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首取り物語:北条・武田・上杉の草刈り場でザマァする  作者: 天のまにまに
★★スカウトしちゃうゾ★★

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【斬首】ヤークトディーガー



 1995年12月29日:トロツキーグラード攻防戦博物館


 【狙撃対決】


「プロイセン帝国が侵略してきたことで起きた大祖国戦争当時、このトロツキーグラードにて冬季包囲戦闘が行われていました。

 厳寒期ではエンジンや大砲のグリースが凍結し、大規模な戦闘は不可能でした。

 そこで行われたのが小集団による奇襲や夜襲でした。

 その対策としてブービートラップや、対人地雷が多用されましたが、そんな中でも最大の脅威はスナイパーでした。

 その中でもトロツキーグラードの守護神ともいえる存在がいました。

 彼は日本の伝説的な狙撃手の子孫で、わが国に帰化したアバシリーエフ一族の……」





 1996年2月14日:完成!山梨県湯村温泉【ホスピタル湯テルメ】由来書き


「1548年(天正17年)2月信州上田原で起きた、武田晴信の甲州勢と北信濃の村上勢との合戦で、武田晴信は深手を負いました。

 傷を負った後も10日間陣にとどまったことが災いし、傷が化膿し甲斐に運ばれた時には非常に危険な状態でした。

 しかし……により回復し、その後この湯村温泉にて40日の湯治を行いました。

 その後この温泉の効用が広がり……」





 1548年2月14日夕刻

 上田原合戦場南西30町塩野神社脇

 網走在施符(某北の国最強スナイパーの名前をもじって勝手に命名された可哀そうな人)




「網走殿、そろそろ仕掛けるぞ」


 村上の一族と言ったか、素ッ破の頭目が耳元近くで囁いた。未だ人に「網走」と言われても実感がわかないが。

 どうでもいい事じゃが、夜眼が効き体力頑健なものを集めているちゅうんで大胡に出かけてみた。うまいもん食わせてくれるならいいがと出かけたら、なんか変なもんを持たされた。重い筒のようなもんを左腕が痺れるくらい構えさせられ、微動だにせん奴だけが夜目を試された。森の中で何処を人が動いているかを見つけて知らせるんだ。

 そんくらいは朝飯前よ。


「ご~かくだよ~。君、よっろしくね~♪」


 素っ頓狂な馬鹿に明るい大声をあげる小さな若侍に背中をど突かれながら、飯食わしてもらいここに住むかと聞かれた。俺は皆から破戒坊主と言われちょるから飯代酒代が足りぬ。流石に野盗には堕ちたくない。


「ついでだからこの際還俗して、お酒いっぱい飲まない? 只で焼酎飲めるよ~。肴もつけるね」


 この誘い思わず乗った。それで殿の命名で「網走在施符(あばしりざいせふ)」と名乗ることになった。今でも慣れんがな。

 殿は命名してからニヤニヤして「これで君は雪の中でも戦えるよん」というていたな。


 それが5年前。種子島を持たされ山奥で毎日訓練させられた。俺は元々、山の出だから割とすんなり過ごせたが、酒と肴が欲しいだけの柔い奴らはすぐ音を上げやめて行った。


 残ったのは儂とあと2名。

 今、その3人で野に伏せている。


 目の前には風林火山という有名らしい幟が立っている。甲斐の大名、武田晴信がいるらしい。負傷していることがわかっちょるがどのくらいの傷なのかはわからん。ここを村上の素ッ破が急襲するそうだ。

 その喧騒から逃れるやもしれぬ晴信を待ち伏せするために山のある北側以外の3方向に一人ずつ伏せているのだ。


 こちらに出立するときには福々しい顔の30がらみの武士が、両手で俺の肩を掴み涙を俺の顔に塗り付ける位に顔を近づけ「頼む。たのむっ!」と何度も(こうべ)を垂れてきた。

 よくわからんが成功すれば今度は美しい女子を手配してくれるとか。


 頼まれなくてもやってやるぜ、と思った。




 神社に火矢が放たれた。既に周りは薄暗い。その中で茅葺(かやぶき)の屋根が明るく燃え出す。警備の兵が慌ただしく走り回り、陣幕の中に動きが見えた。


 ここからだと30間はある。

 昼間なら7割は当てる自信があるが、この暗闇では20間がやっとだな。

 俺の持ち場は南に延びる間道。

 右に曲がって諏訪に抜ける。

 合戦後の対陣場所と正反対の方角だ。

 こちらに来るか?


