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49.服従と解放

「一体あやつは何を考えているのだ!!! フェニクス家を解体するじゃと!?」


薪密院のものたちが至急集められ、開催された臨時会議で開口一番で大声を上げたのはこの中ではナンバー2のジジイだ。


「先ほど配られた紙では『フェニクス家は明後日をもってその領土と権力をすべて手放し不死鳥の力をただ一つ、戦場のためのみに使う普通の民に成り下がることを国王に直訴する。よって当主及びその直接の血筋以外は今後一切フェニクス家に関わらないこと』と書いてありますね。これに関してはどうなのですか?」


薪密院の中でも一番若いフェムという青年が淡々と述べるとそれに食いつくように薪密院のジジイどもが我を忘れたがごとく口々にしゃべりだす。

まったくこいつら老害どもは自分の事しか考えていないようだな。

・・・私もそう大して変わらないようなものだが。


「そんなこと許されるわけがないだろう!!! 国王がお許しになるわけがないじゃろうし何より私たちはどうなる!!!」

「それだけではない、多くの家臣たちが路頭に迷うことにはなるではないか!!! あ奴は一体何を考えておるのだ!!!」


「それに関しても書いてありますね。これに反対するものに一切の恩情はないがこれに賛成し、仮に反乱者が現れてもカイム様につく者にはそれ相応の対価と職を与えるそうです。それに国王とも前々から話はしているようで、私たちにちゃんと公言したうえで不死鳥の力をちゃんと戦場で使うことを約束すればある程度まではカイム様の交渉を飲むみたいですね」


「どうやら向こうは本気のようじゃの・・・。やはり娘も殺しておくべきだったか」


そう告げるのはこの薪密院で実質No.1の“院長”と呼ばれる爺さんだ。

今いる薪密院のメンバーでは一番経歴が長いようだがその分いろいろと黒い噂も持っている。

何よりカイムの妻を殺すように仕向けたのはこいつだ。


「おい、院長。これで仮に私の息子が当主を継げなかったらどうするつもりだ? それを条件に協力する話だっただろう」

「グルフ様落ち着きください。こちらにも策はありますゆえ」

「策だと? 今のお前たちに何か策でもあるのか? ここにいるしわくちゃの脳みそしか持ってない老人どもに」

「もちろんです。あの親馬鹿がこのパーティーで何かしてくることなぞ想定済みです」

「・・・策を言え」


「簡単な話です。カイム様とエルサ様を殺せばよいのですよ」


「どういうことだ?」

「不死鳥の力はグルフ様方フェニクス家のもの全員に流れているものですが、不死鳥の加護自体は当主ただ一人しか受けておりません。その加護は当主が移り変わるときに先代から譲渡されるものでその方法は一般には知られておりません」

「それをお前が知っているとでもいうのか?」

「ええ、それは先代と次代の了承のもと、次代が先代の『生まれた時に発した炎』を飲み込むことで受け継がれるそうです。ゲイル様もご自身のものをもっているでしょう? ただ、どちらかの了承がなければ飲み込んだものはその身を焼き尽くされるそうですが」

「それではダメではないか!!! それにそんなものでは奴が望まなければゲイルが死ぬではないか!!」


おもわず机に拳を叩きつける。

ダンッという音に多くの薪密院たちはひるんだ表情を見せたが院長だけは眉一つ動かさなかった、


「そうです。ですがただ一つ例外があります。それは・・・先代が死んでいればいいのです。生まれた時の炎は死んでも残るそうでそれを飲みさえすれば受け継ぐことができます」

「・・・では、やつを殺して炎の瓶を奪えばよいのだな? ・・・待て、なぜ奴は今日その直訴をしに行かない? それならば我らに狙われて殺されるリスクが多くならないか?」

「おそらくですがその紙に書いてある以上に何かしらの条件を国王に言われたのかもしれませんな。それにわしらを攻撃してこないところを見ると、向こうはこちらを皆殺しにする気はないみたいですし」

