マイン、天守1階を突破する
林檎城天守に到着したマインとそのテイムモンスター達は、手に入れた鍵で門を開き、その中へと侵入していた。
「ゴブちゃん、そっちの忍者お願い」
「分かりました」
「リザちゃんはあの侍をお願いね」
「了解です」
天守1階では、侍や忍者が大勢で待ち構えており、マイン達は彼らと戦闘を繰り広げていた。
しかし、戦いたくて戦闘になったわけではない。
(うーん、次から次にくるなあ……。うーん……)
マインとしてはできるならば戦闘は避けたかったのだが、侍たちがいきなり襲い掛かって来たのでやむなく戦うことにしたのである。
……とはいえ、主に戦っているのはテイムモンスター達で、マインはどちらかというと支援の方に力を入れているのだが……。
(うーん、仕方ないとはいえ、本当に戦って良かったのかな……)
マインは、テイムモンスターと戦う侍や忍者たちを目で追う。
彼らは悪人面をしているわけでもなく、街にいる親切なNPCと変わらない普通に優しそうな顔が多い。
侍や忍者の衣装を脱ぐと、恐らくは街のNPCと何ら変わらないだろう。
(はあ……襲いかかって来たとはいえ…………いや、うん、普通に襲いかかられて当然なんだよね。
あっちからすると、私たちはかってに侵入してきた泥棒みたいなもんなんだし……)
……マインは本丸御殿での桜子との会話を思い出していた。『盗賊か!』と言われた時のことを……。
マインはその会話によって、このイベントには戦う目的がないことに気付いたのだ。
そう、ここの城主を倒さないといけない理由など何もないのだ。
よって、マインは戦闘が始まっている今でも、微妙にやる気が出ない。
……しかし、マインのやる気がなくても、テイムモンスター達は頑張って戦っており、マインとしてはそれをサポートするしかないのだ。
(……うーん、ミトちゃんやミイちゃんのチームは、まだここに到着してないのかな……)
……少し前までは、(ミトのチームやミイのチームではなく、自分のチームが城主を倒すんだ)などと考えていたのだが、今は他のチームが倒してくれるのならそっちの方が良いという気持ちになっていた。
しかしながら、たくさんの敵が襲ってくるということは、他のチームはまだこの天守に到着していない可能性が高いだろう。
他のチームが先についていたのなら、多くの敵は倒してくれているはずなのだから……。
……しかしまあ、一応は敵を倒さずに先に進んだという可能性もあるにはある。
…………そう、今のマインはその可能性を僅かにではあるが望んでしまっているのだった。
◇◇◇◇◇
「ご主人様、全部倒し終えました」
「うん、そうだね……」
マインは周りを見回す。
そこには、リザードマ子の言う通り、立っている侍や忍者は一人もいなくなっていた。
リンゴリス子、アルミラージ子、ゴブリン子、リザードマ子、彼女等は侍と忍者の軍団を危なげもなく倒しつくしたのだ。
「それじゃあ、次は2階だね」
敵が全員倒れていることを確認し、マインは2階への階段へと進んでいく。
「上の階はもっと強い敵が出てくるんですかね?」
アルミラージ子はマインの後ろを歩きながらそう尋ねてくる。
「うん、そうだと思う」
すると、マインは当然の様にそう答える。
まあ、城の天守やら塔などを上るイベントの場合、上に進むにつれ敵が強くなるのはごく普通のことだ。
逆に、地下を進む場合は、下に行くほど敵が強くなる。
この天守も上に行くほど敵は強くなり、最上階に城主である林檎姫がいるのだろう。
「狭い階段ですね」
「うん、そうだね」
そしてマイン達は、適当な会話を交わしながら階段を上っていき2階へと到着する。
「あっ、あれは……」
すると、そこに3メートルほどもある巨大な影が近づくのが見えるのだった。




