幼児にしか読めない伝説の魔術書を読んだ俺は勇者と言われ始めるが他の奴に魔術書を読ませるわけにはいかない
初投稿です。
なろうラジオ大賞2に応募するための1000字以内の短編です。
ドーン バーン
突然爆音が鳴り響き、悲鳴が聞こえてきた。
宿屋の外に出ると山賊が村を蹂躙していた。
「この村に伝説の魔術書があることは分かってるんだ。皆殺しにされたくなければ差し出せ」
比較的身なりの良い女に剣を突き付けた山賊の頭と思わしき男が叫んだ。
正義の味方を気取る気はないが、目の前の非道な残虐行為を見逃すほど落ちぶれてもいない。
俺は愛刀を抜き、山賊に向かって駆け出した。
山賊は弱かった。
剣では騎士団長に認められ、水以外の魔術に関しては王宮魔術師にも引けを取る気はない。王都で引き留める手を振り払ってソロの冒険者をしている俺の相手をするには、山賊20人程度では荷が重すぎたのだ。
「村の危機を救っていただきありがとうございました」
赤く染まった俺の剣を見た村長の目には怯えが見える。けれど、村のためにと勇気を振り絞って謝辞を述べる姿には好感が持てた。
「居合わせただけだ。山賊の言った伝説の魔術書とは?」
「ここを隠居の地に選んだ大魔術師が持たらしたといわれる魔術書です。村の火災でも焦げひとつ付かず焼け残った不思議な本で、なぜか幼児にしか文字が見えず、大人には読むことができません」
「見せてもらってもいいか?」
村を救ったことに対する感謝なのか、村を破壊することもできる俺の技量に恐怖したのかわからないが、村長はすんなりと魔術書を持ち出してきた。
「この魔術書は資格がないものは村から持ち出すことができないと言われています」
魔術書を受けとると表紙の魔方陣が光る。
回りの村人からは感嘆の声が上がった。
俺が、魔術書を開くとそこには確かに文字があった。
おねしょはそろそろ卒業しましょう
なるほど。幼児限定のわけだ。
俺にこの魔術書が読めてしまうことが知れ渡った以上、他の誰にも読ませることはできない。
俺は大金と引き換えに魔術書を譲ってもらった。王立魔術研究所で研究したほうが良いかもしれないと言葉を添えれば村の恩人の申し出が拒否されることもなかった。
実際に王立魔術研究所に持ち込むことはないだろうが、それは魔術書を手放した村に話すことではない。
「俺には資格がある」
発した言葉を証明するように魔術書を持った俺は、村の境界を越えた。
色んな意味で勇者になった俺の魔術書を守るための旅は始まった。
超短編ですが、お楽しみいただけたでしょうか?
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