53.伝承
「ちっ、よくも仮面を壊してくれたな・・・。ただもうキャラを作る必要がなくなったってのはうれしいが」
「・・・急にキャラが変わったね。それが貴方の本性?」
「もう自分でキャラを作りすぎてどれが本当の俺なのかわからねえよ。これがどうなのかもな」
「で? あなたの正体を教えてくれる気になったの?」
「ああ、もう素顔がばれた以上隠す必要もなくなったしな。それに・・・、いや今はいい。まぁ話す気になったんだから耳かっぽじってよく聞け。俺ら“ワイルドブレイブ”が何なのかをな」
ーーーワイルドブレイブ
それは王国内で暗殺や窃盗を生業とするいわばアウトローの集まりだ。
仕事とあらばどんな奴でも殺すし、どんなものでも奪ってきた。
お前ら一般人はあまりなじみがないかもしれないが上流貴族とか軍のやつらは俺らのことをよく知ってると思うぜ。もうすでに重役を何人かやっちまってるしな。
まぁいわば、闇の何でも屋といったところだ。
・・・表向きはな。
でも実際は違う。俺らの目的はそんなことが目的なんかじゃない。
お前も疑問に思ってたんじゃないのか? 『殺した相手の魔法を奪うことができる』剣なんかこの世に存在するのかって?
答えはYesでNoだ。
この今俺が持っている剣は俺らが独自で開発して作ったものだ。
魔物を原材料にしてな。
ここまで言えばわかるだろう?
この剣は『捕食した相手の魔法を使うことができるようになる魔物』の牙を加工して打ち直したものだ。
これによって俺も同等の力を得ることができてる。
それだけじゃない。
俺らは魔物を材料にして魔物の声を聴くことができるピアス、永遠に魔力があふれ出てくるネックレスをはじめ、様々能力や魔法が使えるようになる武器を開発することができた。
だがお前も魔物と戦ったことがあるなら経験したことがあるだろうが基本的に人間界で魔物を討伐すると魔物は塵になって消えてしまう。だから俺らは魔界で材料を調達する必要があった。
結論から言うと人間が魔界に行くためにゲートを開くのは簡単だった。
其れで俺らはこうして魔界に何度もでむき、魔物を討伐し、人間じゃ到達しえない力を持つ武器を作ることができたからな。やってることは人間界にやってくる魔物と大して変わらねえよ。
だがそれは突然できなくなっちまった。
国の野郎どもが人間界からは魔界に行けなくなるように結界を張ったからな。正確に言えば人間界からゲートを開く魔法が禁止されたというべきか。
奴らがこうした結界を張った理由は三つ、
個人が強力な力を持ちすぎないため、そして魔界を刺激することで人間界にどんな影響を及ぼすかわからないから、魔界に言った人間が何らかの理由で汚染されたり変異したりする可能性があるからだ。
あぁ、後今ちょうど現在進行形で起こってる魔人との契約も国が危惧してるものの一つだな。
だが俺らはこれを否定する。
個人が強力な力を持たないようにするため?
そんなもの力がないやつが悪い。弱肉強食の世界なだけじゃないか。
魔界を刺激するな? そんなもの挑戦しなければ何も始まらないじゃないか。
魔界と人間界の隔たりがなくなるかもしれないのも確かだ。
でも俺らは永遠に魔物からの襲撃におびえて過ごさなくちゃならんのか?
魔界がどんな状況なのか知る必要があるんじゃないのか?
そんなも保守的な政策をとって国が、人間が発展できると思っているのか?
だから俺らは今まで作った武器で権力を持つ者たちに依頼を受けるという形でその有能性をアピールすることにした。
そして国を、法律を変えて自由に魔界に行き来できるような世の中にするために。
これは一種の革命だ。
まぁ国王とか側近からしたら俺らの存在なんか消しさりたい危険因子なんだろうけどこれでも結構支持してくれる人たちはいるんだぜ?
