表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/434

ミト、感心する

「おー、あれがアイン像かー。何だか変なポーズだなー」


 ミトは50メートル程先に見える銅像を目にし、そう呟く。

 銅像は、環状交差点ラウンドアバウトの中心部にあり、その周りには様々な職業ジョブのプレイヤーが雑談したり、弁当を食べたり、携帯ゲームで遊んだり、椅子に座って転寝をしていたりと、様々なことをして楽しんでいた。


仮想現実バーチャル空間で寝る人もいるんだな)


 ミトは転寝している人を視線に捉え、そう思う。

 そして、銅像の5メートルほど前まで来た時、見覚えのあるプレイヤーがいることに気付く。


(ふむ、あれはマインだね)


 ミトは、舞衣マインから、マインと大吉の画像を送って貰っていたので2人の姿を知っていた。

 よって、銅像のすぐ横に立つ人物がマインだとすぐに気付けたのだ。


(さてと、どうするかな)


 約束の20時にはまだ時間がある。そして、もう1人の待ち合わせの人物である大吉の姿はまだ見えない。


(まあ、ちょっと様子見しとくか。こっちだけが一方的に知ってるっていうマインを観察するには最高の条件だしね)


 ミトはそう思い、銅像の近くに並ぶ椅子まで歩いていく。

 椅子までに辿り着く途中で、一瞬、マインに見られたのだが、ミトがそれに反応しなかった為に、マインはそれが棗だとは気付かなかったようだ。


(まあ、気付かないよね。性別とか見た目の年齢は同じでも、顔が違うもんね)


 時間を掛ければ、仕草などでわかるのかも知れないが、ほんの一瞬でそれが棗であることを見破るのは不可能だろう。

 そうして、椅子までたどり着いたミトはそこに腰かけ、「ふぅ」と一息つく。すると、ふと自分の右手に視線が動く。


(うーん、しかし、このロッド邪魔だな)


 ミトの右手には長さ50センチほどの白いロッドが握られていた。

 それは、召喚士サモナーの初期装備なのだが、攻撃力が1しかない。スロットに魔法を付与すればそれは変わってくるようなのだが、付与していない今の状態では、ほぼごみアイテムである。

 もっとも、ミトはそのロッドがごみアイテムだから邪魔と思ったのではなく、ただ単に右手を空けたいからなのだが……。

 まあ、とにかく、そこで、ミトは(ロッド消えろ)と念じてみる。

 すると、見事にそのロッドが右手から消えてなくなった。


(よし、うまくいった)


 ミトは今、ロッドをアイテムボックスにしまったのだが、実はこれは初心者がいきなりできる芸当ではない。

 決して難しいことではないのだが、慣れるまでには少し時間がかかるのだ。

 それは何故かというとロッドを消す、つまり見えないアイテムボックスという場所に移動させるということは、現実リアルに存在しない動作だからだ。

 これは、ロッドが消えると考えた時の脳の動き(これは脳波データとして計測される)をASOでの実際の動作に関連付ける必要があるのだが、これを実現させるにはASOの関連付けの法則に合わせる必要がある。そして、この法則を感覚的に見つけ出すのに多少の時間を要するのだ。

 なので、初心者は慣れるまで、それらの操作はタッチパネルで行うのだ。

 因みに、タッチパネルについては、誰であろうと初めから出し入れできるようになってある。

 それは、初期設定時に、案内人ガイドがそれとなく、タッチパネルの出し入れをイメージするよう誘導し、その時の脳波データを取得、そして、AIの補助により実際の出し入れの動作と無理矢理関連付けるのだ。後は、何度か出し入れしているうちに微調整されるというわけである。

 まあ、全ての動作にAI補助が働けば楽なのだが、スペックの問題でタッチパネルにしか適用できないのが現状なのである。

 ミトがロッドの収納を簡単にやってのけた理由は、以前ミトがプレイしたことがあるVRゲームがASOと同じ会社が作ったもので、脳波と動作の関連付けの法則が酷似していた為である。

 ……そういうわけでロッドを消すことに成功したミトは、他のことも今の自分にできるのか確かめたくなっていた。


(それじゃあ、これもできるのかな)


 ミトはまた別のことを念じる。すると、今度は、左手の上に小さな鞄が出現する。

 この鞄は初期状態から所持品リストに入っているアイテムの1つで、その小さい見た目とは裏腹に2メートルの長さの槍だろうが、直径50センチの鉄球だろうが収納できるという現実ではありえないアイテムである。

 そして、いくら、アイテムを収納しようと鞄の重さに変化はない。

 ミトはそんな鞄から、1冊の本を取り出し、それを読みだす。

 実際のところ、鞄を経由しなくても直接本を出現させることができるのだが、わざわざそうしたのは鞄の確認も兼ねてという事なのだろう。


(これは、いいな。電子書籍なのに、ここでは、紙の本として読むことができる……まあ、若干の違和感はあるけど、それでも十分だね)


 ミトが読みだしたこの本は、現実リアルで読みかけの電子書籍である。

 ミトのこの行動は、ASOのVR技術の確認である。何がどこまで、どの精度でできるかを確認しているのである。


(ここは、凄いな。以前プレイしてたVRゲームよりも、確実に精度が上だよ)


 ミトは感心する。


(さて次は、周りのプレイヤーの情報でも覗かせてもらいますか。まあ、まずはマインからだね)


 ミトはそう考え、マインの情報をタッチパネルに表示させるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ( ̄□ ̄;)!!あ、称号がバレる予感
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