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首取り物語:北条・武田・上杉の草刈り場でザマァする  作者: 天のまにまに
★★初戦闘だゾ★★

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【旋回】敵の後方へ・・・・

 米軍の陸戦教本って素人が読んでもわかるように書かれているからいいんですね。

 ……英語読めないから良さが半減(^▽^;)



 1989年版・日本国防軍陸軍野戦教本

【行動の基礎】


「以下の対策を講じてから移動してください。

 1:移動地形の選定。隠れやすく火災になりにくい場所を選びましょう。

 2:敵のキルゾーンを避けましょう。十字砲火を受ける地帯は避けましょう。

 3:分散。一度の敵方射撃で大ダメージを受けることは避けましょう。

 4:警戒。部隊の周りには警戒の役割を持つ兵員を配置しましょう。奇襲を防ぎます。

 5:敵の視界遮断:夜間行軍・煙幕使用や制圧射撃・迷彩で、敵から見つからないように、もしくは敵の拘束をしましょう……」






 1546年4月20日巳の刻(午前9時)

 武蔵国川越城南方1里(40町=4km)

 上泉秀胤



 早朝に山内上杉勢1万3000は川越城を包囲するために陣を張っていた南西の小高い丘から降りる。

 南西半里(2km)に布陣する北条氏康率いる8000を目指し、鶴翼の陣にて前進していく。

 北条軍は魚鱗の陣に陣を組みなおし迎え撃つ態勢である。

 我が大胡勢は……鶴翼の陣の最左翼(東端)だ。

 鶴翼の陣は兵数の多い側が、少ない側を包囲撃滅する陣。

 対する魚鱗の陣は、精鋭の先鋒を先駆けとして、敵方の中心に攻撃を集中して主力を撃破することを目的としている。

 そして大胡勢は最左翼から、敵方右翼の南を回り込み敵後方に出る事が評定で決められた。

 勿論、だれでもわかることだが敵陣奥まで深く進むことで、ほとんどお味方から分断・孤立する。


「ここまで来たら覚悟を決めるしかないのう、各々方!」


 後藤殿が、片手で朱槍を地に突き立てるようにして仁王立ちをする。

 ご自慢の鐘馗髭が逆立つのが見える。

 他の方々も、

 武者震いをするもの

 北条方をねめつけるもの

 顔を両手で引っぱたくもの

 それぞれの方法で気合を入れている。


「だいじょぶだから~。

 気合を入れてもいいけど、せめて1刻はその気合を持たせてね~」


 殿の気の抜けた言葉が、皆の肩の余分な力が抜けてちょうどよい緊張を纏っている。


「さて、これからの方針を説明しますね~」


 皆が殿の言葉を、固唾を飲んで待っている。

 某も一言も聞き逃さないように、構える。


「今、物見をしている人が戻ったら敵の小荷駄を狙います!……と、見せかけて~、南西に駆け抜けますね~♪

 だから今までの訓練を存分に発揮して、駆けましょ~ね」


  プレテーダービー

 などと呟いて走る真似をしている殿。

 今は、長野殿が背負っている背負子しょいこの上に立って、北条勢の布陣を背伸びして眺めている。


「殿!物見の者が戻ってまいりました!」


 大胡是政殿の配下の者が、警備を解いて物見を招き入れる。


「北条方小荷駄。富士見野方面、約1里に集結中。北条方の後備えとの距離半里」


「ありがとね!これ少しだけど、お仲間に何か食べさせてあげてね~」


 殿が物見に出ていた山家の長をねぎらい、小粒金の袋を差し出す。


 あまり興味がなさそうでもあるが、仲間に何かを食べさせることを考えたのか、おずおずと手を出して受け取り懐にしまった。

 単なる物見に対して小粒金一掴みとは?

 殿の感覚がわからない。


「それで、風魔には邪魔されなかった?」


「へい。

 1人も影が見えなかったですな。

 お味方と北条軍の近辺に伏せているやもしれませんな」


 殿は、少し考えた後、山家の長に


「無理のない程度に、風魔の居場所を探ってくれる?

