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首取り物語:北条・武田・上杉の草刈り場でザマァする  作者: 天のまにまに
北条編開始
3/262

【決戦】:さあ、せんそーの時間だ~




 第1話から二十数年前。

 主人公が()()()()()()宣戦布告する。




 1553年11月下旬

 上野国大胡城南西1里(4km)。

 長野政影(政賢の側使え)



 政賢様が前方に展開し始めた北条氏康率いる兵10000を見ている。

 行軍を終えて野戦をする準備だ。

 桃ノ木川に沿って備えを展開している。


 横陣だ。


「うまくいったかなぁ。なんとか間に合ったようだね~♪」


 そう。ここは桃ノ木川を大胡城に向けて進軍する際の、いくつかある渡河地点の一つ。

 忘れもしない、父が討ち取られた場所でもある。


 大胡勢が後退を繰り返しながら、ちょうどこの事前設営された場所に着陣して準備万端整えて迎え撃つ。


 遅いと追いつかれて大損害。早いと他の渡河地点を探られて迂回されてしまう。

 この陣地ならば、2200の大胡勢でも5倍近い10000余りの北条勢に対抗が可能であると殿はおっしゃる。


殿軍(しんがり)の後藤様が手際よく」


 我が大胡勢最強の備えを率いる、家中一等の印・朱槍を与えられている猛将だ。

 今までに何度も北条の備えを突き崩している。

 正しく北条から最大の警戒をされている人物でもある。


「さすがお仁王様だね。焼酎を1樽上げなくちゃ。ま~た荒れるなぁ。酒乱には飲ませたくないけどねぇ~」


 いつもの癖で殿は頭を傾げ、茶筅髷をいじっている。

 また整えて差し上げねば。この戦が終わったなら……。

 おっと、このような言い草は「旗を立てる」からいけない、とかおっしゃっていたな。

 まずは、目の前のことに全集中だとも。



 風が強くなってきた。

 右手の赤城の裾野から吹き降ろす赤城おろしが、殿の陣羽織をはためかせる。

 流石にこの高さでは吹き(さら)しでなくとも体が風に持って行かれる。


 ここは2間の高さがある、四隅を杉の丸太で支えた急造の物見櫓だ。


 前後左右には手を掛ける横木をつけているが普段でも足がすくむ高さ。全面には矢盾が固定されている。しかしこの強風では人によっては真っ青になって何も考えられないであろう。


 だからといって、大将が物見をするという突拍子もないことをする大名はいない。       


 我が殿以外は……


「くれぐれも矢盾の上には乗りださぬようにお気を付けくださいませ」


 殿は自分の保身には、とんとご興味がない。だから某が片時も離れずにいること。これは亡き父の遺言でもある。

 そうでなくても某はそう致すが……


 この方を守りたい。天寿を全うさせたい。そしてどのような生涯を歩まれるか見てみたい。故に、できる限り仔細に書き残すつもりだ。

 なぜならばこの方は、「面白い」のだ。全てが奇妙奇天烈で何を始めるか全くわからない。


 たった12年で7000人程度の大胡領を18万もの人々がにぎわう街にしてしまった。これからも、もっと面白いものを某に、皆に見せてくださるに違いない。


「政影く~ん。日記、書かなくていいの~?」


「殿がそのような格好でおられますので、某が常に太刀を抜けるようにせねばなりませぬ」


 殿はいつもの如くとても軽装だ。兜もつけず、皆に「これだけは!」と言われて一番軽い大胡胴を申し訳程度に身に付けている。

 勿論、太刀も佩いていない。


 理由を聞くと、


「政影くんね~。僕がそれ振り回して何か役に立つと思うかい?」


 と、ひとさし指を縦に突き出し、左右に振りながらおっしゃる。

 殿は、童の頃から全く武技は身につかない方だ。師匠である上泉殿もお手上げと、あきらめている。


「とにかく、飛んでくる矢は任せたよ~」


「鉄砲の玉以外は切り捨てまする」


 いざとなったらこの人一倍大きな身体で防いで見せる。


「よろしくね~♪」


 某はこちらの方を振り向いていた殿よりも早く、その異変に気付いた。


「殿。動きましたぞ」


 敵の後備え2000程が、右手に進路を変えていく。


「あ~そう来るよね。普通は」


 後備えの進路には、上泉城がある。そこを抜けば一気に我らが故郷大胡。城を迂回したとしても、時間はかかるが2000ならば山道の進軍、無理ではない。




 広範囲の地図です

挿絵(By みてみん)



 地図です。

挿絵(By みてみん)





