46.終わらせる
ストックしてあった分の内容を変えたくなってしまったので多分どっかでまた一回止まります。
ごめんなさい
国家のシンボルの一つである不死鳥の加護を受けるフェニクス侯爵家は王国内でも有数の権力を保持する貴族であり、もちろん王国とのつながりも深くその強大な魔法をもって時には戦場に駆り出され時には秘密裏に行われる政略に巻き込まれたりする。
このような背景があり、基本的に当主はその武力、魔力を持って国に貢献することに集中し、代々フェニクス家に仕える何人かの家臣たちがこの家に降ってくる問題や政策などを考えその当主に提案するというのが代々フェニクス家で取られてきた。
この家臣たちが集まって決議を行う機関は薪密院と呼ばれており、フェニクス家における権力は当主とほぼ同格である上に、その歴史は王国建立と同時に始まっているためいくら当主だといえどそう簡単に口答えできるようなものではなかった。
建国記念週間に行われるフェニクス家のパーティーには30を超える血縁者や今昔問わない薪密院のものたちが参加しており、この一年の反省や今後の動向などを考えるいわば株主総会のようなものがいつの間にかパーティーという形を模したものになりこうして1週間を使って華やかに、そして厳かに行われるようになったらしい。
フェニクス家は多くの領地を任されているため普段は王国内に散り散りになっているがこの一週間だけはすべての関係者が集まるようでフェニクス家において一番のビッグイベントであると言えよう。
裏を返せば何か重大なことが起きやすいともいえるが。
ここまでが俺が前世で知っていた知識とエルサやエマさんに聞いた知識で補填したものである。
だがこのパーティーについて詳しく聞けば聞くほど俺の存在意義が本当にわからなくなってくる。
だからこそこの人が何を企んでいるのかを見極めなくてはならない。
「何に使おうとしている・・・かね? 不思議なことをいうね。どうして急にそんなことを?」
「いえ、カイムさんに先ほど本当に俺がパーティーに加わってもいいのか聞いた時に『今回は違う』みたいなこといたじゃないですか。そこがどうしてもなんか気になって」
「別に不思議なことではないだろう? 君の魔法をみんなにもいてほしいと思ったから呼んだだけだ」
そうだ。別にカイムさんが特別おかしなことを言っているわけではない。
ただ前世の記憶からしたらずれているってだけだ。
カイムさんには悪いけど前世の記憶を使わせてもらうとしよう。
「カイムさんは火魔法について熱心に研究されていますよね? この部屋にはたくさんの火魔法についての本がありますし」
「それはそうだろう。うちは神聖な炎の力の加護を受けている家系だからね。炎について学ぶのは当たり前であろう」
「それはエルサのためですか?」
「っ!? ・・・・・エマ、君は何か彼に言ったかい?」
カイムさんは一瞬驚いた顔をした後、後ろにいる使用人を強い眼光でにらみつけた。
「いえ、私は何も言っておりません。ただ彼はふつうの人では知らないようなことも知っているようです。このフェニクス家についても例外ではありません」
「・・・成瀬君、どこまで何を知っているんだい? いったい誰から聞いたんだい?」
「カイムさん、情報交換と行きましょう。僕は僕が知っているすべてを話します。だから、あなたがやろうとしてることを僕にも教えてください。絶対口外しませんから」
「旦那様、使用人風情でこのような事を言うのは大変恐縮ですが成瀬様は信用するに値する人物かどうかはさておき成瀬様の存在は旦那様の計画には非常に有効だと思われます。あとは旦那様次第ですが、今のこちらの状況的に頼らない手はないかと・・・。」
「・・・・・・・・」
エマさんがそう告げるとカイムさんは右手を顎に充てて考え込み始めた。
時期、場面は違うもののゲームにおいてこの状況に近いストーリーはある。
主人公である弘人が違う学校にいる以上、俺がある程度まで物語に干渉していいことはもうわかっている。
だからこそ今回の件に関しては首を突っ込まずには入れないし、そのうえでこのパーティーに参加することを決めたんだ。最初は少し似てるなと思う程度だったが話が進めば進むほどゲーム内にあったあるイベントとおおよそ同じであることがどんどん判明していく。どうやら俺の勘は間違っていなかったみたいだ。
俺の知ってる物語ではこのままだとカイムさんかエルサの・・・
どちらかが死ぬ。
*****
「・・・最初に聞かせてもらうが君は誰かのスパイであったりはしないかい? ここまで公に言っている以上違うとは思うが」
「はい、本当にそこに関しては大丈夫です」
「エマ、近くに人の気配とかは大丈夫かな?」
「心配ありません。それに成瀬様が入室されたと同時に防音及び魔力阻害の魔法をかけさせていただきましたので大丈夫だと思われます」