「なるほど・・・、つまりはこの3日で決着をつければいいわけだ」


「で、でもあやつは仮にも現当主で不死鳥の加護を受けているのじゃぞ! わ、わしらが歯向かったところで勝てるのか・・・?」

「そうじゃ、そうじゃ! それにグルフ様でもカイム様には及ばないのでは・・・」


耳障りな声が聞こえてそちらをにらみつけるとその声を発したものは縮こまって下を向いた。

ここが薪密院の会議ではなかったら切り捨てていたかもしれない。

だが、確かに向こうを相手どるのはこちらが不利だ。


「大丈夫、わしらにはこれがある」


そういって院長が取り出したのは真っ黒な球だった。ところどころ赤い文字が書いてある。

「そ、それはっ!! 院長、正気ですか!?」

「恐らく向こうも分かったうえでこのような策をとったのであろう。まったく、これほどまでに頭が回る男だとは・・・・」

「おい、その黒い球はなんだ?」


「これは魔人との契約をするものです」


「な、魔人だとっ!!! 魔人との契約は法律で禁止されているではないか!!!!」

「えぇそうですとも。これは代々薪密院のもとに受け継がれている魔法具で、もし当主と対立が起きてどうしようもなくなったときに使うものです。今使わずにいつ使うのでしょう」

「そんなことはどうでもいい! そんなもの使ってしまえばもし勝ったとしても裁かれるのは我らじゃないか!!」

「いえ、そんなことはありません。簡単な話ですよ。もし我らが勝てばこれを使ったのはカイム様たちといえばいいし逆もしかりです。要は勝ったほうが正義になるのですよ。もしかしたらカイム様はこれすらも見越しているのかもしれませんがね。これを使ってもし向こうが勝てば我々を追い出す正当な理由になりますから。逆に我らはこれを使わなければ勝てません」


「・・・・・」

「沈黙は賛成と取りますよ? それではこちらもさっそく協力者を募るとしましょう。フェム、アナウンスでこちらにつくものを募りなさい」

「かしこまりました」


「私が生まれてからは初めてですな、当主とこうも真っ向から対立するのは。もとはといえばあの薄汚い女とそのようなものと籍を入れた男を次期当主と任命した先代のせいかもしれんが」


そういって院長が深々と席に座る。説得完了と言いたげな表情だ。


「安心しろ、次期当主は我らだ」

「我らもサポートはしっかりしますゆえ、大勝をおさめフェニクス家を存続させましょう」

「ああ、そうだな。で? その玉はどうやって使うのだ? 契約して勝手に暴れられたらどうしようもないだろう。」

「もちろんちゃんとした手順がありますとも。その手順に従いさえすれば全く問題ないはずです」

「・・・ちょっとその玉を見せてみろ」


この行動に関しては完全に興味本位であった。魔人と契約できるという球がどんなものなのか気になっただけだ。

ただ、院長から受け取った瞬間、にこの場にいる誰の声でもない音が耳まで届いた気がした。

それはだんだんと大きく、明瞭になり空耳ではなかったことが分かる。

辺りを見渡してみるが不思議そうに見つめる老人たちの顔しか映らない。


『おい、聞こえているか』

「なっ!? だ、誰だ?」


思わず出してしまった大声に院長が反応する。

「・・・どうしたのですかグルフ様、突然大きな声なんか出して」

「どこだ!? どこにいる!!」

『今お前が握っているであろう? それに大きな声を出すな。口にしなくても考えるだけで会話ができるしこの声はお前にしか届いておらん』

「グルフ様? 大丈夫ですか?」

「あ、ああ。すまん急に大声を出して」

(この球からということは・・・お前は魔人か!?)


『その通りだ。何百年も前にお前らフェニクス家によって封印されたな。お前の名は・・・グルフか。いい名前だ。ああ、安心しろ。今すぐお前を殺そうだとか、そんな気はない』

(お前・・・私の心が読めているのか?)

