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首取り物語:北条・武田・上杉の草刈り場でザマァする  作者: 天のまにまに
★★綱成君その首貰っちゃうゾ★★

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【舟艇】来た見た(首)獲った?

 水陸両用戦って、第二次大戦以前は物凄く否定的だったんですね。

 米国海兵隊が開戦当初から2個師団持っているのが不思議だ……

 ふんだ。

 日本には大発とあきつ丸があるのさっ!



 2000年5月28日:増補版新河川交通史

【第3章:高瀬舟】


「一般的には、文芸作品の影響からか高瀬舟とは京都近辺の水運のみに使われていると錯覚する向きもある。

 だが、全国のある程度の規模を有する河川では、古くから河川を使用した水運が盛んに利用されている。

 その主役が平底舟の高瀬舟で、大きいもので人を80人、米俵だと150俵程度は輸送できた・・・」




 1551年9月中旬

 上野国那波八斗島の河岸かし

 矢沢綱頼



「じゃあ、行ってくるね~。

 ほんっと、世話が焼けるね~由良おとちゃんは。

 そっこーで落とせなかったのが失敗だよん」


 殿の義父である由良成繁殿が、身を寄せていた太田資正殿に兵を貸し、太田殿は館林城の赤井照光を急襲した。

 しかし、事前に情報が漏れていたのか、城攻めは籠城戦となった。

 やむを得ず由良殿が本軍1000を率いて援軍に向かったが、北条の後詰4000が来着。

 由良殿は近在で仲の良い佐野昌綱殿へ援軍を要請。

 現在、由良・佐野・太田勢3500と、北条勢4600が対峙している。

 数の上で不利と見た由良殿は盟約を元に、我が大胡に来援の要請を出した。


 殿は参謀の(見習いが昇格したらしい)上泉秀胤殿を、先行させ現地の情勢を見極めさせている。

 そして、今、遠征軍、1500が「高瀬舟」に乗り込んで続々と利根川を下っていく。


「もうね。

 物資を付与しちゃうぞ~。

 戦力流し込んじゃうぞ~。

 領土展開しちゃうぞ~~」


 黒い布を鉢巻状にして両眼を覆い、何かの手印を真似ている。

 もちろん船の上だからただでさえフラフラする殿は、やはり倒れて怪我する前に政影殿に留められていた。

 もういい加減慣れたが、これを見て笑っている大胡の家臣には未だついていけぬ。


「では、ゆっきー。

 留守は頼んだね~。

 大胡の御家老ちゃんと連携よろぴく♪ 」


 兄の幸綱が桟橋の上から丸顔に満面の笑顔で、出陣を言祝ことほぐ。

 完全に信頼しているのであろう。

 絶対に勝つと。

 儂も殿の作戦を聞いた時はびっくりした。

 殿は大胆にも利根川を高瀬舟50隻集めて、一気に1500の兵と武器兵糧を館林城南方1里半にある茂林寺付近にて布陣する北条勢4000の退路を断つ作戦に出た。

 八斗島からの距離およそ6里。

 徒歩での行軍なら強行軍でも街道を使っても最低1日以上。

 戦場に着いてからすぐ真面まともに戦いたければ、2日以上は掛かろう。

 舟での移動ならば、下り故、桟橋や砂洲での乗降も含め出立してから2刻もかからぬ。

 それでいて上陸後すぐに戦闘に入れる。

 兵糧の補給は、高瀬舟が戻り次第次々に流し込む。

 そして佐竹殿の戦闘工兵(黒鍬衆ともいうらしいが大胡では戦う黒鍬か)が、近在の住民に銭をばら撒き総動員で、簡単であるが堅固な柵を構築するらしい。

 北条方に気づかれでもしたら、一気に背水の陣なのでは? と思われるが、そこに策が仕掛けてあるという。

 これから儂も参謀代理としてお供するのだから、しっかりとこの眼で兄者の見込んだ若武者の真価を見定めよう。




 1551年9月中旬

 上野国武蔵国を結ぶ赤岩の渡し(熊谷市行田市千代田町の中間)

 矢沢綱頼



「何度も伺い申し訳ござらぬ。本当にここで降りぬので? 」


 巳の刻(午前9時)になった。

 先ほど、東雲殿の備えが上陸し、渡し場を守備していた北条方300を蹴散らした。

 東雲殿の備えは全員騎馬。

 流石に馬300頭余りは舟では運べぬ。

 先に陸路で馬と兵50が移動して隠れていた。

 しかし、どう考えてもここ赤岩の渡しで降り、布陣して北条の退路を断つ方が安全で効果があると思うが。


「うん!