 無理しないでね、くれぐれもね」


 いつもより真面目な様子で殿が仰った。

 諜報部隊がいなくなるのが一番痛いから、とのこと。


「さてと。

 それじゃあ、出陣の合図あったら、お仁王さんの備えから出立しましょ~。

 それに先行して物見を立ててね。

 たねちゃんそこんとこよろぴく」


 某は先に選定しておいた目先の利く兵を10名に指図をした。

 この者たちは軽装で、なめし革の胴着と小手、まむし除けの藍染めの脚絆きゃはん

 そして殿が作らせた合羽という麻で作ったみののようなものを羽織っている。

 頭には上に草を括り付けるための網を付けた菅笠をかぶる。

 この合羽は深緑色に染められており、この季節の風景に溶け込みやすい

 この10名の行動が大胡勢の死命を制する。



 午の刻になった。

 評定では南風が吹く前のこの時刻をもって総掛かりと決まった。

 遂に本陣から法螺貝が響き渡る。

 大胡勢、全員が身構える。

 殿が下馬している長野殿の背中で立ち上がり、右手を横に振り払うようにして合図した。


「これより北条勢後方を横断する。近距離索敵陣形!!展開!!」


 皆、顔を見合わせ

 「なんじゃ?」

 「そんなものあったかの?」

 と一瞬悩んだのち

 「「いつもの殿の戯言じゃな!」」と納得。


 (ダッテコレイチドハヤッテミタカッタンダ)

 小さなつぶやきも合戦の始まる喧騒に消えていく。

 いつかは某も「ツッコミ」とやらができるようになれば良いのだが……


「いいもん。では、とりあえずぜんし~ん!」


 本隊も深緑色の合羽を着こみ、所々に草を付けた大胡胴と大胡笠を身に着け、長柄を構え、背には弩弓2丁という姿で、南方の北条勢右翼へ向け並足で前進する。


 北条勢最右翼が、目の前1町に迫ってきた。

 北条勢の先鋒が上杉軍の中陣とぶつかり合うのが見える。

 ここからだ。うまくいけ!!


「右手より白煙!始まりました!!」


 物見の者が右手の草むらに火を放ったのだ。

 まだ梅雨に入る前の草はところどころに残る枯草とともに、白煙を出して燻すように燃える。

 猫車という一輪車で油を樽ごと持って行ったから広範囲に燃え広がる。

 狼煙のろしに使うシカの糞なども投擲している。

 よし、まだ南風が吹いていない。やや北風だ。

 白煙があるうちに方向転換せねば。


「よ~し、みんな~武器を捨てろ~!」


 なんだか聞き方を間違えると降伏せよとの命令に聞こえるが、これが重要な行動となるのだ。

 長柄を倒し捨て置き、総員左方向に方向転換し、大旋回をする。

 あらかじめその方向を向いたときに魚鱗隊形になるようにしてある。

 大胡の家紋「波に千鳥」の幟も打ち捨てられた。

 普通の国衆では考えられないことだ。

 しかしこれで、我らの姿は北条方から「スッ」と消えたように見えるに違いない。


「左手、敵はおりませぬ!」




 地図です

挿絵(By みてみん)




 物見の1人が必死に駆け戻ってくる。

 それを合図に皆、左に大旋回した陣形にて、南方へ向かい駆け足になる。

 荒起しの終わった田の凸凹した足場も、毎日走り込み下肢を鍛えた我が軍勢は全力に近い速さで踏破し、正面に広がる草叢に至った。

 先頭の兵がなたを振るい通路を作りながら前進する。


 ここまでくると草のくすぶった臭いと白煙も届かない。


 これからは、一瞬でも早く、この敵中から脱出するための徒行軍・約1里40町(4km)だ。


「右手。騎馬10騎程、接近中!その後ろに弓兵100!」


 右手の物見より大声での報告。

 予想よりも早い。

 北条の後備えから差し向けられた一隊だろう。


「殿、いかがなさいまするか?」


 殿は普段は決して見せない真剣な表情で、前方を見ている。

 長野殿の肩においた小さな手に力が入り、爪が食い込む。


「重装歩兵を置いてきたのは痛いなぁ」


 佐竹殿の輜重隊は入間川の渡しを確保するために置いてきている。

 足が遅いので仕方のない選択であった。

 あの備えがあれば一気に押し通れるのだが……


「殿。某がいるのをお忘れか?」


 殿につかず離れす駆けている上泉伊勢守殿だ。

 今日は槍を持っていない。

 伊勢守殿と弟子たち7名を中心とする抜刀隊18名ならば、飛んでくる矢を叩き切り、ものともせず突入して弓兵100名などは蹴散らせるであろう。


「でもなぁ、切り札をここで消耗させたくないし……」


「手札は必要な時に切るべきかと。今がその時では?」


 伊勢守殿もいつもより強腰だ。

 きっと、金山崩れを思い出しているのだろう。


「ここで切るか!

