表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
首取り物語:北条・武田・上杉の草刈り場でザマァする  作者: 天のまにまに
★★初戦闘だゾ★★
24/262

【松山】1:5で勝利 ♪


 弩弓って、調べてみると使いまわしが悪い上に、あまり威力がない。

 日本で水牛の角とか入手不可なので材質が……色々と大胡は試行錯誤します。

 でも長弓は訓練に数年から10数年かかりますから、仕方ないです。

 軽量化して数持たせます。



 1993年7月7日:月刊アームズワールド8月号・アンブッシュ特集

【第2章クロスボウ】


「先に述べたように、迷彩性・静粛性を極限までに高めることで伏兵の成功性が高まる。

 その中で静粛性を追求した装備を見てみると、古代から使用されている弩弓が最適解だともいえる。

 まずは、音のしない投射武器で携帯のできるものは、弓と投石である。

 敵に気取られないためには伏射が可能なクロスボウが圧倒的に有利である。

 しかし連射の可能なものが……」





 1546年4月21日午の刻(午前11時)

 武蔵国松山城南方30町(3km)新江川・市野川合流地点

 長野政影(松風用指揮戦闘車両です)



 前方に流れる新江川を、多分最後であろうお味方の兵が渡ってきた。

 殆どの兵が装備を捨てて、重い足取りで松山城を目指す。上野勢は、さらに8里以上の道のりを踏破せねばならぬ。

 扇ケ谷上杉家の本拠、松山城が見える地点まで来てようやっと後ろから北条が追ってくる恐怖から逃れることができたようだ。ここに仮陣屋と補給処を作る差配をした殿の先見性に尊崇の念を改めて胸に刻みこんだ。


 荷駄隊の佐竹殿の配下が集積しておいた米を炊いている。荷駄隊は昨日のうちにここまで後退し米の炊き出しと飲水の配布、(ほしいい)をできる限り多くの兵に手渡している。


 昨日の昼間の戦さで入間川まで撤退したのち、だれも我が大胡勢の消息と命令・布陣を確認しなかった。無視するというよりも気にもしなかったのであろう。もしくは朝とは全く違う右翼におり旗差し物が全くなく、ひっそりと休憩しているからなのか?

 本陣との距離が遠かったこともあろう。いずれにしてもお味方の気の緩みが甚だしい。大胡勢は密かに陣を払った。


「もう十分働いたよね。御恩分は返したと思うよ。サビ残はブラックだいみょ~」と、殿は無断の撤退を全く気にしていなかった。


 一応、松山城まで後退し、焼酎や兵糧を取りに行き他陣に届けるとの知らせを本陣へと使い番を走らせている。遠目で酒樽が積み重ねてあるのは誰にでも見えるであろうから不審に思うものはいない。

 大胡勢は未の刻(午後1時)には入間川まで到達し、酉の刻(午後5時)にはそこを出立、戌の刻(午後10時)頃には、先だって設営した補給処に帰陣した。街道には道に沿って刺された竹に白い布が括り付けられ、夜間行軍を助けていた。


 それから寅の刻(午前4時)まで休息を取り、夜戦の結果を待っていた。勿論、お味方勝利の際には祝いの酒を持って行くわけだ。そして実際は殿のお見立て通り、お味方の大惨敗との報がもたらされる。

 改めて敗残兵の収容の準備を始め今に至る。



「さて。たねちゃん。そろそろしのちゃんの備えを先陣で、伏撃地点まで前進しようか。みんな休めたかな~?」


 皆、代わる代わる休息を取り、もう一戦を行う準備をしていた。


「全員、準備が終了しておりまする。いつでもご下知を下され!」


 上泉秀胤殿が勢いよくお応えする。


「では、全員出発してちょうだいね」


 事前に指図された作戦では、新江川より南東3町の右手小さな湿地を避けてこちらに伸びる街道を、左手の雑木林にて東雲殿の備え50が伏撃。街道上、新江川の畔には後藤殿の備え50が伏せている。その前方、雑木林と湿地の間で街道上の小さな隘路となっている地点に、大胡是政殿の50。