『当たり前だ。口に出さなくても会話で来ている時点でそうに決まっているだろう。疑っているなら・・・そうだな。お前は弟に負けて当主になれなかったことを未だに悔やんでいる女々しい男だという事もお見通しだ』

(なっ!! なぜそれを・・・。やめろ!!! 勝手に見るな!!!)

『かっかっか。いやぁ悲しきかなグルフ、夢の途中で挫折とは。さぞつらい思いをしたであろう。その悲願を息子に受け継がせようとするとはこれまた泣ける話だ』


(だまれだまれ! 私は奴に負けていない!! あの時は実力が及ばなかっただけで今はもうあいつよりも上だ!!)

『ほう? ただ今その弟は不死鳥の加護を受けているからおそらくお前よりもはるかに強いぞ? これじゃあ勝てないわな』

(うるさい、何なのだお前は!! この球をたたき割ってしまうぞ!!!)

『なぁ、グルフ。取引をしないか?』

(取引?)

『あぁ。このままいけば私はこの老害どもに服従の形で召喚されてしまう。それでは我の力の一割も出せない。ただお前が今この場で、やつらがやろうとしている手順とは違う形で()()してくれればお前に誰にも負けない最恐のチカラを貸してやろう。いいのか? このまま弟に負けっぱなしで』

(・・・・・・詳しく説明しろ)


『なぁに、協力関係みたいなものだ。お前はお前を否定してきたものすべてを倒せるし、我はこの狭い空間から解放される。それにこのまま行ったらおぬしたち負けるぞ? フェニクス家当主と、その地を引き継ぐ娘と、・・・あと一人、規格外のやばいのが向こうにいるな。いま同じ部屋にいるようだ。どうだ? 我と協力すればお前は今の当主を倒して次期当主になれるぞ? 息子なんかに託すんじゃなくて()()()だ。今この瞬間移り変わればお前もその役目を全うできるであろう? それに我の力があれば当主どころじゃなく、この世界の王になれるかもしれんぞ? どうだ? 悪くない響きであろう?』



(おれが・・・奴に勝って当主に・・・いや、この世界の王に・・・)

『あぁ、そうだ。終わったと思っていた夢の続き、いやその先を一緒に見ようではないか。勝ったほうが正義と言っていたのはお前たちであろう? お前がルールになればいいのだ』

(当主・・・・王・・・)

『そうだ。我とお前の不死鳥の力を合わせれば難しいことではない』

(あきらめてた夢・・・。夢。カイム・・カイム! カイムッ!!!!!! お前を、お前を!!!!)

『決まったようだな。さぁ、ともに行こうぞ同じ道をゆかんとする(つわもの)よ!! 叫べ我が名を!!!』



「グ、グルフ様? そろそろその封印玉を返していただきたいのですが・・・・グルフ様?」


「『魔人 パズズ!!!』」


そう呼ぶと同時に持っていた球を地面に叩つける。

地面に衝突した球は粉々に砕け散りその一つ一つから黒い霧のようなものになっていき私の体を覆っていく。


「な、なっ、なんてことを!!!! グルフ様!!!!! 何をやったかおわかりですか!?」

院長が大声でこちらに何かを発しているがもう私の耳には届かない。


『カッカカカカ!! いい、いいぞグルフ!!! 実に愚かで、素直で、熱く、純粋だ・・・。久しぶりに暴れさせてもらおうじゃないか、なぁグルフ!!! 一緒にこの世界の王になろうぞ!!!』

「オアアアアアアアッ!!!」

もはや人間んものとは思えない雄たけびを張り上げ今いる会議室を満たしていく。


『さぁ、ショーの始まりだ・・・・・・・・。まずは手始めにこの老人どもを餌にしてやろう』


その黒い靄は鋭利な刃となり、グルフたちがいる部屋を真っ赤に染め上げた。

ものの数秒のうちに先ほどまで呼吸して、話していた者どもは息を引き取り帰らぬ人となった。


ただ二人、グルフと、フェムと名乗った青年を残して。



「グルフさん、僕も協力いたします」




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