【別府・1】赤岩上陸作戦
2015年4月11日更新:サイトHQ有料購読者限定記事
【解剖!世界上陸戦】
「今回は上陸用舟艇について特集します。
前回は大胡戦争に使用された高瀬舟が10年後には凄まじい魔改造を加えられて最前線で活躍したという事を紹介しました。では第2次世界大戦における東部十三州連合における上陸用舟艇の発展について解説を致します。
東部十三州連合は南部秋津洲共和国及び北東諸島の領有権を主張し、度重なる侵略を加えてきました。その度ごとに上陸作戦での装備と運用を発展させていったのです。
特にその小型上陸用舟艇は通称ビッグエンジン=BEと呼ばれ、2万隻以上の生産数を誇ります。日本では大発と称されているものと酷似していますが、十三州連合のBEの方が開発採用時期は早いのです。そのBEを使用した侵略的上陸は、特殊部隊も含めない回数でも3000を超えます。
それに対抗して日本で開発されたものが有名な【秋津洲】級上陸用戦闘艦です。この後部には観音開きのドアがあり……」
1559年4月下旬
武蔵国忍城西方1里半
東雲尚政
強ええ。
甘く見ていた。
やはり軍神といわれる筈だ。
越後勢も強靭な継戦能力がある。
左翼の揚北衆とかいう奴ら。強いとは聞いていたが、まさか中央突破され背面展開後の壊乱にも耐えやがった。一時後退した後、再度編成しなおしていた。
指揮官は誰だ?
新田の奴は仕留めたと言っていたが生き残っているだろう。そうでなければこれ程素早くは再編できまい。
そしてだ。
先程、驚くべき情報が入ってきた。
こちらも装備を捨てた兵もいたために、再編すべく時間を費やしてしまった。その間、第4大隊に戦線を維持、徐々に後退させていく指示を出した。こちらの主力第1第2第3大隊が泥濘に嵌まったからだ。
高々、2日。2日だ!
その間に第4大隊の後背に敵の揚北衆らしき2000近くの上杉勢が上陸してきやがった。第4が危ぶねえ。
囲まれる。
後背には別府城があるが、高々国衆の館だ。300も入れまい。駐留していた兵が100。輜重隊300が補給のため東部近郊に駐留していた。それを急行させたが輜重兵は戦闘要員ではない。鉄砲を撃ってもあたらねえ。城にも籠れず敵の襲来を押さえられない。それにその伝令も間に合うかどうか?
来たら逃げろと伝えたいが、泥濘で伝令も急行できない。煙弾では細かい指示は出せねえから、とにかく急いで第4の後詰だ。別府城東は少し台地となっている。畑が広がっていたからそうであろう。そこが戦場となろう。第4が騎兵幕を張って守るか。それとも方陣を組むか。
高崎の奴に全てが掛かっちまいやがった。彼奴は大隊長の中でも一番融通が利かねえ。皆から「トロい」とよく言われる。
だが肝は据わっている。俺以上かもしれん。鈍感なだけかもしれんが。
とにかく一刻も早く第4の南に出て、できれば敵の左翼を潰す。それまで何とか耐えてくれ!
高崎、お前のトロさを生かしてくれ!!
別府城東方半里
高崎権兵衛(百姓上がりの最古参)
おうおう。上杉ってえ奴らは騎馬よりも速いんか?
旅団長たちよりも早く着いたなぁ。
そうか。他の大隊は泥濘に嵌まったのか。
伝令も来ないところを見ると相当な泥濘だな。
という事はだ。あの優に7000以上いる越後の兵を俺の竜騎兵1000で防ぐってか? 旅団長ならなにかすげ~作戦をすぐに考えるんだろうな。吾妻の奴もそうだ。新田の奴も丸顔を膨らませて鼻息荒く思いついたことを自慢するだろうな。
中之条は……いい奴だった。頭も切れるし度胸もある。ついでに顔もいい。いや、「よかった」だ。
死んだらおしまいだ。あの世っていうものがあるという連中に聞きたい。それを見に行ったのか? 見に行ったとかいう奴の言葉は信じねえなぁ。証明が出来ないことは信じない。
だから部下を死なせたくない。
どんくさいと言われようとも、竜騎兵の機動性を削ぐなよと言われてもなんでもいい。
とにかく重装甲と火力を欲した。
それが殿さんに認められた。
その装備の出番だ。
これがどれだけ役に立つか、天下に示してやるぜ。
ああ。俺は名無しの権兵衛か。轟かせる名前もないなぁ。今度やっぱり諱を付けてもらうか?
いや、男は一度決めたことは必ず通すべきだ。それが俺の生きざまだ。
俺は大隊長の印が全くついていない装備で最前列に立ち、全く威厳がないであろう百姓面を上杉勢に向けて睨みつけた。
別府城北10町(1km)
中条藤資(揚北衆のナンバー1)
物見が帰ってきた。
既に別府城は防備を固めたようだ。どうやら敵1000へ少し増援が行ったようだが大したことは無かろう。
3日前の戦闘で200余りの兵が死傷した。大胡の騎馬は危険だ。あれは手筒か?あれを連射して突っ込んできて中央突破された。
大した威力は無かったらしく、樋側胴を貫通することは無かった。しかし顔や関節に当たったものは悲鳴を上げて逃げたため、士気が吹っ飛んだ。
あれを防がねばならん。
しかしおかしい。
あの1000あまりの大胡勢は馬を連れていない。全員徒だ。どうやらここを死守するらしい。馬は城かどこかへ下がらせたか。
もう少しで城と大胡勢の間へ入る。200程の兵を別府城への手当として残し、残り1600で鋒矢の陣で今度はこちらが中央突破したい。
が、此度は包囲戦との下令。鶴翼になり敵を半包囲する。
東からは続々とお味方が西進してくる。これも包囲する構えだ。南から来るであろう敵の本隊には甘粕殿の備えが当てられているようだ。備えは万全。あとは法螺貝を待つのみ。
別府城に動きがないか確認後、周囲を見渡し敵の影がない事確かめた。これから先の屈辱戦ぞ。揚北衆の実力を舐めるな!
別府城東方半里(2km)
上杉政虎
「大胡勢。一つの菱形の陣にて固まっております。西方は既にお味方が囲んでおり、東からの先鋒は既に鶴翼で包囲完了。準備は整ったとの知らせ」
(本庄)実乃が敵の様子を知らせる。
「お主はどう見る?」
少し間をおいて冷静な声が返ってくる。
「様子見をしたいところですが、南からの増援が来る前に一気に叩くべきかと。敵も馬匹を下がらせましたところを見るとここを死地と定めたようです。しぶとい戦い方をするでしょうが竹束を前面に出し、押して参れば殲滅も可能かと」
幼き頃よりの軍師の声が儂の意思を固めさせた。
「法螺貝を鳴らせ。皆の者! 敵の一隊を包囲殲滅せよ!」
鬨の声の後に法螺貝と共に兵6000の足音が響きだした。
もし
「面白いぜ」
「GJ!」
「百姓顔の大隊長の活躍が見たい」
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