 是政殿の備えには多数の「扇ケ谷上杉家の旗差し物」が立てられている。松山城の城代と交渉して借りたものだ。普通なら旗差し物を貸し出すなど考えられぬ。どうやら大敗北を喫し難波田殿も討ち死したことにより、冷静な判断が下せなくなっているのだろう。

 そのお陰で南からは200以上の備えが隘路に布陣しているように見える。追っ手が最初から大迂回しなければ策が嵌まるやもしれぬが……いや、殿を信じよう。


「見えたね~追っ手。あの家紋は誰~?」


「はっ。垪和(はが)左衛門太夫配下。戸田頼母200」


 秀胤殿、相当家紋を調べたらしい。いつもながらの勉強家ぶり、恐れ入る。


「いいねいいねぇ。あてずっぽに準備した割には当たったね。

 これで言葉合戦、勝ったな! 先おめ」


「殿。それも旗を立てる台詞と伺いましたが……」


 殿は「おぅふ」と唸りながらも気を取り直し、上にあげていた右手を前方に振り下ろし前進の合図をする。


「ぱんつぁ~ふぉ~♪」



 まったく意味が分からず。

 とりあえず、秀胤殿が各備えに使い番を走らせる。






 1546年4月21日午の刻(午前11時)

 大胡是政陣南東4町:垪和勢本陣

 垪和(はが)左衛門太夫(北条先手衆、伊豆衆半数を指揮)



 お味方大勝利の余勢を駆って、敗走する敵を追撃するように仰せつかった。3刻程、兵を休めた後、松山城に向けて出立した。此度の戦において、儂の軍勢が一番功を上げていない。といっても、此度は「首は討ち捨てにせよ」との命が出ており、感状などは期待できないが。


 ただ、儂ら伊豆衆は坂東に来てから、どこの領地をもらうかまだ決まっておらぬ。「できれば此度の追撃戦で松山城を」と思わざるを得ない。

 


 無理はできぬが、眼前の敵の殿(しんがり)200が隘路(あいろ)(通れるところが狭くなる要衝)に布陣するも、回り込めば包囲できる。

 特に右手の雑木林、長柄は無理でも太刀を佩いただけの雑兵が通り抜けて向こうの背後に出れば、一気に崩れるだろう。正面は一当たりして様子を見ればよい。


「物見は帰ったか?」


「いえ。まだでござる」


 おかしい。もう半刻も過ぎている。大した距離でもない。討ち取られたか?

 もう一度物見を出そうと指図をしようとした時、敵陣より大声の罵詈雑言が聞こえてきた。


「垪和勢は宿無しと聞く!

 伊豆から追い出されて、いいように使われ、すり減らされて終わりかのう! 可哀そうに!!」


 ガハハハ!!



「今頃、北条の本陣は大宴会じゃのう!!


 垪和の者は除け者(のけもの)だなあ~~!!


 可哀そうにのう!!」


 わっはははっはは!!!



「聞けば、此度の戦では垪和の者は、味方の後ろでぶるぶる震えていて手柄が全くなかったそうな!!

 不憫じゃのう!!!」


 ひ~ひひひ!!!!



「おお、それでこの松山城を取りたいと焦ってここまで来たのか!?

 さもしいの!!!!」


 わ~はっはっはっ!!!!!!



 言葉合戦で負ければ戦は半ば負け。既に配下の者は、怒り心頭に達している。儂も気分が悪いわ。


 とりあえず朝定の最後を大声で揶揄(やゆ)ったが、殆ど効いておらぬようじゃ。益々、罵詈雑言がひどくなる。もう配下を押さえられぬ。

 一当てするか。



 何をやっておる! 

 先ほど儂の命が届いた戸田隊200。

 弓兵を先頭に前進。弓で制圧しつつ長柄が前進。無難な攻めだが。

 隘路を左右に横断した幅1間ほどの水路。それに沿って街道の左右に、小木を根元から切り枝を鋭く切り取ったものをこちらへ向けて固定している。そのため中央の幅10間程度の狭い場所で長柄で競り合うことになった。



 地図です

挿絵(By みてみん)



 敵は旗を増やし偽計を謀っていた。実際は50人程度だろう。

 長柄の数にして3倍とみて強引に押し込んでいる。敵の長柄は、なかなかしぶとい。こちらの方が手負いが増えている。時折、がくんと膝をついて倒れるものがいる。何が起きている?


