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ミト、剣を買う

 マイン達はミトの武器を買う為、イーヴィマ・シティの中でも最も初心者向けの武器屋に来ていた。


「この剣はどうかな?」


「いやいや、それ、この店で一番高いやつじゃない。うん、それ、私がお金出すから選んだんでしょ」


 マインはミトの選んだ武器の値段を見て、そう口を開く。

 ASOを始めたばかりのミトには装備を一式揃えるだけのお金がない為、マインが支払うことにしたのだが、それを良いことにミトは値段の高い武器を買おうとするのだ。


「かっこいいから選んだんだよ。それに現実リアルのお金じゃないんだからいいじゃん」


「私だってそんなにお金はないんだよ。それに、ミトちゃんは召喚士なんだから、剣は買わなくていいでしょ」


 ミトは召喚士であるのに見る武器は剣や槍ばかりだ。


「いや、ロッドとかはつまらないよ。やっぱり、剣とか槍とかそういうのじゃないと」


 ミトはそう言うが、一般的にはその職業に適した武器にするのが良いだろう。残念なことに召喚士に剣は適した武器とは言えない。


「剣を使用するスキルとかも覚えないんだから、剣にしてもあんまりメリットないよ。うん、どうしても剣を使いたいんなら、剣士の職業ジョブを取得してからにすればいいじゃない」


「えー、折角なんだから、武器はかっこいいやつにしたいんだよね」


「だったらなんで召喚士にしたの?」


 マインは単純にそう思う。剣や槍が好きならばそれ用の職業ジョブを選べば良いのだ。


職業ジョブは召喚士がなんか良いと思ったんだよね。でも、武器は剣とか槍が良いんだよ」


(……まあ、うん、それもわかるんだけど)


 確かにミトの考えもわかる。なので剣や槍でも良しとすることはできる。だが、せめて安いのにして貰いたい。マインがそのように考えていると、大吉がマインの考えに助け舟を出してくれる。


「良いのが欲しいならもっと金が溜まってから、プレイヤーがやってる店で買ったらいいんじゃないかな。鍛冶職プレイヤーの作った武器の方がかっこいいものは多いよ。まあ、高いものが多いんで今の俺達には手が届かないものばかりだけど……」


「今は安いやつで我慢ってことですか。……まあ、それはわかってるんですが、安いのってデザインもいまいちでかっこよくも可愛くもないんですよね」


 ミトはそう言い、値段が安い剣が展示されている個所へと視線を移す。確かにそこに飾られている武器は安いだけあって、見た目もいまいちだ。

 するとそこで、マイン達の会話を聞いていただけだった野々乃が口を開く。


「安くてもかっこいいものはありますよ」


 ミトは、野々乃の言葉を聞き、彼女の方に振り向く。


「えっ、何処に?」


「まあ、裏アイテムというものですね。NPCの店にはありふれた商品以外に店頭に並んでない裏アイテムが売ってたりするんですよ」


「裏アイテム?」


 ミトは不思議そうにそう口を開く。


「はい、でも普通には買えないんです。店に何度も通って、親密度を上げないと買うことのできない商品ですから。まあ、普通のプレイヤーはNPCの武器屋に通うなんてことないので、裏アイテムを入手するなんてことまずないんですけどね」