 ここにはしのちゃんの竜騎兵とあっちゃんの鉄人隊だけおろす~。

 竜騎兵はここから機動して茂林寺の敵に横槍後、ひっとえんどら~ん。

 すぐ帰ってもらいます。

 本隊は……」


 儂が広げた地図の上の一地点上を殿の指が指し示す。

(それにしてもこの地図はなんと見やすいのだ。真上から見た角度も正確な地図。これが兄者の言っていた測量というものの成果か)


「ここ、川俣~♪ 」


 敵後方真南、左右は湿地で覆われ、街道と言えないほどの道が北の茂林寺まで延びている。

 北条勢が利根川を渡り後退するには、ここ川俣と赤岩の渡ししかない。

 その川俣は赤岩よりも規模が小さい。

 ここ館林周辺は南と東に多くの沼と湿地が点在している。

 そこを、1000を超す兵が移動するのは極めて困難だ。

 よく北条もここへ後詰を送り込んだものよ。

 しかし後詰を送らねば今後の調略が難しくなるばかりか、離反するものが後を立たなくなるのがこの戦の世の常だ。


 それを考えてもこの背水の陣は頂けぬ。

 いくら船があろうとも、押し負ければ河に飛び込むしかない。

 背水の陣とは、「攻勢的な陣」である。

 周りを囲まれることにより一点突破が容易になる。

 突破した後に敵の背面に出て大将を狙うもよし、撤退するのもよし。

 だが今回の戦場、川俣は右に湿地は迫ってきているものの、正面(北)と左(西)が敵の展開を許すほどのしっかりとした大地と広さがある。

 敵の大軍に囲まれれば数的に相当不利だ。

 敵の陣も分厚くなる。


「矢沢のつっくんさ。この作戦の目的思い出して♪ 」


「一つに由良殿への援軍。二つには人材登用でござるか? 」


「そそ。でもね、由良のおとちゃんは何をお望み? 」


 ハッとした。

 後詰を打ち払い館林を落とす。


「後詰をあきらめさせればよいだけと」


「そうで~す。撤退させるだけでいいんです、はい。だから無駄な戦いはしません」


 殿が右手の手のひらを振り振りさせて否やを言う。


「目的を達成したら欲目を出さずにさっと引く。それが名将というものだ!なんてな。僕、迷将~♪ 」


 そうか、故に赤岩の渡しを諦めさせるために東雲殿を西から向かわせたのか。

 全貌が見えてきた。




 半刻遡る

 1551年9月中旬

 上野国赤岩の渡し

 那須洋一郎



「さぁて。洋二、お前はどっちがいい? 右目か? 左目か? 」


 俺が腐れ縁の那須洋二郎に小声で話し掛ける。

 名前は殿さんが面白がってつけてくれた名前だ。

 まあ、これでもいいか。

 冗談だけで生きることはできないが、冗談なしで生きることはできねぇ。


「いや。ここは馬だろう?

 目的は使い番を馬で走らせないことだ。

 お前さんの自己満足のためにわざわざ危ない方法はとれんだろう」


 前方40間の所に腰を下ろす騎馬武者の目を射貫くことぐらい、外しようがないのだが。

 滑車が2つ付いた短弓を撫でながらそう思う。

 洋二はいつも冷静にわかったような口を利く。

 そんなことだから女子に持てないんだぜ。


「じゃあ、わかったよ。

 仕方ないから右の馬の目を射貫く。

 そっちは左のな。

 あとの2頭は弩弓で仕留める。

 30丁もあれば倒れるだろう」


 洋二も納得し、矢を準備する。

 俺も矢の状態を確かめる。

 よし、問題ない。

 きちんと真っ直ぐで矢羽根も揃っている。

 傷もなし。

 良くこれだけ細く軽くできたもんだよな。

 工業局の連中、眼が悪くなるまで込み入った細工をしたんだろうなぁ。

 極細の針金の周りに紙を巻き小さな鋼の鏃を付けている。

 その上で何かを塗って補強がしてある。

 長弓の竹の矢よりも遥かに細く軽い。

 それでいて結構な貫通力がある。

 まあ俺たちのような精密な射撃ができる者には、貫通力などいらないけどな。

 遠矢でも目を射貫ける。

 この「こんぱうんどぼう」という短弓は手入れが大変だが、使うものが使えば百発百中、遠矢で敵の兜首を音もなく倒せる。

 今回のような、奇襲ではもってこいだ。


「よしいくぞ」


「はんどさいん」という手振りで皆に合図を送り、薄の生い茂る場所から立ち上がり矢を番えた。

 俺の射撃の後、一斉に61本の矢が飛んでいく。




 同日午の刻(午前11時)

 上野国川俣の渡し

 利根石斎



 先ほど利根川の両岸に後藤殿の備えと是政殿の備えが上陸し、渡し場の両岸を守備していた北条方200を蹴散らした。

 その後、上野側に本隊500が上陸。

 儂が率いる、黒鍬衆100(畿内からも集めてきた)を使い、川にある仕掛けをしている。


「棟梁~♪ うまくできそう?