 伊勢ちゃん、抜刀隊用意。

 右翼是政隊、弩弓用意。

 騎馬へ3連射後敵陣突破。

 ほかの者はこのまま駆け抜ける!!」


 慌ただしく準備を終えた我が方の2町先、北条方の弓兵も弓弦を鳴らし準備を整え終わる。

 弓兵には狙い撃ちはできない距離だ。

 弓なりの射撃となる。精度は低い。

 10名の兵が、弩弓だけ体のあちこち括り付けて運搬してきた40丁も含め各自3丁の弩弓を並べる。

 突進してくる騎馬に対し、弩弓から一人に付き3本計120本の矢が向かう。

 征矢そやは鋼の鏃を使用したらしく、馬を射た矢はほとんどの騎馬武者を落馬させた。

 きたなしと言われても弱者は泥水をすすってでも生きのびるのだ。


 その陰に隠れ、急速に敵陣に接近する伊勢守殿の抜刀隊。

 その後を追って50名の是定隊。

 敵の弓兵は抜刀隊を優先に狙っている。

 しかし、5間までは殆どの矢を切って捨てる抜刀隊。

 怯む敵兵に、さらに追い打ちがかかる。

 殿からの号令。


ときの声じゃ~~~~!!!」


 170名の大胡勢、全員の鬨の声。

 それとともに迫りくる総員70名以上の徒兵に肉薄され、弓兵は潰走した。


「いせちゃ~~~ん!損害は!!??」


「1名、腕に矢。かすり傷!」


 瞬時に応答する2人。

 目の前には、もう遮る敵はいないようだ。

 あと30町ばかりで入間川河畔に到達するだろう。


「たねちゃん。大声も武器になるでしょ~~~♪」


 走り征く政影殿の背に乗って胸を逸らし、左手を上に挙げうれしそうな笑顔満開、大声で某に話しかける殿。

 確かに。言葉合戦とはこのことか。

 敵の士気を粉々にすれば勝てるのだな。

 また一つ参謀としての知恵を身に付けた気がする。





エル〇ィン団長、出陣の時の顔が怖い。


 有難いことに最近ぼちぼちと、感想を書き込んでくださる方が出てきました。

 読んでいただけるだけでも有難いのに!

 

 尺は北条編70部、武田編70部、上杉編50部を予定しています。

 既に34部まで書いてあるのですが、松風君が勝手に動き回ってプロットが大変なことになっていますが (^▽^;)

 内政技術チートも自分の力の及ぶ限り、すごく沢山考察してあるのですが、それ書いちゃうと眼目である 戦略戦術関連が書けなくなるので……

 この作品の見どころは「首取り・ザマァ」なので。うひっ。



 <<現在までの考察とそれを考えたストーリー展開例>>

 兵力はたとえ常備兵でも米の収量が実際に上がってこないと、とてもじゃないが安定した兵力にはならない。

 よって農業、特に米の収穫高が増えるまでは常備兵力は1万石で動員できる250名が限度。

 有機肥料のサイクルが出来上がるまでには3年から5年かかる。

 そこから飛躍的に軍備を増強させていく。

 最終的に12年で2200以上の常備兵を備えるまでに至る。

 よって1554年がタイムリミット。

 正史では55年に上泉城が開城している。

 (だから管領様には3年早く生まれてもらいました。ハハハ)

 こんな感じです。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 脱力系ちーと主人公による、言葉遊び [一言] 今のままで良いのでは?やりたいように生き生きと書き上げるのが一番ですよ
[良い点] 殺伐とした戦国の世に、主人公の明るさが一服の清涼剤です。 [一言] このままの進みで良いです。 だから、毎秒投稿して?(笑)
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