47.約束、またの名は呪い
カイムさんがやろうとしていること、そして敵対する派閥がおおよそやってきそうなこと、そして俺に協力してほしいことを話し合いその日は終えた。正直部外者の俺がそこまで深くかかわっていいのかという疑問がぬぐえなかったが、彼ら曰く、
「もともと足りてなかったピースを君という存在が埋めてくれたんだ。君がエルサの友達で本当に良かった」
「正直この屋敷でフェニクス家に関わっている人よりも部外者、さらにいえば平民出身のあなたのほうが信用できます。向こうにとってあなたという存在は完全にノーマークでしょうし、それにあなたのようなめちゃくちゃな力が必要なんです」
とおっしゃったため、反論する気にはなれなかった。
あのあとエマさんはエルサのもとへと向かていったため俺は一人で部屋に戻り今後の事を考えることにした。
今日、明日で各地から関係者が集まりパーティーはおそらく3日ほどかけて行われる。問題を起こすとしたら中日が最も怪しいと言っていたが・・・。
「俺にできること、か。・・・やっぱゲーム通り、彼らはエルサの事を本当大事に思っているみたいだ。あの人たちは絶対に死なせたくない」
パーティーまではあと一日ある。そこまでにやれることはやっとかないとな。
そう思いたち、俺は本来一緒に過ごす予定だったはずの妹に電話をかけるのであった。
*****
エルサの家に来て2日が経過し、もう今日の正午にはパーティーが始まろうとしていた。
さっきからひっきりなしに門の前に高級車が止まり、使用人の人たちが館内をせわしなく移動している様子からもうすぐ始まるんだということがわかる。
昨日、一昨日で俺ができることはやり切ったとは思うがそれでもこれでよかったのかわからないし、エルサといえば俺が初日にここにきてカイムさんの部屋で別れた以来まともにあっていない。すれ違ったら笑顔で軽い会釈をする程度だった。
「よし、俺もそろそろ行くか」
エマさんに用意してもらったスーツに身を包み俺なりに頑張って整えた身だしなみに最終チェックしたのち、部屋から出てカイムさんの部屋へと向かう。
「おはようございます、成瀬です」
そういってドアをノックすると中から声が聞こえる。
「はいりたまえ」
「失礼します」
カイムさんの部屋のドアを開け中に入るとそこには深紅のドレスで身をまとった、いつもの制服姿とはまるで雰囲気の違う大人な感じを醸し出しているエルサと、恐らくフェニクス家の当主の正装なのであろう赤と黒のまるでゲームの魔王が着ていそうな衣装を身にまとったカイムさんがいた。そしてドアの横にはいつもと変わらない服装のエマさんが姿勢よくたっている。
先日俺が開けた穴を隠すように大きなカーテンが窓の方にはかぶせられており、火の光が入ってこないため少し暗い印象を受ける。
「おはようユーキ! って本当にユーキなの? なにその恰好・・・?」
「仕方ないだろ、だって今日のパーティーに来るのはフェニクス家の人たちばかりだから俺みたいなやつがいたら浮いちゃうから」
何を隠そう今の俺、目には赤色のカラーコンタクトをはめ頭には赤髪のウィッグをかぶっている。
流石にこげ茶の髪に黒目の男が今回のパーティーに居たら嫌でも目立っちまうからカイムさんといろいろ話し合った結果、フェニクス家の関係者のような風貌をとって使用人の一人としてこのパーティーに潜り込むことになった。一応新人戦で多少なりとも俺は有名になっているから成瀬夕貴だとバレないほうが得策だ。
「にしてもエルサ、そのドレスめちゃめちゃ似合ってるよ。もう言葉に表せないくらいには」
「ふふ、ありがとう。ユーキもいつもよりかっこよく見えるよ。いつもその格好にしたら?」
「流石に急にこの格好で学校に行ったら、何があった!? って噂になっちゃうよ。赤目赤髪はフェニクスけの象徴だし」
「それもそうね。まあこのままフェニクス家に住んでももいいけどね」
「こんな立派なところに住めるなら願ったりかなったりだよ」
「話の途中だろうけど、もう直にパーティーは始まる。エルサは他の方たちのあいさつ回りを始めてくれ。成瀬君はちょっとここに残っていてほしい。エマはいつも通り頼む」
