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遥、後悔する

 ――昼休み。

 設楽と太田は生徒会室に来ていた。

 彼らは生徒会のメンバーで、生徒会長から呼び出しを受けていたのだ。


「野田先輩、お待たせしました。もう来られてたんですね」


 ……生徒会長の名前は野田遥といい、設楽と太田は彼女のことを野田先輩、或いは先輩と呼んでいる。

 設楽と太田が到着した時には、その先輩――会長――は既に生徒会室に来ており、長テーブルの自席に腰を下ろしていた。


「あっ、設楽君来てくれたのね。太田君も……」


 しかし、設楽の声を聞くと席から立ち上がりそう答える。


「あっ、はい、それで用事は何ですか?」


 それに対し設楽はそう質問を返す。


「うん、例の校内イベントの件でちょっとだけ確認しておこうと思って……」


「あっはい、VR(仮想現実)の催しの件ですね。

 でも、昼休みなんでそんなに時間はないですけど……。

 放課後に時間とった方がいいんじゃ?」


「あっうん、大丈夫。少し確認するだけだから問題ないよ」


「そうですか?」


「うん、それで確認したいことというのは、何かいい案思いついたかってことなんだけど……」


 ……この学校では定期的に生徒主導での催しを行うのだが、次の催しはVR(仮想現実)を利用して行うことになっている。

 そして、設楽と太田はその具体的内容を決める係になっているのだ。

 しかし、肝心のその内容までは詰めきれていない状況だ。

 よって、設楽も太田も現在その案を考えている最中なのだが……。


「あっ、すみません。まだ、これといったことは思いついてません」


「俺もまだ、思いついてないです。

 ASOを参考にしてるんですが、どこを参考にして良いのか……」


 ……設楽も太田も元々は次の催しの参考にする為に、会長に勧められてASOを始めたのだが、現状はただゲームを楽しんでいるだけである。

 まあ、元々二人とも生徒会に入りたかったわけではなく、中学からの先輩であるこの会長に強くお願いされ入ったに過ぎない。

 よって、生徒会の仕事に対して、大して頑張ろうという気持ちはないのだ。


「そっか、まだか」


「本当にすいません」


 設楽は一応反省しているような表情でそう言う。

 勿論、太田も隣で同じような表情をしている。


「あっ、いや全然。

 まだまだ時間はあるし……。

 まあ、今の時代、大枠さえ決めてやれば後はAIがやってくれるからギリギリでも大丈夫だしね」


 会長はそんな二人の表情に騙されたのか、申し訳なさげにそう言う。


「あっはい、ありがとうございます。

 ……それで、用はこれだけですか?」


「あっうん、これだけの為にわざわざ呼び出してごめんね」


 ……そう謝るあたり、会長は二人の態度に本当に騙されているようだ。


「いえいえ、そんな。まだ、何も考えられていない俺たちが悪いんですから」


「あっ、ホント急ぐ必要はないから大丈夫だよ。

 だけど、きちんと決めることは決めてね」


「はい、それは勿論です。

 ……それでは失礼しますね」


 設楽は真面目な表情でそう言う。そして、頭を下げつつ生徒会室を出ていった。

 すると、太田も軽くお辞儀をし、設楽に続いて生徒会室を後にするのだった。




◇◇◇◇◇




 遥は生徒会室を出ていく設楽と太田を見送った後、「まずかったかな」と呟いた。


(うう……まだ、何も思いついてないんだったら、ただ無駄足させただけじゃん。

 そんな報告は、メール1文で済むのに……。

 面倒くさいと思われなかったかな……)


 遥は頭を抱える。


(でも、そうでもしないと、なかなか設楽君と会えないし……。

 うう……同じ生徒会になったらしょっちゅう会えると思ってたのに、設楽君、生徒会室にあんまり来ないんだもん……)


 ……野田遥……彼女は生徒会長をするだけあってなかなかの行動派である。

 しかし、彼女は何かしら行動した後は、かなりの確率でその行動に後悔している。

 生徒会長になったことには後悔しているし、設楽(ついでに太田も)を生徒会に誘った時も、後で強引すぎたのではと後悔していた。

 そして、今回もメールで設楽たちを呼び出したのは良いが、結局(つまんないことで呼び出しやがって)と思われたのではないかと、自分の行動に後悔しているのだ。

 ……しかしまあ、それこそが彼女である。

 行動しては後悔する……そのセットこそが生徒会長『野田遥』の行動なのだ。


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