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首取り物語:北条・武田・上杉の草刈り場でザマァする  作者: 天のまにまに
★★北条氏康君の最後だゾ★★
119/262

信春

 2014年11月19日:個人ブログ記事


【春山支隊の真実】


「日本がモスクワ大公国との戦いに苦戦したのは、片手を縛られたような外交情勢からであったが、満州での陸上決戦、黒溝台会戦における春山騎兵支隊の勇戦は良く知られている。

 これについては後世の国民的歴史作家が誇大に記述したため、その能力が過大に評価されているのが現状である。実際には馬を降り拠点防御するしかない状況下で苦戦に苦戦を重ね……」







 1556年1月9日巳の刻(午前10時)

 武蔵国品川湊大手門内側

 内藤昌豊(武田第2期四天王の筈だけどね)



 やっと大手門が落ちた。

 膨大な流血を伴ったが、あの大胡の鉄砲を押さえ込んでの勝利だ。常勝大胡の噂、これで立ち消えよう。


 しかしまだ敵の後詰が残っておる。あれは手ごわい。早く本陣だけでも大手門を潜らせて中から攻撃するのが上策。搦め手も開門されている様子。

 東門から兵を連れ、仁科殿が来られた。


「搦め手側の兵は全て品川に入り申した。東の搦め手門は市川殿が守っている。典厩様はご無事か?」


 仁科殿に後備えが崩され、本陣に後詰が迫っていることを手早く伝える。


「残敵は大手門の上だけか。あまり発砲して居らんところを見ると火薬が尽きたか。これならばお味方を引き入れるのも簡単じゃな」


 それはそうだが、問題は本陣だけでも800は居る。これを手早く引き入れるのは至難の業。馬場殿が側面支援を為されるであろうから、その隙に本陣を整然と退却できるか。それは小宮山殿の陣の動き如何であろう。


「では儂はこの大手門の蠅を潰す。内藤殿は防壁の上に登り大胡の後詰が寄せてきた時に備えていただけぬか」


 「承知」と伝え、手勢を3方向に向けて城壁を登らせようとした。儂は川沿いの小舟の様子を見に行く。舟が十分な数あれば目黒川を遡り馬場殿の背後に出て敵を半包囲できるやもしれぬ。

 

 あった。

 陸へ引き上げられている小舟、およそ50。

 これだけあれば儂の備え全員が移動できよう。


 また敵の後詰から鉄砲の一斉射撃音が始まる。本陣とぶつかったか。間に合うか……もう渡河しての側撃は間に合わぬ。諦めよう。ここは品川に籠城じゃな。


 大手門に一番近い登り口へ向かった一団より使いが来た。


「殿。登り口、塞がれており申す」


 なんと。

 落ちることを予測したか。


「下の狭間は使えるか?」


 それさえ使えれば外を攻撃できよう。


「それが、殆ど板にて塞がれております!」



 これでは……中にいる武田はまるで虜囚ではないか。




 同日同刻大手門北西2町(200m)

 馬場信春(逃げるなよ!)


 

 お味方本陣が崩れつつある。

 無理もない。あの銃撃が近づいてくるのだ。弓矢で敵う筈もない。

 遠矢では敵を倒せないのが常識。


 ?


 なぜじゃ。

 1町離れた遠矢でも敵が倒れる。


 ……そうか。

 敵は騎兵。それも長距離を移動する備えじゃ。

 重装の防具など付けられぬ。だからへろへろ矢でも手傷を負うか。


「よく聞け! 敵は軽装じゃ。矢が当たれば手傷を負わせられる。矢の雨を降らせようぞ!!」


 儂の備えは飛砲の為の備え。元々弓兵が半数を超える。

 しかも攻城の常以上に矢を持ってきた。

 それも未だ使っておらぬ故、一人100本はある。


「まずは北から突っかけてくる騎馬の一団へ征矢5射。此度は全て征矢で行く。その後指示を待ち、お味方本陣へ迫る敵へ側撃を食らわせる。典厩様を助けよ!」


 応、という声と共に、矢が次々に敵へ飛ぶ。

 騎馬は飛び道具に弱い。当たり前だ。当たる広さが足軽の数倍ある。

 馬に防具など付けられぬ。直ぐ足をなくす。さすれば自ずと敵の餌じゃ。それを防ぐために足軽がいる。

 しかし敵には足軽がいない。

 近づき放題じゃ。


 それを知っている敵は一旦後退し、間合いを取る。回り込むか。

 しかしその間に本陣前の主力を攻撃する。


「お味方本陣前の敵主力に連射。できうる限り数を放て。数で圧倒する!」



 いいぞ。

 敵の右翼が崩れ始めた。

 こちらへの手当として後方へ下がっていた銃列がこちらへ向かってくる。100というところか。

 先ほど退けた騎馬も下馬して徒にて迫ってくる。

 こちらも100。

 同数か。鉄砲を備えた兵が2方向から迫る。

 これは厳しいの。


 本陣に迫る敵は600程。

 本陣は後退しつつあるが崩れてはおらぬ。

 典厩様だけでも大手門を潜っていただきたい。


 本陣の南、大手門付近に典厩様の馬印が見える。

 これで安心じゃな。

 こちらも逃げよう。本陣の兵は……半数は逃げられぬか。

 じゃがもう儂には何もできぬ。

 矢が尽きた。弓兵では如何ともしがたいこの戦場。

 ここに兵をおいても孤立するだけじゃ。

 あとはどれだけ配下を連れて帰れるかじゃな。


「皆の者。ようやった。あとは逃げるぞ。目黒川を泳いで渡る。なるべく足早に北西に遡上してから松林の影にて鎧兜を脱ぎ泳いで渡るぞ。命は粗末にしてはならぬ。まだまだ武田のために働け。良いな。命令ぞ」


 向こう岸についても裸か。

 放棄されている西側の町に衣類があればよいのだが。




 同日同刻

 東雲尚政(肝と目が据わっちまった狐)



 右翼が弓矢で大きな損害を受けた。

 これ程の矢が用意されているとはな。

 右に配備した騎乗兵100も弓矢で近づけぬ。下馬して接近をするだろう。第2中隊隊長の吾妻は優秀だ。その程度の事は判断できるだろう。

 出来なかったら今度ぶん殴ってやる。


 大胡竜騎兵は軽装だ。

 鎧は簡略化され藤蔦の部分が胴と肩にしかない。

 足など殆どが露出している。脚絆は厚革を使用しているため一応の防御力はあるが、太股に刺されば大怪我だ。

 矢が馬に刺さるだけでも戦力が低下する。


 これが竜騎兵の実態。

 とにかく打たれ弱い。それを補うのが機動力と作戦指揮、そして気合いだ。

 殿がよく「気合とこんじょ~でなんとかしよ~♪」などと冗談を言うがまさにその典型が竜騎兵なのだ。

 勿論、矢盾などないから防御力は紙のようだ。


 さて信繁は追い詰めた。

 内藤の備えは既に品川内部に入ったと見てよい。あとは大手門上の真田の子倅共が信繁を狙撃、討ち取れるかだが。

 問題は火薬が残っているかどうか。もう銃声がほとんど聞こえないようだから、鉄砲の狙撃は期待できない。

 政輝の奴が生き残っていれば何か楽しいことを思いつくだろう。


 あのこまっしゃくれた小僧に大胡の運命を握られるとは思ってもみなかったぜ。



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