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首取り物語:北条・武田・上杉の草刈り場でザマァする  作者: 天のまにまに
★★初陣だゾ★★
20/262

【管領】彼奴、いつか・・・・

 扇ケ谷上杉家の資料が見つかりませんでした。

 よって完全に架空です。

 朝定さんと難波田さんくらいです。まともなモデルがあるのは。

 太田さんは、出そうかどうか迷っています。



 1996年4月20日:扇ケ谷家上杉朝定祭り実行委員会作成資料

【悲劇のプリンス、上杉朝定】


「山内上杉家は後の上杉謙信との引き合いでよく知られているが、扇ケ谷上杉家の上杉朝定公は残念ながら、それほど有名ではない。

 しかし、若くしてその才気の片鱗が見られた。

 家宰の猛将難波田憲重をよく従え、山内上杉との戦を有利に運んだ。

 山内上杉家との和議の後は、関東享禄の内乱で深い誼を通じていた古河公方足利晴氏と上杉憲政が権勢を振い、主導権を握られたまま川越の夜戦に突入していくのであった。

 上杉憲政はその行い宜しからず、性は残忍にして……」






 1546年4月中旬

 武蔵国川越城東20町古河公方本陣

 上杉朝定(坂東の名家の若き当主。案外真面(まとも)という設定)



 成程、小さい。

 目の前で頭を下げ座っている童、大胡松風丸。12になるとか。その割には体躯が小さい。ちゃんと食っているかと問いたい気もするが、憲政殿の家臣、失礼に当たるやもしれぬ。


 問題はそのつむりの中身だ。一体いかにしてあのような酒や石鹼などの特産品を生み出したのか


「ほう。これはまたきついのに円やかなる味わい。良い酒じゃ」


 古河公方、足利晴氏様が目を細めて呟く。その隣に座り憮然とした様子で焼酎をグビッと飲んでいる上杉憲政殿。

 私はこの者を好きとは言えぬ。どうも眼が冷たいのだ。色々と悪いうわさも聞いているが、小田原から北上し我が軍勢と合戦に及んでいる後北条氏。これを打ち払うためには手を組まねばならなかった。


 そうしてこの川越城を囲んでいる。ここは陣幕の中。皆、床几に座り、この松風丸の運んできた焼酎に舌鼓を打っている。


 3勢力の首脳が一同に会するのは戦場でどうかとも思うが、たまの気晴らしもかねての評定という触れ込みだ。

 早い話が飲みたいだけであろう、ご両人。


 それと……


「その方、松風丸と言うたな? この焼酎、その方が作ったとのもっぱらの噂。誠か?」


 古河公方晴氏様は今年で38になられる。どうも中身のない話が多い。此度の松風丸への呼び出しも、単なる余興として思いついたらしい。今年12の元服もしていない国衆の当主本人が来ることもなかろう。

 憲政殿に松風丸当人を寄こすようにとご下令したのだ。憲政殿はいやいやであったが従った。この松風丸を寵愛して居るようには見えぬが、何かがあるのか?


「いいえ。某ではござらぬ。幼少期に育てていただきました厩橋の町にて様々な工夫をいたす者がおり、その者を支援して作らせました」


 なかなかしっかりとした受け答え。それを見る憲政殿は益々嫌な顔になりそっぽを向きながら盃を傾けている。


「そうであるか。人を使いこなすのも大事な才。見事じゃ」


 鷹揚に声をかけるが次の言葉に本心が表れていた。


「そこでの。儂もこの焼酎とやら、領国にて作ってみたいと思っての。その者を寄こさぬか? 悪いようにはせぬ」

 

 まったく!

 この焼酎で大胡の家がどれだけの収入を得ているか分かっておるのか? 此度の長対陣にも米銭を収めており、私にも矢銭を寄こしてきた。少しばかりの見返りとして領地に今後のお味方への荷駄の輸送の仮陣屋を懸ける許可をと申してきた。


 その元手を取り上げようとなさる。ただ、酒が飲みたいという欲にて!


 松風丸は下を向いたままなので、表情はわからぬが12にもなれば家臣に言われなくとも無体なことを言われているのはわかるであろう。

 どう切り抜けるか見たい気もするが、ここは助け舟を出そう。


「あいや、お待ちくだされ。公方様。元服もまだの童をもてあそんではなりませぬ。公方様に置かれては酒屋のような下賤のことに手を染めるのは恐れ多い。

 これ、松風丸とやら。公方様に置かれてはこの焼酎をお気に入りじゃ。古河までしょっちゅう届けよ」


 し~んと、静まり返ってしまった。わざと面白くない洒落をついたが、これで気がそがれたじゃろう。


「そのようなことより、折角来たのじゃ。武勲を立てて見せい! 小さき童なれどわが山内上杉家の家臣であろうが」


「これは異なことを。大胡勢、僅か200余りと聞き及びまする。しかも酒を運びに来ただけとお伺いいたした。そのようなものに大事な総がかりの戦の一翼を任せるとは憲政殿らしくな……」


 口の中の苦虫を吐き出すようにこれまた無体な言い様に、ついつい反論してしまった。しかしそれを遮るように


「大胡の備えを囮に、総掛かりの戦を有利に運べるではないか。公方様も毎日酒が飲めるようになる。良いことずくめじゃ」


 !!


