【確変】最強?一族、参上!
1993年7月31日:学校法人大胡学園創立380周年記念講演会講演録から
「以上の様に、大胡政賢公は戦国の世に数多の孤児・浮浪の民をお哀れみなさり、この大胡学園の前身である華蔵寺の公園をお創りになりました。
その当時としてはあり得ないほどの厚遇と教育を施し、後の天下統一とその後の治世の礎を築いた人材を数多輩出しました。
その教育の任に当たったものは……」
1993年8月29日:上野国龍造寺子育て青柳大師ホームページサイト
「……当時の住職賢祥に、大胡政賢様が関東各地の孤児を集めて欲しいと依頼され、当時、龍蔵寺と呼ばれていた当寺に寄宿学校を開設しました。
その後、その規模が大きくなり華蔵寺公園へ学校は移転した者の、ここから巣立った人々が天下を平定するために大きく貢献したことから、名称を龍造寺と改めました。
現在でも、地元では【子育て大師様】と呼ばれて親しまれています」
1546年7月中旬
上野国大胡城
長野政影(主人公の身の回りの世話もする祐筆? おしめの世話はしない模様)
殿にお目見えを求める武士が最近増えている。
ここ5日間は先の川越の戦後1か月足らずで陥落した松山城から落ちてきた、元扇ケ谷上杉家の家臣団との面談・採用で目まぐるしい毎日であった。太田殿、上田殿だけでなく難波田殿の遺臣も含まれている。一時的な逗留を許していたが、そのうち数名が臣従の意向を示している。
今日はただ一人、信州の土豪が訪れている。
福々しい丸顔ではあるが、目つきが鋭い30がらみの武将だ。
「殿。失礼いたしまする……」
奥の居間にある濡れ縁で久しぶりの晴れ間、日向ぼっこをしながら、後ろにひっくり返っては起き上がることを繰り返している殿。子供の頃から、この動作が気に入っているようだ。安心するらしい。だがそのため益々髷がほどける。
「先月は大分プレステージポイント稼げたからある程度ヘイトが集中しても安全マージンはあるね。だからここで悪い子ちゃんポイントが増えても……」
またわからないことをブツブツ言っていらっしゃる。どうツッコミを入れるのが正解なのであろう?
とりあえず、言ってみよう。
「殿はこれから悪い子ちゃんになるおつもりで?」
「うん。ちょっとわるさをしたいなっと……!!?? 聞いてた? わかったの意味!?」
解るわけござらぬ。そう答えると、なぁんだとつまらなさそうにする。まあ、少しはお楽しみいただけ何より。
「改めまして殿。信州の土豪が面会を求めにまいりました」
「信州……武田・板垣・山形・内藤・春日・秋山・小山田……そして真田」
「それでござる。真田幸綱と申すものが、箕輪の業政殿の紹介にて面会を……」
え“、うそっ!?
という、顎が落ちそうなほどびっくりした表情で声を上げられた。
「うん。プレステージ威力半端ないな。確変だぁ! 会おう!」
表の面会の間へいざなう前に、今日の御予定をお伝えしておく。
「その後ですが、青柳大師ヘ向かい、次に赤城神社で件の商人の件で密会。
夕べには華蔵寺の公園へ参る予定」
華蔵寺の再建はまだ1年はかかる。簡易な城郭構造も付属させるので、手間がかかるのだ。その敷地の北に、公園と名付けられた浮浪児などを集めて習い事をさせる施設を作った。ここが4か月後の10月には収容を開始する。今日は初めての視察である。
「おお、そうだね~。楽しみ楽しみ~♪」
「ふぃ~ばぁ~ふぃ~ばぁ~♪」と叫びながら、ぴょんぴょん跳ねて渡り廊下を渡ろうとなされたので急いで止めようと思ったが間に合わなかった。
面会の間へ、いつもの所作で入ってしまっていた。
いつものように曲がって解けそうな髷のまま……
同刻同場所
真田幸綱(別名幸隆。言わずと知れた「危ない一族」の大御所。敵に回すと大変)
早まったか。
まだ間に合う。
「大胡の殿に置かれましては、ご機嫌麗しゅう。御高名を拝察し一目見ようとはせ参じました。以後良しなに。これで満足いたしました。
では、またご縁がございましたらお声をおかけくだされ。業政殿に宜しゅうお伝えくだされ」
席を立とう。こんな餓鬼が、噂の麒麟児なものか! 袴もつけておらず、髷がもう少しで解けザンバラ髪になりかけておる。踊るような飛び跳ね方で、客間に飛び込んでくるとは!
