【忍城・6】子狐、龍の髭を焼く
2016年1月16日:VRアニメ『万銃士』PRV解説
「かつてスマホアプリゲーム全盛のころに似たようなネーミングのゲームがありましたが全くの別物としてアニメ制作をされました。
主人公は子狐の愛称で親しまれる大胡時代より日本国の建国時代を支えた名銃の化身。冬木式1558楓1号。学園の生徒会長、松風政賢に心を寄せる可憐な乙女との設定。
当たらない、当たらないと嘆かれるが、一発命中するとクリティカルが狙える名銃です。お饅頭とお稲荷さんをこよなく愛し、お酒の匂いを嗅ぐと眩暈を起こします。この他のキャラクターは……」
1559年4月下旬
武蔵国忍城北方半里
網走在施符(完全にゲームかアニメの狙撃兵のようなチーター)
肩の調子は万全だ。生菊先生には感謝しかねえぜ。普通ならば左肩が腐っていてもおかしくなかった。なんでも鏃を引っこ抜いたでかい穴を縫い付けて塞いだとか。よくわからんが血が止まって安静にしていたら治っちまったよ。
なんだかよう。皆に助けられて変な気持ちだ。
だからといっちゃあなんだが、今回は張り切って仕事するぜ。褒美は要らねえ。
……だが酒をちょっとと、女子の匂いだけでも……
いかん。
そんなことを考えている余裕はねえ。
ここから北1町(100m)の所に猛煙が上がっている。そこから徒になった騎馬武者らしき上杉の奴らが抜け出して来る。あそこしかもう通れる道はねえ。第1大隊の残りの皆は殆ど西へ逃げられた。第4中隊の連中はついてなかったな。荒川を泳いで渡っている。水泳にはまだ早いぜ。
また出てきやがった。2人か。
まずは左の奴に狙いを定める。昨年配備された冬木式は普通の奴らじゃまだ扱えねえな。殆ど当たらねえ。まあ射程距離と弾幕張るための長銃身銃だからな。
いつもの様に尻を地につけて左足を立てる。ゲッ、尻が冷てえ。もうこんなに水が流れ込んでいるか。ここもいつまで通れるか。それまで連中を足止めすれば任務完了だ。
銃に付いている革の肩掛けの帯紐を左手の甲にぐるりと巻き付け、銃身を右に引っ張り固定。左膝の上に乗せた銃身の照星と照門を合わせる。いつもの様に赤い線が見えた。引き金を落とす。
ズガン!
反動がすげえ。
8匁(30g)弾が上杉の武者が着ている甲冑に大穴を空けた。いつもながらすげえ威力だ。4匁弾の倍どころじゃねえ反動だが当たればこの通りだ。
もう一人の武者が沼地になりつつある地面に伏せる。そんなことしても無駄だぜ。後ろから弾込め係の奴が次の銃を渡して来る。それを使って顔を上げている武者の兜を打ち抜く。武者は顔を泥水で顔を洗いたかったらしい。それとも飲みたかったのか? ずっとそっこで飲んでな。
そろそろ大剣の煙が薄れてきた。
あと何人か殺れば、終わりにできるか?
幸い敵は騎馬武者だけだ。槍なんざもう騎兵では通用しないんだよ。せめて弓兵を騎馬させるとかするしかねえ、そんな時代になったんだ。
その後3人倒したとき、後ろから声が掛かった。
「おい。網走。よく当てるなぁ、相変わらず赤いのが見えてるんか? 帰ったら奢ってやる。肴は何がいい?」
第1大隊長の吾妻のあんちゃんだ。どうやら最後尾で殿軍を指揮して来たらしい。
「おっ、いいねぇ。鮎が獲れていたら鮎の塩焼き。だめなら鰻の蒲焼なんかくれますかい?」
大隊長は撤収の指揮をしつつこっちを向いてそれに答えた。
「高けえもんばっかり注文しやがって! この時期若鮎はまだ獲れねえだろうが。まあ売ってれば奢るぜ。蒲焼は脂がのってないかもしれんが。それに皆につつかれてあっという間になくなるぞ?」
俺は3年前には絶対言えない言葉を口にした。
「いやぁ、皆には世話になっているからな。これは俺の驕りだよ」
すると大隊長は「俺の銭だっつーの!」とぶつくさ言いながらも笑顔で撤退指揮を再び開始した。
上杉勢後備え
甘粕景持(龍の髭の片方)
情けない!
あの1000人、ほぼ全員取り逃がしてしまうとは!
南へ逃げた300程の大胡勢を荒川へ追い落とそうとしたが、爆発音とともに猛烈な煙と何かが飛んできた。小さな鉄球だったようだが、当たっても痛い程度。怪我など殆どしない。
だが何が起こったのかわからず混乱する所へ大胡の狙撃が始まった。更なる大混乱をきたし、追撃どころではなくなってしまった。
御本城様に顔向けできぬ。
そうこうするうちに辺りは完全な沼地となった。
上杉の本陣付近は未だ普通の田畑であるが、右翼と左翼は下が泥濘と化し、多くの川が出現しているであろう。本陣への報告へ向かうと、もう戦どころではない状況が目に飛び込んできた。
左翼の兵は移動すら困難。
当分は足止めじゃな。
何か別の方策を、進路を考えねばならぬ。
多分あれじゃろう。
利根川の遡上策。そろそろ舟も接収できたであろう。この泥濘で安心している、あの竜騎兵の後ろへ上陸する。これで狐を一網打尽よ。御本城様がどう采配を振るうか。これからが楽しみじゃい。
上杉本陣
上杉政虎
狐の配下も狐であったか。
子狐にしてやられた。
甘粕なら敵の策を如何様にもいなして敵右翼を壊滅させられるかと思うたが甘かったか。結局、こちらの左翼が壊乱しただけ、こちらの負けというわけか。
だがまだ終わったわけではない。
負けたわけではない。ここまでは余興よ。左翼の揚北衆が被害を受けたが中条(藤資)は影武者など用意して居った。見苦しいがこの際、眼を瞑る。
「軍議を開く。各部将を呼べ」
大胡の新しき武器。あの猛煙と鉄球を吐き出す仕組み。こちらにも手に入れた。不発が多いらしい。対応策は容易くできるであろう。
(作者の独り言:甘いぞドラゴン! 米軍を舐めるなよ)
既に2000以上の兵を一気に遡上させられる舟を関宿で待機させてある。南風の時に帆を使えば遡上も楽だという。上陸させたら2度目の遡上で合計4000は後ろに出られる。揚北衆を遡上させ名誉を挽回させよう。
10000での包囲戦だ。左右は逃げられぬぞ、狐よ。どうする?
儂に見せてくれ。断末魔の踊りを。
さて大剣とは何だ?
(ヒント。ハイランダーの大剣だけど、その名を付けたベトナム戦争で使われた奴です)
前説で出てくる奴。勿論、大英帝国を支えた迷銃ブラウン・ベスです。30gの19.8mm弾を打ち出す。当たらね~w
網走在施符の元ネタについてコメントがありましたのでついでに。
「同志少女よ。敵を射て」
の時代。スターリングラードで活躍した天才的なスナイパーの名前。ヴァシリ=ザイツェフから取っています。
普通は狙撃用にチューンナップしたライフル使って戦うのですが、この人普通の標準型モシン・ナガンという精度の低さで有名な小銃で数十名のドイツ兵を倒したことで有名です。
もう天才を通り越しています。




