54.全ての原点①
創造新の欲望
奴が話している最中に発動することはできたがバレるわけにはいかないからゆっくりと、遠くのほうに集めるだけ集めておくことにした。
それにこの人の話は聞いておかなくちゃいけない気がしたから。
「古くから伝わる伝説だよ。神話における炎の神はその燃え盛る自らの炎によって身を焦がし、氷の国の皇帝は永遠の時を求めて自らを凍らせた結果その生涯を終え、それと同時に突然すべての魔法が解けたってな。確かその時間は10分くらいだったか? あまりに強すぎたんだろうなその魔法が。俗にいう『人体冷蔵保存』の失敗だな。こうやってすべての属性にはそういう伝説というか、盛者必衰を知らしめる言い伝えが残ってんだよ。どうもお前の魔法はそれに当てはまってる気がしてな。特に最初の炎魔法の時に『カグツチ』って言った瞬間引っかかったんだよ。その時の神の刀がカグツチって名前だったらしいしな」
「そんなものがあったのか・・・。ほ、他は?」
「あんま覚えてねえけど創造神はたしか、生きる意義、欲を失って自らに絶望して命を絶ったんじゃなかったか? まあもう別にいいだろう。ここまで話したんだ。奪う前にお前の魔法の概要を聞かせろ。『束縛』」
「ぐぅあああああ!」
「きついだろう? 早く喋れよ。お前の持ってる魔法について」
「・・・・・」
「おらぁ!!」
「があああああああああああ」
もう右手は動かない。それに加えて全身のやけどが思考をマヒさせるし何よりこいつの魔法がやばい。
完全に拷問用のそれだ。全身を黒いひものようなものが覆い、強くするも弱くするも奴次第のようだ。
時折電流のようなものも流れてくる。
「・・・わ、わかった・・・。まず土魔法について話すから一旦緩めてくれ・・・。しゃ、しゃべりずらい」
そういうと奴が俺の拘束を緩めた。今しかない。
「創造新の欲望!!! うち抜け!!!」
後ろで着々と練られていた銀色の弾丸たちが俺の声とともに発射されるが、やつに届く前に見えない壁のようなものに阻まれてしまった。
「なっ!! け、結界魔法・・・」
「ふぅん、これがお前の土魔法か・・・」
そういって後ろを向いた隙に今度は俺の背後に呼び寄せていた鉄たちでナイフを作り、ひものようなものを切ることは出来た。
「なるほど、そういうのもできるわけか。それにしてもお前も素直だな。思った通りの行動をしてくれる」
「・・・結界魔法・・・。もしかしてそれって・・・?」
「ん、これか? そうだ、お前の想像通り」
「・・・フェニクス家当主の妻からもらった魔法だ。ついでに言えば先ほどまで使ってた“風”魔法もな」
*****
場所は移りフェニクス家
「どうやらいらっしゃったようですね」
エマが口を開く。
先ほど何者かによって成瀬君が誘拐されてしまったがこっちはこっちでまずい。
魔力探知をしていない私にもその禍々しい気配が近づいてきているのが分かる。
「邪魔な扉だ。弾けろ」
バァン!!
という破裂音とともに目の前の扉が塵になった。どうやら到着してしまったようだ。
「グルフ兄さん・・・・・。」
「どうしたカイム? 顔が引きつっているぞ?」
「今のあなたを見れば誰でもこうなると思いますよ・・・。何ですかそれ」
目の前には真っ黒な炎に身を包み、背中からは悪魔のような羽と尻尾をはやした男が立っていた。
「これか? これは不死鳥の力なんぞに負けぬ新たな力だ」
「兄さん・・・。そこまで堕ちたのですか!!!」
「堕ちた? 新たなものに手を伸ばしたの間違いだ。これに関してはお前と同じようなものだ」
「私と同じ? どこがですか!?」
「異属性の女に手を出しただろうお前は? 同じではないか。ただ反したのがお前は暗黙の了解、私は法律というだけで」
「全く違うではないですか!」
「いや同じだ。この世界に混沌をもたらす行動という点でな」
「お、お父様・・・・。私のお母様が異属性・・・? ど、どういうことですか・・・?」
「おや、エルサは知らなかったのか? まぁ無理もないか。三歳の時ショックで記憶をなくし、さらにそこから父親にはいないものとして扱われていたお前にはな」
「私が記憶喪失・・・・? お父様、お父様!!! 答えてください!!!」」
「もう話してもいいのではないか? 薪密院の者たちは全て私が殺したからもうおそらくエルサの命を狙うものはいない。私以外はな」
「な! 薪密院を皆殺しにしたのですか!?」
「ああ。だからもう私は後戻りができない。人間はもうやめた。だからこれが最後の慈悲だ。娘にすべてを話す時間をやる。それをしないというなら・・・、今からでも攻撃を始める」
「兄さんは何をしようとしているのですか?」
「そうだな、しいて言うなら」
「『世界の王になる』」
最後の一言だけ声が何重にもなって聞こえた。
おそらくは魔人の声・・・。
さらに兄さまは話す時間をやると私に言った。おそらくそれは強力な力を得たことによる自信からくるもの。
これを逃すとエルサに話すチャンスはもう本当にないかもしれない。
ただ、それを話すというのは私の過ちを振り返ることになる。
いや、いつかは必ず話さねばならなかったこと。それに今までエルサは耐えてきたんだ。
偏見に、差別に、罵倒に。
「お父様! すべてを話してください!!!」
「エマ! 成瀬君の援護に」
「・・・それなのですが、成瀬様の気配がこの屋敷からなくなりました。おそらくですが、敵と一緒にワープされたのかと」
