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首取り物語:北条・武田・上杉の草刈り場でザマァする  作者: 天のまにまに
★★忍城泥沼だゾ★★
181/262

【忍城・4】騎馬突撃?だ、大丈夫かぁ?


 2015年3月13日アップ:【世界の騎兵】デジタルアーカイブ


 リマスター版をアップ。


「……それでは山岸先生。西洋では16世紀初頭、既に騎兵突撃は槍からピストルへと主武装が変化している最中だったと?」


「そうですね。銃兵の配備がなされていない軍にはピストル装備の騎馬による突撃が非常に効果を発揮しました。しかしマウリッツの創設した軍が2割以上の兵に銃を持たせたことにより、その脅威は低下しました。

 それでも騎兵とピストルの組み合わせは敵陣の隊列を乱してからの突撃によって効果的な一撃を加えられる部隊として重宝されました」


「そして日本でもその組み合わせを取り入れた部隊運用が大胡によって始まっていたわけですね」


「そういう事です。東雲尚政が初期から育て上げた竜騎兵がそれです。ヨーロッパと違う点は弩弓を組み合わせて使う事やヨーロッパより早くブランダーバス、マスケットなどの対歩兵用武器を装備したこと。更には‥‥」






 1559年4月下旬

 武蔵国忍城北半里(2km)

 東雲尚政



 殿には突撃は出来るだけしないで、と言われた。

 だがこれだけ兵力に差があると遅滞運動もままならない。機動防御の要諦は「敵の攻撃力を破砕する」ことだ。漸減作戦だな。

 それにはある程度、敵に損害を与えねば意味がない。館林攻防戦の時は色々有利な条件がそろっていた。敵が焦っていた、鉄砲の威力を知らない、夕暮れだった。友軍も多数いた。しかしこの状況で損害を与えるとなれば少々の無理は必要。


 幸い、忍城の危険は去った。本気で攻める気はなかっただろうが、梅雨前ならば我攻めも選択肢としてある。その振りをするだけでもこちらは手を出さずにはいられない。城兵の士気にかかわる。すぐそこまで後詰が来ていて何もせんでは大胡への信頼が消し飛ぶであろう。


 結局、政虎の目論見通りだった。クソッ!

 気持ちを切り替えよう。すでに戦闘は始まった。


 目の前に大きな穴が開いた。新田の指揮は万全だな。彼奴は強襲が得意だ。敵左翼の中軍に大穴を空けてくれた。盾も騎兵銃も拳銃も、そして長巻もうまく戦力になったようだ。

 あとは斬首が出来るかどうか。これは新田に任せよう。


 さて。敵の本隊はどう出る?

 向こうからでは、こちらの第1大隊が大回りしての迂回攻撃、まだ見つけていないだろう。ちょうどよい頃合いは政虎がこの第2大隊か第4大隊に襲い掛かって逆包囲を開始した時に、第1大隊が発見され右往左往することだが。

 そううまく事が運ぶとは思えん。


 取り敢えず、ここは想定通りに孤立しているように見える第4大隊が騎幕(注)を張っている()()()()()箇所に強襲をかけてくれることを期待しよう。

 それをしてこなければ、こちらの第2大隊へ向かって来る? まさか。第4大隊と挟撃されに来るとでも?


 軍神とかいう奴は何をするかわからん。

 まあ、こっちも向こうからすると、何をするかわからんと見えるだろうがな。








 同日同刻

 東雲竜騎兵第2大隊長

 新田義国



「よ~し。第3中隊よくやった! 結構不発は少なかったな。大事に持って帰れよ! 今のうちに弾込めて置け!」


「言われんでも!」


 皆が笑って答える。この敵陣ど真ん中で笑えるとは。我が隊は日ノ本一だぜ!


 左右から包囲せんと寄せてくる敵右翼と左翼を、残る第4中隊200で支える。

 第1と第3中隊400は敵後方へ。第3中隊は拳銃装填後、敵の背後を銃撃しつつ攪乱。第1中隊は俺と共に敵部将の居る左翼本陣へ突入する。本陣は手薄だな。200といまい。


「よし。第1中隊。漢は黙って、拳銃発射! 女子はいないが貴様らのでかいモノを食らわせてやれ!」


 応!