「そうか、ありがとう。じゃあまずどこから話そうか。・・・そうだな、まずはエルサの事について話そうか」
そう言ってくるッと後ろを向き俺が先ほど開けた穴のほうを向きぽつぽつとしゃべり始める。
「・・・実は今、エルサを暗殺しようとしている者たちがいる」
「なっ!」
いざ聞くとなると驚くが、俺はある程度までは知っている。ただ、ここは初めて聞いたようにしておいた。
「そもそもフェニクス家は代替わり、つまり当主が変わる際に前任の当主がその地位を譲る直前に自分の子供のうちから次の当主を発表するものなんだ。私の時は兄弟が計3人いたからその中で最終的に私が選ばれたということになるね」
「ただ、カイムさんにはエルサしか子供がいないから必然的にエルサが次期当主になると」
「そのはずだった。だがやはり中には『フェニクス家当主が蒼い炎を使うとは何事か』というものたちも少なくなくてね」
「もしかしてそれがこのパーティーと何か関係があるのですか?」
「ああ、その通りだ。このパーティーには今後の方針を決めたりとかいろんな報告をする会が基本的にはメインになっていて、私からは次期当主についての考えを話さなければならないんだ。だがその当主が決めるというしきたりもだんだん薄れつつある今、エルサではなくて私の兄の息子を次の当主にしようとしている者たちが今回のパーティーでついに行動に移すとの報告が入った。おそらく前の新人戦でエルサが蒼い炎を使って活躍しているのが耳にはいったんだろう。もとからエルサに対する不穏な動きはないことはなかったが、このままどんどんと有名になりすぎる前に、実力をつけすぎる前にとかなりの急展開で今回の計画は進められているようだ。こちらとしてもいくつか策を練っていたのだが・・・、どうも裏切りにあったみたいで計画は白紙に戻ってしまった」
「もうなんだかフェニクス家内で派閥が分かれてしまっているんですね。もうどろどろですね」
「しかもみんなだいたいはあちらの方に行ってしまっているよ。やはり『薄炎』に味方するのはやや分が悪いからね。みんな結局は自分の命が惜しいのさ。だから今私が本当に信用できる家臣はエマ含めた一握りだけだ」
「でもそれって当主のカイムさんの権限とかでそういう人たちを排除したりできないものなんですか?」
「そうできれば一番良かったのだけどね。ただうちの意向を大まかに決めている薪密院の老害どもは国王と密接な関係を持っていてね、うかつに行動することができないのだよ」
「なるほど、話は分かりました。でも今話してもらったこと俺の魔法と何か関係があるのですか?」
「それを今から調べようとしていたころだったんだ。これを見てほしい」
そう言ってカイムさんは机のほうに歩いていき引き出しから小指サイズの小さな瓶を取り出した。外のラベルには『Elsa』と書かれており、中には蒼い炎が揺らめいている。
「これはエルサが生まれた時にはなった炎の欠片だ。フェニクス家一族は生まれた時に放つ炎をこうやって瓶に入れておくのがしきたりとなっているんだ。この時の炎は熱くもなく、何かを燃やすことはできないし、死ぬと消えてしまうがが魔法を吹き込むとその魔法が炎の保有者に適しているかどうかを判別することができるようになっている。まあ他にもできることがあるんだが今は関係ないから流してしまうね」
そこまで言われていろいろとつながった気がした。
部屋にたくさんある火属性魔法の本、そして俺という存在。
「・・・・・もしかしてカイムさんは俺の魔法をエルサに覚えさせて、赤い炎を使えるようにしようとしていたのですか?」
「ちょっと違うな。フェニクス家の炎をも凌駕する最強の炎の魔法だ。これで少しでもエルサに適性があれば、今回のパーティーで君が裏で魔法を発動してさもエルサが使えるようなパフォーマンスをすれば傾きかけている形勢を戻せるんじゃないかと思ってね。それほどまでにあの炎はすごかった。ただ・・・」
そう言って先ほど俺が開けた穴の方に近づいていき、その灰になったものを一掴みつまんで瓶の中に入れると、瞬く間に蒼い炎に飲み込まれ、何もなくなってしまった。それを見たカイムさんは
「どうもダメみたいだね。おそらく、君の魔法と不死鳥の加護は相性が悪いみたいだ」
と悔しそうに告げた。
「だから俺の事を急に呼んで、この会に参加させようとしたんですね。・・・で、でも、このまま行ったらこの1週間でエルサが大変な目に合うんじゃないですか? もう策はないんですか? まさかこれで終わり・・・?」
「いや、他にも策はある。最早最後の一手と言わざるがえないが・・・」
そこまで言って一度口をつぐみ、ゆっくり息を吐きだすように言葉を発する。
「私の代で、フェニクス家を終わらせる」




