マイン、不気味な館に入る
マインは林の中を歩いていた。お供にはタマコを連れている。
タマコは気まぐれな性格の為、お供するのを嫌がったりするのだが、今回は数日前から頼んでおいた為、何とかお供してくれているのだ。
……マインはタマコを仲間にした当初、その行動に驚かされたものだ。初めマインはタマコもアルミラージ子と同じように接すれば良いと思っていたのだが、それは全然違っていた。
アルミラージ子が従順な性格なのに対し、タマコは自由気ままな性格で、テイムモンスターのくせにギルドホームから勝手に居なくなり、街を歩き回ったりするのだ。まあ、変に目立った行動はしていないみたいなのでそこは助かるところなのだが……。
……ちなみに、リンゴリス子とアルミラージ子はギルドホームでお留守番である。
「あっ、宝箱見っけ」
本日2つ目の宝箱である。
「また、メダル2枚だ」
マインはメダルを全くゲットできない可能性も考えていたので、30分と経たないうちにメダルが4枚手に入ったことにはとても喜んでいた。
(意外と順調だなー……といっても、他の人がどれくらいメダル手に入れてるかがわかんないから何とも言えないんだけどね)
そんなことを考えながらマインは歩く。
すると、しばらく経って、前方に屋敷が見えてきた。
「あれは、お屋敷……うん、何だかお化け屋敷みたい」
「確かにちょっと不気味だニャ。まあ、あちきはそういうのは好きだけどニャ」
それは、西洋風の館だが、とても古く、幽霊が住んでいてもおかしくない。そんな雰囲気が漂っていた。
「どうしよう?あそこに行ってみるかな?」
「行ってみたら良いんじゃないかニャ」
「そう?……うん、じゃあ、行ってみよっか」
そうしてマインとタマコはその館へと向かうのだった。
◇◇◇◇◇
『バタン』
「うわっ」
屋敷にマインとタマコが入った途端、入り口の扉が急に閉まる。その為、マインは驚き、そう声を上げてしまった。
「うん、びっくりしたー」
そこにいる人物たちは、マインが扉を開けた時から観察するようにこちらを見ていた。しかし、一通り確認が終わったのだろう。次第に視線を外していく。そして、うろうろ歩き回ったり、ソファに座ったりと各々の行動に戻っていった。
しかし、1人の女性……というか小さな女の子だけはマインの方に近づいてきて、「あれ」と壁の1か所を指差す。そこには張り紙が張ってあった。破れかけの……いや、破れて元の形もわからないその紙には、『この部屋に最初に人が入って来てから15分経つか、10人集まるまで奥の扉は開きません。』と、書かれてある。
……この部屋には屋敷の出入口と奥の扉の2つしか扉が無い。つまり条件が満たされるまでこの部屋で待てということだ。
マインは、張り紙を教えてくれた女の子に礼を言う。そして、その後はその女の子とタマコとマインの3人で雑談をする。残念なことに、その女の子以外はピリピリした様子で近づきにくく話しかけることはできなかった。
そのように過ごし、少し経つと、またもや出入口が開き、1人の男性が入ってくる。
……しかし、新たな人物が入って来たのはそこまでだった。次の人物が訪れるより早く15分が経ったのだろう。奥の扉が開いたのだ。
『ギイイ』
その開いた扉を見て、そこにいた8人と1匹?は、奥の部屋へと進む。そして、全員がその部屋へ入り終えると再び扉は閉まる。
そこは先程までの部屋とは比べ物にならない大きく明るい部屋だった。大きさとしてはマインの現実での学校の体育館ほどの広さだろうか。しかし、普通の部屋と違い、この部屋は柱がやたらと多い。木の柱に石の柱、大きな柱に小さな柱。更に床には木くずや石柱の破片のようなものが散乱している。そして、その他に気になるところといえば、先程の部屋と同じように奥にもう一つだけ扉があることだろうか……。
「おい、あれ」
すると、1人の男性が壁に張られている大きな張り紙を指差す。それは先程の部屋のものと違い綺麗な長方形をしており、部屋が大きいからか、文字は3倍ほどの大きさで書かれてあった。
『この部屋で冒険者同士戦ってもらいます。人数が1人、または、この部屋に入ってから20分経った時点で奥の扉は開きます。
奥の部屋には宝箱があり、その宝箱に、50×減った人数のメダルが入っています。たった1人だけになった場合は、更に100メダルプラスされます』
それを見たマインは僅かに考える。そして、理解する。これはバトルロイヤルなのだと。
すると次の瞬間、ここに入って来た冒険者の半数以上の人物が駆け出す。そして、その全員がマインからは見えない位置へと移動していた。駆け出した全員が全員とも、それぞれ別の柱を利用し、こちらからは見えないようにしているようだった。
「えっ?うん、何?かくれんぼ」
マインは彼らのいきなりの行動に驚く。そう、何の会話もなしに始まったのだ。驚いて当然だ。
すると、「ウインドボム」という声が聞こえる。そして、次の瞬間、石柱の1つが爆発し、その破片、いや、塊がマイン達目掛けて飛んでくる。
「えっ、嘘!」
マインはそのあまりの出来事に思わず目を閉じてしまう。
(死んだ)
マインはそう思う。……なのでこの時は考えもしない。自分が勝者になることなど……。