「「「わかりました」」」
そう言ってエルサとエマさんは部屋から出ていく。部屋に残っているのは俺とカイムさんだけだ。
「さて、もう当日になってしまったね」
「そうですね。一応やれる準備はしたつもりですけどどうなるかはわかりません」
「こっちも向こうもおそらく準備は急ごしらえなはずだ、必ずチャンスはある。っとそうだ、これを君に」
そう言って渡されたのは茶色の封筒と、小さなビー玉のような魔法具であった。俺はそれを受け取り大切に服の内ポケットに入れる。
「封筒の中身はこの前言ったもの、そしてその魔法具は映像記録ができるものだ。よろしく頼む」
「わかりました。失礼します」
もらった二つを入れ終え部屋から出ていく。
「やるしかない、やるしかないんだ」
そう言い聞かせ当初の計画通りの行動を始めた。
*****
「久しぶりだなカイム、元気だったか?」
「グルフ兄さん・・・。お久しぶりです」
成瀬君との作戦会議を終え、会場へ早足に向かっていた私に声をかけたのは私の実兄のグルフ兄さんであった。
「いやはや一年がたつのは早いものだな。私の息子も早いものでもう20になるしお前のところのエルサももう高校生であろう? 新人戦では結構目立っていたようで何よりだ」
「そうですね。エルサも頑張っているようですしいい友人もできたみたいで親としてはうれしい限りです」
「そうだよなそうだよな。親として子を大事にするというのならば・・・あの約束を忘れたわけではないだろう?」
「っ!!! ・・・もちろんわかっています。だだから今まで私はあなたたちの言うことを聞いてきましたし今回のパーティーで約束を果たすつもりです」
「わかっているのならそれでいい。兄の優しさで教えておいてやるが、今この屋敷にはお前が思っているよりも『薄炎』を嫌うものや自分の身可愛さに主君すら裏切るものが多い。変な気を起こしたらどうなるかくらいは分かるよな。どうか次期当主になる者の父親の手を汚させないでくれよ?」
「・・・・・はい」
「ふっ、またのちにパーティーで会おう」
いやらしい笑顔をへばりつけた男が自信ありげにそう告げる。
その後グルフ兄さんはマントを翻しつかつかと歩いて行ってしまった。
腕につけている時計を見ると11時45分を示している。いけない、もうそろそろ始まってしまう。
まだ薪密院の人たちにも挨拶していないというのにここで突っ立っている暇はないな。
早く私もいかねば。
・・・約束。グルフ兄さんさんが言っていたこの言葉が脳裏によぎる。
足を止めることはないが脳に、胸にふつふつと黒いドロッとした何かがこみあげてくる。
頭をめぐるのは忘れもしない13年前の忌々しき呪い。
『はぁっ、はぁ、ど、どうして、どうしてこんなことになってしまったんだ・・・貴様!!!! なんでこんなことを!?』
『それはすべてお前のせいじゃ。』
『違う、違う・・・』
『なにも違わないぞ。フェニクス家次期当主という自覚を持たなかった、フェニクス家の血を汚したお前の責任じゃ。いいかよく聞け、お前の兄には今7歳の息子がいるであろう。そのものが20歳になる年の建国記念週間のパーティーで次期当主に指名しろ。そうすれば娘の命だけはとらないでおいてやろう。よいな?』
『・・・・はい』
『お前は娘に何も関わるな、何も与えるな、何も興味を持つな。いないも同然のものとして扱え。わしらはいつでも監視しているからな。お前が当主である数十年の間ずっと、ずっとじゃ』
『パパ! ママが、ママが!! 早く助けてよ!!! 血が、血がいっぱい・・・』
『ほら、見知らぬ少女が助けを求めておるぞ? こういう時、大人はどうするのじゃ? 』
『・・・・・』
あの時の妻の冷たい肌の感触は今でも夢に見る。
許さない。好きなものと自由に結婚することすら許されないこの世界も風習も、最愛の者を二人も奪ったあいつらも、何もできなかった自分も。
「すべてをこの3日間で終わらせてやる」
たとえこの身を復讐の炎に焦がしてでも。
50話くらいから戦闘に入れると思います。
もう少しだけ序章にお付き合いください。




