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首取り物語:北条・武田・上杉の草刈り場でザマァする  作者: 天のまにまに
★★スカウトしちゃうゾ★★

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【諜報】素ッ破最強伝説始まる

 ほんと、上野国の人物って記録が曖昧で、人物像どころか何をした人なのかもわかりませぬ。

 多分、図書館にある市町村史を見ればある程度出ているんでしょうけど、体が弱いため外出があまりできません。

 残念><


 1995年11月1日:伊勢崎市立日常高等学校文化祭歴研作成ワクワク動画字幕


「おらが郷土の勇者那波宗俊を腐すな~

 ほうほう、金山で尻捲って逃げちった奴ね

 最高の諜報員!

 スパイだにゃん

 黙れ!調略は芸術だ!

 寝返り太郎

 だれか購買で焼きサバ買ってきて~。

 食い杉真ん丸体形

 ついでにハ〇!!

 それは出家後の肖像

 校長の弥勒菩薩像がないって~!?

 おまいら、なに片田舎の無名武士で遊んでるの?

 もぐりだな、大胡政賢キラーだぞ

 逆だろ、キルされたくせに……」


(このネタわかる人は多分。0.1%もいない筈)









 1547年12月中旬

 上野国那波郡那波城(現伊勢崎市南部名和小学校付近)

 那波宗俊(正史では国衆ながら筋を通した人なのでは? この作品では根暗な僻み屋)




 目の前の囲炉裏に掛けている鍋から、味噌の良い匂いが流れてくる。

 娘が買うてきた鯉を煮て鯉こくを作っている。


「はい。できましたよ。お父様」


 娘の幸が汁の入った椀を、箸とともに渡してきた。

 一口(すす)る。

 旨い。

 冬の鯉は脂がのっていて腹に貯まる。身体も温まってきた。


「旨いの。どこの鯉じゃ?」

「朝、華蔵寺の方から来る魚屋(ぼてふり)から買いました。ため池で蚕の蛹を餌に肥え太らせているそう……」


 途端に飯が不味くなる。

 あの大胡だ。

 6年前の小柴長光の裏切りによって起きた金山崩れ。あれで儂ら那波氏は大損害を受けた。なんとか難を逃れたが、その後横瀬に赤石城を取られそうになり城を焼き払って逃げた。城は廃城とされたが、未だ城跡の東は横瀬に支配されている。


 儂は那波城に閉塞させられ、それまであった2万石以上の領地も1万8千石に減った。家臣を養うために年貢を6割にしたら逃散が起こり、どうやら大胡に逃げ込んだらしい。

 聞くところによると討ち死にした大胡行茂・修茂親子の後を襲い、厩橋長野が一族から幼い童を押し込んだ。その後あれよあれよという間に大胡が発展していき、年貢も4割と信じられぬ程軽くなった大胡へと那波の領民が逃げ込んだようだ。


 管領殿にも後押しされて、まさに儂と正反対じゃ。

 川越の戦は上野勢が大敗した。じゃが大胡の松風じゃったな、あ奴は囮にもかかわらず大活躍しその後の松山城防衛にも活躍した。そこでも人気取りか、水米酒を大盤振る舞いして「仁将」「名将」ともてはやされている。


 川越の戦には出陣が長引き、儂の那波は兵糧が持たず半年もせずに陣を引き払わせていただいた。今では南の八斗島の渡しで取る河関からの収入で生きながらえている。桃ノ木川を行き来している小舟が大胡の荷を載せ行き交う。それに満載された高価な積荷。これらを襲い略奪する誘惑に抗う毎日じゃ。

 このままではじり貧。


 儂は今、ある人物を待っている。今後の那波の運命を左右する話を持ってくるはず。箸をおき、娘に旨かった有難うと言い、居間に向かった。





 翌日

 那波城応接間

 成田泰季(成田長泰の弟。成田家の軍事を受け持つ。力に頼る傾向がある。野村萬斎の父である!)



 松田様に氏康様の下令を伝えられた。

「山内上杉家の家臣団を調略せよ」


 何故? と思う。

 儂の本分は戦場での戦働きだ。そのような腹芸ができるわけがない。そう申し上げたら、お主が適任じゃと言われた。


 なぜ故? その問いに対し、「女子じゃ。数珠つなぎをせよ」と。


 そこまで言われてもようわからん。すると松田殿がいうた。「この世は男の家系だけではない。女子の繋がりがあろう。それを手繰れ」とのこと。

 ようやっとわかった。この話、兄の長泰に行かずに儂に来たという事は、上杉方の小幡と那波と縁戚関係を持っているからか。


 それぞれ嫁を送り込んでいる。その二家を起点として調略を掛けよと。小幡と那波にその縁戚で調略させていく。儂ごときでうまくいくかはわからぬが……



 そして今、目の前に義弟にあたる那波宗俊がいる。


「宗俊殿、春は元気かの」


 嫁いだ妹の春の消息を尋ねた。宗俊は囲炉裏に小枝を割ってくべながら答えた。


「元気じゃが。儂のほうが元気がない」


 下の話かと思うたがそうではないらしい。どうも米銭が足りないようだ。はて。この様子で謀反は難しいか……


「毎年、如何程足りんのかの。少々なら用立てるが」


 恩を売る程度では動かぬかの。はて、どうしたらよいか。


「お主は昨年、北条方へ寝返ったはず。なぜ今頃危険を冒してまでここに来る?

