表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
首取り物語:北条・武田・上杉の草刈り場でザマァする  作者: 天のまにまに
★★要塞へ歩兵突撃はヤバいゾ★★

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

200/262

【沼田・6】行っちゃうの?知らないよ、どうなっても



 2008年版子供学習総合サイト


【河岸段丘】


「河川に削られた地形の一つ。河川で削られた氾濫原が出来た後、土地が隆起してその後にまた土地が削られて何段にも段丘面が棚のように出来上がっている地形。


 よく見える場所は沼田盆地が有名。ここは何段にも重ねあって出来ていることが沼田城址から見渡せる。更に南部にも多くの河岸段丘が見られ、こちらの方が崖の数が多く登りやすいので現在はいくつかの道路が通っている」





 1559年5月上旬 

 上野国沼田城南方約半里(2.2km)

 上杉景信(結構豪胆なことするなぁ。単なる無謀ともいう)




 左右、東西にそびえる崖が迫ってくるようだ。この崖も20間以上の高さがある。そしてこの谷の狭さ。川と崖の間を通る道がとてつもなく狭い。所々木や鉄の杭を崖に突き刺したような場所に板を通して道にしている。


 以前聞いたことがある。唐国の奥地ではこのような道がよくあるという。その蜀の桟道というものにも似た険しさだ。長柄は置いて行った。

 このような雪解けで増水した利根川に落ちれば遥か彼方まで押し流されてそのままだ。まして甲冑など着ていれば尚更。


 幸いにして敵にはまだ見つかっていないようだ。

 川岸の崖伝いに移動してきた。少人数に分かれての行軍。初めての経験だが、こうでもしなければこの堅城は落とせぬであろう。



「殿。物見が帰って参りました」


 物見が午の門の様子を伝えてきた。

 やはりここも堅牢な造りか。こんくりいとというもので覆われた壁。これが曲がりくねっているらしい。その正面には大砲。直進して登ってくる敵に対して発射すれば1発で数十人が負傷するであろう。


 西門は何か対策は出来たのであろうか?

 いくら豪勇をもってなる柿崎殿の手勢でも単なる的にしかならぬ。


 こちらは手槍しか持てない。弓矢と弩弓も少々。あっても殆ど意味がないであろう。牽制できればそれだけでよい。矢盾は必需品故無理して小型のものを持たせた。鉄と藤蔓を編む大胡式のものは使いやすい。だが至近距離での鉄砲を防げるかどうかは不安が残る。兎に角、城攻めで最低限必要になるものを持ってくるだけしかできなかった。



 ようやっと狭い谷を抜け渡し場へ来るも、渡ってしまえばすぐに見つかってしまう。午の門は諦めた。1200はここで囮になってもらう。本隊800は南の壁面を登る細い道を目指す。


 そっとそっと移動したが、細い坂道手前3町ほどは遮るもののない畑地となっている。ここからは矢盾を前面に突撃だ。我ら栖吉長尾勢(注)は決して弱くはない。そこらの軍勢など攻めかかれば一当てで潰走させるだけの力を持っている。しかし此度の戦、大胡の鉄砲と大砲が敵だ。これを避けるためにこの狭い道を進む。


 果たしてどれだけの銃撃を受けるか?

 それで勝負は決まるであろう。


 

「敵の櫓で動き。見つかった模様」


 先手の者が5間もいかぬ間に見つかった。急いで走る。道は曲がりくねっており、上から丸見え。銃撃がある。弩弓の射撃も混じる。その中を、矢盾を上にして突進する先手。


 先頭を走る武者が坂を登り切った!

 左右には2間を超す壁がありその上から物を落として来る。意外と銃撃は少ない。


 行けるのか!?


 私も坂を登り口のところまで前進する。

 既に手勢200は坂を登っているところだ。

 先手が沼田の台地へ入れば大手門を開けられる。午の門でも良い。兎に角ここを推し通れば……


 狭い通路。

 飛び道具が使えなければ「あの者」が大暴れしてくれよう。




 1559年5月上旬

 塩原助介(敵が迫ってきてだんだん焦りが見えてくる庶民)




 まさか南坂から攻めてくるとは思わなかった。矢沢様もこちらへ目が行っていなかったのか? ここには正規兵は100人もいない。それだけ西と北が大変だという事か?