「一応、仕掛けはしてきたけど、使いたくないな~。最後の時まではね」


 上泉城は小さい。

 詰めている兵も農民兵200だ。士気は高いが、10倍の敵にどこまで持つか……


「さて。氏康くんが仕掛けてきたんだから、そろそろこっちも動こうかな。早くかたづけてお家で作りかけの大皿に絵付けをするんだ」


「殿、それは旗を立てる、というものでは?」


 殿は、はっとした表情になったのち、照れ隠しか、また髷をいじり北条方を向いて こうおっしゃった。


「フラグは折ればいいっ! 秀胤! 皆に演説する! 準備を」


「はっ」



 参謀の上泉秀胤殿が、伝声管のついた巨大な拡声喇叭を用意した。


「全員! 傾注!! これより殿からお声を賜る!! 」


 秀胤殿から渡された伝声管を右手に、左手を後ろ手に組みつつ殿は胸をそらし。


「え~、ごっほん。

 あ~あ~、大胡のみなさ~~ん。

 聞こえてるかな~?

 これから大事な決戦がありま~す。

 兵力差に尻込みしている人います?

 あの北条氏康だから怖い人もいますか?


 でも、大丈夫。安心してね。

 私たちは負けないよ。

 負けないように12年間、皆さんと一緒に頑張って準備してきました。

 自信をもって戦いに臨みましょ~。


 ではっ! 目をつぶって深呼吸。吸って~吐いて~

 自分に内なる鬼神を呼び起こせ!

 此処を先途と命を燃やせ!

 家族のため、未来のため、何でもいい。

 守れ、護れ、燃え上がれ。

 敵を叩き潰せ!


 大胡魂を見せてやれっ!!」


 ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!


 ずんっずんっずんっ!!


 2200の雄たけびと思えない大音声が。


 4400の足が踏みならす地響きが河畔を揺らす。


 いったい、この19歳にしては小柄な体躯のどこからこのような全身を震い立たせる大音声を出せるのだろうか?


「さ~て。せんそうのじかんだ~」


 軽いのか重厚なのか、一目では判断付かない存在。

 まったく、よくわからぬ人だ。

 それでいて人心を一気に掌握する力。


 これだから見てみたい。この方がどこまで行くかを……最後の最後までついていこう。この方の夢『国家というものを造る』ことが出来るのかを確かめるため。



 巻きあがった土煙が左に流れていく中、砂塵が目に入らないように額に手を当てて敵陣を見据えた。

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 1990年5月22日:JBCTV国防軍総合火力演習中継


「本日快晴の中、ここ北海道旭川射爆場にて、今年で第300回目の記念すべき国軍総合火力演習が行われます。




 ……まず第5師団の索敵ヘリによる機銃掃射から始まりました。

 ヘリのエンブレムは猛犬、愛称は猛犬連隊……


 ……次に第11師団所属のレンジャー部隊HIKITAによるラペリング…‥

 左腕のエンブレムは「刀」と「影」です。


 ……続きまして国軍最大火力を誇る第2師団の射撃です。

 89式戦車の砲塔には龍の字にKOREとロゴが入っています。


 ……4両の88式重機動歩兵戦闘車から32名の隊員が降車しました。

 歩兵用装甲服を着用しています。その左肩には赤いパットが……


 ……南から4機の戦闘ヘリが飛来しました。

 第1空中機動旅団です。これは別名「緑の狐」と呼ばれる機動打撃専門の部隊で……


 ……FA-14Bの4機編隊が飛んでまいりました。これは去る3度の湾岸戦争にて累計1088回の出撃で1機も被害が出なかった幸運を持つ第2飛行攻撃戦闘団です。

 この幸運の始まりは政賢公に仕えた……


 …‥その援護をするべく、上空にて空中戦を演じるのはF-88Aを駆る通称「赤備え」第1飛行戦闘団です。

 エンブレムは「赤い虎」。その源流は政賢公の第1期四天王に惜しくも名を挙げられなかった…‥



 …‥さて演習の大取りは北海道、いや日本の守護神といえましょう、歴戦の第7機甲師団です。

 その戦車の砲塔には仁王様の顔と共に【官】の一字。その意味を知らぬ者は多分ここにはいないことでしょう。

 このエンブレムの下、世界各地で激戦を潜り抜けてきた者たちが連綿として受け継いできた魂の咆哮をお聞きください!!」







 このシーンは第113話で回収します。その後怒涛の対北条決戦です。

 もしよろしかったらお付き合いください。そこまでは戦場シーンが3回。あとは内政外交技術チートターンです。


【作者からのお願い】

 続きを読みたい!

 大胡って何処の大名?

 どんな戦い方するの?

 この世界って今と違うよね?


 そんなことを思われた方ブクマと「一つでもいい」ので★を付けていただくと大変励みになります。よろしくお願いします。

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