 長柄や長巻を構える敵馬廻りの届かない距離からの拳銃射撃で数十人の馬廻りが倒れる。その後は数に物を言わせる。300対150。それも騎馬と徒多数。先ほど騎馬武者の半数は討ち取った。怯えてやがる。何が越後の龍だ。弱兵ばかりじゃねえか。


「敵の部将、発見! 囲みます!」


 いくら強くとも数名掛かりでは勝てない。必勝の型だ。生き残りの馬廻りはまだ装填されていた残りの拳銃にて威嚇する。


「敵部将。討ち取ったぁ!!」


 名乗りはない。そんなものいるかい。できれば敵の部将の名前は知りたいがそれよりも素早く撤退することが重要。

 俺は腰に付けていた煙弾発射用の拳銃を取り出し上空へ放った。


 赤い狼煙が気持ちいいぜ。






 1559年4月下旬

 忍城北方12町(1.2km)

 吾妻幸信



 赤い煙弾が上がった。

 斬首成功か。やったじゃねぇか、新田の野郎。今度彼奴の好きな麦酒を腹一杯飲ませてやるぜ、彼奴の銭でな!


 ん? 指揮棒の先に付いている房が揺れる。南風が北風に変わった?

 雨が降るかもな(注)? それまでに脱出して上杉勢から遠ざかる。既定路線だ。そして湿地に足が取られている連中を狙撃する。大胡の戦ぶり、軍神とやらに見せてやるぜ。


「大隊長。敵騎馬武者が100騎程、敵本陣より急接近。後備えもこちらへ向かってきます!」


 騎馬武者の連中、馬を降りやがったな。騎乗したままだと撃ってくれと言わんばかりだからな。だがそれならば逃げるだけだ。予定では敵最左翼200を叩いてから離脱するはずだったが、大回りして逃げるか。


「来た道よりも大回りをする! 道案内。小道で良いから案内してくれ」


 近場で雇った農民を道案内にここまで来た。その道案内が青い顔をしている。どうした?


「大胡の隊長さん。大変です。北で大雨が降ったようで。小道がぬかるんでいますだ。馬じゃ通れんです」


 !!!!

 北の雲を見る。しまった。既にだいぶ前から雨が降っていた? あの黒雲、遠くであったから油断した。早く脱出しないと完全に孤立する!


「全隊。傾注! 行けるところまで騎馬で退却! 泥濘で前進できない場合は馬を捨てよ! 徒で何としても敵最左翼をかわす! 遅れるな!!」


 小雨が降り出したのか?

 いや、俺の汗だ。顎から滴り落ちる。

 まさか、伏兵は居まいな。これだけ左翼中軍が壊滅的打撃を受け、その後方から射撃と斬撃を喰らっている最左翼。動けるはずがない。そしてそれを助けずに、ずっとじっとしていられる兵などいるか?


 辺りを見渡す。

 この状況で索敵は出せん。

 しかしゆっくりと行動するわけにもいかない。敵の追っ手100が迫っている。こちらの兵の数が裏目に出た。1000もの手勢をこの泥濘の地で素早く動かす事、できようはずがない。


「大隊長! 敵騎馬100の後に1000程の兵が追随! 駆け足で迫ってきます。距離、およそ5町! 合わせて2000以上!!」


 北から圧迫してきた。敵の足元はまだぬかるんでいない。急速に間が縮まってくる。


 どうする?

 どうする??


 落ち着け! 俺!

 小道を大規模な集団が通るからいかんのだ。

 反転攻撃は愚の骨頂。孤立するし態勢を整えるまでに戦闘が始まる。下手をすれば鉄砲が泥で濡れる。近接戦ならば重装備の敵に良いようにやられる。


 ええい!

 しかたない。


「全兵員、傾注!!!! 散開して逃げる! 第2、第3中隊は西方本隊へ向かえ! 第4中隊は馬を捨て装備を捨てて荒川を渡れ! 忍城へ逃げろ。第1中隊は悪いが俺に付き合って地獄で閻魔大王の首を取る手伝いをしろ!!」




 応!!!!


 明らかに第1中隊の連中の声がでかい。

 もうな。命を粗末にすんじゃねえぜ。


 皆で地蔵のように座って捨て奸(すてがまり)かよ。

 第1中隊300名。1小隊60名で十分だな。


「第4小隊! 捨て奸(すてがまり)だぜ! 俺と共に捨て石だ! 流石に軍神。せめて敵の精鋭を倒してから逝ってやろうぜ!」


 こういうのは中之条が得意だったんだが。

 この部隊が長いと肝が据わっちまうようだ。

 最後に旅団長の酒、くすねておけばよかった。

 末後の酒、欲しかったなぁ。

 皆も欲しいだろう。

 あの世に行ったら俺の驕りで麦酒をかっ食らって、また死んでやる!




挿絵(By みてみん)



 注)騎幕

 騎馬で急いで展開した薄い防御陣。

 もしくは突撃前の横陣。




 注)

 ご都合主義です!

 天候はこの時期南から変わってきます。

 物語の構成上こうなりました(*ノωノ)




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― 新着の感想 ―
[良い点] 前哨戦レベルで解説が多いと言うか、あれもこれもスポットライト当てるときりないような、、。はい、感想なんで好きにやって、殺ってください!
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