 それでも開戦から四半刻も過ぎないうちに、敵の長柄隊右翼が崩れた。後退する敵に戸田の大声を合図に追撃が始まる。その後ろに控えた第二陣も隘路に突入した。右手の雑木林にも右翼100が侵入していった。こうなるともう総攻めになるしかない。


 儂の本陣も前に進めた。第二陣までがすべて隘路を抜けたとき、右手の雑木林から数十名の敵勢が立ち上がり長槍を振りかざし、あろうことか投擲した。

 それも三投も。


 桶側胴は脇が弱い。右からの投げ槍に襲われた第二陣は崩れた。それ以前にも密かに弓を使っての狙撃をしていたようだ。これで多くの指揮官を失った第二陣は壊乱した。


 その奥に突入していた戸田勢は孤立した。動揺する戸田勢の正面右翼から大音声の鬨の声とともに70余りの敵兵が突入してきた。

 先頭の2名の武者が兵をなぎ倒している。隘路の向こうに突っ込んだ500ほどがほぼ無力化された。これは右翼が横槍を入れるにしても、成功の見込みがない。戻したいが、間に合うかどうか……


 儂も焼きが回ったわ。右に注意を逸らされすぎていた。左の湿地に今まではなかった足場が渡されていた。それを渡って仰々しい甲冑を着こんで大盾を振りかざした50人ほどの一団が横一列で近づいてくることに気づくのが遅れた。


「左、敵徒武者らしき備え50! 接近!!」


「左翼迎え撃て!」


 50余りの弓兵が連射するも、盾に突き刺さるか鎧に刺さるのみ。貫通はしていないようだ。150ほどの左翼が正面から長柄を突きだす。しかし、こちらの長柄を大盾に体重を載せ地面に圧迫して前進。そのまま厚手の段ビラで長柄足軽をぶち倒して、更に前進してくる。


 瞬く間に左翼が壊乱した。


 もう儂の本陣まですぐだ。長柄を左に向けるには遅いか?

 遅いと思いつつも方向転換の下知をしたのがまずかった。雑木林での戦闘に勝ったらしい敵左翼が右手から攻め寄せる気配を見せた。唯一の予備、後備えの100をこれに充てる。


 左手がまた壊乱した。並足だが敵の鎧徒武者の集団がついに儂の本陣5間まで到達。旗本が応戦するが、敵は槍を払ったのち大盾を捨てて背から小ぶりな弩弓を降ろしそれを構えて斉射しながら突っ込んでくる。射た後弩弓も捨て去り、頑丈な大太刀を振り回す巨躯の鎧武者集団。


 これはかなわんわい。

 悔しいが、ここは総退却しかないな。


 愛馬の首を廻らし、儂は引き鐘を鳴らさせた。





 

 一応、正史でも垪和さんは先手衆の旗頭です。今後はどうなるかは断言できませんw



 胴田貫。

 この作品では結構重い段びらとなります。

 大盾の使用法は、あとで説明がありますが、ご想像にお任せいたします。

 じゆうのつばさ~~~


 ちなみに松風君は、タンクデサントではなく政影デサントです^^;

 パンツァーフォー!


 


 前は「ぱんつのあほ」と書いていました。分かる人、同志よ!


 【作者からのお願い】


 続きが読みたい!

 ああ、あれね。眼鏡の通信手の女の子。

 本格的な勝戦が見たい!

 大胡の戦い方を見て見たい!


 そんな風に感じた方はブクマと★を1つでも結構ですので付けていただくと大変励みになります。よろしくお願いします。

 作者、病弱故、エタらないように★のエネルギーを注入してください!なんとか最後まで書かせてくださ~い


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 胴田貫はロマン! 正しい使い方をよく知っておられる!
[一言] 日本で弩やクロスボウが流行らなかったのは、日本では「矢竹」が広範囲に自生しているので、弓の矢の製造コストが、弩やクロスボウのボルトの製造コストより桁違いに低かったからです。 https://…
[良い点] まともに戦わないのが良き♪ [気になる点] クロスボウって弱かったっけ? 現代仕様ではあるけど、ハンティング女子がヒグマを撃ち抜いて仕留めるくらいの威力はありますよ〜 火縄銃と役割がダダ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