儂を見て、不躾にもじろじろと見ておる。そして止めがこのしゃべり口調。
「ねえねえ。幸隆って名乗っていたことある? 息子さんはまだ2人かな?
それとそれと……」
この連射されるような質問攻めを、円座から乗り出すような勢いで目を輝かせながら行う。折角業政殿が、儂が信濃に帰ると聞いて分家の血筋に面白い童がいるので、見物に行ったらどうかと誘ってくれたのだ。
せめて何か光るものでもないかと目を凝らしてみた。
円座の脇に置かれていた、肘掛けのような台(作者注:脇息です)を前に引き寄せ、その上に両肘を乗せてこちらを嬉しそうに見ている。何やら、童がお気に入りの玩具を眺めているような眼だ。
気持ち悪いわ。
その斜め後ろには大男の側使えが控えており、髷や服装を整えて取り繕おうとしている。
いかぬ。単なる甘やかされている小僧だ。
これが
「川越で僅か150の手勢で北条勢を後退させた猛将!」
「大胡に莫大な富をもたらしている商才の持ち主!」
「負け犬の敗残兵にも大量の兵糧と酒をふるまってくれる仁将!」
であるものか!!
誰か違うものと間違えられているか、それとも全くの贋か?
がっかりするとともに、自分に憤りを感じえない。危うく業政殿の遠縁ならば頼れる人物なのかもしれぬと、仕官も考えておったのが情けない。こうと分かって居ればそのまま勘助殿や祢津殿のお言葉に甘えて晴信殿に直接会いに行くべきだった。
「ねえ、これから晴信ちゃんとこ行くんでしょ?
晴信ちゃんをどう思う?」
「晴信ちゃん」と呼ぶことには呆れたが、これから恥辱を堪え、儂を上田から追い出した武田に臣従する気でいるのを知っているのか?
業政殿にも確とした返事はしておらぬが。
「晴信殿はしぶとく賢明な方でござる」
無難な返答をしておいた。
すると、急に大人に変化したようにこの童は言いおった。
「暗い人には暗い人が集まる。暗い人には暗い未来しかない」
後の世に「暗人」という言葉が流行ることなど、この時は知る由もなかった。
「そっちに行く前に、明るく楽しいところを見物していかない?? 美味しいお酒もあるし、きっと勉強にもなるよ~♪」
確かに今、信州は最も戦乱が激しく、飢饉で困窮を極めている。その悲惨な地方を切り取り収めようとしているのが晴信殿だ。暗くなるのも当たり前よ。
だからと言って、ここ上野は明るいとも思えぬ。先だっても関東管領家が東西南へと侵攻していたではないか。しかも北条に大負けした。逃散浮浪の民も多いと聞く。確かにこの大胡に入ると小奇麗な街並みになっていたが規模は小さなものだ。
「これから領内で色々と内政に工夫を凝らしているとこを視察するけど一緒に見にいこうよ~。
武田への土産話にもなるでしょ?」
それはそうだ。何処の大名もほかの領土の情報はほしい。土産にはなるか。正々堂々と間者ができることなどそうそうない。
「では、後学のために拝見仕る」
ここで一世一代の過ち? 大英断? をしてしまったことに後で気づくのだった。
1546年7月中旬
上野国龍造寺青柳大師
賢祥(お寺の名前まで変えさせられてしまった可哀そうな人)