「じゃあすぐにそっちに!」
「いえ、私もここに残ります。成瀬様の方にはすでに優秀なものたちを向かわせておりますゆえ」
「そうか。・・・成瀬君本当に済まない。そしてエルサ、今まで済まなかった。今ここですべてを話す。今から言うことはすべて事実だ。そしてこの私を許してくれとは言わない。ただ最初に言っておく。私はお前の母さんと出会えたことは悲劇なんかじゃないと思っている。あれは今から18年前の、私が18歳のときところだ。とある地方で魔物が大量発生したと国から出動要請がかかり私の父親、その時に当主だな。と私と兄さんが戦場に駆り出されたところからすべては始まった」
******
18年前ーとある村
「お父様! 俺たちが任されてた地区の殲滅終わりました!!」
「はーっ、はーっ、わ、私もお終わりました・・・」
「ご苦労だった。カイム、グルフ。・・・グルフ? お前大丈夫か?」
「え、ええちょっと張り切りすぎまして・・・」
「兄さまと俺でどっちが多く魔物を倒せるか勝負していたのです!! 結果は俺が勝ちましたけど!」
「ぐぬぬ・・・、もっと魔物がいたら私が勝っていた!!!」
「そんなものもっと差が引き離されて終わりですよー!」
「まぁまぁ落ち着けお前たち。炎の加護を受けるお前たちが燃え盛る闘志を抱くのは親として大変喜ばしいがもう少し落ち着け。カイムもついに18になったところだしな」
「はいっ! それで、お父様のところはどうでした?」
「なんてことはない。軍のものたちが一般人の避難はもう済ませてくれていたから焼き払っただけだ」
「すごいですね・・・これが不死鳥の加護の力・・・当主の力・・・」
「そうだぞグルフ、お前たちのうちどちらに継がせるかはまだわからないが継ぐ者も、継がなかった者もその力を皆のもののために使ってほしい」
「カイム、俺はお前に負けねえからな!!」
「もちろんです! もしかしたらロットかもしれませんけどね」
「ロットはこの間8になったばっかだろ。・・まぁわからないが」
「ふふ、そこは俺がって言いきってくださいよ。なんで僕には言い切れるのにロットには弱気なんですか。この前ロットが言ってましたよ? 『僕も頑張ってとうふになる』って。当主と豆腐を間違えるような子には負けたくないですけどね俺は」
「「「はっはははっはっは」」
そうだ、このころは楽しかった。
家族みんなで馬鹿言って笑って、兄さまには負けたくないけど戦うのが楽しくて。
俺よりも弱いけどいざって時には頼れる兄さん、かわいいロット、そして尊敬できる父さんと母さん。
全てが恵まれていて、それが永遠に続くと思っていた.
そんな笑い声のさなか、軍の人が俺らのところに駆けつけてくる。
息の上がりようから緊急事態であることに違いはない。
「た、た、たいへんです!!! 魔物のリーダーのようなものが隣の街で現れました!!! 至急応援を!」
「なんだと!? 今すぐ向かう! カイムとグルフもできる限り早く来るように!」
「「了解です!」」
そういってお父様は背中に不死鳥のような羽を伸ばして飛び去って行ってしまった。
俺らも続くがお父様ほどの速度は出ない。
「お、おいカイム! 私よりもお前が早いだろ。私は気にせず早くいけ!!」
「わかりました。では俺が見逃してるポイントがあったらおねがいしますね。速度を上げると周りが見えなくなるので」
「わかった。前は頼んだ」
そのまま背中にさらに炎を込めて隣町へと向かった。
大体5分くらいで隣町には到着した。
が、その光景は中々にひどいものであった。
隣町は先ほどの村よりも幾段栄えており商人の町としても有名だったところだ。
だがそれも魔物の襲来を受けて建物はボロボロに、そして逃げ惑う人々でごった返していた。
「上から見てるだけでもひどいのが分かるな・・・。多分お父様が対象相手にやってくれてるはずだから俺はこっちの雑魚相手にやるか」
そう思うや否やちょうど俺の真下で大きめの魔物2匹が一人の少女に襲い掛かろうとしているのが見えた。
「やばっ、間に合え!!」
右手に炎を纏って地面に下り立ち、取りあえず少女に手をかけようとしている一匹の魔物の顔面目掛けてその拳を振るう。
そしてその勢いで左手に炎で剣を創り首目掛けて振り払う。
二体まとめてだ。
「不死鳥の炎に焼かれろ!!!」
「「があああああ!」」
真っ赤に燃える剣が魔物の首に当たるや否やそれはいとも簡単に魔物たちの首を切り裂いた。
「・・・だ、大丈夫だったか?」
そして、目の前でしゃがみ込んで泣きじゃくる少女にぎこちなく話しかけた時だった。
「ぐぅあああああああ!!」
「なっ、ちっ! 二体目は奥まで届いてなかったか!!」
「きゃあああああ!」
まだギリギリその命火が残っていた魔物に最後の抵抗といわんばかりに襲い掛かられた。
急いで左手に目をやるが、少女を安心させようとして剣を締まってしまったことを思い出す。右手の炎もない。
しかもここで変に魔法を使うと少女に被害が生きかねないという最悪の状況だ。
もう拳で抵抗するしか・・・と思い目を見開いた瞬間、
目の前で見えない何かに魔物がぶち当たり、そして消えていった。
「こ、これは・・・結界魔法?」
「大丈夫でしたか? 別に助けなくてもなんとかなってたいみたいですけど。そしてありがとうございます。妹が助かりました。あなたがいなければ・・・。本当にありがとうございます」
これが私と私の妻、ヴェルの出会いだった。




