マイン、注目される
マインは投球マシンから放たれたボールを連続で体で受けていた。
「痛っ!」
一応はバットで防ごうとするものの、そもそもボールを目でとらえることができないのだからどうしようもなかった。
そして、何度目かのボールがマインのお腹に命中し……。
「うぎゃっ!」
マインは後方に吹き飛ばされるように倒れた。
「いたたたた……」
マインは体を起こそうとするが……。
「うぎゅ」
足が何かに引っかかり再び倒れ、おでこを地面に打ち付けた。
「えっ……」
マインは足元を見る。マインの足はネットに絡まっていた。
「ナイス、ナイス」
「なかなか、良いぞ」
マインが顔を上げると、ガラス張りの向こうに手を叩いて喜んでいるリザードマンたちの姿が見えた。
……彼らは先程、ござるのリザードマンやヨウコがボールを真っ二つにする芸当に喜んでいたはずだが……。
……どうやら、彼らは失敗したら失敗したで、その様子を面白がるようだ。
「うむ、なかなかのもだな」
「オモシロイデス」
しかし、失敗を喜ばれてもマインとしては面白くはない。なかには片言で褒めるリザードマンもおり、余計に馬鹿にされている気分になる。
「んっ?」
すると、その時マインの目に見慣れた人間の姿が映った。
「ミトちゃん……」
そこには、リザードマンと何やら話しているミトと、それを困った表情で見ているミイとシアンがいた。
(えっ? 何してるの?)
そのミトの顔は少し悪いことを企んでいるような表情に見えた。
「凄いぞー」
ミトと話し終えたリザードマンがこちらを向いて急にそう叫んだ。
「……ん?」
もしかして、ミトがリザードマンをけしかけてる? マインにはそう見えた。
そんなことをしても大して面白いことにもならないだろうに……。
いや、今マインは恥ずかしい気持ちになっている。そうなっている時点でミトは面白いのかも知れない。
(何なの……)
ふと横を見ると、ヨウコが笑っていた。
マインはそれを見て、ミトとヨウコが示し合わせたのではと一瞬思う。
しかし、そんな暇はなかったし、示し合わせてまで行うようなことでもない。
ただ、ヨウコとミトの二人ともが同時にほんの軽い悪戯心を持っただけなのだろう。
「…………」
マインはミトの方を軽く睨むように見る。
すると、ミトはそれに気付いたようで、ミイとシアンを引き連れ、バッティングセンターの中に入ってきた。
そして、マインの方に近づいて来て話しかけてくる。
「マイン、戻って来てたんだね」
「うん……っていうか、ミトちゃんたちはいつからあそこにいたの?」
「ん? 今さっきだよ」
「…………ふーん」
マインは疑わし気な目でミトを見る。
しかし、ミトはそんなことは気にせずに言う。
「んじゃ、まあ、ヨウコも来てくれたことだし、地図の場所に戻ろっか」
マインはそんなミトの態度に納得はできないものの、取りあえずは、大きな扉の場所に戻ることにする。