大胡の殿に久々にお会いした。もう12になられるのか。お会いして早10年。何とも偉大な足跡を作りつつある。拙僧に関係のあることだけでも、普通の坊主には生涯かけても決して成しえないほどの事が為されつつある。
「おしょさん。おひさだね~。旅は楽しかった? 何人ぐらい引き取ってきたの?」
殿には1000貫文近い浄財をいただいた。それを各地域の天台の寺に預け、身寄りのない者に手を差し伸べてもらうことをお頼みした。その後、落ち着いたころに再度お願いして、大胡の殿のためになりたい者を集め選別したのだ。
孤児らは10歳までの子に限ったが、この龍造寺の敷地に隣接する林野を使い建てた(簡易ではあるが)学び舎に収容した。最近は「子育て大師龍造寺様」と呼ばれておる。来年にも収容ができなくなるので、華蔵寺付近の公園に収容できない年長の者を移動させる予定だ。
「和尚様、その方は何方です? もしかして大胡のお殿様??」
「きっとそうじゃ。あの福々しいお顔! まるで達磨さまじゃ!」
「達磨さま。お助け下さりありがとうございました!!」
皆、殿の隣におられる武士の方へ頭を下げる。それを見た年長組の賢さに秀でた娘が他の子らを叱った。
「これ。みんな、間違えちゃダメでしょ! 大胡の殿さまは私と同じ12です!」
「あ~、そうだった」
「間違えちゃったよ」
「あのおじさんもいい線いっているのになぁ」
「紛らわしい」
口々にはしたないことを言う。子供だから仕方ないが、まだまだ躾が足りぬな。
「松風さま。いつも誠にありがとうございます。お陰様でここにいる子供たち55名。よく食べよく遊びよく勉学をして暮らしておりまする」
大胡の殿はそれを聞き、我がことの様にうれしがった。これが日ノ本全部の子に行き届けば、平和になるのかな……と。
そして
「戦は嫌だなぁ、人が死ぬし、きついし痛いし怖いし。ゲームなら楽しいんだけどね」
と、独り言を仰る。
「とにかく! 皆、ご飯美味しいかい~?
お残しはいけませんで~♪」
「は~い」
「まあ、勉強や運動も大人になったら絶対便利だから頑張ってね~」
「は~い!」
よしよし、と、みんなに手を振りながら、拙僧の庫裏に向かい詳しい状況を聞かれるのであった。
同日
上野国二ノ宮赤城神社
マシラ(主人公に大事にされている筈なんだけどなぁ。その様子が見られない)
今日は神主殿に呼びつけられここに来ているが、どうやら大胡の殿との秘密の会合が持たれるらしいな。
大胡の殿の命でいろいろな神社にお世話になっているが、なんということはない伊勢神宮・鹿島大社とは比べるべくもなく、いや浅間神社にも遠く及ばない規模であったか、この神社。
しかし上野国では大きな勢力を誇る二ノ宮である。ここを拠点に走り回れるのは感謝じゃのう。
「いつも、多額の御寄進いただき誠に感謝しておりまする。必ずや松風丸様に神の御加護がお降りしましょう」
そんなに都合の良い神さんなんじゃな。銭に左右される神さんはあまりありがたくないのう。
「して、今日は何がご用でござりまするかな?」
「うん。えとね。そろそろ越後の商人、蔵田屋さんを紹介してもらおうかなと」
殿さんの隣に座っとるおさむらいがびくっとしたなぁ。
何か知っとるんか?
「蔵田五郎左衛門殿ですかな?