 調略か?

 じゃが儂の領地は上野じゃ。北条の最前線はお主らの忍城と松山城じゃろう?

 遠すぎるわ。なかなか寝返えられんわい」


 その時、女子の声がした。


「お父様。麦湯をお持ちしました」


 中に入ってきたのは、宗俊と春の娘、幸だった。なかなかの美貌を持つ女子に育ったの。


「幸はいくつになった?」

「今年で17になりまする」

「ほう」


 幸は麦湯を2杯おいて出て行った。


「これじゃ!」


 思わず膝を叩く 儂は今思いついた宗俊に策を伝えた。本条城の本庄実忠は女子好きじゃ。これに幸を嫁がせる。本領安堵とともに嫁入りを条件で調略する。


 深谷の上杉家は弱腰。北条の勢力に挟まれればすぐに音を上げる。これで那波までの通路が完成する。小幡への調略条件も良くなる。



 しかし宗俊が乗るかどうかだが……

 それを伝えると、北の方をねめつけてからこう言うた。


「任せておけ。その代わり大胡はもらう」


 その目に暗い影を落としていることに不安を覚えたが、


「助けがいるなら何でも申せ。直ぐに助け舟を出すぞ」


 儂にはこの程度しか声を掛けられなんだ。








 1548年1月下旬

 上野国二ノ宮赤城神社

 長野政影(主人公に過保護な奴)




 殿が行燈(あんどん)と名付けられた和紙で囲まれた燈明が室内を照らす。燈明だけよりも遥かに周りを明るくする。まるで殿そのもののようだ。


 今宵は新たに編成された大胡の諜報組織。その初めての集会となる。


 真田幸綱殿の傘下、素ッ破の頭目。

 霊峰赤城山を中心として活動している修験者の先達が一人。

 蔵田屋が繋ぎを付けた御師(おし)(伊勢神宮の宣伝係)。

 熊野権現の歩き巫女ノノウを束ねるもの。

 サンカの頭マシラ。


 そして今回、諜報官に任命された、智円。

 足利学校で龍蔵寺賢祥の長男賢慮の学友であった秀才である。これを殿自ら口説き落として仕官させた。周りはそのような新参者を殿の身近に置くのはいかがなものかと難癖をつけてきたが、「それ言ったら、僕の譜代なんか政影くんしかいないじゃない」と言われおし黙った。


 とりあえずはここにいる者が今後の大胡の眼となり耳となる。


「じゃあ~、これからよろしくね♪

 僕は大胡の松風と言います、歳は14です。

 好きな食べ物はバナナ。

 好きな教科は算数です。

 右手は疼きません。

 これから頑張りますっ!」


「お気になさらず。いつもの殿のボケというものである。今のうちに慣れてほしい」


 すかさず某が説明を入れる。初めての顔見せの者は流石に引いている。


「智円さんは、これからここの人たちが集めてくる情報を、分かりやすくして僕に教えてね。大体の方針は僕から教えるから~」


「相わかり申した」


 僧にしておくにはもったいないほどの、精悍な顔立ちだ。目から鼻に抜ける秀才のにおいがする。他の者も自己紹介させていく。


「某は真田幸綱様配下、北上野吾妻衆組頭・石堂順蔵と申す」


 灰色の毛皮の外套を着こんだ中肉中背の男だ。特徴のない顔は覚えられるのを防ぐのにはちょうどいい。外套で隠れて見えないが、強靭な体躯を持っているのだろう。腰を少し浮かせながらいつでも行動に移せる態勢でいる。