 俺は隣で胸壁に寄りかかりしゃがみこんでいる鮎に向かってどうしても言わなければならない言葉を言った。


「鮎。このまんまじゃ皆の街が乱取りされる。命もねえかもしれねえ。ここならば安心だと思ったけんど、やっぱり危険みちょうだ。


 ……手が足りねえ。鉄砲の弾込めだけでも行ってくる。必ず帰ってくるからここで待って居てくんない」



 鮎はじっとして動かない。俺を見つめるが……口を動かしているが……声が出ない!


 またか! 

 またなのか?



 畜生!

 なんで戦ばっかりなんだよ!

 いい加減、やめてくれよぅ!

 いくら作っても作っても壊される平穏な時間。

 胡坐をかいている己がふくらはぎに何度も何度も悔しさの拳をぶち当てる。



 その腕を鮎が自分の腕を絡ませて止めた。

 口をゆっくり開け閉めしている。


 何かを言っているらしい。



 だ

 い

 じょ

 う

 ぶ


 きっ

 と

 ま

 た

 も

 と

 ど

 お

 り

 に

 つ

 く

 り

 な

 お

 せ

 る

 

 だ

 い

 じょ

 う

 ぶ

 だ

 か

 ら




 思わず抱きしめた。

 抱きしめ返された。

 それ以上の言葉は要らない。


 俺は南の斜面から続く小道の両壁の狭間に向かって走った。





 南斜面登板口

 胤栄(?)



 これは狭い。

 人一人通れるだけの切通。かの有名な化粧坂の切通を彷彿させるのう。地には多くの投げ落とされたらしい石と、そして上杉の兵の躯が転がっている。片手で成仏を祈りながら進む。


 上杉様は拙僧が放逐された興福寺への取り成しをしてくれるという。


 拙僧は興福寺があまりにも銭や色事に走っていたために座頭様に諫言した。そして放逐され、放浪することとなった。


 僧兵としての腕があったがためいくつかの大名で槍働きをしたが、皆仕官をせいとだけ言う。皆断った。儂の求める物は武士ではない。功名でもない。槍を究めたい。それだけじゃ。いまではそれも疑問に思い始めた。


 景信殿が仕官の事を言い出さず、興福寺への取り成しを言うてくれたがために一働きすることとなった。大胡は銭に汚いと寺の者は言っていた。

 だがそうなのか?

 自分たちに銭が回ってこないことが癪に障るだけではないのか?


 儂にはよくわからぬ。

 ただ一つ言えることは、殺生をなるべくしないで物事を解決したい。だがそのような時代ではない事。この矛盾を何とかしたい。そのために放浪した。


 未だ見つからぬ。

 故に戦の中に身を置いた。

 この戦をどのように終わらせるか。

 儂にできることは無いのか?

 儂にできる事と言えばこの十文字槍で敵を貫く事だけじゃ。



 じゃがその「敵」とは何なのじゃ?

 解らぬまま、目の前に立ちふさがって鉄砲を向けてきた大胡の兵を刺し貫いた。










 注:栖吉長尾家

 越後長尾家の筆頭家。なぜか文献として色々とありすぎるので、上杉景信がここ出身(これは正史)で、上杉家の名跡を継いだ後もこの長尾家を率いていたことにしました。

 だってこの当時だれが率いていたかわからないんだからw

 系図が変過ぎる!



「桟道」


 あの黒部第四ダム工事の時も桟道使っての工事だったようですね。

 だから十分この狭い峡谷でも行動は出来るかと。


 だけどねぇ。合戦時にそれやるって無謀すぎるよ景信くん。。



 午の門(南門)は基本的に鎌倉街道=平地への入り口なので防備万全。

 細い通常の勝手口みたいな道を通られたというわけですが。

 一応仕掛けはしてありますが、何でこんなもの作ったのかは不明。

 結局これも罠だったりするけどw



 いい加減、鮎さん、トラウマ・PTSD治してあげたい。

 でも平和にならないと無理ですね(T_T)

 助介さん、助けてあげて!



 敵とは何だろう?

 人類の敵は人類?

 何なのだろう?

 すべては人の心の産物……なのだろうか。



もしお読みになって何かを感じられたら★で表現していただけると登場人物が生きた甲斐があったと言ってくれそうです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