 周りの重臣は止めぬのか!?

 山内上杉家の長尾殿、安中殿、小幡殿は困ったような表情だが口を挟まぬ。公方様の重臣は酒に気を取られている晴氏様を止められないでいる。このような事が陣幕の外に漏れ聞こえては士気にかかわる!

 何を考えておる、この2人は!!


「某は納っと……」


 立ち上がり叫ぼうとした私の袖を左から家宰の難波田がグッと引っ張り、無言でその言葉を諫めた。私の暴発を防いでくれたか。


「某も見とうござるなぁ。この知恵のまわりそうな童が、いかなる戦をするか。気になりまする」


 公方様も難波田のその一言で、その気になった。


「なるほどそれは興味深いの。では、来る総掛かりの戦評定には松風、そなたも顔を見せい」

「は、確かに承りました」

「下がってよいぞ」


 なんということ。ここまで腐っておるのか、我が勢力は。長い権勢が血を濁したのか……

 私もその一員だが。暗澹たる思いが酒を不味くした。






 1546年4月中旬夕刻川越城西方半里

 山内上杉勢陣内

 長野正影(いつも主人公を心配しているおかん)




 公方様にご拝謁した後、大胡勢が陣を張る場所までの道すがら、殿はずっと無口であられた。なにか真剣に考えられているためか、もう髷が完全にほどけている。いつもより大分大きな独り言を呟いている。



「……あいつのやりそうなことだ……」

「……いつか……様に……してやる……」

「……今は……ここを切り抜け……」



 最近は、考えの邪魔をしないように髷のことは考えが途切れた時にだけ言うようにしている。

 早い松明と篝火が炊かれ、皆が殿の帰りを待っていた。飯も用意されており、食いながら先の拝謁の様子を聞く気満々だ。



 代表として後藤殿が切り出した。


「して首尾はどうでござるか? 殿」


「ん~。扇ケ谷の朝定ちゃんに助けられちった」


 どういうことなのだろう? 何か無体なことを言われて、それに助け舟を出されたということか?


「結論だけ言うね。近々予定されている合戦に出る事になっちゃいました。テヘッ」


 一同顔を見合わせたのち、後藤殿が獣のような歓喜の声を上げた。殆どの者が「これぞ武士の誉れ」「よくぞ合戦参加をもぎ取ってこられましたな、殿」などと言っている。

 ただ伊勢守殿と某だけは浮かれずに殿のその次の言葉を待っている。


「でね。大胡勢は【囮】だって~♪」


 一同、真っ青になる。

 相手は精強な北条の軍勢8000。川越の城にも3000余りの兵が詰めている。それも地黄八幡(じきはちまん)、北条綱成が率いているのだ。どこに投入されても大胡勢200余りは鎧袖一触で吹っ飛ばされるだろう。


「……金山崩れの二の舞は避けねばならぬ」


 悲壮なセリフを口にするのは殿の本陣を守る上泉伊勢守殿。

 伊勢守殿は、金山崩れの際、殿(しんがり)に入る予定が、討って出てきた城守備兵の横撃を防ぐため奮戦中に、先の殿と後継ぎ殿を討たれてしまったとか。此度はなんとしてでも殿を守りたいと決意を新たにしているらしい。その言葉に皆が頷き合い腹を決める。


「して、殿に置かれてはいかなる対策をお立てに?」


「まだ何処に配置されるかわかんないけどね。前に言ったことと方針は同じ~」


 皆を代表して某がそれを口にする。


「では、逃げる! と」


「そうそのと~り! 無益な戦はしないのです。

 死ぬのは本当に必要な時だけでいいんです。だって命は一つ。大事に使えば一生使えます!」


 よくわからない理屈をこねるのは、いつもの殿だ。安心した。これくらいで困る殿ではない。


「だから、今度の戦はね……」



「まらそんのじかんだぁ~~~~~!」






 勿論主人公はマラソンしませぬww


 

 焼酎は、米・麦・蕎麦の3種類とお考え下さい。

 ちなみに私は麦焼酎が好きでした(;´・ω・)




 旧弊ってやですねぇ。これ潰すのスカッとする!


 【作者からのお願い】


 続きが読みたい!

 関東管領、どんな裏があるのか?

 主人公がどう受けるか?

 扇ケ谷上杉ってどうなっちゃうの?


 そんな風に感じた方はブクマと★を1つでも結構ですので付けていただくと大変励みになります。よろしくお願いします。

 作者、病弱故、エタらないように★のエネルギーを注入してください!なんとか最後まで書かせてくださ~い



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