大吉、分身スキルを手に入れる
その部屋には小さな泉があった。
そこには2人の人物がおり、2人共、タンクトップにハーフパンツ姿の褐色の肌をした筋肉モリモリ男であった。
一人は泉のふもとに佇み、そして、もう一人はその隣に座り、足だけを泉の水に付けていた。
「マッチョじゃん!」
エミの第一声がそれだった。
『素敵なアニキの泉』と聞いていたのだが、その『素敵なアニキ』の正体が結局はマッチョである。
まあ、エミとしても『素敵なアニキ』に対して何か期待していたわけでは無いだろう。
しかし、連続してマッチョとなると流石にそう声を上げずにはいられなかったのだろう。
すると、泉のふもとに佇んでいた男がこちらに気付いたようで、大吉達の方に近づいてくる。
もう一人の方は、顔を一瞬こちらに向けるものの特には興味ないようで水に足をつけたままだ。
「ようこそいらっしゃいました」
こちらに向かってきた男は、大吉達のすぐそばまで来ると、足を止め、そう、挨拶する。
「「「こんばんは」」」
それに対し、大吉達はそう挨拶を返す。
「こんばんは。では、早速ですがクイズを出しますね」
マッチョはいきなりそう言いだすが、前の部屋と同じである為、大吉達も何か尋ねることも無く、そのまま問題に耳を傾ける。
「今回選ばれなかったもう一つの部屋には2人の女性がいるのですが、その2人共がバニースーツを着ています」
マッチョがそこまで言った時、「くっ、やっぱりか」というエミの声が聞こえたが、大吉は、それを気にせず、問題の続きに耳を傾ける。
「さて、その2人はそれぞれ何色のバニースーツを着ているでしょうか?」
(……うん、想像通りの糞クイズだな)
どうせ今回も、エミとマインに考える気はないだろう。まあ、考える必要もないわけだし。
よって、今回も大吉は適当に「赤と白」と答える。
「残念、白と黒でした」
しかし、今回も答えを外してしまう。まあ、外したところでどうということは無いので、大吉は特に気にしない。
「白と黒かー」
エミは白と黒のバニースーツが気になっているようで、言葉が漏れてしまっている。
勿論大吉もそれは気になるところだ。見れなかったのが非常に残念である。
……その後、前の部屋と同様に、新たな扉が2つ現れ、マッチョはどちらかを選べと言ってくる。
今回は、左が『がり勉様の部屋』で、右が『知的美女の部屋』である。
そして、今回も嫌々ながら『がり勉様の部屋』の部屋を選択するしかなかったのである。
◇◇◇◇◇
最後の部屋は、勉強机がその中心に置いてある、こじんまりとした部屋だった。
勉強机の椅子にはガリガリでグルグル眼鏡のおっさんが座っていた。
大吉たちが近づくと、
「私は、へん……賢人カシコだ。お主らにクイズを出してやろう」
と声をかけてきた。
そして、そのおっさんが出してきたクイズが、
「今回選ばれなかったもう一つの部屋には女性がいるのですが、彼女は眼鏡をかけているでしょうか?」
である。
大吉は、「かけていない」と答えるが、今回も不正解だった。
まあ、2択問題位は正解したかったところだが、間違ったからといって、気にするほどのことでもない。
スキルレベル0だとしても直ぐに1になることは分かっているのだから。
……そうして、大吉はそのおっさんから、スキルレベル0の新スキルを授けられる。
「よし、スキルを付与してやったぞ。今はまだ使えんが、直ぐに使えるようになるからの」
「ありがとうございます」
そして、大吉は、タッチパネルで新たに得たスキルを確認する。
『[スキル:パーフェクトヒューマン]を取得しました
取得条件:専用イベントクリア
効果 :分身を作成する』
(『パーフェクトヒューマン』っていうのか。
……今はスキルレベル0だから確認できないけど、野々乃が言うには、ミトの分身と違って、きちんと戦闘に使えるってことだし、まあ期待大かな)
そして、その後、大吉たちは、おっさんに別れを告げ、東の遺跡を後にするのだった。




