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舞衣、妹にお願いする

(うーん、これで良いのかな)


 舞衣は自室でPCのキーボードを叩いていた。ASOを始めるための設定を行っているのである。


(あれ、うまくいかないなー)


 舞衣は若干、機械音痴なところがある。かれこれもう30分間PC画面が先に進んでいない。


(うーん、わかんないな)


 仕方がないので舞衣は部屋を出て、隣の部屋の扉をノックする。その部屋にいる中学生の妹、未来に手伝って貰おうというのだ。


「未来ー。ちょっといい」


 舞衣はそこにいるはずの妹に声をかける。すると、その声に反応し、中の人物が扉からちょこっと顔を覗かせる。


「何?舞衣姉ちゃん」


「うんとね、ゲームの設定がわからないの」


「ゲーム?舞衣姉ちゃんが?珍しいね……それで、何のゲーム?」

 未来は少し驚いたような表情でそう尋ねる。


「うん、ASOってやつなんだけど、設定手伝って欲しいんだ」


「えー、私今、反抗期だから手伝ったりしないよ。……まあ、どうしてもというのなら別だけど」


 舞衣は未来にそう言われ少し考える。……まあ、どうしてもというわけではない。


「そっかー、残念だけど仕方ない、自分で何とかするしかないか」


 舞衣は仕方なく自室に戻ろうとする。しかし、未来に呼び止められる。


「いや、どうしてもというなら手伝うよ」


 舞衣はその言葉に再度考えるものの、やはりどうしてもというわけでは無い。


「うーん、別にどうしてもというわけでは」


「どうしてもってわけじゃなくても、今回くらいは手伝ってもいいよ」


 ……ほぼ手伝うつもりが無かったはずの未来が何故かそこまで言ってくれている。となれば、舞衣としてはそれに甘えるべきだろう。


「えっ、そうなの?じゃあお願いしようかな」


「もう、仕方がないなー。今回だけだよ」


 舞衣にはそう言う未来が若干喜んでいるようにも見える。……気のせいかも知れないが。


「うん、ありがとう」


 とりあえず舞衣は礼を言い、そしてその反抗期の妹、未来を連れ自室に戻る。すると、未来はPCの元へ向かい、リズミカルにキーボードを叩いていく。

 そこからたった3分だった。3分後には設定を終え、「はい、終わり」と、未来は舞衣の方へ振り向いたのだ。


「後は、VRヘッドギア付けて、そこのボタン押すだけだから」


「うん、ありがとー」


 舞衣はVRヘッドギアを手に取り、未来にそう礼を言う。

 すると、役目を終えた未来は扉の方へ向かい部屋の外へ出ようとする。しかし、その時、舞衣が思い出したように声を出す。


「あっ、忘れてた。お風呂掃除しないといけないんだ。当番だった」


 未来はその声を聞き、足を止める。


「忘れてたって、もう今からASOやるんでしょ。…………反抗期なんだけど、仕方ないからその位やっといてあげるよ」

 未来はため息交じりにそう言う。

 しかし、舞衣にとってその言葉はありがたい話だ。なので舞衣はその言葉に甘えることにする。


「いいの?うん、ありがとう……あっ」

 と、そこでまたもや舞衣は何かを思い出す。


「今度は何?」


「うん、お買い物頼まれてたんだった」


「もう、仕方ない。それもやっとくよ。私、反抗期なんだから今回だけだよ」


 流石に少し呆れた様子だが、未来はそれもやってくれるという。


「ほんと!ありがとう。うん、メモは1階のテーブルにあるから……あっ」

 しかしそこで、またまた舞衣は思い出す。


「……次は何?」


 未来は内心は(またか)という感じなのだろうが、そう言う辺り、また何か頼んでも聞いてくれそうな感じだ。


「うん、おトイレ行きたい。代わりに行ってきてくれる?」


「うん、私、反抗期だからそれは行かない。自分で行ってきて」


 既に頼みごとを幾つも聞いてもらっている現状では、流石にそこまでは聞いてくれないらしい。

(まあ、そりゃそうだよね)舞衣はそう思いながら、それは自分で行くことにする。


「うん、そうだね。行ってくるよ」


「はいはい、まあ、わからないことがあったらまた聞いてよ。反抗期だからあんまり聞けないかも知れないけど」


「うん、ありがとう未来」

 舞衣はそう言い、未来の横をすり抜け扉を出ていく。


(冗談なんだか、天然なんだか)


 未来は階段を降りていく姉を見ながら溜息をつくのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 反抗期ww それはもう、反抗期じゃないww でも、お姉ちゃんは天然だから、ネタに気付いてくれないww
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