいる。
殿と景虎殿の前には酒と肴が置かれた膳が置かれている。
某と景虎殿の小姓がそれぞれの主君へ酌をしている。
勿論殿へ注ぐ酒は異様に薄められ、水も密かに用意してある。
あまり飲まれると真っ赤になって倒れてしまわれるからだ。
「この肉はいつもの干し肉とは違いますな。
如何様な作り方をされるかお伺いしたいが」
「それは、ろーすとびーふと名付けました。
桜の木の切り屑で燻した牛の肉の赤身でござる。
お気に召されたかな」
「なかなか良いものじゃな。
この漬けるタレも珍しい。
醤の類かの」
「そちらは最近やっと作れました。
醤油と申します」
「ほほう。
あとで製造方法を伺ってもよろしいかな」
「それは蔵田屋に任せております。
越後でも作れます故、あとで蔵田屋に作るように申し付けてくだされ」
蔵田屋で委託生産することにより、ここでも殿の収入となる。
そこまで諸大名は知らぬであろう。
「いつもの桐の箱。
大変面白きものを頂き感謝いたす。
あのような物があろうとは思いも寄らなんだ。
今、京より絵師を呼んでおる所」
「それは良いことにございまする。
某にはとんとわからぬ故、今手元にいる絵師を越後に向かわせてもよいのではと思うていたところ。
越後がその手の文化の中心となることも一興かと」
よく分からぬが、殿が京から呼び寄せた珍奇なる絵を描くことを好む絵師に指示し、色事の絵を描かせていたことは存じている。
しかし、こうも景虎殿が喜ぶ絵とは一体如何なる物なのか?
知りたくもあるが、危険な香りしかしない。
現にこの席に臨むにあたり、殿から尋常ではない表情にて、
「もし景虎ちゃんが少しでも僕に近寄ってきたら、気を発して退散させて~~~
%:@>$#w~~~
何かあったら楓ちゃんに申し訳ない~~」
と、異様な声を上げながら泣きついてこられた。
某はいつもの父の形見である脇差の代わりに、敵と相対する時に着用する斧のような分厚い脇差を腰に刺している。
無礼にならなければよいが……
「して今宵の一番の肴、館林の戦の話をお伺いしたい。
種子島を大量に使ったというが、如何様にお使いになられたかお伺いしてもよろしいかな?」
「某は大したことはしてござらぬ。
家臣に気が利く者がいて、うまく北条方の殿を射撃で崩したまで」
「その種子島を用意し、武将に兵を練らせるのは将としての力量。
ご謙遜なされるな。
その備えの移動も素早かったと聞いておるが」
「なに、九郎判官様(源義経)の真似をしたまでにて。
向かわせた小さな備えをすべて騎馬にし申した。
それに火縄銃を持たせたまでのこと」
景虎殿がしきりに頷き、次々に質問してくる。
「先だっての安中と小幡の城を攻められれば、実際の威力や有用性を議論できたのじゃが、すぐに城を打ち捨て落ちていきおったので良い機会を逃した。
種子島の一番の取り柄は甲冑を射抜く力かの?」
「いいえ。
その大きな音にございます。
慣れておらぬ若しくは腹の座っておらぬ兵はそれだけで戦の気合を削がれますし、音に慣れておらぬ馬は驚いて混乱し申す。
そこへ突っ込めば敵の備えを打ち破れます」
(なるほど。胆が据わっておればよいか。そのようにすれば高価な種子島を買わずに済む。問題は数を揃えられると大きな音がさらに・……谷合でも……)
色々と考えておられるようだ。
「そろそろ酒が回ってきました。お開きにいたしましょう」
殿は盃で水を飲みながら酔った振りをする。
なにやら殿が怯え出した。
景虎殿の眼が座り出した。
口元が少し緩んでいる。
何か危険な兆候を察した。
某は思いきり気合を入れ、それを景虎殿へぶつける。
気づいたようだ。
少し素面に戻ったようで、お開きと相成った。
殿は「助かったよ~~。危険だ、やっぱりアル中は危険だぁ。それにあの趣味何とかしてくれ~~。それ使ってご機嫌取ったのは僕だけど……僕はノンケだあああああ」
と、自陣へ帰るときに小声で叫んでおられた。
謙信ファンの皆様、ごめんなさい。
そして新潟県民の皆様。
メ〇トやとら〇あなとかいろいろできちゃいそうで申し訳ない><
この作品は、テーマが3武将にザマァすることですので、ご勘弁。
「殿!またお茶目が過ぎましょうぞ!
拙僧は知りませなんだ。
こんてすとに出品なされるとは何たる無謀!」
「だってぇ~。
これだけ大胡領が大きく(評価が多く)なっちゃったら皆にも楽しい作品になってきたんだなぁと。
自分が読みたい作品を書いて楽しんでいたけれど専門家の人がどう見るか知りたくなっちゃいました~」
「あれほど勝手な外交は慎みなされと言いましたのに。
OVL大賞とESN大賞に新人発掘こんてすと、さらには123大賞までも!
知りませぬぞ?どうなっても。
ああ、殿が悪魔の誘惑(商業化)に負けねば良いのだが……」




