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マイン、戦いを見守る

『ビシュ』


 シンが矢を放ち、


『ザシュッ』


 大吉が剣でゴブリンを斬り裂く。


「エアアロー」


 そして、クリムは魔法を発動する。


 ……一方のマイン、ミト、ミイ、そしてリンゴリス子は殆ど戦闘に参加できていなかった。

 今は、木陰で戦況を見守っている状態だ。


「ミトちゃん、魔法で攻撃しないの?」


 自分達とは違い、ミトならこの戦闘で活躍できるはずだ。そう考えたマインはミトにそう尋ねる。


「いや、全然狙いを定められなくて……亜人種だからなのかな? 動きが洗練されているというか……動きを予測されるというか……」


「でも、クリムさんは魔法で攻撃してるよ?」


 クリムは魔法でゴブリンに攻撃を仕掛けている。よって、マインにはミトもそれと同じことができるように思える。

 しかし、実際のところは、そううまくはいかない。大抵の魔法は避けられてしまうだろう。

 『ホワイトフレア』なら避けられることはないだろうが、同時に味方にもダメージを与えてしまう。

 味方がマインだけなら容赦なくそれを放つのだろうが、マイン以外にも味方がいるこの状況ではそれをするわけにもいかないのだろう。


「いやいや、私とクリムさんとでは戦闘経験が全然違うよ。私はあんなうまく当てれないよ」


 よって、ミトはそう言う。

 だがそれでもミトなら活躍できるのではとマインは考え、


「数打てば当たるんじゃないの?」


 と問いかける。


「それはそうかも知れないけど」


 ミトはマインの質問に少し考えているようだ。

 するとその時、マインはあることを思いつく。


「あっ、数で勝負するんだったら、あれ使えばいいよ」


「あれって何?」


「分身」


 マインはミトが分身というスキルを持っていることを知っている。よって、頭数を増やすにはそのスキルが丁度良いと思ったのだ。

 それに、マインはミトの分身スキルを見てみたいと思っていたので一石二鳥でもある。


「嫌だよ」


 だが、ミトはマインの思い付きを速攻で断る。


(えっ?)


 マインは瞬時に断られたため、少しぽかんとしてしまう。

 しかし、それにはミイが食いついてくる。分身というスキルに興味を持ったのだろう。


「えっ、分身って、ミト、そんなことができるの?」


「えっ、いや、まあ、できるといえばできるけど」


 できるのならばやってくれても良いのでは。マインはそう思う。

 ……ミトが何故、嫌がるのかはわからないが、嫌と言われると余計してほしくなるのだ。


「ねえ、ミイちゃんも分身使った方が良いと思うでしょ?」


 よって、マインはミイにそう同意を求める。


「はい、ミトの分身見てみたいです」


 ミイもその思いはマインと同じようだ。

 しかし、ミトはなかなか首を縦に振らない。


「いや、でもね……役に立つかわからないよ」


「役に立つかもしれないでしょ」


「えっ、でも、いや」


「見てみたい」


 ミイが目をキラキラさせそう言った時、とうとうミトは諦めたようだ。


「はぁ、わかったよ」


 ミトはそう言い、そして、分身スキルを発動させる。

 マインは(ミイちゃんの言うことは断らないんだ)と複雑な心境になりながらもその様子を見つめる。

 ……すると、そこに2人のミトが現れる。


「…………んんん? えっと、これって……?」

「…………なんでそんなことを?」


 マインとミイは2人のミトを見てそう口にする。2人のミトの行動があまりにも意外だったからだ。


「……たぶん、私のASO内での行動を参考にして、そんな行動をとってるんだと思うんだけど……」


 マインはそこで(なるほど)と思う。ミトが分身を嫌がる理由がわかったのだ。

 分身の一体は、その場で横になり、すやすやと眠っている。

 ミトは以前、ギルドホームの自室のベッドで寝ていたことがあり、それがこの行動の元となっているのだろう。

 マインはその時のことは(どうせ寝るなら現実リアルで寝ればいいのに)と思っていたので、よく覚えている。

 そして、もう一体は、マインに対し、


「マインってとろくて可愛いよね。マインって天然で可愛いよね」


 などと延々と悪口を言っていた。

 マインからすると、それは非常にうっとうしい。

 ミトはその分身を見て、「よりによって何でそんなにマインのことを褒めてるのよ」などと言っている。


(いや、何処が褒めてるのよ! うん、めっちゃ悪口じゃん!)


 マインは苛立ちを覚える。

 しかし、そんな分身の様子をぷくっと頬を膨らませ、見ているミイに気付くと(まあ、これはこれで良いか)と苛立ちは収まっていく。


「ちょっと、何それ、どうしたの?」


 するとその時、こちらの様子に気付いたのだろう。クリムがそう声をかけてくる。


「あっ、いえ、ちょっと分身スキルを使用したんですが、なんか変なことになっちゃって」


 ミトはクリムの問いかけにそう返答する。

 すると、クリムは分身の様子をチラチラと確認し、


「……へー、そうなんだ。……まあ、頑張ってね」


 とだけ言う。そして、それ以上は突っ込んでこない。

 まあ、ゴブリンやリザードマンの相手で精一杯なのだろう。

 大吉やシンもこちらのことには気付いているのだろうが、喋りかける余裕はないようだ。


「マインって間が抜けてて可愛いよね」


 マインの目の前のミトは相変わらず悪口を言っている。

 しかし、次の瞬間、突然、そのミトの姿が消滅する。


「えっ、何? なんで?」

「えっ?」


 マインとミイはいきなりの出来事に驚く。


「ああ、散々褒めまくったから、満足したんでしょ」


 マイン達の言葉に、ミトはそう答える。

 どうやら自分の行動に満足すると、分身は消滅するらしい。


(いや、一つも褒められてないけど……でも、まあ、満足したら消滅するってことね)


 マインはそう思い、もう一体の分身に視線を向ける。

 すると、分身は寝返りを打ち、「むにゃむにゃ」と気持ちよさそうな声を出すのだった。


 ……その後、ミトは魔法で戦闘に参加するものの、殆ど役には立たなかった。殆どの攻撃を避けられたのだ。

 ミトが倒したのはゴブリン2体のみで、その他は、大吉、クリム、シンが倒し、戦闘は終了したのだった。


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