「我は甚六と申す」


 短めの紹介だ。質素・無欲を通す修験者らしい物言いだ。30がらみの男だが皴が多く、よく焼けている肌をしている。錫杖を使わせれば相当強いに違いない。


「蔵田屋さんのご紹介に預かりました御師(おし)をさせていただいております花屋藤吉と申します。

 よろしゅう」


 物腰の低い40過ぎの男が、伊勢神宮を中心とした御師を束ねる1人である。よく来てくれたものだ。流石、蔵田屋だ。


「熊野権現様の功徳を広める旅を続けておりまする、桜女(さくらめ)と申します。他の事もお教えすることもございますが……」


 艶やかで蠱惑的な声を持つ女性だ。朴念仁と言われている某ですら腰のあたりの脊髄がビクッと反応する。

 これは危険だ……

 すでに周りへ秋波を送っている。


「わしゃ、山に住むマシラという。

 皆の世話になって生きとるもんじゃい」


 一番、長い付き合いだからか、この声が一番ホッとする。


「じゃね~。仕事の分担だよ~。

 てゆーか、まずさぁ、みんな何が目的で来てくれちゃったりする? それ聞いとかないと褒美とか出せないじゃない」


 それぞれの望みは、

 サンカは里での売買の安全と米などが欲しいと。

 素ッ破は真田への恩返し。

 歩き巫女は……「いろいろな御褒美を」とか……なにやら怪しい匂いが……

 御師はコネをもっと広げたいとのこと。


 ただ一人黙っていたのは修験者の甚六。


「甚六さんはなにか欲しいものある~?」

「ありませぬ」


「修験道は無欲を目指しているからかな?」

「……」


 ではなぜここに来てくれたのであろう?


「強いて上げれば……己を高めたい」


「おおおお! それはすごい!! 高尚だぬ。

 ねえねえ。智円の兄様(あにさま)。お仲間だね~。

 そういう人にあげる褒美って何がいいと思う?」


 智円どのがぼそりと一言。


「人を導く場」


「?? でも己を高めるのが目的でしょ?

 それが役に立つの?」


 某にはなにかぴんときたものがあった。

 

 「人に教えるのが一番己を高めることになる、ですな」


 智円どのは頷く。

 殿のなさりようがそれに当たるのではいだろうか。

「人に説明すると頭の中が整理されるんだよね~」

 と。

 上泉様も同じようなことを仰っていた。


「なるなる。じゃあね。

 世が安らぎを回復した暁には、霊山近くに修験道の道場を作って回っちゃう。そこでお仲間と修行に集中できる世を作らない? 皆もさ、平和なほうが動きやすいし楽しく生活できるんじゃない? だからね、最終的に平和な世の中を目指す同志という事でいいんじゃない? そうしようよ♪」


 皆、一癖も二癖もある連中だ。大きなことを言う小僧だという馬鹿にした雰囲気。そう易々と納得するはずもなく……


「いいわね。気に入ったわ。お殿様。

 一緒に平和を目指しましょ。そのためにも仲良くなりましょ。これが終わったらご一緒に人の歴史のためになることを致さない?……」


 これはまずい方向に……止めねば。


「あ~そうね。でも、僕は賢者だし、まだ大賢者の夢をあきらめていないんだな~。シクシク」

 また、韜晦(とうかい)していらっしゃる。でも、顔が赤いのは言葉と裏腹ですぞ。毒牙からお守りせねばと、固く誓った。


「では、拙僧から。

 情報の収集は素ッ破と歩き巫女殿に。

 工作もお願いいたす。

 情報の伝達はサンカの衆に。

 狼煙台もつくれる場所には作る準備を。

 修験者殿には伝達と共に、体術や山野の走り方生活の仕方などを、大胡の兵にお教えいただければ助かり申す。

 御師殿には他国の商い人・物の流れをお伝えいただければ、拙僧がそれを纏めて殿にお渡しいたす」


「おお~~! 流石、足利学校一の秀才! すぐに(さば)いちゃった。これからもよろしくね~」


 これは下手に口を出さずに智円殿に全て任せた方が良い気がしてきた。荒くれものを御するには、武士では難しいやもしれぬ。たとえ殿であっても。

 秋波を送ってくる女性(にょしょう)からも遠ざけられるから、ちょうどよい。


 しかし、帰り際に殿がちょろちょろと桜女の方に眼をやって、向こうが気付いて姿(しな)を作る度に 眼を逸らし、赤くなっていたのはやはり殿の言葉で「ちゅうにのきせつ」を逃れられていないのであろう。

 殿もまだ14の若侍なのだから。


 某は殿の背中を押して社務所を出た。







 成田と言うと、()()城の一族です!



 どうやら主人公の「ちゅうにのきせつ」は()()厨二の季節ではなさそうです。



 【作者からのお願い】


 続きが読みたい!

 この諜報機関がどんな活躍して大胡を勝たせるのか見て見たい!

 もっとこのエロい姉ちゃん出してほしい!?

 こんな素ッ破の棟梁いたっけ?


 そんな風に感じた方はブクマと★を1つでも結構ですので付けていただくと大変励みになります。よろしくお願いします。

 作者、病弱故、エタらないように★のエネルギーを注入してください!なんとか最後まで書かせてくださ~い




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