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無法学校  作者: AuThor
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13/16

友達

修太はロン毛の男子、沼路僧次ぬまじそうじを見て嫌な記憶を思い出す。

「覚えてるか? 僕のこと・・・」

僧次はそう言って修太に飛びかかる。

「ああああああ!!」

僧次は叫びながら修太を仰向けにして、ナイフを修太の体のあちこちに次々と刺す。

周りの生徒は何ごとかと2人を見ている。

「5組の転校生がクソ野郎を刺してる」

修太の耳に野次馬の声が聞こえた。

しかし、刺されているのが嫌われ者の修太であり、数の力で飛びかかろうか生徒たちは躊躇している。

「おまえがあのとき、僕に投票したから僕の人生はっ!!」

僧次は叫びながら修太を刺す。

「なのに、なんでお前はこんな場所で美人とへらへら笑って過ごしてんだよ!!」

「ぐっ!」

修太は刺されるたびに激痛が走り、うめく。

周りの生徒たちは巻き込まれないように、離れていく。

抵抗しない修太を見て透子は疑問に思う。

・・・なんで抵抗しないの?・・・抵抗できない?

修太と僧次に向かって走る透子。

僧次がナイフを刺そうとすると、ビンタされたように僧次の顔が横になる。

「はぶっ」

僧次は声をあげ、右頬をおさえて、びっくりした表情を浮かべる。

「ぶっ」

さらに僧次は声をあげ、ビンタされたように反対側に顔が動く。

修太は苦痛で顔を歪めながら細目で僧次の顔が不自然に動くさまを見て、透子の仕業だと気づく。

「やめろ!!」

修太は透子に言う。

修太の声を聴き、透子はビンタするのをやめる。

僧次は手で頬をおさえながら修太の足先に尻もちをつく。何が起きたのかまったくわからないというような混乱した表情を浮かべている。

トイレからもどってきた結女が騒ぎを見て、修太たちの方に走ってくる。

血だらけであおむけに倒れてる修太と、修太の足先で困惑した表情でへたり込んでいる僧次を見て結女は驚く。

「修太!? 大丈夫!? 何があったの!?」

修太は天井を見つめたまま口を開く。

「気のすむまで刺せよ、沼路。本当に悪かったと思ってる」

僧次は何もないところからビンタされたような出来事に驚きながらも、修太を見る。

「・・・なんで、おまえ死なないんだよ」

明らかに死んでもおかしくない箇所を刺されてもしゃべる修太に僧次は恐怖する。

「不死身の体を手に入れてしまったからだ」

大の字に修太は倒れたまま言う。

「宇宙シティにあるアイテムの話、知ってるだろ?」

「そんなことが・・・」僧次は信じられないというような衝撃を受けた表情をする。

「死んではやれねえけど、痛みは感じる」

「だから、気のすむまで刺せ」

「それで気がすまなきゃ、おまえの言うとおりにするよ」

「・・・」僧次は茫然と修太を見ている。

「今後、俺が誰とも人付き合いしなければ、満足か?」

「ずっと一人で過ごすようにすればいいのか?」

「・・・本当に守るのかよ?」僧次はうつむいて言う。

修太は痛みで震えながらも上半身だけ起こす。

「ああ、おまえが望むなら守る。俺はおまえに本当に酷いことをしたと思ってるし、最悪なことに巻き込んだ」

「だけど、この力で人を助けることだけはさせてくれ」

「俺なんかを救うために犠牲になった人がいるんだ。その人は苦しんでる人を救おうとしてた。この残酷な場所の希望となりえたかもしれない人だ。その人を俺がこの場所から奪った以上、俺はその人と同じように苦しんでる人を救おうとしていかなければならないんだ」

透子は透明化を調節する。

急に現れた透子に驚く僧次。周りの生徒には透子の姿は見えない。

「いったい何があったの?」

透子は修太に問う。

「中2のとき、俺のクラスでいじめがあって、誰をターゲットにするか多数決をとることになったんだ。もちろん、裏でおこなわれていて、教師は知らなかった。それで2人の人間の名前だけが挙がり、さらに同数票で並び、最後に俺がどちらかに投票しなければいけなくなった。それで、俺が投票したのが沼路だ」

修太は投票しなければ、自分がいじめにあうと思ったので投票した。

選者学校で老人をいじめのターゲットに指名するときによぎった嫌な記憶は、まさにこの出来事である。

「そして、こいつはいじめられて、不登校になった」

「ショックだった。クラスの全員が投票したから俺だけのせいじゃないと必死に自分に言い聞かせたが、自分が最後に決めたようなもんだからな」

「それからは人生が暗くなったように感じた。人のために行動している人を見たら、イライラした。自分はもうそっち側にいけないような気がした。何をやってもいじめをした自分自身をもう良い人とは思えなくなった」

