マイン、長老に呆れる
マインたちは長老から鍵の在処の地図を譲ってもらった。
まあ、地図といってもメモ書きではあるが……。
「ありがとうございます。本当に貰っちゃっていいんですか?」
「いいですよ。ただのメモ書きですからね。……それに同じメモはまだまだあるんですよ」
マインはそれを聞き、僅かに首を傾げる。
「あっ、そうなんですね。でも、なぜそんなに幾つもメモを?」
「ああ、元々、きちんとした地図があったんですが、それは別の冒険者に渡してしまったんですよ。
それで、本来ならその冒険者が、鍵を見つけて、その扉のエリアを開放するはずだったのですが、何故かその冒険者は鍵を探さずに放置してしまったらしいのです」
「放置ですか……」
「はい、一度、開放してしまえばそのエリアはその冒険者のものになるので、もう鍵の地図は不要になるはずだったのですが、いつまでも開放されないままなので……」
「ああ、それでメモを作ったのですか」
マインは頷く。なぜその冒険者がそんな中途半端に放置したのかは不明だが、納得できる話ではある。
「ええ、その冒険者が鍵を手に入れないのなら、他の冒険者が鍵を手に入れることになりますからね。
まあ、次の冒険者も放置するかもしれないので、覚えているうちに幾つか地図を書いとこうと思ったんですよ」
「ああ、そういう事だったんですね」
「そうなんですよ」
「なるほど、それで、私たちがその次の冒険者というわけなんですね」
「えっ? いや、次というか、次の次の次の…………うーむ……何人目だったけな……」
マインはそれを聞き、再び首を傾げる。
「えっ……そんなたくさんの人にメモを渡してるんですか?」
「いや、そんなにたくさんは……いや、たくさんだったかな……そんなに気にしてないので、どれくらいの人数だったかまでは覚えてないですね」
「……でも、何人かの冒険者が地図を受け取ったまま放置してるってことですよね……」
「そうですね……ああ、そういえば、メモを見ても何処にあるか分からないって、言っていた冒険者が何人かいたような気がしますね。メモを見てわからなかったものを私に聞かれても困るんですけど……」
「ええっ……」
マインは思わず困ったような声を上げ、そして、ミトの方に振り向く。
すると、ミトはそれに首を横に振って答えた。
その両隣では、ミイとシアンも困ったように首を振る。
「ええっと、それって、その地図が間違ってるとかわかりにくいとかそういう事なんじゃ……」
そして、マインがそう言うと、長老は失礼とばかりに口を開く。
「いやいや、そんなはずはありませんよ。冒険者の皆さんの探し方が悪いんだと思いますよ」
「…………」
そんなことはないのでは……マインはそう言いかけるが、口を紡ぐ。
「はぁ……」
しかし次の瞬間、溜息だけは思わず漏らしてしまうのだった。




