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首取り物語:北条・武田・上杉の草刈り場でザマァする  作者: 天のまにまに
★★忍城泥沼だゾ★★
178/262

【忍城・1】竜騎兵の本領発揮!



 1559年4月下旬

 武蔵国忍城東方半里(2km)

 東雲尚政



挿絵(By みてみん)




 やってくれるぜ。是政の奴。

 なんで防御施設、後片付けんのだ! 忍城を潰す時の簡易野戦築城を何故破壊せん!

 彼奴はいつもガサツでいかん。あれでよく火薬などと言う危険なものを大量に扱えるな。ああいうものはきちんと整理整頓を……


「旅団長。あの防御は近づけませんね。こっち、諦めますか? 東半里にある敵の荷駄隊を焼き払うとか。これも危険か」


 第1大隊長の吾妻が俺の望遠鏡を使って敵の状況を確認後、お気楽そうに意見具申をする。此奴はちょっと軽いノリではあるが戦ができる奴だ。戦死した中之条と同じかそれ以上に切れる。肝の座り具合は中之条の方が上だったな……


「やめておこう。こいつは罠だよ。伊達に軍神とか言われている訳ではなかろう。どうせ、あれを攻めあぐねる仕掛けがしてあるんだろう。罠を張る時間はあった筈だ。

 そうこうしているうちに後ろから上杉本隊が突っ込んでくる。忍城よりも遠ざかれば花咲城と利根川が邪魔で逃げられん」



 現在、忍城には太田の奴が指揮する第3旅団の1個大隊に、招集兵を含めて2500が詰めている。雨の日にでも強襲されると危険だ。罠などは勿論張ってあろうが、雨が降り始めたとき増水する前に小道を押し通ることは可能かもしれん。まだ鉄砲狭間の付いた塹壕を掘ることは出来ないと言っていた。なにせ周りの殆どが湿地だ。穴など掘りようがない。


「よし。第1と第3大隊はここへ残れ。第4大隊はここから北半里で退路確保。第2大隊は俺と共に忍城周りを周遊。敵の隙がないか。もしあれば誘って攪乱する。

 第1と第3の統合指揮は吾妻に任せる。無理はするな。追ってきたら逃げろ。罠には注意。斥候を通常の2倍出せ。敵を叩くとき以外は死ぬな」


 皆がサムズアップする。結局のところ、下手に鬨の声だとか今までやっていた拳骨あげての指図は敵に見つかる。見えないハンドサインが一番と結論付けた。


 さて、これからドラゴンの見学と行こうか。




挿絵(By みてみん)




 1559年4月下旬

 忍城北半里

 東雲尚政



「この配置。完全に誘っているな。南が弱すぎる。唯一の攻撃口に2000しか配置して居らん。東の御塚山本陣が約3000と言うところか。旗印からは数百の古河公方の手勢がいるか」


 三方向を荒川に囲まれた忍城。普通なら南から攻城する兵がわんさかいるはずだ、北と西は500もいれば十分。そこに北は2000、西に1000とか、見え見えだ。


 しかし、その内動くだろう。敵もこっちが竜騎兵と分かったんだ。こちらからは先手は打てん。やるとすれば西の攻囲勢だ。此奴をかく乱する程度しかできん。


 どうせ作戦目的は遅滞運動だ。このまま待っていてもいいんだが……雨が降ると火縄が濡れて我攻めの危険が。将又増水して攻囲軍側が不利か。

 どうする?

 

「敵に動きあり! 稲荷山より敵本隊下山しつつあり。東方へ向かう模様」


 おっと、こうしちゃいられん。早く戻らないと南で孤立する。機動力があるのはこういう時は便利だな。


「前方3段索敵しつつ本隊に合流する。罠に嵌まるような間抜けは置いて行くぞ!」


 皆が笑いながら馬を輪乗り(注1)しながら馬首廻らす。皆、乗馬の達人になった。体格の良い奴なら馬上槍も行けるだろう。騎兵銃は皆装填済みのものを4丁持っている。鞍の左右に2丁、腰の後ろに2丁だ。大分重いが頑強な馬を配備している。東国の馬を大分かっさらってきたからな。


 足軽の移動速度の数倍は速い。普通にいけば15分(注2)もすれば半里(2km)離れている本隊に辿り着ける。


「旅団長! 渡河地点に敵兵! およそ300!」


 索敵の騎兵が戻ってきた。よくやった。

 埋伏か。先だっては隠れてこちらを奥深くへ誘ったか。やはり軍神だな。やることが憎いぜ。

 ついつい顎鬚あごひげに手が行く。この55号は顎鬚にした左右に広げたのだが、つい下へ引っ張ってしまう。顔が逆に長く見えてしてしまうではないか!

 

 西へ逃げる手もあるが、あそこは泥濘が酷いという。そこかしこにある。


「推し通る! 第3中隊。正面で左右の敵に散弾発射後、後退。第2中隊、槍で突撃。振り回せる奴は槍だけで戦ってもいいぞ! 訓練の成果を越後の田舎者に見せてやれ!」


 ここまでくれば、もう鬨の声で十分だ。敵もこちらに発見されたことは悟っている。目の前3町もない。


 ああ。

 上杉本隊は北10町に迫っているか。一気に押し通らねばやばいな。吾妻の奴が北から攪乱してくれるだろう。できればこっちの埋伏の背後を襲ってくれれば……



「敵後方、友軍。第1大隊の先鋒です! 散弾発射4連射。敵伏兵逃走に入りました」


 やっぱり吾妻は切れるな。ただ待機しているだけじゃなく四方八方へ隈なく物見を放っていたか。

 もう少し腹が座って、部下から信頼されれば俺の後釜も任せられる。


 前方に退路が出来た。

 さて仕切り直しだ。地図に敵陣の情報を書き込んだことで今回の散歩は終了だな。





注1)

輪乗り:騎馬の高等技術。乗馬をその場で8の字に動かし、騎乗手の体を常に前に向けている乗り方。源平合戦に置いて東国武者は当たり前に出来たが西国武士はほとんどできなかったと伝えられている。騎馬技術の勝利ともいえる。


注2)大胡の技術進歩がある程度進行したので今後は時間を時分で統一します。でもまだ日時計なのかな(^▽^;)




 注)当分東雲に限りカタカナ語が出てきます。政賢と語り合っていて意味が分かったらしいです^^。その内全員が使い始めるかと。







「狐と是政も結構悪態をつく仲なんだな」

「ここって湿地帯じゃないのか?ここで機動力と言っても……」

「東雲の指揮は安定感あるな。でも敵が……やばいやつ」


 どうなることやら。

 楽しそうだと思われましたなら★やブクマ、お願いします~


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