おかっぱ頭の男子から感謝されて、修太は微笑み、そのあとトイレに入るが、いじめをしていた過去が脳裏をよぎり、修太の顔が曇る。そして暗い顔で立ち尽くす修太。

「・・・」修太はうつむいていた顔を僧次に向けたとき、前方から数名の教師が走って来るのが見えた。

「何やってんだー!」

小刀を持っているのが見える。

教師らが修太たちを取り囲む。

「すいません。オモチャの小刀でふざけて刺し合ってました」

修太は教師に言う。

「それは血だろ?」

教師は驚く。

「いや、塗料です。第一こんなに刺されたら生きてませんし」

「まぎらわしいことはやめろ!!」教師は怒鳴る。

「すいません。でも、無法地帯ですし。罪に問われませんよね」

教師たちは舌打ちして職員室にもどっていく。

「屋上に行こう」

修太は僧次に言う。

「・・・ああ」

僧次は力なく返事する。


屋上に修太、僧次、透子、結女の4人だけがいる。

「もう刺さなくていいのか?」

修太の言葉に僧次は力なく笑う。

「刺す気力がなくなっちまったよ」

「・・・そうか」

修太は青空を見る。

「いじめって・・・未来の自分を危険にさらす行為でもあるんだな」

「今日、思い知ったよ。たとえ加害者が忘れても、いじめられた被害者は覚えてる。加害者が幸せな人生を歩んでたら、復讐によりそれが不意に壊されることにつながるかもしれない。でも、過去の自分のおこないの結果であって、自業自得なんだけどな。そのリスクを認識して、その最悪の未来を覚悟して、いじめをしてる奴がどれだけいるんだか・・・」

修太は透子と結女に向き直る。

「透子さん、結女先輩。これからは俺に関わらないでくれ」

「そんな・・・」透子と結女は驚く。

「俺はこれから一人で生きていく」

修太は覚悟を決めた表情で言う。

僧次はそんな修太を見て、ため息をつく。

「・・・もういいよ」

「え?」僧次の言葉に修太は顔を向ける。

「そんなことしなくていい。それじゃあ、今度は僕が悪い奴みたいになる」

僧次はうつむきながら言う。

「じゃあ、どうすればいい? 俺にしてほしいことはなんだ?」

沈黙がおちる。

「・・・許すよ。もう、おまえが十分反省してるってことはわかった」

修太は驚いた表情をする。

「それにあの時、僕がおまえと逆の立場でも同じように投票していたと思う」

「だから、もういいんだ」

修太は目から涙をこぼし、首を振る。

「いや、俺はおまえをとんでもないことに巻き込んだ。沼路、おまえがこの学校に転入させられたのは、たぶん俺のせいだ」

「・・・どういうことだ?」

「俺がアイテムで特殊能力を得てしまったから、選者学校に通う人間を選定する奴らは俺に恨みを持っているおまえを面白おかしく選んだんだと思う・・・。俺のせいでおまえは卒業までの命に・・・」

「だとしても、それはおまえのせいじゃないだろ。選んだ奴らが悪い」

修太は大粒の涙を流す。

「ごめん・・・ごめん」

いじめをしていた人間が、暗いその過去から解放されるとしたら、それは被害者が許してくれた瞬間からだ。

でも、それは本当に難しいことなんだと思う。

「今日のおまえの言動を見て、許そうと思えたよ」

「ありがとう・・・ありがとう」

修太は泣き続ける。

「ただし、許すかわりに約束してくれ」

「?」

「これからも苦しんでる人を救おうとすることは何があっても続けてくれ」

「絶対に約束する! 俺の全てを懸けて最期まで苦しんでる人を救おうと行動していくよ!」

僧次はふっと笑う。

「ちっ・・・いい奴になりやがって。恨めねぇじゃねえかよ」

修太は泣きながら笑う。

「あ、それと友達になってくれ」

僧次の言葉を聴き、修太は涙と鼻水だらけの顔を僧次に向ける。

「俺なんかと友達になってくれるのか?」

「僕は今のおまえと友達になりたいと思ってる」

「ありがとう・・・」修太は涙と鼻水いっぱいの顔で言う。

「よろしく」僧次は手を差し出す。

修太と僧次は握手する。

透子と結女は笑顔でその様子を見ていた。


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