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首取り物語:北条・武田・上杉の草刈り場でザマァする  作者: 天のまにまに
★★北条氏康君の最後だゾ★★
109/262

朝日

明けましておめでとうございます。

ちょうど初日の出の回が朝日とはめでたい!?

(でもストーリーがめでたくない草)

今年もよろしくお願いします。


 2013年3月2日:火災予防デー広報

【本日から火災予防ウィーク】


 今から120年前。明暦の大火と全く同じ月日に東京大火災が起きました。東京直下型地震に端を発した火災がファイアーストームを各所で発生させ、多くの人命が失われました。

 その悲惨な被害を忘れず後世の防災に生かすためにこの火災予防週間が作られました。


 この2つの火災は3月の強風に煽られて瞬く間に東京をのみ込みました。その後……




 1556年1月8日卯の刻(午前7時)

 武蔵国品川湊南堡塁東

 東鬼坊願尤



「おら、起きろい! 」


 周りで寝転んでいる者たちの尻を蹴りながら小屋の外へ出る。朝日が眩しいぜ。既に手が(かじか)んできてやがる。

 昨夜は下ネタで盛り上がり、丑の刻を過ぎるまで飲んでいたからなぁ。大胡の酒は旨すぎるからついつい飲みすぎちまう。


 水瓶から杓子で水を汲んで飲みながら朝日に照らされた品川湊の全貌を見渡す。今日はどんなおもしれ~戦いを見せてくれるかな? この堡塁の矢倉は絶好の戦見物の場所だぜよぅ。今日も酒が進むぜ。風が吹かなければまた日向ぼっこしながら侍たちが必死こいて戦う姿を(あざけ)りながら酒をかっ食らうことが出来る。最高の余興だな。


「おい。そこの坊主。仕事の時間だ。御山(みのぶさん)からの命令。そこにある大筒を奪取、東の戦場を攻撃できるよう移動しろ」


 小屋の陰から大胡兵の身なりをした並みの背丈で特徴のない顔をした男が俺に声を掛けてきた。伊賀(もん)か?


「なんでえ。俺たちはお山からの指図でここへ来たわけじゃあねえ。酒と飯、それから銭の為よ。意味のない戦は性に合わんな。どうせただ働きじゃろうて」


「御山は今回、一人頭10貫文出すと言っている」


 10貫文!!

 普通に暮らして居れば10年は遊んで暮らせるな。もっとも儂らじゃ1年くらいで浪費しそうじゃがな。だが豪遊できる!!

 よくそれだけの銭を用意できたもんじゃの。噂に聞く堺の商人による支援か? それとも大胡の懐から出ているんかの。じゃが大胡ならば普通に伝令が来るはず。やっぱり御山からか。皆と相談してからじゃな。


 そういうとその男は今一度(ひとたび)念を押してからどこかへ消えていった。

 さて今の楽しみを取るか、1年分の豪遊を取るか。悩むのぅ。




 同日辰の刻(午前8時)

 南堡塁西

 揚羽



 色餓鬼共め!!

 10貫文よりも戦見物を取るなど何を考えている! ちょうどよい慰みと私を囲んで手籠めにしようとは!! 伊賀の女を舐めるな。周りを取り囲んだ8人の破戒僧の股間を蹴り潰し、刃で突き刺し斬りつけて堡塁を後にした。


 10貫文でも戦場に出ぬことを取るならば僧兵などやめてしまえ。

 しかしこれからどうしよう。小頭からの命はこの堡塁の大筒を北西の防壁近くまで持って行き、これを使って大手門か北防壁を破壊する事だったが。私は火薬の使い方には疎い。体術ならだれにも負けぬと自負しているが高価な火薬の取り扱いまで知るにはまだ若いと言われた。ましてや大筒など使えない。


 老練の者が北の警備の薄い場所から潜入するはずであったが、朝まで待っていても現れなかった。どちらにせよ大筒は諦めねばならないだろう。こうなるとどこかで私の体形に合う装束を手に入れどこかへ潜んで好機を待つしかないな。


 朝日が昇りもう半刻も過ぎているがまだ戦の気配はしない。今のうちに御殿山に潜入しよう。




 同日巳の刻(午前9時)

 武田信繫本陣

 山本勘助



「海風が止みました。陸からの風になります」


 信繁様に確認の意味を込めて伝える。

 今日の仕寄りは煙幕を使うことになった。昨日は風が強すぎて使えなかったが、午前中ならばまだ風が弱い。これから1刻は持つのか? 弱い風の間に煙幕を張りつつ昨夜集め運んできた石を、残った飛砲2基で大手門方面に飛ばす。

 その間に煙幕に隠れ保科殿と市川殿の備えが壁を登る。もし内応が上手くいけば防壁のどこかに穴が開こう。そこへ仁科殿の備えを投入する。


 毒の工作が上手くいけば鉄砲の射手は指が痺れていよう。的を外すことも多くなる。こちらの損害も減らせるはず。

 あとは伊賀者の内部工作じゃが最低でも身延山の指令を届け、大筒を移動して牽制、あわよくば防壁の破壊を狙う。

 問題は破戒僧の集団が動くかじゃが……


「(保科)正俊を突入させるわけにはいかぬか。槍弾正の出番であろうに」


 信繫様の仰ることは尤もな事。槍を持たせれば鬼神の如く戦場を疾駆するであろう保科殿を一番槍で突っ込ませるのが一番の策。しかし、どこに穴が開くかもわからぬし控えにおいておける程こちらの戦力があるわけでもない。致し方なき事。


「よい。単なる愚痴じゃ。全てによい戦などあり得ぬ。敵の戦力を削れればそれでよいのだ」


「お分かりの事かと思いますが戦力を削らずとも、いなくなれば目的は達せられまする。今暫しお待ちくだされ」


 床几の上にどっしりと腰を落ち着けている様は兄である晴信様と瓜二つ。その姿を見るだけで皆が安心する。本陣が無事であれば武田は崩れぬ。問題は大胡を崩す事。一番弱き所を崩してから裏崩れを起こさせる。


 此度は金堀や付け城は出来ぬ。水の手は目黒川があるから断てぬ。

 今できることは「一気に落とす」。これだけじゃ。手早く片付け晴信様の本隊に合流し決戦を行う。そのための策を考え続けていた。


「煙幕を張れ」


 これがどのような結果となるか。この戦を左右することとなろう。



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