あの豪商にして越後長尾家の御用商人の」
「そそ。その人。もうあちらさんも、こっちに来たくてしょうがないんじゃないの? 繊維つながりで交易もできるし~。神主さんなら、お伊勢さんの御師さんにコネあるんじゃない? できればそこを絡めてお願い~♪」
ますます隣のおさむらいが、殿さんの方を青くなって見ている。たまにこっちもチラチラ見てくるねぇ。
こええ、こええ。
「わかり申した。出入りの御師の方に手配をお願いしましょう」
「ありがと~。今日はこれだけ~。じゃあ今年の初穂料は弾んでおくね~。瀬川ちゃんに言っておくから~よろぴこ♪」
なんでい、わしは関係なしかい。
来てそんしたなも。
同日
華蔵寺建立予定地西方半里
冬木元頼(益々忙しそうな産業大臣)
先ほどまで、このあたりの施設を、殿にざっと説明しながらお連れして回っていた。
磁器用の登り窯
焼酎の蒸留施設
石鹸用松根油の製造現場
生糸の糸繰り場
生糸を取った後の蛹で鯉を養殖しているため池
そこかしこの建築現場
治水途中の桃ノ木川や船着き場
そして本格的に稼働し始めた高炉と反射炉
精錬した鉄を鋳型に流し込む作業場
皆、元気に溌溂として働いている。殿が来ると皆、振り返り笑顔で手を振る。殿も負けずに手を振り、たまに駆け寄ると、
「これなんじゃ? 工夫したねぇすごいなぁ。後で瀬川ちゃんに金一封届けさせるよん♪」
などと話しかけている。
この後は街の酒場で同行しているお客と飲むらしい。殿は飲めないが、お客が代わりにガンガン飲むであろう。もう申の刻を廻っている。そろそろ酒場は盛況になる時刻だ。楽しいだろうな、みんな。
同日酉の刻
上野国大胡城下居酒屋吉兆
真田幸綱(調略される丸顔達磨)
言葉が出ない。まず、なんなのだ? これから他国へ仕官するはずの武将にここまであからさまに領土を隈なく見せるとは!?
大体、調略指示に立ち会わせるとか正気か? サンカを使っていることがばれたらこの先どうするのじゃ?
まあ、全部見せてはおらないであろうが、これだけの情報、売れば数年遊んで暮らせるわい。
それに……
甲斐や信濃はおろか、富裕を誇る今川の駿府よりも店に物が豊富に置かれているのでは?
一番驚いたのが、鉄を大量に作っていること!? あれは相当多くの武具が簡単に出来上がるであろう。作られている商品もよく知られている焼酎だけでなく、生糸や石鹸、油類。これは相当な銭が入る。
噂は本当であったか。きっと武勇も噂通りなのであろう。
何よりも納得がいった噂は
「仁将」
であった。
出会う領民領民が松風丸に手を振りにこやかに笑い顔を見せる。今も目の前で、武士も百姓も関係なく酒飲んで騒いでおる。
「暗い人には暗い人が集まる。暗い人の未来は……」
松風丸、いや松風様はこう言いたかったのだろう。
「明るい人には明るい人が集まる。明るい人には明るい未来が待っている」
と。
そして儂にも明るい輪の中に入れば?
と、誘っているのだ。
負けたな。
とんだ人誑しであったわ。
儂も輪に入って飲み明かそうかの。
ふぃーばーーーー
どえらい大物が来ちゃいました。
きっと松風君も
「真田一族と素ッ破、ゲットだぜ! 」
と言っているかと。
真田幸綱は正史では武田に臣従した時期が不明確です。
とりあえず確実なことは長野業政の御厄介になっていたこと……くらい?
山本勘助か、祢津さんちからの勧誘があったとかないとか……
プレステージ(威信)ポイント、悪い子ちゃんポイント(BBP)……作者は重度のパラドゲーフリークです(笑)
【作者からのお願い】
続きが読みたい!
HoIが好き!
いやいやヴィッキーが好き!
何を言うか!素ッ破であろうが、ここは!
そんな風に感じた方はブクマと★を1つでも結構ですので付けていただくと大変励みになります。よろしくお願いします。
作者、病弱故、エタらないように★のエネルギーを注入してください!なんとか最後まで書かせてくださ~い