 練習はしたけど、こっちの方が川幅広そう~」


「はい。うまくいきそうですがな」


 今、渡し場の下手しもてに浮きのついた頑丈な綱を渡している。

 3本も。

 それも北国船などに使われる頑丈な奴だ。

 簡単には切れぬ。


「ここより上流にいた関宿の河船は全て銭を握らせ下流の関宿へ帰らせました。

 たとえ北条の船が来ようとも、もう渡河はできますまい」


 先行して現地を見て、秘密裏に渡船の親方に話をつけていた上泉秀胤殿が殿に報告した。


「さんきゅーねぇ。

 ありがと、たねちゃん。

 逃げ散った北条の兵はちゃんと北に逃げて行った? 」


「は。50程度は茂林寺方向へ向かった模様」


「想定通りだぬ」


 作戦では、あとはここに針金を張り巡らせ、行動の自由を奪う仕掛けをしてから、退散することになる。

 あとは勝手に北条勢が退却し、身動きが取れないまま南下してくる由良・佐野・太田勢に殲滅されるのを赤岩で待つだけだ。

 敵が赤岩目指して退却しなければだが。




 同日午の刻(午前12時)

 茂林寺西3町(館林城南方8町)

 東雲是政



「第1小隊、放てぇ~~~! 」

 ずが~~~ん!!!!

「第2小隊、放てぇ~~~~! 」

 ずががが~ん!!!!!!

「第3小隊、放てぇ~~~~~! 」

 どどどど~~~ん!!!!!!


 馬から降り、立射で3列それぞれ100丁計300丁の火縄銃が火を放つ。

 竜騎兵と名付けられた騎馬隊が馬を降り、火縄銃を斉射する。

 普通、火縄に火をつけたまま騎乗すれば火種となる部分が揺れて馬に当たり目も当てられない状態になる。

 ある兵が「竹筒に穴をあけてその中に入れておけば? 」と思い付き、今ではそのような危険もほぼなくなった。

 普通は右手に巻いておく予備の火縄も今は油紙に包まれ、火薬とともに腰につけている。


 よし。

 敵左翼が混乱している。

 兜首の武将も馬がびっくりして暴れて落馬している。

 これで、北で対峙するお味方右翼が強襲すれば壊乱するだろう。

 こうもあっさり強敵が後退すれば、普通ならばこちら西へは罠があると思いわざわざ向かってはくるまい。

 俺だったら時間をかけて物見を十分に出して、赤岩の渡しへ行こうとするがな。

 普通ならこんな物騒な攻撃力を持つ敵がいたら怖くて西へは行けぬ。

 仕事は済んだ。


「全員乗馬! 帰投する!! 」


 さっさと赤岩まで後退だ。

 物見を前後左右に放つ。

 特に北条方がどちらに撤退するかは見極めねばならぬ。



 殿が手を振って出迎えてくれる。

 もう撤収してきたのか?

 素早い。


「川俣は是ちゃんに任せてきた~。おつかれさんたくろーす。で、敵の総大将は? 」


「北条綱成です。途中から援軍に入ったのでしょうな」


「!!!!!! 」


 殿が、びっくりしている。

 珍しいな。


「作戦へんこ~。

 目標!地黄八幡じきはちまんの首!!

 こんな機会はめったにないねぇ。

 本隊を直ぐに呼び戻そう!

 罠とみてもこっちに突っ込むよ。

 きっとこっちへ向かってくる。

 えすえすあーる武将、なめたらあかん!

 僕、名将にはなれないなぁww」


 殿は俺に


「しのちゃん。

 機動防御で遅滞戦闘。

 本隊戻ってくるまでここに来させないでね。

 これ厳命! 」


 言われんでもやるさ。

 それができるように訓練して竜騎兵として錬成したのだ!





挿絵(By みてみん)

 私のイメージでは竜騎兵=秋山支隊、これ結論!

 戦国時代に騎兵隊突撃はまず無理と思っています。

 日本の地形では大規模な騎馬突撃は無理そう。

 義経のひよどり越えが例外中の例外。

 (だって100騎いないし)

 基本、機動能力だけ使います。

 (ただねぇ。これ一応ラノベだし、騎馬突撃あるかもww)


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[一言] 北条綱成を狙うか! うまくいくかな~
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