ただ、まだ顔とかが割れるわけにはいかんし流石に国王を暗殺するわけにもいかねえ。
なによりそもそも俺らがやってることは犯罪だから表舞台に立つことはできねえ。
ただ、急に法を変えた国に歯向かっているだけだ。
保守的で、何も変えようとしない国にな。
危険だとわかっていても踏み出さないとなにも変わらない。
だから俺らは組織の名前をこう名付けた。ワイルドブレイブと。
『虎穴に入らずんば虎子を得ず』をモットーにしてな。
「これが大体の俺らの動きだ。ちょっとでもわかったか?」
やつが話し終えたようで目を開いてこちらを見据える。
俺はこの世界に来てまだ1年もたっていない。
だからわからないことだらけだがある程度まではわかってきたつもりだ
・・・やつらがやろうとしていること。
それは俺の前世で言う、鎖国をやめるかどうかそういう感じなんだろう。多分。
自分達だけで発展しようしているのが今の国。
そしてそれに限界を感じているのが彼ら。
でも、それでも関係ない人をも殺すのは許せない。
「だからエルサの母親を、現当主の妻を殺したの?」
「ああ、薪密院のやつらに依頼を受けてな。依頼を引き受けてくれたらフェニクス家は俺たちの意見に寄り添ってくれるって言われたから実行したまでだ。だから確かにあの人を殺したのは俺らだが、実質は薪密院のやつらが俺らという武器をつかっただけだ。俺らは依頼をこなしただけだ。それにお前はフェニクス家には無関係だろう? なぜそこまでフェニクス家に首を突っ込む?」
「それは・・・。エルサの悲しむ顔をもう見たくないから。だからお前を倒してエルサの、カイムさんの前に持って行って事実を認めさせる」
「事実? 俺が貴方の母親を殺しましたよって? それに何の意味がある? 向こうはもう触れたくない部分じゃないのか? それに薪密院のやつらはもう全員死んじまってるしな」
「薪密院の人たちが死んだ・・・?」
「ああ、魔人の開放とともに瞬殺されてたな。ま、俺的にはもうどうでもいいし、何よりお前の魔法が奪えればもうそれで十分だ。わざわざ自分から来てくれてありがとうよ」
「そうやって罪もない人たちを殺してうばってきたのか・・・?」
「まぁな。でも依頼以外で無抵抗のやつを殺したりしたことはないぞ。お前は今の話を聞いて俺を殺したい。なら俺も抵抗するしもし俺が勝ったらお前の魔法を奪う。そういう事だ。まぁ最初にふっかけたのは俺だけどな。あと、・・・お前もしかしたら自分は死んでもいいから大事な人を守りたいとか思ってるタイプ?」
「っ!! ・・・・・」
「図星か。なら気を付けた方がいいぜ。俺みたいに殺した相手から何かを奪えたり、操ったりできるタイプが相手でお前が死ぬとお前の力はお前が守りたかった人を殺す力に昇華するからな。ってもう遅いか」
「なら、俺がお前に勝てばいい!!」
「しゃーねぇな。最後に今までの会話から二つヒントをやる。一つ、この刀が魔物から作ったものってことは俺は人間以上の力が出せるってことだ。二つ、俺は最初に『時間稼ぎ』っていったよな? その意味理解してるか?」
ーーーまさかこいつっ!!!
「全方位貫け、氷帝の憂い!!!!!」
奴の周り全方位から、後ろから氷竜を奴めがけて放つ。
が、もう間に合わないと判断し、すべての、ありったけの氷で俺を守ろうとするがもうひびが入りかけているのが見えた。奴の話に夢中になって完全に忘れていた。
・・・・・時間切れが近い。
「もうおせえよ。いくら俺の得意属性じゃないとはいえ、フェニクス家に伝わる魔法だし、お前の維持限界も来てるみたいだから流石に効くだろ。 -聖獣の裁き」
一瞬視界が白くなったかと思うと今いる部屋すべてを爆炎が包み、轟音が響く。
もう維持限界ギリギリだった氷の壁は多少は向かったものの、簡単に崩れ去りおれは爆炎の中へと放り込まれてしまった。
それでも根性で少しだけ残せた氷の鎧が俺の身をギリギリ守ってくれて即死にはならなかったが体にはかなりのやけどを負い、壁まで吹き飛ばされてしまった。
「この魔法はあの女性を殺したときに強そうな護衛から奪ったもんだ。発動までタメがいるし、そもそも自分のじゃねえしこの魔法で死なれちゃ困るから威力は控えめだが・・・。勝負あったみたいだな」
ゆっくりと壁に張り付く俺に話しかけながら近づいてくる。
「あんた・・・、俺の氷魔法の弱点知ってたのか・・・?」
「いや、ただ推測が当たっただけだ。しゃべってる最中も地面の氷が徐々にひび割れて言ってたし、この国に伝わる古くからの言い伝えに似てたしな。お前の魔法」
「古くからの・・・魔法・・・?」
「お前は本当に何も知らねえな。冥土の土産に教えてやるよ」
「この国に伝わる伝承をな」