 松明を持った雑兵を先頭に、槍持ちの徒武者が数名こちらに向かってくる。

 その後を……来た!

 戸板に乗せられた晴信らしき武将。

 あと3間待とう。

 心を落ち着けながら、火縄を吹く。

 これが夜目に目立つのが問題だ。


 身体で隠しながら、火縄を火バサミに固定する。

 草で偽装した隠れ家から銃口だけ出し、尻を地面に突き、立てた片膝の上で銃身を固定して構える。

 もうすこし、もうすこしだ。

 火蓋を切り、じりじりと待つ。


 東で銃声がした。

 その音で目の前の徒武者の足が止まる。

 戸板も止まった。

 少し遠いが、静止している。

 据え物に当てるように楽な的だ。

 俺はそろりと引き金を落とした。


 グォンと反動とともに、2匁の丸弾が飛ぶ。

 桶川胴くらいなら簡単に貫ける。

 負傷した武将が甲冑を纏っているとは考えていない。

 当たればそれで仕舞だろう。


 戸板がひっくり返る。

 そのため殺ったかどうかは確認できない。


「こっちだ! あの叢。曲者じゃ!」


 ちぃっ、もう見つかったか。

 確認できないが、それより早くここを離れねば。


 ええ女子であればいいがな。

 楽しみじゃ。








 1548年3月30日

 甲斐国躑躅が崎館

 武田晴信(常日頃、どこかしらに傷を負っている甲斐の手負いの虎)




 朦朧とした意識の中で、何者かに左手首を掴まれているのを感じた。


「峠は越えましたかな? やっと血が止まりました」


「おお、それは……天祐!」

「誠か? 感謝いたす。徳本殿!」

「御屋形様。まだ戦えますぞ! 信濃を武田の物といたす御旗盾無しへのお約束。守れましょうぞ」


 馬場(信房)・工藤(内藤昌秀)・駒井(高白斎)か……

 儂は撤退したのか。

 本隊はどうした?

 儂の威信は保てたか?


「御屋形様。ここまで無理せずとも甲斐の者、付いていき申す。これからは御身大事に」


「……陣は……?」


「おお、おしゃべりになられた。無事撤退いたし、上原城は小山田が入っておりまする」


 そうか、粘り強い(小山田)信有が入っているか。そうそう抜かれまい。


「明日より10日間、日に2度或粉保流(アルコール)と硫黄を処方いたしまする。この布と包帯をよく煮て、毎日数度取り換えていただきたい。薬湯と粥で体力を戻して参りましょう。10日後にその糸を抜きまする」


 糸?


「まさか御屋形様の体を布の如く縫うとは、思いもよらなんだ。それは徳本殿の考えたものでござるか?」


「いえ。これは弟子の菊蔵と申すものが発案したもの。某はそれを実際に行ってみただけ」


 この切り傷2か所、種子島?の傷1か所を縫うたのか?


「問題は種子島の方でござる。弾は抜けておりましたが、膿が出るやもしれませぬ。故に糸を抜いた後、体が動くようになりましたら湯治に出かけるとよろしいかと」


 そう言い、医者は去っていった。

 湯村か。ひと月ぐらいはかかると言うたな。まずはこの体を何とかせねばならぬ。村上も相当、損害があったはず。直ぐには動けまい。


 それにしても3方向に伏兵がいようとは。影が2人とも手負いになった。鎧を着こんでいたのに易々と射貫いた。


 種子島、恐ろしいものだ。






 ザイツェフのモシン・ナガン・ライフルも特別仕様ではなかったようですが、この網走在施符の鉄砲もそうなのかな?


 【作者からのお願い】


 続きが読みたい!

 スナイパーもっと見たい!

 信玄が涙目になるとこ見て見たい!

 この後鉄砲の威力がどう変わるかが見たい!

 武田の鉄砲に対する考えが変わった?



 そう思われた方は、ぜひブクマや1つでもいいので★評価をお願いいたします。

 作者、病気がちなため応援で毎日更新の励みになります。

 この世界線では長篠の戦はどうなる??


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― 新着の感想 ―
[一言] うーむ、殺せなかったか。 しかも、主人公が広めた医療品と医療技術で助かってしまった。
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