ミト、謝る
この時、ギルド明訪成功のギルドホーム、スカーレットゲイブルズには、マインとミト、そして野々乃がいた。
ギルドメンバーにはそれぞれ個室が割り当てらているのだが、この時は、マインの部屋にマインとミトが、野々乃の部屋には野々乃がおり、それぞれの時間を過ごしていた。
ちなみに、マイン達がギルドメンバーになった次の日に野々乃もギルドメンバーになっている。勿論、野々乃を紹介した時、アルスとクリムはとてもびっくりしていた。「NPCはギルドメンバーになれないんじゃないか」とも言っていた。しかし、NPCのギルドへの所属が可能なことがわかり、晴れて野々乃は明訪成功のギルドメンバーとなったのである。
◇◇◇◇◇
「えぇー、今日も行けないの?」
マインは不機嫌だった。ミトとは明訪成功のギルドメンバーになった翌日から1度も冒険をしていない。
「ごめん、そうなの」
ミトは申し訳なさそうにそう謝る。
ミトはミイというプレイヤーとの約束があると言って、ここ数日、マインの誘いを断っているのだ。
「でも、うん、もう3日もその娘にすっぽかされてるんでしょ」
誘いを断っているにもかかわらず、ここ3日はミイが約束の場所に現れず、彼女と遊んでいないらしい。
「いや、すっぽかされているというわけでは」
明らかにすっぽかされるという感じなのにミトはミイを庇うかのようにそう言う。マインはそんなミトの態度がなんだか気に食わない。マインよりもミイの方を優先しているような気がして……。そもそもミトと遊びたくてASOに誘ったというのに全然遊べていないのだ。それどころか、ASO内でミトは、マインよりもミイと過ごしている時間の方が恐らくは長い。そのことからもマインはどうしても口調が荒くなってしまう。
「すっぽかされてるじゃない」
「いや、ミイは約束は守ってくれてるよ」
「でも、昨日も来なかったんでしょ」
「いや、あの日はいつもと違って、日付の指定をしてなかったのよ。いつもは明日のこの時間にって感じで約束してたんだけど、その時は日付言ってなくて……だから今日来るかもしれなくて」
そこまで庇いたいのか。マインはそう思う。そして、マインの中に悔しさに似た感情が現れる。
「いやいや、日付を言ってなくても連続で会ってたんなら、それは次の日ってことでしょ。その日に来ないんだったらすっぽかされたってことじゃない」
「でも、その日は急用ができたのかも知れないし」
「急用だったら連絡してくるでしょ……そういえば、連絡は?どうして来ないのか聞いてないの?……もしかして、無視されてるの」
「いや、連絡方法がないから」
それを聞いたマインは一瞬思考が止まる。その言葉の意味が理解できなかったのだ。
「連絡方法がない?……うん、それ、どういうこと」
「フレンド登録してないから連絡しようがないんだよ」
「えっ、遊ぶ約束はしてるのにフレンド登録はしてないの?」
「うん、そうだよ」
マインは茫然とする。その程度の中なのに、何故ミトはそこまでするのか。
「いや、フレンド登録くらいしたらいいのに」
「まあ、それはそうなんだけど……何というか、距離感ってあるじゃない」
「距離感?」
「うん、フレンド登録するとその分人間関係が密になるわけだから……そういうのが苦手な人っているじゃない。そういう場合、無理にフレンド登録しようとすると逆に離れていくかも知れないし……」
「…………うん、確かにそれはそうかも知れないけど」
マインはようやくミトの言っていることを理解する。恐らくミイというプレイヤーは人見知りなのだろう。そういう事ならフレンド登録をしていないというのも頷ける。そして、来ないかも知れない相手を待つということも。……確かに急用で来れなくなることもあるだろう。それが何日も続くことも。そうなると待ち続けるしかない。待つのを止めるともう2度と会えないかも知れないのだから……。
だが、そこまでわかってもマインの気は晴れない。
「とにかく、明後日はイベントだよ。それは大丈夫?」
「うん、それは……何とも言えないけど……」
……マインはそこで少し後悔する。意地悪な質問をしてしまったと……。




