【山家】実は最後まで大事な戦略予備
1992年4月上旬・ジュニア版柳本村男民俗学全集解説より抜粋
【サンカとはなになの? 】
「山家・山窩などと書きます。
漂泊の民です。詳しい事は調査できていません。
日本列島の山を移動生活しており、主に狩猟をして生活の糧としました。
時々山から人里に下り、狩猟採集で手に入れたものや副業として製作した工芸品などを米などと交換していました。
所有という概念がなく人の物を取ったり他人の土地に小屋を建てたりするなど、村の常識との違いから迫害されたこともあります。
しかしその行動範囲と速度は驚異的とされ、一部では伝奇的な超人集団とみられるようになりました。
1960年代には姿を見られなくなります。
古代から各神社との繋がりから歴史の裏にも重要な役割を果たした。特に大胡政賢の裏の組織としての活躍が・・・」
1542年5月中旬
上野国三夜沢赤城神社社務所
マシラ(サンカの頭。年齢不詳、住所不定、自称狩人)
目の前の神主様が、真新しい床の上に腰を下ろしている儂を見て、少し嫌な顔をしている。どうやら儂の纏っている熊の毛皮についた泥が気に入らないらしい。ならば外で話せばいいだろうに。
神主様は上から儂を見下ろしながら言うた。
「その方らに取り寄せるように申し付けたものは首尾よう揃えられたかの」
偉そうじゃな。まあ、神主とは偉いものだということはわかっているが。儂らサンカは寺社のお蔭で、村人からのいろいろなちょっかいから守ってもらい、様々なお目こぼしをいただいておるから力があるんじゃろう。
こうして村里に出てきても迫害されずに米を手に入れられるのも、境内にて住めるのも赤城神社のお蔭だ。
「へえ。燃ゆる石、鹿沼の土、砂鉄。それから硫黄。あとは種子島で」
何に使うのかはわからんが、それぞれ筑後や下野・吾妻・伊香保から掘って来たものだ。見つけるのも苦労したけんど、そこの在所の者に見つからねえように掘ってくるのは本当大変じゃった。もっと褒美を貰わんといかんな。皆が不服を言う。
種子島っちゅうもんは堺の鉄砲又左ちゅう奴から目の玉が飛び出るような銭で買うてきた。其処でしか売っていないというからものすごく貴重なもんなんじゃろうな。
初めて銭というものを使ったが、あれは重いのう。米のほうが良いわい。
「それらの物は社務所の裏の倉庫に入れておくように。粗末に扱うでないぞ。それから別に申し付けて置いた……」
「小田原の様子ですな。氏康はまだまだ領国……仕置き? に手間取てるようで、1~2年は動けないと」
武家さんの言葉はわからん。神主様のもな。
「それはなぜわかる? だれが1~2年と見たのじゃ。お主か?」
儂にわかるわけないわい。
「付き合いのある風魔のお方から聞いたんで」
「わかった。助かるぞ。これで社務所の寄進にお応えできる」
「ところでこの社務所を作ってくれた人はどなたで?」
「もう話してもよいじゃろう。大胡の殿さまじゃ」
ほほう。3年ほど前から、いろいろ頼まれていた元締めはその人か。たしか大胡の殿さんは先月代替わりしたのう。今年で8歳とか。幼いのに色々考えるどえれえ方じゃのう。
1542年7月中旬
上野国大胡城一室
福(主人公の乳母。結構肝が据わっているね。主人公の一番の理解者)
桃ノ木川のことを思い出すと、今でも足が震えるなぁ。旦那様は無残に何ケ所も斬られていた。
松風様、もう殿様か。ぶるぶる震えてたなぁ。顔が真っ青だったよぅ。拳を握りしめて立ち上がった時には、もうそんなことおくびにも出してなかったけど、幼い時からお守をさせていただいたからわかる。
あれ、無理してる。
でも殿さま、その無理しているとそのうち、その気持ちが本当になっちまうんだよなぁ。もう全然平気な顔をしている。
皆の前ではね。
お道化て明るくひゅるひゅると舞っているのも転げまわっているのも、もしかしたらわざとなんじゃねえのかなとも思う。だけどそれだけではないのかなぁ。心の内を表さない理由があるんじゃろうなぁ。
でも政影さまのそばに座って傷の具合を見ているときだけは別だ。ちっとだけ仮面がぬげるんだなぁ。
いっぱい私に注文出して「は~や~く~~~」と急かしてくる。今も指示通りに、麻の包帯とかいうやつと木綿を重ねた四角いやつを煮ている。
暑い季節に大変だよぅ。
肩の傷口の周りを、焼酎をもっと濃くした匂いを嗅いだだけでウっとなる液で洗い、傷口はこまめに洗い木綿で覆いこれで捲いておく。
普通なら金瘡医が馬の尿を飲ませて、馬糞を塗りたくって仕舞。よくて油を塗っておしまいだぁ。この季節じゃまずは助からない。私の亭主の時は傷に蛆がわいた。
でも、これやっとくと傷はきれ~なもんだ。もう傷は塞がって、数日ウンウン唸っていた政影さまも、もう起き上がってちっとだけ腕を動かしている。早く殿さまのお傍でお役に立ちたいんだろうなぁ。
「政影く~ん。精のつく食材集めてもらったから、お福に料理してもらお~」
殿さまが韮と大蒜、それになんだかわからない草を入れた籠と、山鳩をぶら下げて駆けてきた。勢いいいなぁ。もう大丈夫だなぁ。
あ、こけた。
まだまだ子供じゃな。
散らばったものを拾い集めながら殿さまに近づいて行った。
柳田文献は多すぎて、学生のころ挫折した覚えがあります。
山家小説なら読んだのですが、ムーの世界ですね^^
今後、様々なスッパい連中が参加してきますが、最後まで重要な隠密戦力です。
「赤城三夜沢神社」
上野国二ノ宮=二番目に格式の高い神社。
現在は子宝祈願の神社w
今回は三夜沢の社務所で密会でしたが、本来は平地の現在の二宮という地名の一の鳥居のある所が社務所として使われている設定です。
(全く興味無い人が99.999999%だと認識している!w)
「福が年増と思っている訳」
この当時、30ともなれば後家としても中々取りてもいない時期。でも幸せそうなんです。自分を大事に思ってくれる人がいて、自分が大事な人がいて。
それって最高じゃないでしょうか?
「熱湯消毒とアルコール」
この作品で結構重要なものとして「アルコール」があります。単流式の蒸留器を何度も使用して酒精を高めて消毒用のエタノールを作っています。これが結構戦略物資となっています。
【作者からのお願い】
続きを読みたい!
この後忍者等はどのような活躍するの?
これから内政モード? テンプレ?
そしてどの戦いに行くの?
そんなことを思われた方はブクマと★を1つでも結構ですので付けていただくと大変励みになります。よろしくお願いします。
作者、病弱故、エタらないように★のエネルギーを注入してください!なんとか最後まで書かせてくださ~い