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林檎、膝蹴りをする

「それにしても凄い。あのスピードの攻撃を避けるなど……。

 あのスピード、見えてなかったのではないのですか?」


 トラ太郎が不思議そうにマインに尋ねる。


「見えるのは近接攻撃だけだよ。うん、『見切り』というスキルの効果でね」


 マインはトラ太郎の問いかけにそう答える。

 すると、トラ太郎は納得したような表情をする。


「ああ成程」


「うん、だから、長距離からの高速移動攻撃は見えないと思う」


「つまり、見えるのはその後の近接攻撃というわけですね」


「うん」


 ……マインの説明でトラ太郎は、何故マインが普通なら避けることのできない林檎の攻撃を、避けることができたのか理解してくれたようだ。

 そして、トラ太郎以外のメンバーもそれは同じようで、皆、首を縦に振っていた。


「そうなると、初めの遠距離からの攻撃は御主人以外が受けた方が良いですね」


 そんな中、トラ子がそう口にする。


「そうだな、御主人には俺達より、気持ち後ろにいて貰った方が良いな」


 すると、トラ太郎もトラ子の言葉に続けるようにそう言う。


「うん、わかった」


 マインはトラ子たちの言葉を聞き、そう言って半歩下がり、林檎の初撃が自分に来ない様にする。

 マインの斜め前にはトラ太郎がいる。

 ヒョウ子とアルミラージ子も前面に立っているがお互い、そして、トラ太郎とは距離をとっている。

 まあ、この場合、初撃の次の攻撃が誰に来るかは分からないが、初撃だけはマインに来る可能性は低いだろう。

 因みにリンゴリス子とディア子には、取りあえず後方に控えて貰っており、そして、それ以外のメンバーは地面に倒れたままの状態だ。


「ありがとう」


 マインは前面にいるテイムモンスター達にそう言う。


「いえいえ、当然の作戦です」


 マインの言葉には、代表してトラ太郎がそう答える。


 林檎は攻撃の構えをとりながらも、こちらを観察するように見つめている。

 誰を攻撃すべきか考えているのか、こちらの準備が整うのを待ってくれているのか……。

 もし後者だとすると、直ぐにでも攻撃してくるだろう。

 今、マイン達は全員が防御の構えをとったのだから……。

 すると、マインの考え通りかどうかは分からないが、林檎の姿がマインの視界から消える。


「動いた!」


 そして、マインがそう言った瞬間、トラ太郎の姿もマインの視界から消えた。


「えっ?」


 マインは、一瞬(トラ太郎も高速移動ができたのか)と考えたが、直ぐに彼は林檎に攻撃され吹き飛ばされたということに気付く。


「あっ」


 林檎はもう既にマインの目の前まで来ており、高速の右拳をマインの顔面目掛けて打ち込んでくる。


『ビュッ』


 しかし、マインはそれをギリギリ躱す。


「くっ、また避けるか……」


 林檎はそう言いつつも、右左とどんどん拳を繰り出してくる。

 マインはそれらも何とか躱していく。


「くっ……」


 林檎は僅かに焦った表情をしているように見える。


『シュッ』


 ……その時、林檎が一瞬よくわからない行動をとった。

 何故か彼女は右膝を腰の高さまで上げたのだ。

 ……マインにはその行動の意味が分からない。マインにはそれが無意味な行動に見える。


(えっ? ……何? 何かのフェイント? いや、それにしては、タイミング的におかしいような……)


 ……しかし、直ぐにその行動が何であったのか思いつく。


(ああ、膝蹴りか……。間合い的に全然届かない場所でやるもんだから気付かなかったよ)


 ……林檎は何処となく恥ずかしそうな表情をしている。


『ビュビュッ』


 ……そんな表情をしながらも拳の攻撃は続けている。

 しかし、もうすぐ超スピードの時間が切れるのか、またしても彼女の姿が消え、そうかと思うと一瞬で後方に移動していた。

 その姿を見たマインは僅かに安心する。


(ふぅ……ここで、下がるってことは、私が対応できるのが近接攻撃だけってことには気付いてないみたいだね。……たぶんだけど)


 マインの『見切り』は近接攻撃に対するスキル。つまり、林檎の高速移動経路にマインがいて、その移動途中に攻撃を加えられたらマインには対応できないはずだ。……それは、中距離か遠距離攻撃になるはずなのだから……。

 今も、後方でなく前方に高速移動すれば、その経路にいるマインに攻撃を当てられたかもしれないのだ。


「また、下がって行きましたね」


 すると、その時マインの後ろからそう声が聞こえる。

 振り向くと、それはトラ太郎だった。

 ぶっ飛ばされはしたものの、気絶まではしなかったようで、元居た位置、マインの斜め前まで歩いてくる。


「すいません。あのスピードの攻防にはなかなか入っていけなくて……」


「いや、うん、全然良いよ」


 ……確かに、超スピードの攻防に割って入られたら、誤ってマインに攻撃が当たる可能性もある。


「さて、またさっきと同じ作戦で良いですか?」


 元の位置に戻ったトラ太郎はマインにそう質問してくる。


「うん、いいよ」


 ……作戦というほどのものでもないが、マインは了承する。

 トラ太郎たちに前面に立ってもらう……。まあ、それ以外の方法が多い浮かばないのだ。


(まあ、そうするしかないかな……。でも、もうちょっといい方法考えたいな……)


 しかし、思い浮かばなくとも、一応頭は働かせる。そして、先程の林檎との攻防を思い浮かべる。


(蹴りは苦手なのかな? うん、パンチが当たらず焦って、蹴りをやってみたけど、慣れてないから間合いが掴めなかったって感じかな?)


 ……恐らく、拳だけではどうにもならないと考え、蹴りも攻撃に加えようとしたのだろう。マインはそう考える。そして、それが勝利のヒントにならないかと頭を働かせる。


(うーん)


 ……しかし、なかなかいい案は出てきそうにない。

 林檎は拳を突き出し、またもや攻撃の構えをとっている。

 考えるにしてもその時間は無さそうである。


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