 ミトは野々乃の言葉を聞き、僅かに考える素振りを見せる。


「へー、裏アイテムかー……でも、それって結局買えないですよね?あっ、もしかして、大吉さんがこの店の常連とかなんですか?」


 ミトはそう言い、大吉の方に顔を向ける。すると、それを受け、大吉が口を開く。


「いや、全然、数回しか来たことないけど」


 ミトは大吉のその返事に少しがっかりしたようだ。その表情からは僅かな落胆の色が見て取れる。


「それじゃあ、やっぱり買えないんじゃあ」


 すると、ミトのその言葉を聞いた野々乃が口を開く。


「私なら買えますよ。私は大抵のNPCとの親密度がMAXですからね」


「えっ、そうなの?そりゃ凄い」


 NPC同士なので当たり前のことなのかも知れないが、それでもそれはミトにとって嬉しい情報だ。


「まあ、親密度設定のあるNPCは限られてはいるんですがね」


「それでも凄いことは凄いよ」


「ありがとうございます。それでは店主に裏アイテム出してもらいますね」


 野々乃は店主の方へ近づいていく。


「あの、店頭にない剣と槍を見せて欲しいのですが」


「わかりました」


 店主は店の奥へと姿を消し、そのしばらく後、剣と槍をそれぞれ2本ずつ抱え戻ってくる。


「どうぞ、こちらになります」


 店主は剣と槍をテーブルの何も置いていない部分に乗せる。


「あっ、確かにかっこいい」


 ミトはその4本を真剣に見比べ、そのうちの1本に手を伸ばす。それは、柄、鞘共に見事な漆黒の剣だ。


「これいいな」


 ミトは剣を鞘から抜き、その刀身を確認する。その刀身は漆黒に煌めいている。


「綺麗な黒。かっこいい」


「気に入られましたか?」


 ミトは頷き、剣を鞘に戻す。ミトはそれが気に入ったようだ。


「はい、それでこれはいくらですか?」


「700Gです」


「安っ。でも、これで考えてみようかな」


 それはミトの想像よりも安いお手頃価格だ。しかし、そうなるとその性能が気になってくる。


「それで、この剣の攻撃力はどんな感じですか?」


「はい、攻撃力は6です」


「低っ!」


 それは剣としてはあまりにも低い攻撃力だ。その攻撃力では剣の価値が全くないと言っても良いだろう。


「はい、しかし、この剣には特殊な要素がありまして」


「特殊な要素ですか?」


 店主の言葉にミトは興味を持つ。もしかしたらその要素というものが使えるものかも知れないのだから。


「はい、まず戦闘でこの剣を使用すると、得られる経験値が1.2倍になります」


「ああ、なるほどレベル上げに適しているという事ですね」


 ミトはなるほどと納得する。確かにそれだと裏アイテムとしての価値もあるのだろう。


「それと、事前にパーティーメンバーに了承してもらった上での話になるのですが、その剣で止めをさすと経験値の総取り、つまり、自分以外のパーティーメンバーに割り振られるはずの経験値も得ることが可能となります」


 店主は更にそう言葉を加える。するとその言葉にマインは納得したように頷く。

 それは誰か1人のレベル上げを行うにはうってつけの武器だ。マインはそう思ったのだ。まあ、当たり前のことではあるのだが。


「へぇ、うん、それいいと思うな。それ使えば、あっという間に私のレベルに追いつくんじゃないかな」


「俺もそれで良いと思う。まあ、一般的にはロッド、スタッフ、ワンド辺りを選ぶんだろうけど、それにこだわる必要もないし」


 マインも大吉もこの剣を買うことに異論はないようだ。よって、ミトはこの剣に決定する。


「うん、じゃあ、これにします」


「はい、お買い上げありがとうございました」


 ミトの言葉に店主はそう礼を言う。

 すると、それと同時に、マインの所持金が700G減り、ミトの所持品に『EXソード』が追加される。


「武器は買ったし、うん、次の店に行こっか」


 ――その後、マイン達は幾つかの店を回り、ミトの装備を整えていくのだった。



――――――――――――――――――――

【ミト】

称号  :ASOビギナー

種族  :人間[人間種]♀

職業  :召喚士[Lv.1]

Lv   :1

HP   :18/18

MP   :31/31


力   :4(+6)

魔力  :32

素早さ :7

防御力 :2(+18)

魔法耐性:11(+24)

運   :43


魔法  :なし

スキル :なし

弱点  :なし


装備  :EXソード

     蒼天のローブ

     蒼天のロングパンツ

     蒼天のベルト

――――――――――――――――――――



――――――――――――――――――――

【野々乃】NPC

称号  :第1階層案内人

種族  :人間[人間種]♀

職業  :案内人[Lv.1]

Lv   :1

HP   :15/15

MP   :15/15


力   :2

魔力  :3

素早さ :5

防御力 :1

魔法耐性:1

運   :10


魔法  :なし

スキル :スキャン

弱点  :なし


装備  :案内人制服A[薄紫]

――――――――――――――――――――


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